目が覚めたら『コレは酷い』としか言えない状況だったって何?
寝る前のことはうっすらと覚えてる。
しがない中小企業に勤めてた私(女24歳独身)は、ここしばらく続いていた激務による疲れから体調を崩したあげくに職場で倒れ、近所の総合病院の診察室に担ぎ込まれたらしい。
40度を超えるメチャクチャな高熱と全身に走る激痛に耐えきれずに意識が薄れていったところまでは覚えている。
どの位の時間意識を失ってたのかは知らないが、ふと目が覚めた私の近くにいたのは優しい笑顔の看護婦でもなく、いつもしかめっ面の馴染みのドクターでもなく、見舞いに来てくれた会社の同僚達でもなく、就職してからろくに顔も見せてなかった家族でもなく、
『低いうなり声あげてる青い顔したセクハラ上司』でした。
え?なにそれ怖い!と思った人。それは普通の人の反応です。
私はいつの間にか着替えさせられていたペラペラの入院着の裾がめくりあがるのも気にせずに上司の顎を全力で蹴り飛ばすと、身の安全を確保するために病室を後にしようと扉を開けた。
扉を開けた私の目に映ったのは、いつもとは全く違う病院内の様子であった。
目に付く動くものといえば先ほど蹴り倒した糞上司と同じく、生気のない青い顔でうろうろとさまよい歩くだけのゾンビ化した人々だけであった。
彼らは私を見つけると一瞬反応を示して近寄ってくるのだが、すぐさま興味を失ったかのように意味もなくその辺をうろつき始め、以降全くといっていいほど何のリアクションも返してこなくなるのである。
とりあえず最低限の身の安全は確保したみたいなので、私は先ほどまで寝かされていた病室に戻ると今後の行動方針について考えを巡らせた。
1.とりあえず食糧の確保
2.安全な寝床の確保
3.寝ているうちに何が起きたのか確認
4.H県に住む家族の安否
この4つを中心にできる限り生き残る事が最優先と認識した私は、室内に残されていたスマホで情報収集を始めた。
結果わかったこと。
世界オワタ。
この一言で説明がついちゃった。
原因が何かわからないけど、世界各地でゾンビ大量発生。噛まれたら数時間以内に高熱を発して死ぬ。
手に負えないほど増殖しちゃったゾンビを核で焼き払おうとした頭の沸いた馬鹿が問答無用でICBMを発射。
お隣の大陸国家を含めた世界の大半が上手に焼けました。
日本にも大都市を中心に数発が落ち東京と家族の住む西日本は壊滅したらしい。私の住むA県はなぜか無傷。田舎だからね。
食料も周囲からかき集めて無駄遣いさえしなければ軽く数年は食っていける程度にはあるはず。
寝床もとりあえずはなんとでもなりそう。
残る家族は・・・西日本が更地って事でアキラメロン。でFA
さてこれからどうしようとなった。
仕事は生き残る事。
とは言え、なんだか分からないけどゾンビに襲われることはない。
周囲に生き残っている人も見当たらない。
食料も少し離れた所にあるモッコスバルー等で大量に確保できるはず。
電気も近所の太陽光発電所にでも行けば何とかなると思う。
とりあえず生きていられそう。
いろいろ動いてたら汗をかいたのでとりあえずシャワーを浴びることにした。
シャワーを浴びる前に、下着の替えを探すために院内を色々と探し回った末に売店にてなんとか身に付けれそうな地味な下着とタオルなどをゲット。婆くさいとか、地味だとか言う突っ込みは不許可。
入院患者用のシャワー室で汗を流してサッパリした所で身体に何か異変はないのか隅々までチェック。スタイルはそんなに悪くないと自負できる程度の体だけど、残念ながら見せる相手がいない私24歳毒女であった。
汗を流してスッキリしたところでお腹がすいてきたので、私は食べ物を得るためにこの病院を出ることにした。
移動の足として使うことにしたのはミニバイク。持ち主らしい女性はバイクの近くでソンビになってたので肩にぶら下げていたバッグを取って中を見せてもらったところ、予想通り鍵を見つけることができたのでありがたく使わせてもらうことにした。
簡易な院内服だけを身につけた私は、ミニバイクに跨がると近所のモッコスバルーに向けてミニバイクを走らせた。
