裏切られた"僕"は絶望して逃げたが、入れ替わった"俺“はその後の人生を謳歌する。 作:美味しく食べよう
僕は理解した。理解してしまった。
彼女は、もう戻ってこない。あの勇者とやらに心を奪われてしまったのだ。
彼女は、僕の、唯一の'光'だったのに。
今はそうでもないが、昔はとても根暗で、よく彼女の後をついて回っていた。
いや、彼女は僕を連れ出してくれたんだ。そんな彼女は、僕にはとても眩しく見えた。
だけど、もういない。
「ウワァァアアアアッ!!」
死ぬほど泣いた。体中の水分が抜けると思うぐらい。とても悲しかった。
彼女から告白してくれたのに!
もう…いいや
この村の近くに大きめの洞窟がある。そこで自死しよう。
もう疲れたよ。
彼はナイフを服のポケットに入れた。
そのままフラフラと歩いていった。その姿は、まるで幽鬼のよう。
元々暗い性格だった彼には、両親も、あまり良く思っておらず、同年代の人も近寄らなかった。だから彼がいなくなることなど、どうでもいいのだろう。
目の前を彼が歩いているのに。目の前であんな屈辱を受けたのに。
不思議と、洞窟に着くまでモンスターとは鉢合わせなかった。
モンスターも彼を気味悪がって近寄らないのだ。それほどまでに、彼の目は虚で、その姿勢はフラフラと木の葉のように揺れている。
そうこうしていると、洞窟についた。
それを更に奥に進んでいく。不思議なことに、またモンスターがいなかった。
そして、彼は最奥にたどり着いた。
そこは地面から天井まで空色の結晶に覆われていて、とてもこの世のものとは思えない、神秘的な場所だった。
たった一つの心残りは、こんな綺麗な場所を自分の血で汚してしまうこと。
彼は早速ポケットからナイフを取り出し、首筋に当てる。
そして引こうとした。
次の瞬間
(待て。)
「!?」
突然聞こえた声に、彼は驚いて固まった。
(そこの坊主、今お前は、死のうとしただろう?)
「だ、誰?」
(坊主、質問に質問で返すな。答えろ。)
「は、はい。僕はたった今死のうとしました。」
(ふむ、やはりな。何故死のうとしたのだ?)
「生きていたって、いいことがないですから…」
(ふむ、そうか。未練とかはないのか?心残りは?)
「そんなもの、ありません。強いて言えば、この綺麗な空間を汚してしまうことですかね。」
(ふむ、では未練はないと。)
「…そういうことになりますね。」
さっきからこの声は何を聞いているんだ?
何故そんなことを聞いてくるんだ?
少年が疑問に思っていると、
(では少年。転生してみないか?)
「は?」
この日、二度目の衝撃が走った。
(いや、いやならいいんだ。忘れてくれ。)
「良いですよ。もうこんな世界に何もありません。」
(真か!…しかし、良いのか?転生するということは、一度死ぬということだぞ?)
「別に良いです。もう疲れました。それに一度死のうとしましたし。」
(…ふむ、そうか。では少年、早速だが、さらばだ。)
「へ?」
次の瞬間、意識が途絶えた。
サクサクいきたい。