二亜リビングヘル 作:ラスティ
サメの歯の如き凶悪な突起の並んだ鞭で全身に裂傷を刻まれ、三角木馬で局部を痛めつけられ、あまつさえ丸ノコで局部を削り飛ばされ下腹部を縦に切り裂かれた二亜。最早処刑と言って差し支えない拷問に瀕死の状態に追い込まれたが、拷問を行う男たちは簡単に死なせてなどくれなかった。
拘束された状態でカプセル型の医療用顕現装置に叩き込まれ、再び惨たらしい拷問を受けられる身体へと治療されていく。瀕死の重傷すら治療できる一般人にとっては夢の装置も、二亜にとってはどのような拷問器具よりも悍ましい悪夢の装置でしかない。
「も、もう、やめてよ……何でも言うこと、聞くからさ……!」
そして治療が終わりカプセルから出された二亜は、再び拷問にかけられようとしていた。両手を後ろ手に戒められ、両足を枷で戒められ、足枷から伸びた鎖で逆さ吊りにされて。その様はさしずめサンドバッグだが、どちらかといえば血抜きを行われる家畜のような姿であった。実際上下逆に宙吊りにされた二亜の下には、まるで血を溜めるための大きく底の深いバケツのような容器が存在している。
ただしそのバケツの中には並々と水が注がれており、殺して血抜きするわけでないのは明白である。一度厳しい拷問を受けた二亜は、この状況から何をされるのか予想がつかないほどおめでたくはなかった。
「――がぼっ!?」
必死の懇願も虚しく、拷問が開始される。逆さ吊りとなっていた身体が突如として落下し、盛大な水柱を立てて首から上が水の中へと沈みこむ。前触れも無く開始されたため呼吸を止めるのが間に合わず、鼻から盛大に水が流れ込むのを止められなかった。
「げぼっ、ごぼっ!! がっ、ぐっ、ゴボッ……!!」
鼻の奥に生じる突き刺さるような激痛と、気管に流れこんだ液体がもたらす苦しみに水中で悶える二亜。息を止めようにも気管から異物を排除するため、身体は反射的に咳き込んで酸素を気泡として排出していく。
水中に沈んだ二亜の耳には、しばらく自らが咳き込み空気を零すくぐもった音が響いていた。
「が……! ぶ……ぐ、うぅぅ……!!」
しかし肺の中の空気は有限。すぐに空気は底を付くが、それでも身体は異物を排除せんと咳き込む。もう吐き戻すものが無いのにそれでも嘔吐が途絶えないような苦しみが続く。
おまけにそれが途絶えれば身体は勝手に酸素を求め、水中だと言うのに呼吸を強いる。当然二亜の気管に流れ込んでくるのは大量の水であり、それが更なる苦痛をもたらすのは自明の理であった。
「っ……ぅ……か、ぁ……ぁ……!!」
想像を絶する窒息の苦しみに、水から逃れようと必死に悶える。しかし両手両足を拘束され逆さ吊りにされている二亜には、無様に身体を揺らすことしかできない。水から顔を上げることすらできず、悲鳴を上げるだけの空気もなく、最早絶息寸前でただひたすらにもがき苦しむしかなかった。
「――ぶはあっ!!? げほっ、ゴホッ!! うっ、げ、ゴボッ!」
だが意識が薄れかけてきたところで身体が吊り上げられ、水の中から引き上げられる。酸素を貪りたい意思に反して身体は咳き込み、肺や気管から水を排出していく。
そうしてやっと空気を貪るが、水が入り込んだせいで鼻の奥はじりじりと痛み、逆さ吊り故に血が上った頭もずきずきと痛む。そんな状態で未だ咳が続くのだから堪らない。
「――ぐっ!?」
更には碌に呼吸を整える暇も与えられず、再び水の中に落とされる。再度襲い来る窒息の苦しみにもがき苦しみ、気泡として零れる叫びを上げる二亜。
揺れ動く水面の向こうが、空気に満ちた世界がすぐ目の前に見えると言うのに、そこまで顔を上げることができない。空気を貪ることができない。鋭い痛みこそないが、苦しみは先に受けた拷問を遥かに上回っていた。
「か……あ、っ……っ……!」
