1.♡喘ぎ
2.地の文における♡乱舞
◆ 羽繕い ◆
薄暗い滝裏の住処であっても、朝がきたことはちゃんとわかる。朝と夜の空気はまるで違うから、たとえ白々とした日の光が洞窟の奥まで射し込んでこなくても、朝がくれば自然と目覚める。そして、ゲッコウガが目覚めたそのとき、高確率でルチャブルは不在である。それと気付くたびに、ぷ、とゲッコウガは頬を膨らませるのだった。
確かに隣で寝ていたのに、もう、そこには愛しい番の体温も残り香もない。ルチャブルが外に出て時間が経ってしまっている。ゲッコウガの頬の膨らみが、更に大きくなる。
普段はゲッコウガの傍を離れないのに、こういうときだけは――羽繕いのときだけは例外なのだった。
ゲッコウガは、完全に寝入ることはない。常に身体の一部や脳の一部は覚醒しているため、休眠していたとしても、自分とルチャブル以外の気配や物音があればすぐに察知して起き上がり、臨戦態勢をとれる。ルチャブルが微かに身じろぎしたって分かるのだ。だから、同棲を始めてすぐに、ルチャブルが起床後に巣から抜け出そうとしていたことにも当然ながら気付いた。当初、どこにいくのか気になってルチャブルのあとについていこうとした。すると、ルチャブルは『羽繕いしてくるだけ。すぐ戻るよ』と笑いかけてきた。笑ってはいたが「見られたくない」という言外の気持ちを読み取り、以降、ゲッコウガは留守番をすることになったわけである。
ゲッコウガは巣の中でごろりと寝返りをうった。
まあ、ひとりの時間だって欲しいよな。そんなふうに自分を納得させてみるのだが、何とな~くモヤるのだ。だって、
男の前で化粧してるところを見られたくない女もいるらしいという話をどこかで聞きかじったことがあるが、それと似たような感じなのか。…つまり、
オレの前でそういうの気にしなくていいのに…。身だしなみ整えてるところも見たいよぉ…と、うじうじしていたら、その日は思いがけないことが起こった。
気付けば既に、巣ではなく森の中にいた。
木漏れ日の中で羽を撫でつけているルチャブルが、目の前にいる。状況を把握する前に『ルチャブルは今朝も麗しいでござるな』と反射じみた速度ですかさず褒め称えるが、彼女は突然の声かけに肩をびくつかせ、ゲッコウガの出現に目を丸くするばかりだった。
『あれ、…え、なんで、…ゲッコウガ…?』
『なんでと言われてもな…拙者にも何が何やら…』
もしかして、拙者を呼んだか。
確認したところ、束の間ルチャブルは口を閉ざし、その後思い当たることがあったのかぶわりと頬を赤く染めた。
『ご、…ごめんね、まだ寝てたでしょ』
取り繕うような、しどろもどろの反応。…どうやら可愛い理由が隠れていそうだ。少しくらいならいじってもいいか。
『起きていた後だったから気にしなくていい。それより、何か拙者に用があったのでは?』
『用事とか、…そんなのは、全然…』
『だが、呼んだろう?だから拙者は影を通じてここにきている』
ん?と促すように首を傾げてみせれば、ルチャブルはそわそわと目を泳がせた果てに、俯いて、胸の前できゅっと手を組んだ。
『……、呼んだつもりは、なくて、…思わず名前を声に出しちゃったの』
――聞けば、いつでも綺麗なところを見せておきたくて、これまでは途中経過である羽繕いを見せないようにしてきたのだとか。…くはァァァ~…なんて健気…。…それで?今朝は羽繕いがいつにも増して上手くできたことが嬉しくて『ゲッコウガに綺麗って言ってもらえるかな』って思わず呟いてしまっていた…ですって?ふぇぇ…何それぇ…可愛すぎて胸が苦しい…。
『ゲッコウガ、本当に言ってくれたね。最初に。綺麗だって。…頑張った甲斐があったなあ…』
ルチャブルを彩る、心からの笑みが咲く。
「守りたい、この笑顔」グランプリ。聖性すら感じる。見てるだけで心が洗われそう…さすがオレの嫁…。
『拙者にそなたの美しさをもっと見せてくれ』
こういう場合、相手を喜ばせるには敢えて催促するってのが定石だよな。
乞えば、今度は恥ずかしがることなく、それどころかルチャブルはぱあっと表情を明るくした。
『うん!たくさん見てほしいな!』
この態度には「ルチャブル」という種族の特性が影響しているのだろう。注目してほしい、自慢したいという気持ちが大きく、アピールに余念がないポケモンなのだ。
何にせよ、嫁が世界一なのは揺るがぬ事実だし、「見て見て!」ってしてくるのも微笑ましいし、思いきり褒めちぎろう。
あらゆる褒め言葉を脳内に準備しながらぺたりと蛙座りをするゲッコウガの前で、ルチャブルが自信満々にポーズをきめたその瞬間――…ゲッコウガは、ルチャブルの背景が桃色に染まり、キラキラとしたスクリーントーンが広がる様を幻視した。ついでに、「ふわ~ぉ♡」みたいな、そんな感じの効果音も聞こえた気がする。
頭の後ろで手を組んで、少し腰をひねりながらぐっと胸を張って、得意げな顔つきをして。おまけに、ぱちこーん☆とお手本のようなウインクを飛ばされちゃったら、…どうすんだおまえコレ心臓破裂するが?
