裏切られた"僕"は絶望して逃げたが、入れ替わった"俺“はその後の人生を謳歌する。 作:美味しく食べよう
シュラは気前の良い鍛冶屋から鉈を貰って、とても気分が良かった。
(もう日も暮れてきたし、そろそろ宿屋で休もう。)
(うん、そうしよう。)
そのまま真っ直ぐ宿屋に向かう。
(今日一日で色んなことがあったな。町の人は優しくてさっぱりしていて、とても気持ちがいい。冒険者ギルドが想像と全然違ったしな。)
(む、そうなのか?シュラの想像してた冒険者ギルドはどんな感じなんだ?)
(俺は、てっきりガラの悪い連中が多い所だと思ったよ。まぁ昼間絡まれたけど、その人も悪酔いしてただけだから。)
(ふーん。たしかに、地球のラノベとやらにはお前の想像通りのことが描写してあったな。)
(そうそう。俺もそれで悪い感じに想像してたんだ。)
(事実はそうでもなかったがな。)
(そうだねぇ〜。ちょっとばかし緊張してたんだけどね。)
そんなこんなで、シュラは宿屋にたどり着いた。
「いらっしゃいませ!あらお客さん!お帰りなさい!」
中では、たくさんの人がご飯を食べたり、酒を飲んで酔っ払っていたり、歌を歌ってる人もいた。ただ、冒険者ギルドと違うのは、殴り合いや腕相撲をしてる人がいないこと。みんながみんな、純粋にこの場の雰囲気に浸って、美味しくご飯を食べている。
「ただいま!お腹ペコペコだよぉ〜!ご飯お願いします!」
「ふふ♪はい!お任せください!今日の夕食はビーフシチューですよ!楽しみにしててくださいね!」
「楽しみです!」
そう言って、シュラは空いてる席に腰を下ろす。
そうすると、
「よぉシュラ!昼ぶりだな!」
「飯食ってるか?!」
「酒は?!」
昼間に冒険者ギルドで話しかけてきた人だ。
「はい!昼ぶりですね!さっき鍛冶屋に行ってきました!ご飯はこれからです!」
「おう!ここの飯はうめぇからな!楽しみにしてな!」
いやほんとに美味しそうなんだけど。
目の前で食べてるビーフシチュー。
肉が唇で崩れるほど、柔らかく煮込まれて、その分シチューが染み込んでいる。肉の他にも、人参や玉ねぎ、じゃがいもも入っている。とてもボリューミーだ。育ち盛りのシュラには超ご馳走に見える。
ちょうどその時、
「はいお待ちどお様!ビーフシチュー大盛り!お代わりしたくなったら声かけてね!」
そう言って目の前に置かれた、ビーフシチューの皿。
付け合わせにカリカリに焼いた白パンと、キャベツとトマトのサラダが置いてある。
「おぉ〜!超うまそう!いただきます!!」
「おう!食え食え!」
まずはビーフシチューの肉にかぶりつく。
「ッッッ!!」
肉の柔らかさと、豊潤なスパイスが効いたシチュー。
他の具材の人参やじゃがいももトロトロになるほど煮込まれている。
「ハムっ!アムッ!」
「ハッハ!良い食いっぷりだな〜!」
育ち盛りのシュラには、やはり濃い味付けのシチューがご馳走だった。
口の中がこってりしてきたら、サラダを食べる。
「ッッッ!!」
ビーフシチューに劣らず、サラダもまた美味い。
キャベツは採れたてのようにシャキシャキで、トマトも瑞々しい。
ちょうど良い酸味のドレッシングで、口の中がさっぱりする。
そうしてガツガツ食べていると、サラダとビーフシチューの皿が空になった。
これで終わりか?いや、まだパンが残っている。
「ッッッ!!」
今、シュラは悪魔的なことを思いついた。
このパンに、少し残ったシチューをつけたら、どうなるだろうか?
早速試してみる。パンを一口サイズにちぎって、シチューに浸す。
それを口に放り込む。
「おぉ〜美味ぇ…」
パンに染み込んだシチューが、パンを噛む度に溢れ出してくる。
やはりこの食べ方は美味かった。
「ふぅ〜。お代わり!」
「はいよ!」
「おう!じゃんじゃん食え食え!」
「美味そう食うなお前!おばちゃん!俺もお代わり!」
「はいよ!」
こうして、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
時は少し経ち、夜になって静まり返った頃。
シュラは部屋のベッドで横たわっていた。
「ふぃ〜、食った食った。あぁ〜超美味かった。」
(くっ!我も食べてみたい!)
「いや無理だろ。シークは意識だけの存在じゃん。肉体があったらあのビーフシチュー食えたのになー。あぁ美味かった。」
(見れば分かるわ!お前本当に美味そうに食べるな!我も食べたい〜!)
「はいはい。肉体を持ってから言いな。」
(お前探せ!我が入れる肉体を探せ!)
「いいよ。探してやるよ。」
(本当か!?ありがたや〜!)
「ていうか、シークに食欲があったんだな。」
(当たり前よ!我は神や仏ではないからな!食欲や睡眠欲はあるわい!)
なんだか段々とキャラが崩壊している気がする。
「ヘェ〜。性欲は?」
(恐らくない!)
「ふーん。」
(ああ〜楽しみだ!待ち遠しいぞ!)
「そうかいそうかい。楽しみにしてな。じゃあおやすみ〜。」
ベッドに横たわった時から眠かった。
(うむ!今日一日で色々なことがあったからな!疲れていても不思議はない!
ゆっくり休め。)
こうして、バーンでの初日は過ぎていった。