やがて再び、絶息寸前の苦しみが襲い来る。酸素の不足に悶える身体から力が抜けていき、水面の向こうに揺れ動く景色さえもぼやけて見え始める。苦しみはそのままに意識に霞がかかり、死を目前にして苦痛が薄らいでくるのを感じた直後――
「――ぶはっ!! がはっ、ゲホッ、ゴボッ! ぐっ、げ、ゴボッ!」
水の中から引き揚げられ、唐突に現実という名の悪夢に引き戻された。いっそあのまま死ねればどれほど幸せか分かっているのに、身体は咳き込んで水を排出し、酸素を貪って生命活動を続けてしまう。
まるで二亜の身体の状態をモニターしているかのように的確な苦しみを与え、救いを与えない地獄の如き責め苦であった。とはいえ相手は悪逆非道極まる天下のDEM。恐らく、というか間違いなくモニターしているのだろう。そうでもなければ絶息で意識を失う寸前を見計らい、水から引き揚げるなどという器用な真似はできはしない。
「た、頼む、から……お願い、だから……もう、やめ――ガボッ!!」
故に二亜はそこからも完全に意識を落とすこともできず、絶息ギリギリの苦しみを与えられる水攻めの刑に処されていく。
水上に引き上げられるほんの僅かな時間に泣きながら許しを乞うも、誰一人として耳を貸してはくれない。尤も二亜自身、助けなど期待していたわけではなかった。それでも泣き叫びながら許しを求めてしまうほど、耐え難い苦痛に見舞われていたのだ。
「ゴホッ! が、はっ……ゲボッ、がはっ……!」
そうして幾度も水攻めの刑が繰り返され、ついに訪れたひとまずの締めくくりの時。呼吸を整える暇も与えられず水中に沈められていた今までとは異なり、しっかりと酸素を貪る時間を与えられる。
しかし酸素を十分に取り込もうと、すでに身体には深刻なダメージが刻まれていた。積み重なった酸欠に身体中が酸素の不足を訴えて強張り、指に至ってはかじかんだようにまともに動かすことができない。逆さ吊りにされているため頭に血が上っているはずだというのに、今にも意識が堕ちそうなほど思考が鈍い。にも拘らず頭が割れそうな激しい頭痛を感じており、脳細胞に悲劇的な影響が及んでいることは想像に難くなかった。
「ゲホッ、ゴホッ……! え……それ、は……?」
しかし二亜への責め苦は終わりを迎えるどころか、更に激しさを増していく。逆さ吊りにされた二亜の視界に映ったのは、ロープのような物を二本手にして近づいてくる男の姿。
そのロープ染みた何かの先端には俗にワニ口クリップと呼ばれる物体が装着されており、アレで何かを挟むのが目的なのが見て取れる。ロープの反対側は拷問部屋の床に置かれた謎の機械に繋がっていたものの、思考能力が低下している二亜には何のための装置なのかは分からなかった。とはいえ碌なものであるはずはなく、また自分を苦しめるためのものであることは考えなくとも分かっていたが。
「ちょっ!? な、なに、を――いっ!?」
水攻めにより凍えて縮こまった乳頭をクリップで挟まれ、二亜は鋭い痛みに瞳を見開く。それだけならまだしも、クリップの上から敏感な個所を針で貫かれて固定される。思考力が低下していても、脳が認識する痛みは欠片も和らいではいなかった。
それでもこの程度の痛みならまだマシな方。散々鞭で全身をいたぶられ、三角木馬で秘部を引き裂かれた挙句、ノコギリで削り斬られる痛みを味わった二亜からすれば、まだ優しさを感じられる責め苦である。
「っ、く、うぅ……!」
次いでもう片方の乳頭も同様に挟まれ、貫かれる。自らの胸元から伸びる二本のケーブルを辿った先には、相変わらず用途不明の機械が鎮座している。
よく見ればその機械には幾つかのつまみとダイヤルのようなものがついており、男が今正にそれらを弄って何かを調整している真っ最中。何をしているのかは分からないが、二亜は猛烈に嫌な予感を覚えて生きた心地がしなかった。