肉体美と翼の美しさをアピールするためだとは重々承知しているのだが、それでも、…それでも、このポーズ、…お色気担当キャラが見せてくれる奴じゃん。わがままボディを大胆に見せつけて悩殺してくる奴じゃん!ねえ!
今や、ゲッコウガの口は開きっぱなしになっていた。ぱかんと顎がはずれてしまったかのように。だもんで、舌も緩みきっており、いつものマフラーの状態が保たれていない。
緩んだのは口元だけではなかった。力なく開ききってしまった鼻の奥が、今、じゅわりと熱い。
+++
ゲッコウガの鼻からだらだらと血が流れ落ちていく様子を目の当たりにして、ルチャブルはぎょっと血相を変えた。
慌てて『どうしたの!』と駆け寄るも、彼はろくな返事を寄越さない。辛うじてぼそりと一言が落とされたようだが、よく聞き取れなかった。
『何?ゲッコウガ、今、なんて…』
『…超可愛い…』
『え?』
『だから!超可愛いって言ったんだよ…ッ!…あ゙ー…すげぇ興奮してきた…』
普段のゲッコウガからは考えられないような、荒っぽくぞんざいな話しぶり。彼は乱暴に鼻の下を手の甲で拭い、じろりとルチャブルを睨みつけてくる。
『ンな誘惑されたらなあ、鼻血くらい出るわ』
欲情しきって、目が据わっている。底光りしている。これ以上熱のこもった視線を向けられ続けたら、羽毛の先が焦げついてしまうかもしれない。
突如として「雄」の眼前に晒され、ルチャブルは胎からずくんと震えが駆けあがってくるのを感じた。
『抱かせてくれ』
単刀直入が過ぎる要求。
有無を言わせず、ゲッコウガはルチャブルの腰を引き寄せる。下腹部に屹立した肉塊を押しつけられ、言葉はなくとも「おまえも早くその気になれ」と急かされていることは明らかだった。
『は、…ぇっと、ぃ、今?ここで?』
『今。ここで』
こんな、明るくて、ひらけた場所の、ど真ん中で?
それはちょっと抵抗があるかな…というのがルチャブルの本音だった。このまま雰囲気に流されてあげたいけれど、交尾をするならするで、それだけに集中できる場所がいい。
『……、…ゲッコウガは、いいんだ…?私の、ぇ、…えっちな、声とか、森の皆に聞かれちゃっても。こーび、してるとこ、…見られちゃっても、平気なんだ』
今にも押し倒してこようとするゲッコウガにおずおずと物申してみると、途端にゲッコウガはむむ…と眉間に皺を寄せて、子どもみたいに不機嫌を丸出しにしながら『やだ』と口を尖らせた。
『じゃあ、おまえを連れて帰る。…言っておくが、交尾は決定事項だぞ。そうでないとオレの
雄茎のいきり立つままにゲッコウガはルチャブルをひょいと抱きかかえ、まるで攫うように走りだした。
で、瞬く間に寝床に到着。僅か数秒といったところだろうか。
住処からほど近い場所で羽繕いをしていたとはいえ、想定の遥か上をいくいっそ笑えるほどのスピードが、ゲッコウガの欲の強さをありありと示していた。噛みつくようにキスをされて、ふたりして巣になだれ込んで、そこから先は、互いの性を解放し合う悦楽の檻の中だ。
抱かれる悦びを隅々まで教え込まれた身体は、今や難なくゲッコウガの剛直を根元まで咥えこめてしまう。ルチャブルの背面からのしかかってくるゲッコウガは、その大きな手で腰をしっかりと掴んで離さず、ナカの弱いところを的確に狙いすまして穿ってくる。小刻みに奥を突かれて絶え間なく快楽を与えられ、喘ぐたびに、ルチャブルは、自分が好いた雄に容易く屈する雌であることをこれでもかと自覚させられるのだった。
『ぁ、あ、…また、イっちゃ、ぅ♡ イっちゃうの…♡ きもち、の、…もぅ、…やぁ…、ぁ…ン…ッ♡』
『気持ちいいなら問題ねーだろうが。素直に善がってろ』
もがくことも逃げることもできずにひんひんと媚びるしかないルチャブルは、何度も何度も畳みかけるように絶頂を強いられ、脳内を真っ白に塗り潰され、思考回路を焼き切られ、気がふれてしまいそうだった。
むせかえるほど濃厚なゲッコウガの精液の匂い。涙が滲んでしまうくらい強くて激しい快楽の連なり。だが、ルチャブルがいくら鳴いても、ゲッコウガは止めてくれない。興奮した息遣いが鎮まる気配も、一向にない。
気絶しようが構わない、という、苛烈な抱き方。
やがてルチャブルの意識は甘く溶かされ、どこかの時点で処理落ちし、きゅるりとアイリスアウトになるのだった。
――次に目を覚ましたとき、そこには、ルチャブルを心配そうに見下ろすゲッコウガの顔があった。
ゆっくりと身を起し、自身のありさまを確かめる。
羽の一枚一枚を覆うねちょ…とした感触。この時点で、自分の思い描く美しさとは対極の状態である。はあ、と溜息しか出てこない。
押し寄せるばかりの快楽の波に呑み込まれて、何の加減もなくもみくちゃにされたので当然といえば当然だが、自慢の羽には至るところに白い粘液が付着しており、べたついているからこそ巣材の毛や木葉の切れ端が全身にびっしりとくっついている。見るも無残とはまさにこのことだった。
『水浴びしなきゃ…』
よろりと立ち上がるルチャブルを支えようと手を伸ばし、『拙者も手伝うでござるよ』と近寄ってきたゲッコウガをひと睨みして、ルチャブルは彼の手をぺちんとはたいた。
『ついてこないで』
ゲッコウガは愕然として顔を強張らせている。が、素知らぬ振りをしてルチャブルは水辺に降りた。住処が滝裏なので、そのまま岩場を下ればすぐに羽は洗える。丹念に全身を清め、日向で乾くのを待っていたところ、ゲッコウガがルチャブルの顔色を窺うようにしながら恐る恐るやってきた。
『あの…ルチャブル…』と狼狽を滲ませた声で話しかけられたが、半ば遮るように『羽繕いしたばかりだったのに』と言葉を被せた。
『一からやり直しになっちゃった』
『それは本当にごめん…』
『いつもより上手くできたから嬉しかったって、私、言ったよね』
『…拙者に褒めてもらえたから嬉しかったという話だった気が…』
『何か言った?』
『イイエ!返す言葉もございません!』
ルチャブルの追撃は終わらない。ここで、わざとぷい!と顔を背けてみる。すると、視界の端っこで、しょんもりと萎れるゲッコウガが見えた。…可愛いって思ってしまうのは、さすがに意地悪かしら。だって、あんなに欲を剥き出しにして強引に迫ってきたのに、…この落差。本当に同一のポケモン?
