裏切られた"僕"は絶望して逃げたが、入れ替わった"俺“はその後の人生を謳歌する。 作:美味しく食べよう
あのあと、すぐにオークを二匹見つけて同じように倒す。
祈りを捧げて、死体をシークに収納してもらい、森から町に戻る。
今回は早く終わった。今はまだ昼を過ぎたばかりである。
ギルドに戻って、受付の人にハンコをもらった。
受付の人はヘルガさんではない。知らない男の人だ。
「あの〜すいません。解体場って利用できますか?」
「はい。可能ですよ。」
「ありがとうございます。」
そのまま解体場に行って、オークの解体を頼む。
「あ、どうも。解体をお願いしても大丈夫ですか?」
「おう!任せろい!で、何の解体だ?」
「オークです。今から出しますね。」
直後、ドスンとオークの死体が五つ現れた。
「うぉ!びっくりした!どんな手品だよ?!」
「(仲間という設定にしたシークの)魔法です。」
「とんでもねぇ魔法だな!」
「ありがとうございます。それじゃあ、解体をお願いします。」
「おう!素材はいるか?」
「皮と肉をこちらに回してください。あとは処分してください。」
「睾丸(キンタマのこと)はいいのか?」
「え?睾丸って…何に使うんですか?」
「精力剤だよ。オークの種族の睾丸は精力剤の材料なんだよ。男が飲めば精が濃くなり、女が飲めば子を孕みやすくなるって言われてんだ。貴族とかはよく買ってるんだぜ?」
「ほ〜そうなんですね…」
「おう、で、睾丸はいるか?」
「あ、大丈夫です。遠慮しときます。」
「あいよ!そんじゃ、解体料と素材の買取を差し引いて…こんなもんか。
じゃあ、金と素材はギルドの受付に回しとくぞ。あとで受付に行ってみてくれ。」
「はい、ありがとうございました。」
またギルドの受付に戻ってきた。
「シュラさんですね。解体場から話は聞いています。少々お待ちください。」
受付の人にそう言われ、酒場の椅子でジュースを飲みながら待っている。
しばらくして、
「シュラさーん!終わりましたよ!」
声が聞こえて、受付に行く。
「はい、こちらですね。お金と、あと素材です。オークの肉は葉に包んであります。皮も同じです。それと、ライオンウルフの毛皮も渡しておきますね。」
ドデンっと素材が山盛りになっている。
(シーク、しまってくれ。)
(うむ。)
シュンっと素材とお金が消える。
「凄いですね。空間魔法ですか。」
「はい、そうなんですよ。」
笑いながら追及の目をごまかす。
「それでは、本日は依頼お疲れ様でした。また明日お越しくださいませ。」
「はい、ありがとうございました。」
そのままギルドを出ていく。
宿屋に行って、挨拶をする。
「三日間ありがとうございました。」
「はい、当店のご利用お待ちしています。」
宿屋の人は笑顔で手を振っていた。
(ヨーシ!これでやるべきことはもうないな!)
(鍛冶屋はどうするのだ?お前の革鎧を作ってもらうのだろう?オオカミの毛皮でコートは?)
訂正、まだやることたくさんあった。
まずは鍛冶屋に行こう。
「こんにちはゴロさん!」
「おう来たか!剣の調子はどうだ?」
「はい、こんな感じなんですけど、大丈夫ですか?」
剣を抜き、ゴロさんに見せる。
「うむ、大丈夫だ。一応研いでおこう。貸してみろ。」
剣を渡し、研いでもらう。
「あ、それとですね。オークの皮が大量に手に入ったので、革の鎧を作ってもらいたくて…いいですかね?」
「おう、任しとけ。代金は大銅貨五枚だ。」
てことは、日本円に換算して五万円くらいか。
まぁライオンウルフの報酬で、銀貨二枚貰ってるから余裕ですけど。
「はい、銀貨一枚でお願いします。お釣りは大丈夫です。剣も貰ってますし。」
「いいのか?遠慮なく貰っていくぞ?」
「どうぞどうぞ。あと一枚ありますし。」
「ほう…大物を狩ったのか?」
「はい、ライオンウルフというやつらしいです。」
「ほう、なかなかやるじゃねぇか。あいつは中級者への登竜門なんだぜ?」
「ヘェ〜そうなんですか。じゃあ俺も中級者ですね!」
「おう!…ただよ、強ぇ奴は早死にするんだ。何故かは知らないけどな。そういうジンクスがあるんだ。気を付けろよ?」
「はい。ありがとうございます。気を付けます。」
「おう…さ〜て、研ぎ終わったぞ。」
そう言って返された剣は、鈍い鉄色を放っていた。
刃をさわって確認する。…指紋に刃が引っかかる感触がある。
凄い切れ味だな。これならスパッといけそう。
「すいません。ありがとうございました。」
「おう。また来い。」
そう挨拶して、鍛冶屋を出て行った。
特にやることもないので、師匠の道場に帰ってきた。
今は昼の三時ぐらいである。(ちなみに勘)
それで、道場の扉を開ける。
中には師匠と、見知らぬ女性が向かい合って座っていた。
「ありがとうございました。また伺わせていただきます。」
「いえいえ、こちらこそ。何も教えることもなくてすみません。」
お互いに礼をしていた。
「あぁシュラ君。お帰りなさい。彼は私の弟子なんですよ。」
未だ俺に背を向けている女性に話している。
「あ、どうもはじめまして。シュラと言います。」
クルッと、正座したままこちらを向く女性。
目を剥くほどの美女だった。
艶々とした背中まで届く黒い髪。顔は薄い作りで、細い目をしている。
パーツのそれぞれが完璧で、なおかつ位置も完璧。
ここまで整った顔をしていると、もはやこの世の者とは思えない。
スタイルも細いところは細く、プロポーションが抜群にいい。
彼女は白い和服と赤い袴を履いていた。
前世で見たことのある、巫女さんの服にそっくりである。
「こちらこそ初めまして。私は、勇者様のパーティーに入るべく東より参りました。『ツバキ』と申します。以後、よろしくお願いいたします。」
そう言って、彼女は深々と頭を下げていた。
これが彼女と俺の最初の出会いだった。