有馬制覇するまで止まらねぇぞ
「はい……ただ会長の妹さんについてはこちらで周囲を探ります。ええ、重々承知しております」
『いや、分かってないわ。これは重大なミッションなのよ! 関係性を洗い出して、何とか利用出来ないかを進めなくちゃいけないの!』
「と、言われましても。ただ会長ももうすぐ受験モードに入ると思うので、忙しくなる前に直接仕掛けてみればどうですか?」
『……直接?』
「ええ、直接。妹さんの方から外堀を埋めるのではなく、当人たちが問題だと思うのですが……」
『早坂、あなたは何もわかってないのね……。重要なのは会長が頭を垂れることよ! 請い、願い、それに手を差し伸べてこそ意味があるの!』
力説。通話音量を小さくしてもなお喧しい。本来ならこんな会話を電話でするべきではないが、通信網はいじっている。
とっとと告白でもしてくっつけばいいのだ。このやり取りだって最近は特に増えた。
高校生活での二年目は成績で一番差をつけやすい時期だ。勿論、進学を目指す白銀とて長いスパートへ踏み出すだろう。
「ですがかぐや様、それで何か進展はあったのでしょうか?」
『当然じゃない。いい早坂、会長が私を見る回数が増えたわ』
「ん?」
『なに?』
「……それだけですか?」
『まだあるに決まってるじゃない落ち着きなさいよ。私を呼ぶ時に少し躊躇いを見せるようになったの。この前本で読んだわ。これは意識し始めている証拠よ! あともう一踏ん張りが見えてきたわ……!』
通話口を塞ぎ深い溜息。時々だが、主人の頭に花が生えているのを幻視してしまう時がある。
きっと目の前に立っていれば同じものをまた視た筈だ。
「それではかぐや様の仰るとおりに。妹さんの情報は会長や……書記ちゃんはやめときます。あとは森野くん辺りからリサーチしますので」
『ええ、そうして頂戴。早坂、時間が無いわ。私はこれが決定打の予感がするの……!』
「私もそう願います。それでは、遅くなる前にもうお休みになられて下さい」
『分かったわ。後は頼むわね早坂、お休みなさい』
「……はい、お休みなさいませ」
通話を切る。二十分ほどの通話だ。スマホの時刻は二十二時を過ぎていた。
呆れるような内容だったが、多忙を極める中で主人と高校生活を話せるのは得難い安らぎだった。
手間のかかる妹のような主人に思うところはあるが、まぁ可愛いものだ。
四宮の侍従として学生らしい遊びや恋愛はありえない。
仕事で余裕が無いというのもあるが、何より責務が余りにも大きい。
欠片ほども取りこぼすことなど出来ない。
だからこそ、主人との少し変わった恋愛相談は密かな楽しみで癒やしだった。
「──ああ終わった? 俺は長話とかあまり好きじゃないからさ、五分程度で切るように持っていくんだよ」
気分は、良くない。先程の余韻が覚めるどころか不愉快になる。
「時間を浪費して益体もない話ってのは耳に障る。別に、他人に求めはしないけどね。完璧主義は可愛げがない」
「……森野様。時間はまだの筈ですが?」
「早坂先輩から報告を聞きたくてね。状況確認や擦り合わせってのは欠かしたら駄目でしょ」
四宮家から五十メートルほども離れた一軒家。そこが落ち合う場所だった。
余りにも近いこの場所は当然、四宮家の調査が入っていた。早坂自身も携わっている。
多少裕福ではあるが、ごく一般的な家庭が築かれていたはずだ。今は人の気配も無い。
懐から別のスマホを取り出す。森野のスマホと繋がっている早坂用の端末だ。
手渡すと、確認もせずにズボンのポケットにしまった。
「摺り合わせは大事なのでは? 確認した方がよいと思うのですが」
「あー、問題ない問題ない。異常なっし!」
把握されている? いや、当然か。機械には自信があるとはいえ、腕比べなぞまっぴらごめんだ。
「そんじゃ、玄関で話し込むのもバカっぽいし、場所変えますか」
肩を抱かれる。鳥肌が立った。触れられる度に腐ってしまうおぞましさを感じた。
「ああ、今日は一個だけか……」
「──」
言葉を発する暇もなかった。肩を抱かれた手はそのまま伸びて口の中へ勢いよく突っ込まれる。
驚きは一瞬。噛んで抵抗する前に終わった。
「──つっううううううぅ!!!」
「わざわざ歯を抜いて仕込むことは無いだろうに。奥歯で目立たない部分だから、まぁ抜けても見た目は大丈夫だろ。歯は新しいのを後で用意しておこう」
