裏切られた"僕"は絶望して逃げたが、入れ替わった"俺“はその後の人生を謳歌する。 作:美味しく食べよう
サイのモンスターの頭を潰したあと、両手剣に持ち替えて突貫していた。
最近のお気に入りである。重さもありリーチもあり、切れ味もある。
叩き斬るときに滅法強い。
「邪魔ァァァッッッ!」
また切り倒した。
動きやすいように、両手に剣を持って、鍛えた足腰で振り回す。
どちらの剣にも魔力を纏わせているため、今ここは斬撃の嵐が起こっている。
こんな技やってみたかったんだぜ!
だが、いくら斬っても、突いても、潰しても、引き裂いても。
モンスターは一向に減らない。
チラリとツバキの方を見る。
彼女は、俺が撃ち漏らした魔物を次々とナギナタで倒していく。
とても綺麗で、舞を舞っているようだった。
「グルアアァァァッッッ!!!!」
狼型のモンスターが襲ってくるが、それも一刀両断する。
この辺りは血の海だ。
俺も返り血で赤くなっている。
「しゃらくせぇ…」
俺はもう一つのお気に入りの武器を取り出し、地に打ち付ける。
それだけで、地面は割れた。
俺が取り出したのは、片刃の両手剣だ。
柄は丸出しで布を巻いただけ。一切の装飾を失くし、極限まで機能美に特化させた武器。
まるで特大の出刃包丁のよう。
「行くぜ、ここからだ。」
俺は突貫した。
その頃、ギルドでは
「早く!こっちから行くんだ!」
冒険者達が市民を避難させていた。
とりあえず避難させて、一番近い町まで行き、態勢を整える。
「……………」
冒険者の一人が俯いていた。
「どうした!?早く住民を避難させろ!」
ムントは焦っていた。
地平線を埋めるほどの群れだ。敵うはずがない。
あれに向かっていくなど、自殺行為だ。
シュラは行ってしまった。非常に惜しく思う。とても貴重な戦力だったのだ。
シュラとツバキはこの周辺地域の高難度の依頼を達成させていた。
彼らは、冒険者達の憧れだったのだ。
高難度の依頼を受けて、必ず生きて帰ってくる。
ときにはボロボロになることもあった。
その姿は英雄の様だった。
最近は魔王の活動が活発になり、それに伴って勇者も現れたらしい。
「くそっ、こんな時に勇者が来てくれたら…彼らの力ならば、一日で到着できるはずなのに…」
勇者は魔王に対抗するために召喚されたという、異世界の人間だ。
だが、今代の勇者はひどくだらしがない。
一度、王都で見たことがある。その時、勇者は三人の女性を侍らせていた。
本人は当たり前のようにしている。
それで、レストランでも勇者を見た。勇者は金を払わずに、勇者という地位だけで無料にさせていた。店主が口答えしようとすると、剣を抜いて脅すのだ。
その時から、ムントは勇者という者に期待しなくなった。
だが、それでも、今の状況では勇者の力はどうしても必要なのだ。
それほどに事態は切迫している。
「俺、やっぱり戦ってくる!!ここは任せました!!」
冒険者の一人が突然走っていった。
「待ちなさい!!!ここはどうするのですか?!!」
「やっぱり二人だけに任せられねぇ!!」
「俺もいくぞ!」
「俺も!」
「私も!」
「オレもだッッッ!!」
「ちょ!待ちなさい!」
「ムント君。」
名前を呼ばれた。その方向に振り返る。
「あなたは…」
「やぁ、私はギンの師匠のシエンという者だ。この事態はどうにもおかしい。
普通、魔物は群れを作らない。あぁ、もともと群れを作るのは別だよ?
今回はあらゆるモンスターが群れを作っている。普通はこんなこと起きない。
異常だ。モンスターが他種族のモンスターを見ると、お互いに食い合うんだ。
だが、それが無く、妙に統制が取れている。」
「?何が言いたいんですか?」
「つまり、まとめている長がいるということだと思う。」
「何?!それなら、その長を討伐できれば…」
「あぁ、モンスターは統制が取れなくなり、散らばるように何処かに逃げる。」
「急いで伝えなければ!!」
「おう、話は聞いたぜ」
ギンがいつのまにかいた。
「マスター!」
「おぉギン、久しぶりだな。」
「お久しぶりです、師匠。」
「お前が紹介してくれたシュラ君。あの子は逸材だ。一ヶ月で全ての型を体得しおった。」
「なんと!やはりそうでしたか…」
「うむ。それよりもギン、頼んだぞ。」
「はい。お任せください。」
「ちょ!どこ行くんですかマスター!?」
「シュラに伝えに行ってくる。この場は頼んだぞ。師匠が戦ってくれる、もし何かあればな。」
「ホッホ。任せよ。」
「それじゃ行ってくる。」
「マジですか…」