あかり「蛍!陽斗お兄さんがミラランSランク維持できたって!」
蛍「よかったねぇ~…」
あかり「闇みたが猛威を奮った今大会でSを維持できるなんて並大抵のことじゃないわ。やっぱり陽斗お兄さんってすごい…」
蛍「そだねぇ…」
あかり「これからお兄さんのとこにお祝いにいくけど、蛍も来る?」
蛍「ん~、めんどくさいしいいや~…」
あかり「陽斗お兄さん、Sランク維持おめでとー!お祝いにクッキー焼いてきたの!」
陽斗「ありがとう、あかり。せっかくだから上がってってよ。一緒に食べよう?」
あかり「うんっ!」
あかり「今回のミララン、環境が様変わりして厳しそうだったのに、本当にすごい…一人で対策立てるの大変だったでしょ?」
陽斗「えっ…うーん、まあ手伝ってくれた人がいたからね。今お茶淹れてくるからちょっと待っててね」ガチャ
あかり(手伝ってくれた人…友達かしら?私ももっとミララン上手だったらお兄さんに教えてあげられたのに……あれ?)
あかり(何かしら、このノート……『ミララン対策書』…? すごい…過去の傾向と新規キャラの注意点が挿し絵も交えて分かりやすく書いてある……でも、この字どこかで…あっ)
あかり「ちょっと待って…この字…蛍の字よね…?」
あかり(蛍、こんな面倒なこと絶対やりたがらないのに…それにさっきも全然興味なさそうな態度だったのに…)
あかり「なんで…?」
あかり「お兄さん…これ…」
陽斗「あっ…うん…」
あかり「蛍と、勉強してたの…?」
陽斗「うん…僕がミラランで困ってるって言ったら、由良先輩が対策法教えてくれるって言ってくれて…」
あかり「…お兄さん、蛍のこと、どう思ってる…?」
陽斗「…! どうって…」
あかり「蛍は、普通ならこんな面倒なことしないと思う…ましてや男の子になんて…」
陽斗「……由良先輩は、たぶんなんとも思ってないよ…今回は、僕があかりのお兄ちゃんだから手伝ってくれたんだよ」
あかり(蛍は、そんなことでここまでしないわよ…)
あかり「お兄さんの気持ちは…?」
陽斗「……」
あかり「…好きなのね…?」
陽斗「……うん」
あかり「あの人はどうするの…?お兄さんが憧れてるあの人は、もう好きじゃなくなったの?」
陽斗「…それは…」
あかり「好きだったんでしょ?だからお見合いも断ったのに…!なのにもう別の子…!?」
陽斗「……」
あかり「信じられない!蛍は私の友達なのに!」
陽斗「……ごめんね。僕、最低だよね…」
あかり「……っ」ポロッ…
陽斗「ずっとあの人が好きだった、それは本当だよ……でも、由良先輩と話すようになってね…一緒にいるうちに…なんか、いいなって思って…」
あかり「…っ……」
陽斗「勉強教えてもらって、一緒にいる時間が増えて…どんどん好きになって……えっとね…気付いたら…頭の中…いっぱいいっぱいになって…」
あかり「……ふっ…うぅ…っ」
陽斗「こんなお兄ちゃんで、本当にごめんね…あかり、ガッカリしちゃったよね…」
あかり(違う、お兄さんは悪くない…蛍もきっと、私の気持ちを知ってたから黙ってただけ…)
そう思っても涙は止まらなかった。
悲しかった…悔しかった…
でも一番辛かったのは……私がこの歪な三角関係を、端から見ていることしかできないことだった……
公園のブランコに座り、緩く身体をふらつかせる。
ブランコの揺れが、私の心のモヤモヤを散らしてくれるような気がした。
蛍「あかり」
あかり「蛍…」
蛍が隣のブランコに腰掛ける。
蛍「懐かしいなぁ~…小さい頃はよくここで寝てたっけ…」
あかり「どうやったらこんなとこで寝れるのよ…」
ブランコから身体をだらんとぶら下げて豪快に眠る蛍を想像して、不覚にも少しだけ頬が緩んでしまった。
あかり「…いつから好きだったの?」
蛍「ブランコのこと…じゃないよねぇ…」
蛍「最初はなんとも思ってなかったよ。でもだんだんあかりが二階堂くんを好きになる理由が分かってきて、そこから先は速かったかなぁ」