摘み出された超小型のボイスレコーダー。小さい分、性能は悪いが隠しやすかった。
口の中に鉄の味が広がる。また、見つかってしまった。
「次はもっと安全な場所に隠すといい。頑張ってね」
「……あなたは、なんなのですか……?」
「何って……。何度も言うけど考えてみればいいじゃん。四宮? 四条? クロイヤード? それともアーセン? 身内かな? それとも海外? ……次に聞く時は答えを出してからにしてくれ、面倒だ」
今度は腰を抱かれて洗面台へ。冷たい水と、うがい薬だろうか? うがいをさせられる。麻酔も無しに抜かれた場所が痛む。
「少しすれば止血するだろうね。じゃ、時間も惜しいし行こうか」
「……分かりました」
そのまま、廊下を進み寝室へ向かう。明るい。既に照明は点いていた。
「じゃ、脱いで。脱がしたいから下着はそのままでいいよ」
無言で返す。暴力的ではないし多少の反抗も許されている。
しかし、出来ることなど限られている。幾度となく手段を潰されて、屈辱を味合わされた。
何をすれば出し抜けるのか分からない。出来るのは、心を強く保つことだけだった。
また、今日も悪辣なケダモノに蝕まれる。侍従として与えられた制服を脱いだところで背後から抱かれる。太ももを優しく上へなぞりあげられた。
「……んっ」
「ああごめん、手が冷たかったかな? ガーターベルト取るよ」
ゆっくりと、手を肌に密着されながら金具を外される。
目を閉じることは禁じられていた。
性感帯に触れられても、刺激されてもいない。
だというのに、体は主人の思うようにコントロールされてくれない。
脚を上げて、下着だけになった。股を手で触れられ、ブラの上から胸を揉まれる。
「……んー、Dに近づいてるくらい? いやなってるかな? まぁ、二十超えて成長する人もいるから、期待出来るね」
「くっ……! んんっ、いやっ」
まだ直接いじられた訳ではない。だがこの男に触れられるだけで全身が震えてしまう。
早坂の持つ知識でも、やはり異常なことなのではないかと思わされる。
そもそも、森野が深く関わったきた女性は年齢問わず全てこうなっている。
早坂も彼の行動を間接的に補佐している。心が痛まないよう、支障が起きない程度でしか許されていないのだが。
ブラのホックを外される。つるりと張りのある肌と乳房が照明で照らされた。
クォーターと言ってもハーフに近いだろう。北欧系の容姿は他人からもよく羨ましがられた。
他人から見ても美しく映っているという自負がある。
最近、友人から以前より綺麗になった、胸も大きくなったと言われている。褒められた自分の体が焼きたくなるほど汚らわしかった。
「まだ、碌にやってもないのにすごいな。ほら、下着見るか? もう滴って床に落ちるぞ」
「あなたの日頃の行いでしょう。私から何も申すことはありません」
「あらま嫌われちゃって。まぁ、今日は労いも込めてすっきりさせてやるさ。つばめ先輩メッセージ多くて面倒だからさ、手伝ってもらわないと嫌になるんだよね」
「……次は、んっ、誰になさるの……あっ、で、ですか?」
「んー、まだ決めてないなぁ。済んだら教えるよ」
下着の中に手を入れられる。クリトリスを愛液で濡らされ、優しく抓まれる。
「いいいぃぃぃ! ひっ、やめっ、きゅう! に……あんっ!」
「簡単にイクね。こりゃあ他の男の人も自信出せるんじゃない?」
いとも容易く絶頂に追いやられる。言葉を発する余裕もない。
「これもいい加減に脱がすか。洗うの大変だなこりゃ」
「はっあぁぁぁ、まだ……挿れられないの、ですか……?」
「確かに、時間も限られてるしね。睡眠時間ってのは大事だけど、明日は休みでしょ? 屋敷に戻るのも五時までなら間に合う」
「ふっ、くぅ、しごとが、ありますので……んっ!」
「ご主人さまの起床までは何もしなくていいように手配してきたじゃない。俺との時間を作ってもらって嬉しいよ」
やはり、察知されている。しかも落ち合う数分前に決めた段取り込みだ。
確実に内部に潜んでいる。もう何度も探したが未だに察しもつかない。
鎖で縛りつけられる錯覚。また、重くのしかかる。
後ろから抱かれたままベッドに二人でゆっくりと倒れ込む。
股を開かされてバックで挿入された。頭の中で火花が散った。
「ああああああああぁぁっっっ!!!」
