裏切られた"僕"は絶望して逃げたが、入れ替わった"俺“はその後の人生を謳歌する。 作:美味しく食べよう
私はエリス。
ビギン村に生まれて、幼馴染のラッシュと婚約を結んでいる。
彼は根暗で自分に自信がない。でも、優しいことを私は知っている。
いつも農作業をしていて、筋肉も少しついている。でも、彼は弱い。
だから私が剣を覚えた。父に教えてもらって、全力で鍛えた。
これで彼を守れる。そう信じていた。
だが、ある日王都から使者がやってきて、私を連れて行ったのだ。
ラッシュは泣いていた。口では厳しいことを言っていたが、本当は誰よりも行って欲しくないのだろう。
そんな彼を見て、私は覚悟を決めた。私が勇者と共に世界を救うと。
そして、私は王都に着いて、勇者と顔合わせをした。
気持ち悪い男だと思った。ジロジロと私の肢体を舐めるように見てくる。
最初は話しかけられても、必要なこと以外喋らなかった。
でも、毎日毎日話しかけられて、次第に心が絆されていった。
慣れない環境で不安だった私を勇者様は慰めてくれた。
それで、勇者様が愛おしくなって、ある日、体を許してしまった。
すぐに過ちだと思った。でも、この関係が気持ち良くて…
世界を救うまでの関係だと割り切った。
心はいつもラッシュにあると、そう思っていた。
でも、一年も経つと、もうアタシはラッシュのことがどうでもよくなっていた。
その頃から、手紙は出すのをやめて、勇者様との情事に溺れていた。
二年経つ頃に、ケジメとしてラッシュ…農民との婚約を破棄した。
その時に見た顔は、なんだか滑稽だった。
勇者様が脅しをかけて、農民は怯えていた。それを見て、思わずアタシは噴き出した。なんでこんな男を好きになっていたのだろう?心底不思議でたまらない。
それから、王都で訓練を受けていたある日、アタシたちの元に救援要請が入った。
正確には、王宮の騎士団にだ。
なんでも、辺境の『バーン』という町にモンスターの大群が侵攻しているらしい。騎士団で対処しても良かったのだが、せっかくだから勇者様の初陣にしようとなって、アタシ達はバーンに向かった。
本当はその日の内に着く予定だったのだが、勇者様と体を重ねながら行ったので二週間もかかった。野宿している中で体を重ねていたのだ。
それでいざバーンに着いたときには、モンスターが侵攻しているとは思えないほどに賑やかだった。何か様子が違う?モンスターはどこにいる?
色々と疑問はあったが、アタシ達は救援に応じてやってきたのだ。
「町の危機に馳せ参じた!モンスターはどこか!?」
そう勇者様は叫んだのだが、周りの人がこっちを白い目で見てくる。
何故?私たちは助けに来たのだ。そんな目をされる所以はないはずだが…
「勇者様、ようこそお越しくださいました。ですがもう終わっております。
ご覧の通りです。ですからもうお帰りください。」
失礼な物言いをする門番の兵士。後ろにはもう一人兵士がいる。
「はぁ?そんなわけないだろ!いいからモンスターの大群はどこだ!!」
「いえ、ですからもう終わっているのです。」
「いいから通せ!俺たちは救援に応じてやってきた!」
あまりに失礼な兵士の態度に、私も他の勇者様のお供の方も苛立ってきた。
「そうよ!早く通しなさい!」
「もう疲れたー…」
「まったく、なんでこんなことを…」
「ですから、スタンピードはもう終わりましたから、もう必要ないです。
お越しいただきありがたいですが、遅すぎです。」
これにはアタシもカチンときた。
わざわざ来てやったのに、遅すぎる?三週間はかかる道のりを二週間で来てやったのに…
「なんだと…?勇者である俺を通さないだと?お前、いい度胸してるじゃないか?死ぬ覚悟はできてるんだろうなぁ!?」
勇者様は剣の柄に手をかける。
こんな話の通じない兵士は生きてる意味がないと思ったのだろう。
アタシもそれに同意している。
それに、たとえ人を斬り殺したとしても、勇者様は特権があるから罪は免れる。
「……シュラさんを呼んで来い……今すぐ……………」
「……分かりました…………」
兵士達も今頃後悔しているのだろう。
だが遅すぎる。あの世で悔いるがいい。
すると、ここでは聞くはずがない声が聞こえた。
「その必要はねぇよ。」
「シュラさん!!」
「来ていたんですね!!」
はぁ!?なんでラッシュがここに?!
ていうか今、あいつシュラって言われてた?
反対にしただけじゃん!ダサっ!
ていうか少し見ない間にデカくなった…?
アタシはこの時、胸の高鳴りを感じていた。
理由は分からない。自分でも気づかないほどだが…
何回かに分けようと思います。
あ、あと勇者はこの世界の神にチートを授けられています。
それはなんだろうね?この世界はスキルというものがないはずなんだけど…