『おなかすいた』
拗ねた声色でわがままを言えば、『すっ、すぐに用意するでござる!!!』と上擦った声で言い残し、ゲッコウガは慌てて跳躍していった。
――今日の、すごかったな…。
今更のように官能一色のひとときを思い返して、ひっそりと顔を赤らめるルチャブルである。たっぷりと子種を注がれたこともあって、下腹はぽっこりと膨らんでいた。今度こそ卵ができるんじゃないかな、と、そんな期待も抱いてしまうほど。
本当は、怒ってなんかいない。ちょっと困らせてみたかっただけ。
ゲッコウガを想いながら羽繕いしていたら、褒めてもらえた。それどころか、今までにないくらいに私の前で余裕を失って、昂ぶって。身綺麗にした結果、あんなに猛ってもらえたのなら、やっぱり、それは嬉しいなって。
どきどきした。繋がっている間、耳元で、『綺麗だ』『可愛い』って、呪文みたいに延々と吹き込まれて。ずっと、相手の興奮が直接体内に響いてきた。
たまになら、こういうのも、…いいかも?私から誘っちゃおうかな…。
そんなことを考えているうちに、ゲッコウガがもぎたての木の実を山のように両手に抱えて戻ってきたものだから、可笑しくてつい、ルチャブルは声をたてて笑ってしまうのだった。
**********
◆ 雨宿り ◆
朝から快晴だった。太陽は燦々として、澄んだ空とたなびく雲が描く青と白のコントラストが爽やかで、夏の到来を予感させていた。
――それなのに。
妙な気配がして、ゲッコウガは歩みを止める。『どうしたの?』と振り返ってきたルチャブルに空を指さしてみせれば、彼女はそのまま視線を上に向けた。
朝から快晴だった。しかし今は、陰りが見える。白紙に滴り落ちた墨汁が瞬く間に滲んでいくように、黒みの強い雲が急速に広がって蒼穹を覆い尽くさんとしている。
『…雨雲?』
ルチャブルの呟き。正解だ。しかも、己に備わる水タイプの本能が、相当冷たい雨が降ってくることを察知している。ルチャブルの身体が冷えるのはまずい。
『直に降りだす。雨宿りできる場所を探そう』
そう言ってルチャブルの手を引き、そびえる大樹の根元でぽっかりと口を開けていた樹洞にふたりして潜り込み、身を寄せ合う。身を屈めたままでなければならない狭さだが、どうにか雨をしのぐことができそうだ。
安堵のため息をついた途端に、水滴がぱたぱたと木の葉を叩き始め、地面にしみを作っていく。雨粒を追いかけるようにざらざらと耳障りな音も聞こえてきたが、樹洞から外を確認すると、地表で白い塊が飛び跳ねている最中だった。
あまりに唐突な天候変化であることから、何らかの強制力がはたらいたと考えるのが自然だろう。特性「雪降らし」のポケモンが森を通過したのかもしれない。
『近場で樹洞が見つかってよかった。ラッキーだったね』
秘密基地みたいだね、なんて無邪気なことを口にして微笑むルチャブル。しかし、ゲッコウガにとっての真実はもっと下心満載だ。何のことはない、森を散策する度にルチャブルを連れ込めそうな場所を密かながらに探しておいたのである。候補地のうちの一つが、今回、偶然にも役立ったというわけだ。
『急に寒くなっちゃったし、風邪ひかないようにくっついとかなきゃ』
ルチャブルのふんわりと柔らかな身体が更に距離を詰めてきて、触れたところから、心地よい温もりがゲッコウガの全身にじんわりとひろがっていく。
まあ、あれだ、ここでご理解いただきたいのはね、オレらがハネムーン真っ盛りの雄と雌ってことですよ。そんなふたりが、ぴとーって仲良く密着して。これで何も起きない方がおかしいまであるわ。なあ?
