薄暗い牢の最奥部、そこに彼はいた。
牢の前には、彼の逃走を阻止するための見張りが一人。
「今日はもう帰っていいわ」
見張りに声を掛けると、怪訝そうに返答される。
「しかし刑の執行は明日、罪人が逃亡するやもしれませんので…」
「戦神子の私が見張りをしているから大丈夫よ。それに…彼とは積もる話もあるしね」
見張りは少し考えたあと「はっ」と声を上げて牢から出ていった。
門番を見届けて、格子の隙間から中を覗くと、精悍な顔つきの大男が口を真一文字に結んでじっと正座をしていた。
「ここは少し寒いわね」
「露…」
正座をしていた彼が、こちらに顔を向ける。
「今さらここへ何の用だ」
「…追放される前に、もう一度あなたに逢っておきたかったの」
明日の朝、玄雲はこの地を追放される。
彼と二人きりで話ができるのは今夜だけだ。
「あれから考えたけど、やっぱり私はあなたがやったことは絶対に許せない……でも、小さい頃からあなたと過ごした日々に、その想い出には嘘はなかった…あなたもそうなんでしょう?」
玄雲の顔が微かに歪む。
「…お前には、私の野望のために迷惑を掛けたな。すまなかった」
頭を下げる玄雲。
小さい頃から私によくしてくれた彼のそんな姿を見ると、どうにもならない気持ちが沸き上がってくる。
「過去の因縁を捨てて、真っ当に生きる道はなかったの…?」
「泰党の打倒は累代の使命…私も幼き頃からそのように生きてきた…それを捨てるには、私は歳を取りすぎたのかもしれん」
「……っ」
泰党と水徳寺の因縁。異なる二つの書状。
今となっては何が正しくて、何が間違っているなんて、私にはわからない。
ただその因縁に多くの人が翻弄され、大切な人が人の道を踏み外した…そんな状況がどうしようもなく哀しかった。
「……お願いがあるの」
錠を開き、牢の中に入る。
後ろ手に扉を閉め、玄雲の前に立つ。
「…! 露、何を…」
玄雲の目の前でゆっくりと衣服を脱ぎ去っていく。
最後の一枚をぱさり、と落とすと、私の一矢まとわぬ姿が月明かりの下に露わになった。
自分の顔に灼熱が灯るのを感じる。
「…抱いて」
「…このような罪にまみれた身、お前が触れるべきものではないぞ」
「それでも、最後にあなたとの想い出がほしい…私の初恋、密かに抱き続けてきたこの想いを、遂げさせてほしいの…」
玄雲の手を取り、柔肌に触れさせる。
硬い手のひらを通じて、彼がこれまで辿ってきた荒れた道筋が伝わってくるようだった。
「お願い…」
胡座をかいた玄雲の足の上に跨がり、対面の姿勢で抱き合う。
柔らかな背中を、ごつごつとした硬い手のひらがゆっくりと滑る。
外気で冷えた身体の表面が彼の熱を帯び、その心地よさに身を震わせる。
「寒くはないか?」
「んっ…大丈夫…」
首筋に玄雲が吸い付き、舌を這わせる。
震えながら肩にすがりつく私を玄雲は片手で支え、もう片方の手で私の小ぶりな乳房をすっぽりと包み込む。
手のひら全体で丹念に捏ねられると、乳頭がぷくっと膨れ、その部分をこりこりと緩く攻める玄雲に思わず声が漏れる。
「ふっ…ぁ…」
されてばかりでは悪いと思い、私も慣れない手付きで玄雲の屈強な身体を撫で、分厚い胸板に唇を落とす。
(たしかこういう時は…)
私も武家の娘。いざというときのために、一通りの知識は学んでいる。
手を玄雲の下半身へと移動し、彼のそれを見付けると、おずおずと撫でる。
「っく…」
玄雲は小さく声を漏らすと、彼もまた大きな手を滑らせるように私の下腹部へ持っていき、秘部の割れ目を指でなぞる。
私の蜜で充分に濡れていることを確認し、指をぐりぐりと膣内へ沈ませる。
わざと音を響かせるようにぴちゃぴちゃと膣内を蹂躙され、気恥ずかしさと興奮で一層身体が熱くなる。
互いの秘所を弄りあう。
ふと顔を上げると、目の前には微かに上気した玄雲の顔が。
その顔つきはより精悍さを増し、熱を帯びた吐息が私の顔をくすぐる。
堪らなくなって玄雲に口付ける。
「…む……」
玄雲の唇はかさついていて、しかし弾力がある。
