<side:帆奈>
帆奈「ふふ~ん♪」
瀬奈「あれ、帆奈ちゃんなんだか嬉しそう。何かあったの?」
帆奈「え?あぁ、この前シャレで友達マッチングアプリっていうの使ってみてさ、マッチングしたからとりあえず待ち合わせ場所まで行ったんだけど、なんと相手があの常盤ななかでさ~!」
瀬奈「え? …え?」
帆奈「あいつマジ融通利かないの!あたしが公園行きたいっつったら『今日は予約を取ってありますので』って喫茶店に連れてかれてさ~」
瀬奈「…ふーん、ふーん」
帆奈「つかあいつドリンクバーのドリンク混ぜて飲んでたんだよ!?ありえないっしょ!笑える!」
瀬奈「ふーん、ふーん、ふーん…」
帆奈「飲んでみてってせがまれて仕方なく飲んだらさ~、意外に旨かったんだよね~!あっは!あいつマジ面白いわ~!」
瀬奈「…帆奈ちゃん、常盤ななかの話はもういいよ」
帆奈「え?」
瀬奈「あいつは私たちにとって邪魔な存在なんだよ?だからそんなやつの話はもういいよ」
帆奈「…そっか、そうだよね、ごめんね瀬奈」
瀬奈「帆奈ちゃん…(やっぱり帆奈ちゃんは優しい…私のことを一番に考えてくれてる…)」
帆奈「明後日にまたあいつと会う約束してるんだけど、それっきりにするよ」
瀬奈(二度目のデートの約束までしてたの…!?)
<side:ななか>
ななか「皆さんに今日集まってもらったのは他でもありません。私たちの宿敵、更紗帆奈についてです」
美雨「更紗帆奈…またなにかあたのカ?」
ななか「実は先日、社会勉強のために友達マッチングアプリというものに登録してみたのですが、相手のお方とマッチングして待ち合わせ場所に赴いたところ…その相手は更紗帆奈だったのです」
美雨「…ン?」
かこ「友達マッチング…アプリ…?」
あきら「ちょっと待って…ツッコミどころが多すぎてよくわからないんだけど…」
ななか「私も困惑しました。今思えば私が友達マッチングアプリに登録しようとしたのも、私の『敵を見極める力』が無意識に発動したからなのかもしれません…」
あきら「そ、そんな便利な機能だったんだ…」
ななか「ここで引き下がるのも癪なので、とりあえず予約しておいた喫茶店へ赴いたのですが…あの方は私の一挙手一投足に逐一難癖を付けてバカにしてくるんです!やれ話し方が固いだのやれ予定かっちり決めすぎだの…私も何度手が出るかと思ったことか…」
かこ「へ、へえ~…」
ななか「しかしドリンクバーのブレンドにまで難癖を付けられた時、ついに私も堪忍袋の緒が切れました…」
あきら「ななか、ドリンクバー好きだもんね…」
ななか「彼女に『馬鹿にする前に実際に飲んでみればいいではないですか』と半ば無理やり私のオリジナルブレンドを飲ませてみたところ……意外にも彼女は『美味しい』と素直に言ってくれたんです」
美雨「あれ美味しかたのカ…」
ななか「それからは話も弾み、喫茶店をあとにしてからは彼女に誘われるままカラオケに足を運び、ひとしきり歌ったあと解散しました」
あきら「まさかの二次会!?」
美雨「ワリと楽しんでるネ…」
かこ「あはは…今日私たちを集めたのはその話をするためですか?」
ななか「いえ、明後日にまた逢う約束をしましたので、彼女と因縁のある皆さんにも情報共有を、と思いまして」
あきら「次の約束まで!?」
美雨「…私たちがなぜ呼ばれたのかだいたいわかた気がするネ…」
かこ「はい…これは情報共有というより…」
あきら「ノロケだね…」
――そして2回目のデート
帆奈「よっすー」
ななか「どうも」
帆奈「今日はどうする?」
ななか「以前あなたに『予定をかっちり決めすぎ』だの散々文句を言われたので今日はノープランです」フン
帆奈「あっは!まだあの時のこと怒ってたんだ!」
ななか「当然です。どうやらあなたの私を怒らせる才能は本物のようですので」
帆奈「あっはは!やっぱあんた面白いわ!そんじゃ、あたしの行きたいとこ行っていい?」
ななか「ドッグラン…ですか」
帆奈「あたし結構イヌ好きなんだよねー!こうやって眺めてるだけでも楽しいっつーか。ほらおいでー」ワシャワシャ
ななか(憎き仇とはいえ、こうして見るとどこにでもいる普通の女の子…といった感じですね)
ドッグランの客「ヒソヒソ…ヒソヒソ…」
ななか「…? なにやら他の方々がこちらを見ているようですが…」
帆奈「あっ、やば……ねえ、走る準備しといて」
ななか「は…?何を…」
職員「あのーすみません、お客様のワンちゃんは…」
帆奈「よしっ逃げろ!」
ななか「え、ちょ…きゃっ!」
帆奈「あっははは!あっぶなー!あそこイヌ飼ってる人以外立ち入り禁止なんだよねー!」
ななか「はぁ…はぁ…あなたね…」
帆奈「はあっ…疲れた…!あっ、自販機!ジュース買おうぜ!」