だもんで、ゲッコウガは舌をしまって露骨に「キスしたいです」アピールをしつつ、自分とルチャブルの鼻先をこつんと触れ合わせる。
お誘いは相手にも無事に伝わったらしく、ルチャブルは悪戯っぽい仕草で顔を近付け、そのまま「ちゅ」と口を重ねてくれた。
ちゅ、ちゅ、と軽やかで甘い口付けを繰り返していると、調子にのった愚息がひょこりと頭を出してきた。コイツもルチャブルのこと大好きだからなあ…そりゃァ勃っちゃうか…。
隙あらば盛る旦那ってどうッスかね…、やっぱり呆れる…?ルチャブルの様子をうかがうと、彼女の方もちゃんと気付いており、しかし顔つきに険はない。早くも先走りを垂らす愚息の先端を、爪先でちょんとつついてきた。
『この子も冷えたら可哀想だもんね…。……、…あっためてあげようか…?』
ゲッコウガは間髪入れずにヒくほど食い気味で『是非』と即答する。
なんと慈悲深い。聖女かよ…、…うん、聖女だったわ…。
ねえちょっと聞きまして?温めてくれるんですってよ?テンション上がるわ~、もしやおクチでシてもらえたり…?うきうき待機していると、
ま、…まさか…体面座位…!!!?
ルチャブルが何をしようとしているのか理解した途端、ゲッコウガの雄根にはがっちりと芯が入り、「かたくなる」を積みに積んだ完成形態へと仕上がる。…何だよ、固い方がいいだろうがよ。挿れやすくなるんだし。
『…上手にできるといいんだけど…』
『大丈夫だ、…そのまま腰をおとせるか』
『うん、…やってみる…』
少しずつ、少しずつ、少しずつ。ルチャブルの下の口が、ゲッコウガの性器を咥えていく。一思いに飲み込むのではなく、好物を味わうときのようにゆっくりと食べていく。雨の音も霰の音も遠くに感じて、聞こえない。今のゲッコウガの鼓膜を揺するのは、互いのこもった息遣い。そして、ちゅぷちゅぷと結合部にまとわりつく粘着音。
『んっ、…ぅ、…はい、…った…ね…♡』
『…そうだな、上手にできてたぞ』
おかげで
相手の胎内にいるので、より鮮明に、ルチャブルの脈拍が伝わる。温もりが伝わる。生きていることが、分かる。愛おしさが募って、指と指を絡ませて、見つめ合って、――また、キスを繰り返した。
格好としては体面座位なのだが、殊更に腰を打ち据えたりはしない。本当に、ただ、繋がって体温を共有しているだけだ。性的な興奮は間違いなくあり、高揚しているのに、激しく翻弄してやろうという気にならない。静かに愛し合うこの時間がとても貴重なものに思えて、それを自ら崩すことができないのだった。
オツなものだな。こういう、穏やかな交歓も。
たぎる性欲を一方的にぶつけるのではない、まったり交尾。ぽわんとした幸福感になみなみと満たされたおかげで、悪天候をやり過ごして無事に巣に戻ってからも、ゲッコウガはほかほかと上機嫌のままだった。狭くて薄暗いところで密着し、繋がったままでず~っといちゃいちゃしていたのだから、至高のリラクゼーションだったと言っていい。間違いなく健康になったし寿命も延びたと思う。
普段と比較すればおとなしめの交尾だったけれど、かなり濃密でラブな時間を過ごせたのでは…?
繋がり合う最中、胸元で膨らむふっかふかの羽毛に顔をうずめて思いっきりルチャ吸いもさせてもらった。しかも『ゲッコウガは甘えんぼだね』って優しく頭を撫でられながら。すンごい母性の光をもろに浴びました。ついうっかり心身共にケロマツまで幼児退行するところだった。
舌の先をぶんぶんと振りながらほくほくしていると、ルチャブルがおもむろに腕を絡めてくる。…えへへ、なァに、その胸きゅん仕草~。ルチャブルもいちゃいちゃの延長線上にいる気分?スキンシップめっちゃ嬉しい♡ デレデレしながら見遣れば、身長差で必然的に上目遣いになるルチャブルと視線がかち合う。
『あの、…あのね、ゲッコウガ…。何だか、まだ、…ゲッコウガの、が、…ナカに入ったままみたいに感じて…だから…』
今からまたシよう…だと…?
え、一瞬で精子量産体制に突入しちゃう破廉恥発言を耳にした気がしたけど現実なんです?
何?どういう状況?ファントムペニス?イマジナリーチンポ?ずっと生ハメ感覚継続中ってわけ?そんなことある?
しかし、切なそうにしてる我が最愛はどんなに目を擦ってもそこにいる。幻ではない。美味しそうに色付いて、しなだれかかっている。
…で? 何だっけ、うずいてるからヤりたいんだっけ?そんな胸の内を聞かされちゃったらさあ、悩む間もなく即決よ即決。
雄イッチON☆ばちぼこに犯しま~す!