そして機械を弄っていた男が二亜に視線を向け、酷く残虐な笑みを向けてスイッチを押した直後――
「――ぎっ!? がああぁぁあああぁぁああぁぁぁっ!!?」
雷に打たれたと錯覚するほどに激しい衝撃と痛みが全身を走り抜け、二亜は喉が張り裂けそうなほどの絶叫を迸らせる。
全身を苛むこの激痛の正体を、二亜は途切れることのない苦痛の中で理解した。雷に打たれたという感覚は決して錯覚などではない。この身体を襲う苦痛は、高圧電流による電気攻めに違いなかった。
「ああぁああああぁぁああああぁぁぁぁあああっ!!」
静電気が可愛らしく思えるほどの激しい痛みが全身を絶えず駆け抜け、細胞の一つ一つを焼き焦がさんと暴れまわる。あまりの激しい高電圧に全身の筋肉は痙攣や収縮を催し、二亜の意思に反して身体がどこまでものけ反っていく。
「あっ、が、あっ、ああぁぁあああぁぁぁぁあっ!!?」
ギシギシと背骨が軋みを上げる中、二亜にできたのはただ悲鳴を上げることだけ。しかしそれでも声を上げられるだけマシな状態であった。
あまりに激しい高電圧に、見開かれた瞳や絶叫を迸らせる口元からも水分が煙を上げて蒸発しており、身体の中では血液が沸騰しかけ、脳そのものが煮立っているような状態だ。常人なら間違いなく死を迎える仕打ちにも拘わらず、悲鳴を上げられるだけ二亜はマシな状態だった。尤も当人にとっては何一つとして幸福などではなかったが。
「あ……ひっ、あ……あぁっ……!」
やがて電流が止められ、収縮していた筋肉が緩んでがくりと脱力する二亜。しかし電流が止まろうと沸騰しかけの血液と煮え滾りつつある脳が、耐え難い苦痛を生み出し続ける。今こそ水の中に落として欲しいと思うものの、当然ながら男たちにそんな優しさなど存在しなかった。
「ぎっ、いっ――があぁああああぁぁあぁぁぁあああぁぁっ!!」
ろくな休憩も与えられないまま、再び高電圧を流され絶叫する。水攻めによってずぶ濡れだった身体も、今は度を越した高電圧によって水気が蒸発し完全に干からびている有様だ。
それでも電気攻めの手は一向に緩むことはない。二亜の全身から煙が噴き上がり、乳頭から黒い煙と焦げ臭さが漂って来ようとも。
「ああぁぁあああぁぁぁぁ――あっ、か……はっ……あ……!」
やがてあまりの高電圧に焼け焦げた二亜の乳頭が限界を迎え、塵のようにボロボロになって崩れ落ちる。同時に固定されていたクリップも意味を無くし、外れて高電圧の責め苦が終わる。
しかしそれを幸福に思えるほど二亜には余裕などなかった。激しい高電圧に晒されて身体の外も中も無残な有様と化しており、特に心臓のダメージが深刻だ。かつてないほどの速さで鼓動しながらも度々に拍動が飛んでおり、今にも止まってしまいそうな不安定な挙動をしていた。
さすがにこのような状態では拷問も終わりに違いない。二亜はそう思っていたのだが――
「ひっ!? ま、待って、何、を――ぎいぃっ!?」
容赦など欠片も存在せず、今度は下腹部の敏感な陰核をクリップで挟まれ針で固定される。乳頭の比ではない痛みにのけ反り、歯を食いしばる二亜。
「あ、がっ……!? は、ひゃ、ふぅぅっ!?」
まさかそこから高電圧を流すのかと戦慄する中、今度は顎を掴まれ口の中に無理やり手を突っ込まれ、舌先に同様の仕打ちを受けた。これで準備は完了してしまい、後はスイッチを入れられてしまえば地獄の責め苦が再び始まる。
「ひゃ、ひゃめ……やめ――っ!!」
もちろん二亜は許しを乞い願うが、男たちには聞く耳など欠片も無い上、そもそも言葉が通じないのだから意味はない。容赦なくスイッチが入れられ、陰核から舌先を走り抜け全身を襲う高電圧に、二亜は悲鳴すら上げられず痙攣しながら苦しみ悶え続けるのであった。意識が闇の中へと沈み、何も感じなくなる瞬間を幸福に思いながら。