裏切られた"僕"は絶望して逃げたが、入れ替わった"俺“はその後の人生を謳歌する。 作:美味しく食べよう
スタンピードとは、モンスターが何らかの理由で暴走化し、数も異常に増えることを言う。
つまり今、モンスターを狩り放題なのである。
急いで師匠とツバキさんと共にギルドに向かう。
そこには沢山の冒険者がいた。
「マスター!救援はまだなのか?!」
冒険者の一人が叫ぶ。
どこに救援したのだろう?
「王都からここまで最低でも三週間かかるのだぞ。救援は無理だ。俺らで対処するしかない。」
「ちょっと待ってください。異常に増えると言っても、そこまでではないでしょう?どれくらいなんですか?」
俺が聞くと、
「…見渡す限りだよ…」
なんともまぁ絶句する答えが返ってきた。
「目測でおよそ8万体…勝てるわけねぇ…」
絶望したように呟く冒険者。
いつもはアホみたいに明るいのに、こんな時は暗くなる。
当たり前か。分かりきってる死を前にして、笑えるやつなどいない。
「早く市民を避難させよう。まずは市民を撤退させて、戦える者は死に物狂いでモンスターの侵攻を止める。撤退戦だ、それしかない。」
いくら個の力が強くても、数の前には敵わない。
そんなこと分かってる。でも、でも、
「俺が、特攻する。その間に急いで市民を避難させてくれ。急いでくれ!」
俺はそう言って門の外に向かって走る。
「あ!ちょっと待って!」
「行きなさい、ツバキ君。君は彼を支えてあげなさい。」
「師匠…はい!分かりました!」
そう言ってツバキも走る。
「さて、私はここに残って市民を避難させらまで食いとめてみる。なるべく早くお願いしますよ。ギン。」
「師匠…分かりました。お前ら!急いで避難させろ!動ける者はキビキビ動け!これから撤退戦だ!」
「さて、どうなることやら…でも、君ならなんとかしてしまうんでしょう、シュラ君?」
シエンはそう呟いて、ギルドの天井を見上げた。
ところ変わって、シュラは門の外に出ていた。
前方を目を凝らして見つめる。
「魔物は、どこにいるんだ…あ!?あれかッ…」
絶句した。地平線を覆い尽くす巨大な群れ。こりゃ…無理かも。
(これが魔王の影響だ。分かったろ?魔王は人類にとっての天敵なんだ。
モンスターを無限に生み出し、従え、それを使って蹂躙する。正しく『魔の王』だ。どうする?ここから逃げるか?誰も攻めないぞ。この状況ならな。
市民を避難させるのが先だぞ。)
久しぶりにシークの声を聞いた。
(いや、転生して一ヶ月ちょっとで、もうクライマックスじゃないか…
え?俺死ぬよ?マジで?dieよ?)
(軽口は叩けるのだな。分かったらさっさと市民を避難させろ。)
(…………)
俺は、一歩前へ出た。
(何をしている?死にたいのか?自殺願望者なのか?)
(俺な、ここで逃げていいのかなって思ったわ。別にこんだけの群れなら、逃げても恥にならないって思ったんだ。…だけどな、それじゃ町の人を守れねぇ。
俺の大事なものを守れねぇんだよ。師匠も、ツバキも、ギンさんも、ムントさんも、ヘルガさんも、ゴロさんも…もちろん他の人だって俺の大切なものなんだ。思い出だって沢山ある。
だからッッッ!!!俺はッッッ!!!!逃げないッッッ!!!!!)
覚悟を決めて、前を睨み付ける。先ほどよりも、モンスターの群れは確実に近づいてきている。
やっとこれを外せるようになったな。
鍛錬の腕輪
ステータスを強制的に設定して、鍛錬をする。
今の俺がこれを外したらどうなるのかな?
これの説明を受けた後、師匠に聞いたことがある。
『これをつけたまま鍛錬をし、外すと、莫大にステータスが上昇するのです。昔はそれをやっていたのですが…今は知っている人もほとんどいません。』
つまり、ステータスの上昇分をストックできる。
一ヶ月間、鍛錬しまくった分、溜まったステータスの上昇を、一気に解放する。
(俺、これが終わったら、ツバキに告白するんだ。)
彼女は俺のことをよく支えてくれている。
この一ヶ月間、鍛錬が辛くても彼女の笑う顔を見たら、それだけで不思議と力が湧いた。そして、また頑張れるのだ。
一緒に依頼をこなしていく中で、俺はツバキを好きになっていた。
(…死んでしまうのかもしれんぞ。今のうちに叫んでおけ。別に誰も聞いちゃいない。)
「それもそうだな…スウウウゥゥゥゥッッッ…ツバキッッッ!!!
好きだッッ!!愛してるッッッ!!!これが終わったら結婚してくれええェェェッッッ!!!!」
「はい!結婚しましょう!!」
「…え?」
(クックック……)
声がしたので、後ろを振り向いた。
そこには、頬を真っ赤に染めたツバキがいた。