裏切られた"僕"は絶望して逃げたが、入れ替わった"俺“はその後の人生を謳歌する。 作:美味しく食べよう
言い訳をさせていただきたいです。
寝取られた人の心情とかどうでもよくないですか?
まぁ色々と背景はあるのでしょうけど。
寝取られた側の人は、背景はどうであれ傷ついているのですから…
主人公別人だけどね。
アタシは農民を見て、気づかない程に胸が高鳴った。
その理由は分からない。気づかない程だから、分かるはずもない。
それよりも、何故ここに農民がいるのか。
思わずアタシと勇者様は驚いた。
「な?!何故お前がここにいる!」
「なんでアンタがここにいんのよ!!?」
前に見たときと大分違う。
前は若干筋肉がついている程度だった。
だけど、今の農民は筋肉が完璧になっている。
服の袖から覗く前腕は手首が細く、肘に向かうほど太くなる。血管も浮き出ていて、相当に鍛え込んだ跡だと見える。手首も頑強になっているだろう。
目つきも、前は自信が無さそうな気弱な感じだったのに、今は鋭くなって威圧感がある。ていうか髪は茶色だったのに今は漆黒色なんだけど…
何がどうなってんの?
「別に、ビギン村を出てここにいるんだけど…それが何か?」
口調も前と違ってハキハキと自信満々に言ってくる。
前はオドオドしていたのに…すごい生意気なんだけど。
「なんでただの農民がここにいるんだ??!!」
「別に、農民がここにいちゃ悪いのか?」
さっきからただの農民が敬語も使わず、勇者様に無礼な口調を言う。
イライラしてきた。勇者様はすごく偉いのに。
ただの農民なんかよりもずっと崇高な意志を持っているのに…
イライラしているのはアタシだけではないのだろう。
後ろに控えていた賢者様と弓使い様が文句を言い出した。
「あんた………………さっきから勇者様に生意気なのよ。分を弁えなさい。」
「そうよ!跪きなさい!」
そうだ。本当はただの農民が対等に口を聞ける存在じゃないのだ。
跪いて頭を下げるのが普通なのだ。絶対に顔を見て喋るなど、あってはならないのだ。
「なんで?なんで俺が勇者に跪かないといけないの?そんなに勇者が偉いことしたの?俺、本当に何も知らないから教えて欲しいんだけど??」
こちらを馬鹿にした顔をしながらそう言ってきた。
全員がカチンときた。不敬罪で命を断たねばならない。
でも、なんでだろう?本当に勇者様は偉いはずなのに…
なんで何も成し遂げていないの?
古来から英雄は、数々の偉業を成し遂げてきた。
勇者様は召喚されてから二年と少し、ずっと王城で過ごしてきた。
そりゃ、ダンジョンに行って鍛えたけど。
王国の外に出たことはこれが初めてだ。
でも、何も成し遂げていない。何で偉いのだろう?
そう疑問に思っていると、突如、頭が割れるような感覚に陥った。
何か…私はいけないことをしている?
なんで?なんで勇者様は偉いの?
なんでラッシュと対立しているの?昔は婚約者同士だったのに…
なんで?なんでなの?
イライラと頭痛のせいで気分が最悪だ。
すると勇者様が、
「コイツ……死なないと分からないのか!!」
と言って、斬り掛かっていった。
よかった…これで頭痛も治るし、イライラも少しは解消される。
「シュラさん!!」
「危ない!!」
門番の兵士がそう言うが、もう遅い。
「フン!勇者様にデカい態度するからよ!」
「そのまま死んでなさい。間抜け。」
「マジでなんでこんなとこにいるのよ…最悪…」
「ハッハ!死ねええ!」
勇者様が上段から真っ向に斬る。
絶対に避けられない。はぁ…早く死んで…
だが、次の光景に、私は思考が停止した。
「え?いやですけどww」
なんと、農民が勇者様の真っ向斬りを指で挟んで止めたのだ。
そんな神業、誰も出来ないのに…王国の騎士団の団長でさえそんなこと出来ない。
しかもあんな余裕そうな顔で。
「ッッッ?!?!?!」
勇者様が混乱している。当たり前だ。あんな神業、フィクションの中にしか見ないようなものだ。
だが、戦いにおいて、その隙は致命的だった。
「勇者様!お気を確かに!!」
直後、ドゴンッという、人間から出ない音が聞こえた。
勇者様が顔面を殴られて吹っ飛んだ。
軽く叩いたように見えたが、桁違いの威力を持っている。
「ブッッッッ!!」
無様な声を上げて吹っ飛んだ。
地面をそのまま転がる。早く加勢しなくては!
だが、それよりも早く農民が踏み込んだ。
「大丈夫ですか!今起こしますから!!」
そう言って、腕を掴んで起こそうとしたのだろう。
だが、勢いがありすぎて、そのまままた飛んだ。
「「「なっ!?!?!?」
驚いた。多分人生で一番驚いたと思う。
人類の救世主である勇者様が、ただの農民にボロ雑巾のように扱われているのだ。
「なにしてんのよ?!」
「そうですよ!なんてことしてるんですか?!」
「あんたね!幼馴染だからって容赦しないわよ!」
たとえ幼馴染であっても、これは絶対にダメだ。
許せない。絶対に殺す。
「あのさ、例えば俺が剣を抜いてお前に襲い掛かったとして、お前は黙って斬られるのか?もちろん抵抗するよな?そういうことだよ。」
「「「………」」」
ぐうの音も出ないほどの正論だった。
斬られそうになって、抵抗しただけなのだ。
同じ状況になったら、アタシだったら抵抗する。じゃないと殺されてしまう。
「お前って…あんたいつからそんな口聞くようになったのよ!」
こうやって少し強気に出れば、彼は謝ってくれた。
謝らせようと少し詰め寄りながら、強気に出た。
「いつからだろうね?どうでもいいし。」
なんともない反応。なんで?
前は恥ずかしそうに下を向いたり、目を逸らしたり、まともに喋れないほど気が弱かったのに…それに、こんな突き放すような口調は今までなかった。
ブツッと、何かが切れる音がした。
「あんたねぇ…」
斬り殺そうと思ったが、頭痛がまだ続いている。
まともにやっても勝てない。今は争うことよりも…
アタシは勇者様に駆け寄った。
他の賢者様と弓使い様も駆け寄った。