急ぐ理由などないのでのんびりと走って数分。目的のモッコスバルーに到着した私はゾンビしかいない店内に入ると、すぐ食べることのできる缶詰のコーナーに足を踏み入れた。
正直お腹がすいているので、蓋を開けるとすぐに食べることのできるものを幾つかチョイス。デザートとして桃の缶詰もゲット。
割り箸をレジから持ってきて久しぶりの食事にありつきました。
自分でも驚くような量の食事を終えて満腹になった私は、暫くここに来なくてもいいように大量のインスタント食品と飲料水を鍵のついたまま放置されていた配送トラックに積みこんでいるうちに、まぁ、人間ですから食事をすると暫くしたら出るものがありまして・・・
ハイ。大きい方を催しました。
お漏らしして現在これしか持ってない院内服を汚物まみれってのも嫌なので、この手の食料品店によくあるお客様用のトイレに足を踏み入れると即座に後ろを向いてトイレを後にした。
なぜって?トイレ中に血糊と腐った肉片が飛び散ってたから。さすがにあの中じゃトイレタイムとはいかない。
仕方がないので近所の民家のトイレを借りることにした。
「ごめんくださーい」
誰もいないとは思うけど、念のために家人がいないか声をかけてから民家に入った私を待っていたのは、やっぱりゾンビとなっていたその家の住民たちだった。特に何をするわけでもなくその辺をうろつくだけの彼らを横目に、そろそろ決壊しそうな便意を解消すべく向かった先で見たものはドアが無くなっているトイレでした。
「えっと・・・いくらゾンビでも見られるのは嫌だなぁ。」
そうは言ってみたものの、大の大人がお漏らしってのもまずいよねと思った私は思い切って院内服を脱ぎ捨てると便座に腰を下ろした。
今まで出なかったせいかいつもよりもかなり長めの時間をかけて用を済ませた私だったが、排泄行為を見ても何も反応を示さないゾンビたちを見ているうちにふとした拍子で悪戯心がわき上がった。
何のことはない。どうせゾンビしかいないって事は全裸でここを出ても問題ないんじゃないか?と
馬鹿馬鹿しいとは思うが、いくら見せつけても悲しくなるくらい反応してくれないのだ。
服があろうが無かろうか変わらないのだ。酷い言い方をすると動き回る案山子相手に恥ずかしがってもしょうがないって所である。
決心してしまえば後は実行あるのみ。トイレの後始末を済ませ、ここまで着てきた着衣類を脱ぎ捨て文字通りの全裸になった私は、今まで味わったことのない開放感を感じながら食料品を積んだ配送トラックに向けて歩き出した。
実は最初は裸足で歩こうとしたんだけど、足の裏を怪我しちゃ駄目だと言うことを思い出して慌ててサンダルを履いたのは仕方がないことであろう。
そんなこんなで配送トラックまで戻るのに少々余計な時間は使ったものの、元から予定など無かったので問題なしと言うことで、私は全裸にサンダルを履いただけの姿で配送トラックに乗り込むとこれからの生活拠点としていくつかリストアップしておいた案の一つ、近くにある太陽光発電所に向けて走り出した。
あちこちぶつけて所々凹んでしまった配送トラックが目的地の太陽光発電所に着いたのはそれからすぐの事であった。
誰も文句を言わないことは確実なので、入り口の金網フェンスをトラックで体当たりして通り抜けると敷地内に唯一建ててある小さな事務所前にトラックを止めた。
「ごめんくださーい。」
誰もいないとは思うが一応声をかけてからドアを開ける。もちろん中にいたのは管理人だったらしいゾンビ一体だけ。誰か生き残ってたらいいなあと思っていたけどやっぱり駄目だった。
いくら動いているとは言え直に触りたくないので掃除道具箱においてあったモップを上手につかって、私は建物内からゾンビを追い出すことに成功した。
建物内からゾンビを追い出すと食料の運び込み。何度も往復して配送トラック内の食料を事務所内の一室に運び込んだ。
「ふえぇぇ疲れたあぁぁぁ」
とりあえず生活拠点が確保できたので、私は少し休むことにした。当直室に行った私は敷かれていた布団の上に転がるとゆっくりと目を閉じた。