※この作品はR-18です。

俺の彼女を寝取ってくれ   作:ヤングコーン

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色々あったが俺達は元気にやってる。
…こんな自分が幸せになっていいのか分からなくて怖くなる事がある。

まあ、その時が来たら勝手に罪滅ぼしでもするつもりだ。
今は今の幸せを全力で享受したいと思う。


後日談 後編

俺達はあの後、自転車にキーロックをかけるとタクシーを呼んだ。電話で服がずぶぬれだと伝えたが、問題なく乗せてくれた。今は俺の家にいて、シャワーを浴びて着替えた。両親は結婚記念日で旅行に行ってて家にいない。

 

服だけは脱いで飛び込んでた俺と違って服まで濡れてた菊子からシャワーを浴びせ、その間に…勝手に持ち出して申し訳なかったが母の衣服を借りて持って行った。

 

それから俺もシャワーを浴びて俺の部屋に向かった。お互いにベッドに座って項垂れる。

 

「あー…叔父さんを呼ぶよ」

 

「嫌」

 

俺は頭を掻いた。

 

「じゃあ…家に送っていくよ」

 

「嫌」

 

車はある。買い物に行く時のために置いて行ってくれたから家にある。

両親の帰りは駅まで迎えに行かなきゃいけないが。

 

それにしても、叔父さんに迎えに来てもらうのも嫌。家に帰るのも嫌って…。

 

「じゃあどうして欲しいんだよ…」

 

菊子は泣き出した。

 

「おい、泣くなって。…俺だって泣きたい。お前がどうして欲しいのか、ちっともわからん」

 

怒ったり、笑ったり泣いたり。まるで謎を詰めた生きる箱だ。

 

寄り添うにしたって、もう恋人じゃない。涙を拭いてあげる事もできない。抱きしめる事も出来ない。どうしたらいいんだ。どうして欲しいんだ。

 

「自身の好意が本物であるのなら、それに背く事はない。恋人と言う関係に甘んじている片割れから交際の権利をはく奪すれば良い」

 

菊子がつぶやいた。

 

「なんだって?」

 

「好きな人が付き合ってて、それでもなお諦められない時はどうしたらいいって君に聞いた時に言った言葉だよ」

 

ああ…そういえばそんな事言った気がする。でもそれは、あくまで菊子が好きな人物が俺以外の誰かで失恋してもらおうと思って言った言葉だった。今更それが何なのだろう。

 

菊子は俺のズボンをぎゅっと握った。

 

「太郎なら…。私を寝取り返してくれるって信じてた!!私の事を本当に愛してくれてるなら、叔父さんから私を奪い返してくれるって信じてたんだよ!!!」

 

「はあ!?…そんな事言ったってお前…」

 

菊子はこれまでの事を自白した。叔父さんと栗拾いに出かけてからの作戦の事。俺が菊子を愛してるはずだから、最後は寝取り返してくれると信じてプレイじゃなく本当に寝取ってもらう事とか。

 

俺が旧道の屋根付きベンチに座ってた事とか、独り言を聞いてた事とか。

 

こんな事聞かされて、俺はどうリアクションしていいかまるで分からない。

 

「ひっく…たろぉは…あたしの事が嫌いなの…?」

 

俺は菊子を押し倒してキスした。足を絡ませて来る。何度も何度も口付けする。

 

「…嫌いな訳ないだろ。俺がどんなに好きかも知らないで」

 

「だったら…」

 

「仕方がなかったんだ!俺は不細工で、金もないし人生目標と言えば恋人を他人に寝取られる事!お前との行為だって満足させられない!!叔父さんは違う。お前を幸せにしてやれる。年は取ってるがイケメンで金持ちで、テクニシャンだ。俺なんかと付き合うよりずっといい。それがお前のためなんだ」

 

俺みたいなロクデナシの甲斐性なしに、どうして俺を好きでいてくれと頼むことができる?どうして愛してくれと頼める??