あかり「カッコいいでしょ、陽斗お兄さん」
蛍「うん、カッコいい」
濁さず口にする蛍。
蛍は真正面から私に向き合ってくれてる。
そう感じて、なぜだか気持ちがほぐれていく。
あかり「結婚してもちゃんと家事やりなさいよ?」
蛍「気が早くなぁい?」
あかり「そんなことないわよ。好き同士ならいつかは結婚するんでしょ?」
あかり「お兄さん、優しいけど時々優柔不断なところがあるから、蛍が引っ張ってあげてね」
蛍「……」
あかり「お兄さんのこと、よろしくね」
蛍「…あかりは、それでいいの?」
あかり「……いいわよ」
蛍「私と二階堂くんが結婚して、それでいいの?」
あかり「だって、仕方ないでしょ…二人はもう両想いなんだから…」
蛍「後悔しない?」
あかり「……」
蛍「それがあかりの本当の気持ち?」
あかり「そんなわけ、ないでしょ…!」
あかり「だって、ずっと好きだったんだもん!ちっちゃい時からずっと!いつかお兄さんに振り向いてもらいたいって思ってた!ずっと一緒にいたいって思ってた!なのに…こんな、私だけ蚊帳の外なんていや!ホントは私のことを!本当の私を!お兄さんに見てもらいたい!私がお兄さんと結婚したいっ!!」
蛍「じゃあ、どうする?」
あかり「……私がっ!絶対にお兄さんを振り向かせてみせる!たとえ何年かかっても、蛍からお兄さんを奪い返してみせる!それまで絶対に諦めないから!」
蛍「…じゃあ、それまで待ってるね」
あかり「え…?」
蛍「あかりが大人になって、同じ土俵に立てるようになるまで、結婚しないであげる」
あかり「蛍…」
蛍「だから、あかりも自分の気持ちを諦めないでね」
あかり「…なによそれ…、敵に塩を送るってこういうこと…?」
蛍「ん~…私はあかりと二階堂くん、両方に幸せになってほしいからねぇ~…」
荒唐無稽な蛍の言動に呆気にとられる。
あかり「……蛍ってたまにとんでもないこと考えるわよね…いや、いつもかも…ふふっ…」
蛍「自覚はしてるよぉ…ふふっ」
なぜだか笑いが込み上げてくる。
つられて蛍も笑いだす。
あかり「ふふふっ…はあっ…… いいわ、当分は蛍にお兄さんを『貸して』あげる!でも二人がイチャイチャしようとしてたら邪魔するし、隙があればいつでもお兄さんを奪い返すから、覚悟してなさいよね!」
蛍「望むところだよ~…」
あかり「あっ、私には無理だと思ってるでしょ!せいぜいそうやって油断してなさいよね!」
蛍「油断はしてないかなぁ…だってぇ…」
蛍(元々二階堂くんが好きだったのは大人のあかりの内面、あかりそのものの部分なんだから…)
陽斗「あかり!」
お兄さんが私達のもとへ駆け寄ってくる。
あの時泣いて家を出た私を探し回っていたのか、息を切らしている。
あかり「ごめんなさい、急に出て行っちゃって」
陽斗「いや、謝るのは僕のほうだよ…!本当にごめ…」
あかり「もういいの、なんかもうスッキリしちゃった!」
お兄さんが息を整えながら、蛍のほうに目をやる。
蛍はふわっと微笑み、それを見たお兄さんは安心したように息を吐く。
あかり「はぁ、早速イチャイチャしてる…」
陽斗「いや、別にこれは…」
蛍「バレちゃったねぇ~…」
陽斗「由良先輩まで…」
恋敵とのイチャイチャを見せつけられて頬を膨らませる私。
でも不思議とさっきまでのモヤモヤは現れない。
あかり「さっ、これからお兄さんの家で祝勝会よ!」
陽斗「えっ…何の…?」
何が何だかわからないというお兄さんを前に、私と蛍は笑いあう。
蛍「あ~…二階堂くん、あかりが心配すぎて忘れてるぅ~…」
あかり「もう、私が何しに来たのか忘れたの?」
蛍と顔を見合わせ、これから戦うべきライバルを改めて認識する。
そして目の前のSランクの男に向き直り、声を上げる。
それはまるで、宣戦布告のように。
あかり・蛍「「ミラランの祝勝会!!」」
おわり