互いの唇を押し付けて感触を確かめあうこの行為に、私はえもいわれぬ快感を感じていた。
(口吸いっていうのかしら…なんだか、気持ちいい…)
しばらくそうしていると、不意に私の唇を割ってぬるっとしたものが入ってきた。
「…んっ…む…」
咄嗟に身を引こうにも、玄雲に頭をがっしり掴まれて動けない。
逃げ場がない状況で玄雲の舌が私のそれを絡めとる。
同時に下腹部の秘部をも攻め立てられ、上と下の快感で思考が阻害される。
「ふっ、ん…んぅ…っふ…」
長い口吸いが終わり解放されると、私は息を切らしながら玄雲の肩に頭を預ける。
「ふっ、露姫様にはまだ早うございましたかな?」
「はぁっ…はぁ…… もうっ…!」
玄雲に揶揄され思わず頬が膨らんだ。
囚人用の簡易な寝床に寝かされたあと、玄雲が己のそそり立ったそれを露わにする。
改めて目にするそれは強大な存在感を放っていて、玄雲という男の鍛え上げられた身体に相応しい代物だと思えた。
「挿れるが、よいな?」
「…ええ…」
玄雲のそれが私の秘部をズブズブと拡げていく。
「いっ…!」
「深く息を吐き、力を抜け…」
言う通りにして耐えしのぐ。
「玄雲…、手…握って…」
玄雲の手が私を包み込むと、心なしか痛みがましになっていく気がした。
やがて私の秘部が玄雲のそれを根元まで咥えこみ、結合部を伝って血が滴る。
「…まさか、根元まで入るとは」
「…え…?これって珍しいことなの…?」
「露の背丈で私のものをすべて咥えこむのは難儀だと思っていたが…これも戦神子の成せる技か…」
玄雲がなにやらぶつぶつと言っている間に、破瓜の痛みが引いていくのを感じる。
最初の床入りは難儀なものだと女中の一人が言っていたのを思い出す。
確かに、これは戦神子の頑丈な身体のおかげなのかも…
「動けるか?」
「ええ…痛みも引いてきたわ…」
「そうか、相分かった」
玄雲が腰を動かす。
最初はゆるりと、それから徐々に勢いを増して。
水の弾ける音に私の快楽にまみれた矯声が相まって牢に響く。
その声に玄雲も刺激を受けたのか、下腹部に収まったそれは更に堅さと大きさを増し、私の身体の内をかき混ぜる。
一心不乱にまぐわう私達。それを止める者は、誰もいない。
「露、私もそろそろ限界だ。離れるぞ」
「…! いやっ…」
玄雲を逃がすまいと彼の腰に両脚を絡める。
「…! 露っ!」
「んっ、あっ…」
及び腰の玄雲に代わり、今度は自分から腰を振る。
彼の丹田に集まる快楽を止めないように。
不意に、だが意を決したように、玄雲が囁く。
「……孕むか?」
その言葉に、私の身体全体がぎゅうっと締まるのを感じる。
「…うん…!うんっ…! ん…あぁっ…!」
より勢いを増した玄雲の攻め。
やがて、遂に玄雲の快楽の塊が私の内に放たれた。
私はそれを受け入れる。一滴残さず、すべて。
玄雲を固く抱き締め、内なる快楽が自分を侵食していくのをその身で感じながら、私の意識は途切れた。
「身体はどうだ?」
「うん…平気」
玄雲に身体を預けながら応える。
「そのような無防備な姿で……私が逃げるとは思わなかったのか?」
「ここで逃げるほどあなたは往生際の悪い人じゃないでしょう? それに、玄雲は昔から私に甘いところがあったしね」
「むぅ…」
玄雲の困ったような顔を見ているのは、なんだか愉快だ。
それだけに、これから彼に待つ運命を案じると気が重くなる。
頭では飲み込んでいても、こうなる以外に道はなかったのかと夢想してしまう。
もちろん、いくら探しても他の道なんてない。
だから、せめて今だけは…
「…ねえ、幸若舞の話、聴かせて」
「幸若舞の…?」
「うん、私の大好きな幸若舞の話、昔みたいに玄雲から聴きたいな」
「…ふっ、もう子どもじゃないのではなかったか?」
「今日は子どもでいたいの!今日だけは、ね」
これで最後だから…という言葉はあえて口にしない。
「そうだな…幸い、明朝まで時間はある。余さず聴かせても充分すぎるほどにな」
「やった!」
下腹部を擦りながら、玄雲の話に耳を傾ける。
彼の顔を、声を、想い出一つ一つを、自分の内にしっかりと刻み込むように――
おわり