『ちゃんと言えてお利口さんだなあ、ルチャブルは』
腰を抱き、そのまま手を下にスライドさせて、彼女のまぁるい尻をむっちりと揉みしだく。
――さァ、て。じゃ、さっそく、快楽耐性のないよわよわぷりぷりおまんこにモノホンぶち込んでわからせなきゃ。
まずは、どのくらいびしゃびしゃになってるのか念入りに検査しないと。場合によってはお仕置き…否、ご褒美をあげなくては。だって、「お利口さん」って褒めたばかりだし。
あ~ぁ、結局こうなっちゃった。「たぎる性欲を一方的にぶつけるのではない、まったり交尾」もいいかなァなんて殊勝なことを考えて、オレだってお利口さんにしてたのに。…そうだ、そうそう、お利口さんだったんだよオレも!じゃあオレがルチャブルにご褒美あげるだけじゃなくて、オレがルチャブルからご褒美もらったって全然おかしくないわけだ。よし、口実ゲット。
『たっぷり可愛がってやるからな』
あれれ、何その怯えた目。こっちの加虐心くすぐるようなそそる表情しちゃって。そんな怖い顔してる?オレ。…でもなァ、その怯えの向こう側に「期待」が透けて見えてんだわ。だから、その期待に応えて、ぺろっと食べてやろうな◥θ┴θ◤ゲコッ
**********
◆
ルチャブルとキスをする以外は、なるべく舌を出して首に巻き付けている。些細な空気の動きまで読み取ることができるほどの鋭敏な舌は大事なセンサーであり、索敵には必須のものだ。
寝るときも大抵は舌を出したままなので、隣でルチャブルが身じろぎすればそれと気付ける。今もそう、ルチャブルが動いた気配を察してゆるりとゲッコウガは目を開けた。
仄明るい洞窟内部。朝だ。なるほど起床時間かとルチャブルの様子を確認すると、目に映るのは未だにぐっすりと眠る愛らしい小鳥の姿。どうやら、自分の舌はルチャブルの寝返りに反応したらしかった。
オレの方が先に起きているというレアケース。かなり低確率のイベントが発生している。
今のうちに寝顔を堪能しておこう。にこにこしながらルチャブルを眺め始めたゲッコウガなのだが、ルチャブルがあんまり無防備で可愛らしいので、眺めるうちにムラついてしまった。昨晩だってたーくさん抱いたのになあ…。楽しかったなあ、ルチャブルに騎乗位をお願いしてみたらちゃーんとリクエストに応えてくれたし。思い出していくごとにだらしなく口元がにやけていく。下から見上げる彼女の、艶やかだったこと。雄の上に跨って、快感を追いかけるために肢体をくねらせる一羽の雌。ぎこちなかった腰つきが滑らかになっていく過程。途中でスイートスポットを見つけたのか、特定の箇所ばかりを擦りつけてきたときなんて最高だった。彼女の痴態は、瞼の裏にしっかりと焼きついている。…うーん…こうして脳内リプレイしてたら朝っぱらからシたくなってきた…騎乗位ルチャブルをオカズにセンズリしちまうか…でも当のルチャブルが隣にいるんだよな…どうしよっかなー…。
ちょっとくらい…、そう、ほっぺにちゅーくらいなら許されるだろと勝手に自己完結をして、ゲッコウガはささやかなキスをルチャブルに落としていく。ルチャブルの瞼が、ふるりと震える。『お目覚めですか、お姫様』って言ってみようか。キザったらしいことを企みながら見守っていると、ルチャブルは薄目を開け、そうして、ゲッコウガに向かってふにゃりと笑いかけてきた。
『げっこぉがは、ゆめのなかでもかっこいいねえ…』
見るからに覚醒しきっていない振舞い。ぽやぽやぽやぁ…としたまま、ゲッコウガにすり寄ってくる。放っておいたらこのまま二度寝してしまいそうな雰囲気だ。
あら~…これは予想外。こんな姿を見せられては、ゲッコウガの中にいやらしい欲が湧き上がるのは仕方のないことだった。繰り返し強調しておくが、仕方のないことなのだ。うん。だって、ルチャブルがこんなにも可愛い。
罪悪感?何それ?こちとら悪タイプ複合だが?
ルチャブルの蜜孔に手を伸ばし、入り口をそっと撫でて、指先だけをちゅこちゅこと出し入れしてみる。悪戯をしても、ルチャブルは咎めてこない。むしろ、もどかしそうに自ら脚を開いて腰を揺らし始めた。
『なんで、…あさいところばっかり、…やだよぉ…』
『嫌か?…だが、具合よく濡れてきてるぞ』
焦らすように掻き回してみればくちゅくちゅと音が変わって、指に絡みつく蜜の量が増えているのが分かる。未だに現実感が持てないのか、ルチャブルは恥じらうことなくとろんとした顔をして、夢と現の狭間を揺蕩っているようだった。はー…やべぇ…ちんイラMAXなんですけど~…?目の前に広がる光景がひたすらエロくて病みつきになりそう。
『ん、ン…♡ …もっと、…おくが、…いいのにな…』
性懲りもなく勃ちきっているゲッコウガの雄を、ルチャブルがよしよしと慰めるように撫でる。
『…おなか…さびしくなっちゃった…。…これ…いれて…?』
ドすけべ殺し文句いただきましたァ!!!