「回数カウントしてたのが馬鹿らしく思えるね。じゃあ、俺も気持ちよくしてもらうよ」
腰を打ちつけられる。膣内に注挿される度に体の芯から燃えたぎる。
惨めだった。
「イって、イってるから! あっ! あっうんっ! あああああ!」
膣奥まで入り込まれ、ピストンが止まったかと思えばぐりぐりと腰を回し満遍なく刺激を与えられる。
この動きが特に嫌いだった
「あうううぅっっ! やめっ、いっ、んっううううぅっ!!」
口を噛んで耐えても無駄な抵抗に終わる。頭が白く塗りつぶされる。
掠れそうな意識を辛うじて繋ぎとめる。女衒という言葉を思い出した。それではおさまらないかもしれないが、一番近いだろう。
この男が次は誰に手を伸ばすか分からない。
──もしかしたら、
最悪の想像をする。体は堕ちても心だけは強く、抗い続けなければいけない。飽きないように。一人でも減ってくれるように。
「あっあっあんっ! いぃぃ! ああああああ!」
体を起こされる。力が入らずに思わず倒れ込んだ。
男が仰向けに寝そべる。言いたいことは、分かっていた。
よろよろと柔らかいマットレスを這って上に覆い被さる。
くちゅりと指で秘花を大きく晒し、咥えこんだ。
「──────────────っっっっ!!!!」
不意に、子宮口の近くを鋭く抉られて声なき叫びをあげた。
揺れる視界越しに、彼の口角が歪んだ気がした。
「あっ! あっ! あっ! あっ! ああああっっっ!!」
両手を支えられる感覚。恋人のように繋がれた両手は力強かった。
「いっ、あんっ! ああっ、きもち、いい! ああああっ!」
「結構この体位好きでね。相手に奉仕されてる感じがして満たされるじゃん?」
返す余裕などない。呼吸を、酸素を取り入れるだけで精一杯なのだ。
吸った空気も喘ぎと共に逃げる。苦しいはずなのに、嵐のような淫楽が鷲掴みにして離さない。
「もっもう、だめっ! だめっだから! い、いいっ、あああんっ!」
幾度となく突き上げられるも単調さはない。肢体の余すところまで開発しようという欲望を感じた。
「そろそろ一回目いこうかな? 何処がいい?」
「そ、そとにっ! だして! おねがいっ、しますっ! ううっ、あんっ!」
「毎回聞いてるのに健気だね。じゃあ、出すよ」
「いいっ、いやっ! あんっ! あっあっあっ、あん! あああああああああああああいぃぃぃぃぃ!!!!!!」
また、膣奥へと流し込まれる。この男のはしつこい。
洗い流そうと思ってもへばりついているのか中々出てこない。
妊娠しない筈がない。特別にアフターピルを許されている。
まだ、利用価値が与えられている証左だろう。
取り返しがつかなくなる前に……。
「やっぱり愛は俺のお気に入りだよ。ほらこっちに倒れてごらん」
ゆっくりと引き倒され、胸の中に頭を収める。顔を上げられ、唇を吸いつかれる。
優しく舌を絡まれ、空いた手で頭を撫でられる。
髪をブラッシングするかのように整えられながら、舌で繋がる。
労るように、深く愛するように溶かされていく。
何度も与えられた絶頂の余韻が途切れないようにディープキスは続けられた。
顔が漸く離れ、体を起こされて押し倒される。
時間が許す限り抱くつもりだろう。
大丈夫。きちんと時間は見てくれている筈だ。
シャワーを浴びて身だしなみを整える頃には解放されるだろう。
妙な信頼だけが残されていた。
それから何度も、膣奥に全てを射精された。気を失いながらも電流のような強い快感で覚まされる。
アフターピルは万全じゃない。この男の子種でいつか孕んでしまうだろう。
そもそも薬を与えているのも、それに期待して愉しんでいるだけかもしれない。
主人と先程会話したフレーズが浮かんだ。時間が無い。
そうだ、時間が無い。髪を梳かれ、胸に頭を預けて撫でられ、優しくキスをされる度に自分がなんなのかわからなくなってしまう。
憎しみと一緒に溶かされないように抗えるのは後どれくらいだろうか?
シャワーを浴びて、屋敷に戻った時には既に陽も優しく差していた。
携帯が振動する。もう、使用出来る。中身を見た。
母が出産した。両方とも、女の子の双子だ。
ああそうか。確か、予定日が一週間もなかった。
一言だけメールにのせて返信した。
残されているものは少ない。見えない未来に願う。
どうか、主人だけは、あの子だけは幸せにさせてください。