裏切られた"僕"は絶望して逃げたが、入れ替わった"俺“はその後の人生を謳歌する。 作:美味しく食べよう
あれから、俺はツバキさんと共に毎日毎日依頼をこなして、早朝は師匠と鍛錬、昼までは依頼をこなし、夜は魔力の使い方を教わる。
ツバキさんは、ナギナタという長い柄に片刃の短剣が取り付けられた、東の国では有名な武器と、弓矢を使っていた。
しかも、ツバキさんの矢は『破魔の矢』という、魔を祓う力がある矢らしい。
一度、夜に依頼を受けて『ゴースト』というモンスターを討伐しにいったことがある。あいつらは物理が全く効かず、魔力による攻撃も効きにくいという厄介なモンスターだ。だけど、ツバキさんの破魔の矢は当てた瞬間にゴーストが溶けていく。俺?俺は魔力に任せて殴るだけど。効きにくいというだけであって、効かないというわけじゃないからね。
そんな感じで、師匠の下で鍛錬を続けて25日が経った時、師匠から呼び出された。
「どうしたんですか?師匠。」
「うむ。シュラ君には、これから魔剣術を教えようと思う。」
「ありがとうございます!師匠に認めてもらえたということですね!
それで、魔剣術とはどういう…?」
「まず、魔剣って分かるかな?」
「聞いたことはありますが、詳しくは…」
「魔剣っていうのはね、『生きた武器』のことを言うんだ。」
「生きた武器?」
「うん。生きている者は、必ず魔力を有して生まれてくる。他にも、魔力の濃い土地に長くいると、生きている者でなくても魔力を有することがある。
有名なのはミスリル鉱石という鉱石だね。あれは魔力を長い間浴び続けた鉄鉱石なんだ。更に時間が長くなるとオリハルコンという鉱石になることもある。
あぁ、つまりどういうことかというと、魔剣は『何かしらの理由で魔力を浴び続けた武器』ということだ。だから生きているモノっていうことになる。」
「あ!師匠がこの前言っていた魔力を触れているモノに流すというのは…」
「そう、己の持つ武器に魔力を流して、強制的に魔剣にする術なんだ。
これはシエン流の口伝(文に起こさず、言葉だけで伝えること)なんだ。」
「でも、浴び続けるって…」
「そう。続けるってことは、長時間魔力を流さないとって思うだろ?
だからこそ魔力の使い方を知り、魔剣にすることができるんだ。」
なるほど。今までのは全てここに繋がっているのか。
「型はそれを補助する物でしかないんだ。本質は魔力の使い方にあるんだ。
それを今日は鍛錬しよう。」
そう言って、木剣を渡してきた。
「早速やってみよう。」
師匠も始めた。すると、瞬間的に空気が変わった。
師匠の雰囲気が化けたのだ。魔力が周囲を包み込んでいる。
師匠は剣の腕前だけじゃない、魔力の使い方もピカイチなんだ。
「これが魔剣術。極めると、武器だけでなく、周囲一帯を包み込んで場を掌握する。」
本当にバケモンだろ。この人。
というわけで、俺もやってみる。
しかし、これが非常に難しい。まず自分の体以外を自由自在に操るっていうのが難しい。体の中から糸を出して、剣に侵入させる感じなのだが、難しすぎる。満足に自分の体を操れるわけではないのに、それ以外を操るとは…やはり師匠はバケモンだな。
「こんなことも出来るんだよ。」
そう言って、師匠は剣を一回振った。
俺は危険を感じ、全力で横に避けた。
すると、
ザンッッッ!!!
後ろにあった道場の壁に傷痕がついた。
え?やばくね?男のロマン『剣から衝撃波を出す』をやってるじゃん。
これ出来るの?…めっちゃ頑張るわ。
「恐らく、ツバキ君は出来ると思うよ。彼女は魔力が緻密だからねぇ…」
負けてらんねぇ!!
心を静め、己に集中する。
剣が我が身と一体であるかのようにイメージする。
剣は我が身、剣は我が身、剣は我が身…
突如、雷が落ちたような衝撃が全身を駆け巡った。
それに反応して、剣を振る。
ギイイィィィィィンンンッッッ!!!!
金属同士が潰し合うような音が響く。
意識をそちらに向けると、師匠が3メートルぐらい下がっていた。
「…素晴らしい。シュラ君、君は免許皆伝だ。思わず剣で受け止めてしまったよ。やはり君は天才だ。私が断言する。」
今、俺は凄まじい高揚感を感じている。
師匠の空気に抵抗できてる。俺だけの空間が今、完成したのだ。
これが魔力の極みなのか…
「そこから更に鍛えるんだよ。今シュラ君は、極みに歩み始めた。あとは真っ直ぐ進むだけだ。明日からは魔剣術を使って型の鍛錬をしよう。」
その言葉を聞き、俺は達成感に満ち溢れた。