ここで言うべきは『よろこんで~♡』以外にない。悪戯では済まない一線を躊躇なく越えて、ゲッコウガは遠慮もなしにぐちゅんと突き込み、ルチャブルのナカをかき分けながら奥へ奥へと侵攻していった。
『…もう寂しくないだろ?』
ルチャブルの肉壁は、待ち望んだものへの歓喜を表明するみたいに、懸命に吸いついてくる。そんな心待ちにしてた?かーわい。自身の先端を最奥に押し当ててぐりぐりと擦りつけたら、ルチャブルは愛くるしい嬌声でさえずった。
『すき、これ、…すきィ…っ♡ あんっ!あ、ぅ、――ッ♡♡♡』
…ダメだ、全然もたない。気持ちよさそうに喘いでるのってホント腰にクるんだよな…、恍惚としたエロ可愛い嫁とか劇薬でしかなかった。もっと揺さぶりをかけてやりたかったのに、あっさりと一度目の射精に至ってしまう。あー…マジで気持ちぃ…この射精感で腰抜けそう…。
余韻に浸りつつも、仕切り直すべく一旦ブツを引き抜いた。仰向けに横たわるルチャブルの小さな秘所から、こぽりと泡立った白濁が溢れてくる。絶景だな…惚れた相手の穴からオレのザーメン垂れ流しになってんの何度見ても興奮不可避。ご馳走様です。
『まだ、…おわっちゃ、や…、なかにいて…』
ルチャブルが、首筋に縋ってくる。
終わっちゃイヤ?そんなの当たり前でしょ、オレだって嫌だ。ただのちょっとしたインターバルだから安心しな。そもそも論、このオレが一回で終わるわけねえだろ。
『もっと…えっちなことおしえて…?』
ハーイもちろんで~す♡ ご奉仕しま~す♡♡♡ 途中で『止めて』って言っても絶対に聞いてやらんぞ。
卵を産みたい、子育てをしたいという切実な願いもあってか、今世のルチャブルは交尾に積極的だ。(言い方は悪いが)その前向きな気持ちを利用するかたちで交尾回数を増やし、じっくりと仕込んで堕とし、うんと悦ばせてきたため、『ゲッコウガと交尾するのって気持ちいいから好き』と素で言ってくる。いや~、そんなふうに言ってもらえたら
だから今回だって張りきっちゃうんだもんね~。
オレ専用、という甘美な響き。相性も抜群。隙間なくフィットするんだから、完全にオレの形になってるし。もう何回中出ししたか分かんないくらいだし、ルチャブルの粘膜はさぞや見事な白濁の色に染まっていることだろう。
トロトロで、やわくて、あったかいその場所に、根元までぬっぽりと埋めていく。さっき出したばかりだから余計にナカはねちゃついて、抽送のたびに空気を含んでぐぽぐぽと不埒な音をたてた。…やば、腰ヘコ止まんねえ。無限に振れそう。…このままだとオレの雑魚チンポが溶ける…。
『ね、…げっこぉが、も、…きもち…?』
『ああ、…いつでも夢心地だ』
『…そっかぁ…よかった…』
ホントまじ夢みたいな遣り取りばっか続くじゃんか。
夢中で腰を振り続けてたら、蕩けていたルチャブルの声がほんの少しだけ硬質になった。手で掬えば指の間からとろとろと滴り落ちていきそうな蜜状だったのに、ぷるんとゼリー状になったみたいな、そんな感じ。『あ…れ…?』と、不思議そうな声色。次第に、ルチャブルの瞳に宿る光が鮮明になっていく。『お目覚めですか、お姫様』と白々しく言い放つと、徐々に現実を理解しだしたルチャブルは、さっきまで「イきたくて仕方ない」って顔をしてたのに、今や驚愕に目を見開いている。
『え、…なに、なんで、
混乱しながらも快楽には抗えなかったのか、仰け反る拍子にかくんと顎が上がり、喉が露わになる。紅白の羽毛が境界線をつくるその綺麗な首にべろりと舌を這わせれば、『ぴぃッ』と甲高い声が上がった。…はは、何だその雛鳥みたいな声。可愛すぎんだろ…!
『おまえがオレにねだったんだぞ。挿れてほしい、イかせてほしいって。可愛い番の頼みなら断れねえよなあ…?』
全力で気持ちよくしてやるから、好きなだけイけよ。
ルチャブルが起きたって、『そんなの知らない』と言われたって、当然、ゲッコウガは悪びれない。どうせこのあとにお小言をくらうのは確定なのだ。だったら、二回戦も完遂させてやる。中途半端に投げ出すくらいならたとえ怒られようときっちり中出しした方がマシだ。
――で、情事の後に土下座して平謝りして、機嫌を直してもらうためにしこたま餌を確保してくるまでがセットになっている。あれ?何かデジャヴ?ついこの間もこんな流れになったような?…まあ、いっか。楽しませてもらったんだ、このくらいの代償なら安い安い(安いと思ってるから今後もまた同じようなことをしでかすのだけれど)。
ゲッコウガは今朝も今朝とて腕いっぱいに木の実を抱え、愛しの小鳥が待つ巣へと駆け戻っていく。
**********
◆ お月見 ◆
月を見にいかないかと誘われた。
今夜は雲がなく、満月がよく見えるから、と。
『一年のうちで、いっとう美しく見える日でござるよ』
ゲッコウガから差し出された手を取り、ルチャブルは誘いに応じた。
――日が暮れて以降は巣から離れないようにしていた。ひとりで生きていたときも、番と生活を共にするようになってからも。夜行性のポケモンを相手にするのは分が悪いし、安全な巣で朝まで息を潜めておくのが賢いやり方だと思っていた。だから、月をまじまじと見上げたことはない。