 

確かに…もう恋人を誰かに寝取られる様に自分から働きかけたり、見過ごしたり、工作したりしないだろう。でもそう言う事じゃないんだ。本当に好きな相手なら、幸せになるのを願う事が普通なんだ。そして俺にそれができないなら、他の誰かと結ばれて欲しいって思うんだ。

 

今までみたいに、誰かに寝取られ欲しいなんて思わないんだ。気が付いたら本気になってしまってたんだ…。

 

ベッドから離れて、部屋に壁にでこをあてた。俺に何ができるっていうんだ。俺に…。

 

「俺の事はもう諦めろよ…。俺は誰も幸せにしないし、できないんだ」

 

菊子がベッドからするりと起き上がり、俺を後ろから抱きしめた。

 

「…太郎、ずっと私といるはずなのに何にも分かってない。私のためだとか、私の幸せだとか。そんな言葉で私を遠ざけて、私の気持ちも自分の気持ちも蔑ろにしてる」

 

俺は抱きしめる菊子の手を握った。

 

「君は傷つくのが怖いだけ。心から誰かを愛する事を怖がってる。…だから、分かり切った結末にたどり着く事で予想通りだと安心したい。誰も信用に足らないんだって、人は醜いんだって信じたい。そうじゃない現実を目の当たりにすると、君はそれを否定したくてたまらなくなる」

 

そうかもしれない。

 

俺を愛そうとする存在が、俺にとって傷つく物になってしまうから。だからそれが嫌いで遠ざけたかったのかもしれない。どうせ誰も愛してくれない。人の世界は欺瞞に満ちてて、利用し利用されて生きている。それが現実だと思いたかった。

 

だってそうだ。俺はこんなにも醜い。自分だけ醜いって信じたくない。だから…この世の物の全てが醜いって信じたかった。

 

「菊子、俺はお前が怖い」

 

「…あなたを傷つける最大の脅威になってしまったから。そうでしょ?」

 

俺の事は何でもお見通しだな…。

 

「今は最低な彼氏かもしれない。お前の期待には応えられない。でも、もっともっと菊子の好きな恋人になって見せる。お前の笑顔が見られる様に頑張る。だから…俺を愛してくれ。お前のいない世界なんてもう考えられないんだ」

 

「…いいよ。愛してあげる。だから…」

 

それ以上言葉はいらなかった。

 

 

 

 

 

「あ゛あ゛ぁ゛!」

 

大五郎先輩が地面に腰を下ろして声を上げた。今日の仕事は相当堪えているようだ。

さすがに俺も疲れた。スポーツ飲料を渡して一緒に座る。

 

「あークソ、やってらんね」

 

「まあまあ、後ちょっとですよ」

 

俺達は解体屋をやっていた。学校での成績は別に悪くなかったが、具体的にこうしたいという夢がまるで見つからず先輩からの紹介もあってこの職業に就いた。悪態をつくのは毎日の事だ。でもなんだかんだずっと続いてる。

 

何とか菊子と結婚できた。安い結婚指輪しか買ってやれなくて本当に申し訳ない気持ちだ。でも、当人は喜んでくれてる。埋め合わせはどうにかすると決めてかなり経った。

 

今は実家から少し離れた中古住宅に住んでる。一言には言い表せないが、とにかくとてつもなく大変だった。…叔父さんが色々と手伝ってくれた。ありがとう叔父さん。叔父さん、永遠なれ。

 

「太郎、後で尻貸して」

 

「俺、そっち趣味ないです」

 

大五郎先輩に花子を寝取ってもらう作戦を諦めた原因は、彼が同性愛者だと思ってたからだ。まさか両性愛者だとは。

 

学校を卒業して3年。最近彼は花子から「毎日はさすがに無理」と言われ性欲を持て余してるらしい。逆に、そういう気分の彼女からサインを見逃して拗ねられたりして大変だと言っていた。頑張れ先輩。

 

菊子がそういう気分の時はかなり分かりやすく、露骨にコスチュームをしてきたりそういうスキンシップをしてくる。

 

それでもお互いに性欲のピークは学生時に過ぎたらしく、もう大半が抱き合ってるだけで幸せだ。たまに余裕ができると旅行に行ったりしてる。

 

俺は仕事を終えると、露店でタコ焼きを買った。

 

帰りに幸子さんに会った。帯刀はお金持ちで、お金に苦労はしないだろうに相変わらず服装はあまり変化がない。まるで興味がないようだ。

 

「あ、太郎君。帰り?」

 

「まあそんな所です」

 

「うわーん、聞いてよ太郎君!帯刀ってば仕事ばかりで私に構ってくれないんだー!」

 

…実は結婚記念日に向けてのプレゼントであちこちに出かけてるから家に帰る時間が遅くなってるだなんて口が裂けても言えない。帯刀…そんな相談を俺に持ち掛けて、恨むからな。

 