ゴクゴク…
ななか「…あなた、いつもあんな遊びをしているのですか?」
帆奈「まあねー」
ななか「分かっていたことですが、刹那的というかなんというか……せっかく拾った命、今度は大切に使おうなどとは思わないのですか?」
帆奈「なにー、お説教?いいんだよあたしはこれで。多少危険でも面白おかしく生きてったほうが楽しいじゃん」
ななか「それで他人が迷惑を被ったとしても…ですか」
帆奈「…ま、迷惑掛けられたほうは溜まったもんじゃないだろうけどね」
ななか「…私は自分の過去に決着を付けました。今更誰が何を思おうが、それは詮無きことです」
帆奈「…そ。 やっぱあんた面白いね、あっは」
ななか「あなたのそのムカつく笑い声にもだいぶ慣れてきましたよ」
帆奈「あー楽しかった!」
ななか「まあ、間違いなく普段できない体験ではありましたね」
帆奈「んじゃ、あたしはこれでっ」
ななか「あ、待ってください!…その、連絡先交換、しませんか?」
帆奈「え?」
ななか「ええと…思えば私たちは顔見知り、いつまでもマッチングアプリを通じての連絡というのもおかしな話でしょう?こちらのほうが何かと便利ですし…」
帆奈「…あー、…それはいいわ」
ななか「え、ですが…」
帆奈「てゆーかマッチングアプリももう消すし。あんたとはもうこれっきり。」
ななか「…なぜですか?」
帆奈「あんた面白いんだけどねー。あたしもあたしで大事なものがあるっつーか、それをないがしろにしてまであんたと仲良しするのもね」
ななか「…瀬奈みことのことですか」
帆奈「…さっすが更紗帆奈キラー、分かってんじゃん」
ななか「私との交友関係と彼女との交友関係、両立させることはできませんか?」
帆奈「…あいつはさ、今まですっごい辛い思いしてきたんだよ。それはあたしも同じで。
だからかなー、あたしたちは『特別』なんだよ。
あいつにはずっと笑っててほしいんだよねー。
だから、あいつが悲しむようなことはできないかな」
ななか「…本当にそれでいいのですか」
帆奈「…いいよー」
ななか「私は、もっとあなたのことを知りたいと思いました」
帆奈「……」
ななか「最初は仇だと思ってずっと追い続けてきました…ですが復讐が終わった今、ふと考えることがあるんです。本当にこの終わり方で良かったのか、と…」
帆奈「……」
ななか「あなたとまた関わって、その答えを知りたいんです」
帆奈「……なんでそんなにあたしにこだわるわけ?あんたには仲間が沢山いるじゃん」
ななか「……あなたもまた、私にとって『特別』だから…なのかもしれません」
帆奈「…!」
帆奈「……はあ、もう遅いし、いよいよ帰らなきゃかなー」
ななか「…待ってください!待って…更紗帆奈ッ!」
帆奈「おらっ!」ヒュッ
ななか「…いたっ!なにを投げて……この紙は…」
帆奈「いい加減フルネームって呼びづらくない?」
ななか「これ…連絡先…!」
帆奈「そんなに寂しいならさ、そこに泣き言でも送っときなよ?気が向いたら返信返ってきたりしてー!」
ななか「…渡すなら普通に渡せばいいじゃないですか」
帆奈「あっは!じゃあねー、『ななか』!」タッ
ななか「…またいつか、『帆奈』さん」
瀬奈「…帆奈ちゃん、嘘だよね?」
瀬奈「帆奈ちゃんは常盤ななかに騙されてるだけなんだよ?」
瀬奈「今度は私が帆奈ちゃんを守ってあげる…」
十七夜「瀬奈くん…」
瀬奈「…! あなたは、和泉十七夜…」
十七夜「あれは彼女自身の意思だ。どうか認めてあげてはくれないだろうか。」
瀬奈「…どうして!?どうしてみんな邪魔するの!?」
十七夜「自分は、東を仕切る者でありながら、君たちに何もしてやることができなかった…もう同じ轍は踏みたくない」
瀬奈「そんなの望んでない!私には帆奈ちゃんさえいてくれればそれでいい!」
十七夜「この世界にいるのは君と更紗くんだけじゃない」
瀬奈「…!そんなの…!」
十七夜「悪い人間もいれば、同じ数だけ良い人間もいる。君たちの傷に共感し、力になってくれる者も必ずいる。それは君自身も実感しているはずだ」
瀬奈「そんな…そんなの嘘…帆奈ちゃんが…帆奈ちゃんだけが、私の…」
十七夜「どうか君たちの世界を、外に拡げてはくれないだろうか」
瀬奈「…… 私たちの、世界を…?」
十七夜「いま、神浜は東西の垣根を越えて一つになろうとしている。君たちにその『環』に入れとまでは言わない…ただ、少しだけ外に目を向けてくれないだろうか?そこは君が考えているよりも、ずっと優しい世界だと思う」
瀬奈「……」
十七夜「自分でよければいつでも力になる。考えておいてくれ」
瀬奈「……」
女が去った後も、少女はずっとそこに佇んでいた。
かつて袋小路の中にいた少女
彼女が選ぶ未来は――
おわり