だが、ゲッコウガは『拙者が守る』と断言してくれる。その発言が、自惚れからくるものではないことはルチャブルがよく分かっていた。
ゲッコウガと同じものを見て、美しいと感じた気持ちを共有する。『綺麗だね』と、見たままの簡素な感想で構わないから、ひとときを分かち合えたらそれはとても甘美なことであるように思えた。
巣を出た途端、さっそく初めての光景を目にした。
滝壺から幾分か離れたところに広がる河原で、楽しげに踊るピッピたち。全身に淡く光をまとい、ふうわりと浮いている個体もいる。
『満月の夜になると、彼らはどこからともなく現れる。…月の光を背中の羽に集めることで、ああして空中に浮かぶことができているらしい』
ゲッコウガからもたらされるピッピたちの生態も、神秘的な姿も、新鮮な驚きを以て受けとめるルチャブルである。
『私、夜に出歩いたことってほとんどないの。ピッピたちに出会えたのも初めて…。可愛いね』
『思わぬサプライズになったのなら何よりでござる。…さあ、目的地は遠くない。向かうはこの滝の上だ。行こう』
とうに行き来に慣れた岩場を跳んで、上流に出る。もちろん登った先にも森が広がっているのだが、奥へと歩を進めることはなく、ゲッコウガは付近に横たわる倒木に腰掛けてルチャブルを手招いた。
ルチャブルは、隣ではなく、あえてゲッコウガの膝の上を選んで座らせてもらう。もう随分と以前から、そこは、甘えたいときの定位置になっていた。
冠羽を揺らす穏やかな夜風を受けながら、ゲッコウガに後ろから優しく抱きしめてもらいながら、改めて、明るい月夜を満喫する。自分の影が確認できるほどの、明るい月夜を。
見上げた先には、吸い込まれそうな重たい暗闇はない。柔らかな藍色の空の中心で、曇りのない月がくっきりと見事な円を描いている。ウブの実を輪切りにしたような、その断面を思わせた。ゲッコウガは、今夜の月が一番綺麗だと言っていた。ルチャブルは月見の経験に乏しいから比較対象がないのだけれど、彼が言うのだから、きっと正しい。
太陽みたいに、咄嗟に目を閉じてしまうほどの苛烈な眩しさはない。直視ができる。とっくりと眺める。
ルチャブルの目に、月は、親しみやすいものとして映った。連想するのは、ホズの実や蜂蜜、卵の黄身の色かしら。もし嗅ぐことができたならいい匂いがしそうだし、触ってみたらツルツルとしているのではないか。
冷ややかな印象を持たなかった。届かない場所に浮かんでいるあの月は、身近なもので例えてしっくりくるくらいに近くにあったのだ、本当は。夜間は巣に引きこもっていたから、この輝きに気付く機会がなかった。日光浴ならぬ月光浴を楽しむことも、淡黄の光を浴びる心地よさも知らずに、夜はずっと眠って過ごしてきた。勿体なかったな、と思う。そして、勿体なかったと惜しむ気持ちが湧くほどの素敵な体験に、ゲッコウガが導いてくれた。
ゲッコウガは、いつもいつも、ルチャブルの世界を広げてくれる。
『綺麗だね』
『そうだな。…そなたと仰ぐからこそ、尚のこと』
低く甘い声が愛を紡いで、ルチャブルをときめかせる。
共感してもらえたことも、口説いてもらえたことも嬉しくて、ルチャブルの口元には自然と笑みが浮かんだ。胸がドキドキして、ひとしきり照れて、…そして。
もっと、ドキドキすることが起こった。
蛙の大きな両の手が、後ろからルチャブルの胸をねっとりとした手つきで揉んでくる。
『ぁ、…あの、…ゲッコウガ…?』
困惑から声をかけてみるが、狼狽える気配は伝わってこない。背後のゲッコウガは、平然としている。
『月明りを受けると、そなたの羽の先が光って見えるな。その煌めきが美しい。胸元の鮮やかな羽毛は、特に際立っている』
だから思わず触れたくなったのだ、と。褒めてくれている。しかし、褒めながらも彼の手は止まらない。
胸筋のマッサージ…ということではないだろう。だって、手つきが、…あからさまに卑猥で、だから、…胸部を揉まれるうちに変な気分になってくる。
『ふっ、…ぅあ…!』
胸揉みと同時に、かぷりとうなじを甘噛みされ、肉厚の舌が舐めてくる。鳥なら誰しもがうなじを性感帯として挙げるだろう。そんな部位に断続的な刺激を与えられて、耐えられるはずがなかった。穏やかに光を投げかけてくる満月の下、ルチャブルはどんどん羞恥心を煽られて、胸やうなじに溜まっていく淫猥な微熱に焦がれていく。既に会話もままならない。喘ぐことしかできなかった。
ルチャブルをその気にさせて感度を高めたと判断したのか、ゲッコウガはゆっくりと手を離し、うなじ舐めも中断してくれた。一連のことはあくまでも着火に過ぎず、炎はこれからもっと大きくなっていくに違いない。その証左に、ゲッコウガはルチャブルの内腿を撫でながら、脚を左右に開いていった。日常生活ではまずとることのない大きな開脚の姿勢に、瞬く間にルチャブルの顔は熱を持った。
脚は、閉じようにも閉じられない。がっちりとゲッコウガの手が固定している。彼の手は大きいうえによくひろがるので、掴まれてしまえば、そこから抜け出すことは容易ではないのだった。