それにしても酒臭い。

 

「ははは、俺からも連絡して幸子さんに構うように言っておきますよ」

 

「たろちゃん、一緒に釣り行こ」

 

「月末に、菊子と一緒に行きましょうか。今度も俺が勝ちますよ」

 

幸子さんは笑った。この人、釣りの話を持ち掛ける割には下手だ。もう菊子の方が上手くなってしまった。そういう所も可愛いんだがこの人は。

 

俺は彼女を家まで連れて行ってあげた。こういう機会も増えるもんだから、帯刀から合い鍵までもらってる。自分の妻のいる家の合い鍵なんて他人に渡していいのか聞いたら…。

 

『ははは、お前は寝取る側じゃなくて寝取られる側だろ』

 

とか言いやがった。いつか本当に寝取ってやろうか。

 

 

 

 

「あいつ何もわかってない。する時は電気消してって言ってるのに!」

 

花子はご立腹の様子だった。

 

「最近は自分の顔を鏡で見るのも怖い。あいつは喜んでくれるけど、性行為の時はどんな顔してるんだろ私…」

 

「…鏡を見ながら自慰した事あるけど、その時の自分の顔を見たショックで3日は凹んだ事ある。頼んだら太郎は電気消してくれる様になったよ」

 

花子は美容とか割と気にせずとも美人だった。それでも最近は気になってるようで私に色々とアドバイスを求めて来る。愛する人の前で少しでも綺麗でありたい気持ち、わかるなぁ。

 

幸子さんが『若い頃の無茶は歳を取って回って来るから過信は禁物よ。若さを神格化してる年寄りの言う事は聞いちゃ駄目』と言っていた。実際に私達より年上だが、あの色香は変わらない。日頃から何をしてたらあんな風になれるんだろう。

 

と言うか幸子さん、全然見た目が変わらない。幸子さん吸血鬼説を2人で真剣に話してたぐらいだ。その内、見た目年齢が逆転しそうで怖い。

 

「そっちはどう、太郎と上手くやってる?」

 

「大きな不満はないけど…誘わないと全然乗ってこないのが悩みかな」

 

「スワッピングでもしてみる?」

 

「太郎が他の女と寝るのは嫌」

 

花子は笑った。

 

私達はそれぞれ家に帰った。それから掃除機をかけたりする。相変わらずミニマリズムな彼が夫とあって私物がとにかく増えない。私の私物も増やし過ぎないように気を付けよう。

 

晩御飯を作ると、疲れたので少し寝た。

 

 

…起きると、毛布が掛けられていた。

 

太郎が風呂場で掃除をしている。私はすぐに駆け寄った。

 

「ああもう、私がやるってば」

 

「横になって楽にしててくれ」

 

「もう…」

 

「それに、今日は菊子がとっても疲れる事をやるつもりなんだ」

 

そう言う事か…。私は思わずフフッと笑った。

それじゃ支度をしないと。

 

「じゃあ、私は太郎が明日仕事できないぐらい疲れさせる」

 

「お手柔らかに頼むよ」

 

部屋で今夜のプレイに使えそうなものを探してると、不織布ケースに入ったDVDが見つかった。これ…、私が学生時代に太郎に送ったものだ。まだこんなの持ってたなんて…。

 

私は居間で寛いでる彼の隣に座った。

 

「これ、もういいでしょ。捨てちゃいなよ」

 

「馬鹿言え。まだ使えるんだぞ」

 

私は彼の首の後ろに腕を回して彼の眼を見つめる。

 

「…今の私じゃ不満?」

 

「ちょっと早いが我慢ならん。答えを教えてやる」

 

彼に乱暴なキスされる。ああ、やだなぁ。どちらかと言うと紳士みたいなのよりこういうのが好きなんて。荒っぽくて、獣みたいなキス。

 

彼はチャックから一物を取り出すと、はち切れんばかりに勃起させている。私に興奮してくれてる。こんな事が当たり前になったのは、私が叔父さんに寝取られてみた甲斐があったというものだ。

 

首筋にキスされる。唇の次にここが好き。太郎は私の事を知り尽くしてる。

 

「きゃー襲われるー」

 

これからの事は分からない。不安もいっぱいだ。苦労もするだろう。

 

それでも彼と一緒なら、きっとどんな困難も乗り越えていける。そんな気がした。




今度こそお仕舞いです。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
また機会があれば他の小説も読んでいただければ幸いです。
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