①気楽な野良の弥次喜多道中
②酔いどれが食ったり、食われたり。
アケビにイチイ、ギンナン、クリ、ヤマブドウ――名を挙げだせばきりがないほどに豊かな山の幸が、枝もたわわに実っている。
天候に恵まれたおかげか例年に比べて実が大きくなり、数も量も潤沢というめでたさだ。山が鮮やかに色付くようになってから向こう、食糧集めにいそしむポケモンたちの賑やかな声があちらこちらで聞かれるようになって久しい。
ゲッコウガとルチャブルはこれまでに幾つかの山道を通り抜けてきたが、この時期は立ち寄ったいずれの森でも木の実開きだ収穫祭だと盛り上がりをみせていた。皆の心がほどけて鷹揚になっている場では、流浪の余所者が紛れ込んでも気にされないし、それどころか日持ちのする木の実を分けてもらえることが多いので、大して冬支度をしていない身でも食うに困らずありがたい限りだった。
『この森は、…変わった飾りつけをするんだな』
ルチャブルが見上げる先には、木の枝にくくられぶらさがる杉玉が一つ。飾りに使用された葉はとうに枯れ、全体に茶色く変色している。
「新酒」が出回る頃に真新しい緑色の杉玉が作られるのだが、その姿は刻々と変化する。「夏酒」が出荷される初夏には色褪せて薄緑になり、時を経て「
『つまり、通常は酒蔵の軒先に吊るすもの。森の中にあるのは確かに不自然でござるな』
『不自然じゃないよ。この森では酒造りが盛んだからね』
偶然その場を通りがかったホルビーが、軽快に口を挟んでくる。その長い耳で会話を拾ったらしく、親切にも答えを放ってくれた。
まだ、全体にあどけなさの残る穴掘り兎だ。『木の実で仕込むのか』というルチャブルからの問いに、『そうだよ!』と子どもらしく元気に応答している。
『ここは、他所よりツボツボがたくさん暮らしてる場所なんだ』
ホルビーは、にこにこしながら『彼らの木の実ジュースはすごくおいしいんだよ』と両頬をおさえて屈託ない。甘い味を思い出しているのか、嬉しそうに笑っている。
『それを更に発酵させて、木の実酒を醸造してるってわけ』
杜氏を担うポケモンたちは、酒が完成したら無料で大盤振る舞いすることを条件に、森の木の実を一部とはいえ独占できるというのだから豪気な話である。
ほう、と興味深そうにしたふたりの表情に素早く気付くホルビーは、この先で試飲会をやっているという情報を付け加えて、ぴょんと足早に跳ねていく。