いったい何をされるのだろうと緊張し、ほんの少しだけ期待して息を呑んでいると、先程まで執拗にうなじを
『――きゃぁっ!!?』
背を弓なりにして声高な悲鳴を上げてしまうほどの、強い
『…ここからがもっと気持ちいいんだぞ、ルチャブル。おまえの好きなところを全部甘やかしてやるからな』
身をよじる力すら奪われ、なされるがまま身体は弛緩しきっている。イったばかりで敏感になっているのに、舌で散々いじめられたのに、容赦なく、ゲッコウガの指がつぷんと入ってきて、ルチャブルの秘所でくちゅんくちゅんと抜き差しを始める。
『イって、ぁ、…イってるの!げっこぉがっ♡ ゆび、ッ…とめ、…あぁッ♡♡』
動きが緩慢だったのは最初のうちだけで、慣れてきた頃を見計らって激しさが増していき、ぬぢゅ、と大きな水音が伴うようになった。誰が聞いてもいやらしいことをしていると分かるけしからぬ音。足元からぴちょぴちょと聞こえてくるのは、たぶん、水溜まりができていて、そこに今なお雌蜜が滴っているからだ。唾液がたっぷりとまぶされた舌で責められ、今も指で掻き回され、愛液がとめどなく溢れてくるのだもの。
次第に、一本、二本と指が増やされ、穴を拡張していく。大事なところを蹂躙されているのに、犯されることを悦んでしまう。甘く疼くところだけを触られて、とんとんされて、快感をめいっぱいに積み上げられて――嘲笑うように、一気に崩されて。
『――――ッッ♡♡♡』
いや、とか。やだ、とか。言ってみたところで、自分の声はあまりにだらしなく蕩けきっていて、嫌がってなどいないことはあまりに明白で、何の説得力も持たない。
気持ちいいのが怖いの、と、訴えたが、『そうかそうか。頑張ろうな』と意地悪な励ましが返ってきただけだった。
お月さまに「まあ、なんてみっともないんでしょう」と顔をしかめられている気がして、恥ずかしくて、恥ずかしくて、気持ちがよくて、ルチャブルは今にも泣いてしまいそうだった。
『ね、…かお、…みながら、シよ…?』
ルチャブルのすぐ後ろで、ぐ、と言葉に詰まる雰囲気が察せられたが、ゲッコウガは『すまない』と端的な謝罪を入れるばかりだ。
『今のオレの顔は、とてもじゃないがおまえに見せられるものじゃない』
代わりに、こいつで勘弁してくれ。
そう告げられた後、ルチャブルの股の間に何かが挟み込まれる。快楽に酔うルチャブルの蜜壺に、遂に、太くてかたい肉棒が頬ずりをしてくる。瞬間、ルチャブルの「雌」が歓喜に沸いた。身体が発情して、いそいそと孕む支度をしている。
…嗚呼どうしよう…いま、こんなにえっちなもの、いれられたら…♡
『捩じ込んで、擦って、突いて、種付けして、孕ませて、…おまえが望むことは何だってしてやる。こんなにもいい月夜だ、派手に楽しもう』
そして、約束された悦楽が、至極無慈悲にもたらされる。
『 あぁんっ♡♡♡ 』
心待ちにしていたものが、みちみちとルチャブルのナカを分け入ってくる。理性がほぼ溶け落ちた今、ルチャブルには我慢するという発想がない。口元を手で押さえることもない。身体をいいように揺さぶられながら、まるで吠えるように嬌声を撒き散らす。
『満月の夜は、どうしようもなく、昂ぶる…な…ッ!』
ゲッコウガに腰を掴まれ、下から突き上げられる。日々の調教で完全に把握されている弱点を力強くこねまわされる。身をよじったところで、足が地面につかないこの体勢では踏ん張りもきかず、快感を逃がせず、自重でより深く繋がってゲッコウガの責めを受ける羽目になる。あとはもう、屈服する以外に残されていなかった。
『ぁっ、まって、…ダメっ、おく!…つかれたら、だめ、なの…♡』
『何を言う。こんなに濡れぞぼって受け入れる用意ができてるんだ、もっと胎いっぱいになりたいだろう?下の口は、とっくにオレの子種に味を占めているはずだ。ほら、…欲しがってくれ。オレのことだけ考えて、オレが与えるものだけ欲しがってくれ。――ルチャブル。オレはおまえに望まれたい』
ルチャブル、と、もう一度名を呼ばれて、甘く甘く乞われて、優しくお腹の上を撫でられて…そんなふうに求愛されたら、嬉々として従わずにはいられない。
だって、だって、愛する旦那様のためだもの。
『ほしい、…ほしぃっ、です…♡ ぁ♡ぁ♡…たくさん、…イ、かせ、て…ッ♡』
ねだると、返事の代わりに、ずんと重い衝撃が最奥を襲った。
『 あぁ"ぁあッ♡♡♡ 』
上書きされていく快楽の最大値。過剰に分泌されて泡立つ雌汁が、たくましく怒張した雄棒に突かれるたびに、周囲へと飛び散っていく。
『翻弄されないように抗う姿にも欲情するが、やはり、快楽に従順になって絶頂を繰り返す姿は別格だな…。もっと乱れてみせてくれ』
性の悦びに溺れる鷹を、蛙はどのような顔で眺めていたのだろう。
幾度となく艶やかな秘め事を共にしながら月日は流れ、結果、ルチャブルは完全に「後戻りできない心身」になっていて、ゲッコウガに『こんなにえっちにしたのはあなたなんだから最後まで責任取って!』と抗議したところ、彼は怯むことなく『元よりそういう約束だからな』と
そして季節は一巡し、再び春を迎え、桜の花が満開となる頃――…ルチャブルは薄青色の卵を一つ産み落としたのである。