帰りの電車で揺られてると急に声が響いた。
『パパ! 聞こえますか!?』
「おお、ユイか? ていうことは電波入ったんだな」
『は、はい。そうなんですけど……あの、逃げ!』
「ど、どうしたユイ!?」
悲痛な声を最後に通信が途絶える。
「ユイちゃんになにかあったんですか!?」
「わ、分からない。ここではなにも調べられないからとりあえず家のナーヴギアから……」
ブーッブーッ
不意に、スマホのバイブが作動する。
「あ、あすな……?」
画面に表示された名前を見て不吉な予感がする。
いや、もしかしたらユイの事情を知っているのかもしれない。
「も、もしもし……?」
「あ~キリトくんやっとでた~。昨日ずっと電話鳴らしてたんだよ?」
「あ、ああ。ごめんな。旅館が電波の入りが悪くてだな」
「気にしなくていいよ~。ユイちゃんから事情は聞いてるから~」
「アスナ? どうしたんだ?」
えらく間延びするいつもとちがうしゃべり方に違和感を覚える。
「なにもないよー? おかしなキリトくん。うふふふふ」
「そ、そうか。で、ユイのことなんだけどなにか知らないか? さっきこっちに来たと思ったらまたいなくなってさ」
「ああ、ユイちゃんならちょっと大人しくしてもらってるだけだから大丈夫だよ」
「お、おとなしく?」
隣にいるシリカと目を合わせる。これは……!
「ユイちゃんが昨日、電波が途切れる前に録音モードにしてくれたの。それをさっき送ってくれてね。そしたらおかしなのが聞こえてくるんだぁ。なんだかとてもエッチな音が聞こえてくるんだぁ。キリトくんこそ、なにか知らないかなぁ?」
スマホを持つ手がガタガタと震える。
「シリカちゃあん。そこにいるよねえ」
「はひぃ!?」
やばい、どうしよう。怖い!
「いま電車だよね……? 二人にはちょ──っと聞きたい事があるから……逃げんなよ?」
ブツリ。と音を立てて通話は終了する。
「し、シリカ……」
せめて、この子だけでも逃がしてやることはできないかっ!
「キリトさん。大丈夫です」
昨夜のように優しく俺の頬へと手を添えるシリカ。
「だ、大丈夫なもんかっ。あのアスナの声を聞いただろう? なんとしてでも君だけは助けて、みせる!」
「いいんです。だって……」
わがままをいう子どもを諭すようにシリカは優しく言葉を絞り出す。
「死ぬ時は一緒ですから」
ゲームオーバー宣告だった。
そのころ、ようやく地元の駅へと到着する。
俺とシリカはこれから突撃を仕掛ける兵隊のごとく、一歩一歩しっかり踏みしめて歩いた。
その後、キリトとシリカがアスナを鎮めることに成功したかは定かではない。
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