裏切られた"僕"は絶望して逃げたが、入れ替わった"俺“はその後の人生を謳歌する。 作:美味しく食べよう
もう少しお付き合いください…
「勇者様!大丈夫ですか?!」
「勇者様!」
「勇者様!」
私達が呼びかけていると、勇者様はすぐに目を覚ました。
流石勇者様だ。この回復力はこの方が勇者様である証拠だ。
「貴様…こんなことをして、タダで済むと思うなよ!」
そうだ、こんな無礼な真似をしてタダで済むはずがない。
本来なら不敬罪だ。即刻処刑だ。
「こんなことって?」
だが、農民は臆することなく答えた。
なんなんだ?この自信は…
さっきから頭痛もイライラもマックスになってきて、本当に気分が悪い。
「貴様が俺の顔を殴ったことだ!!」
「ふーん。じゃあテメェが剣で斬り掛かってきたのはどうなんだよ?」
普通、剣で斬り掛かるとは、それだけで殺人未遂の罪になるし、もし死んでしまったら殺害の罪になる。
だが、勇者様はそういう罪は免除される。勇者様のご意志による、必要な犠牲だったと解釈されるのだ。
当たり前だ。魔王を倒すという崇高な意志をお持ちの勇者様だ。
その勇者様が斬り掛かるとは、よっぽどのことなのだろう。
そう解釈されるのだ。勇者様も分かっているのだろう。
「フン!馬鹿め!俺は勇者だぞ!そんなことすぐに
「え?市民に剣で斬り掛かってきたのはまずいだろ。そのあと殴られたとか、お前、恥ずかしすぎだろww」
そう、それがまずいのだ。
市民を殺すのはまだいい。勇者様のご意志と解釈されるのだ。
だが、ただの市民に返り討ちにされたというのは、非常に外聞が悪い。
それを見越して言っているのだろう。
だが言い方が非常にイラつく。こちらを煽ってくるのだ。
「『悲報 勇者 市民に斬り掛かるが、返り討ちにされるwwwww』」
これはキレてもいいだろう。こちらを明らかに馬鹿にしている。
「貴様ァァァッッッ!!」
勇者様も激昂している。私や他の賢者様と弓使い様もだ。
このまま、四対一で戦おうとした。
その時、
「どうかされたのですか?」
この世のものとは思えないほど、涼しく美しく、物語で見る天女様のような声が聞こえてきた。
そちらの方に顔を向けると、声よりも美しい女性がいた。
髪はラッシュと同じ漆黒色で、顔は薄い作りで、目は細い。
顔のパーツはそれぞれが完璧な形をしていて、完璧な位置にある。
ここまで整っていると、もはやこの世のものとは思えない。
寒気がするほどの美人だ。
それにスタイルも抜群。出るところは出て、引っ込むところは引っ込む。
女として負けた気がした。
「おう、ツバキ。いやこの男が俺に斬り掛かってきたから返り討ちにしたんだよ。」
知り合いなのだろう。気軽に喋っている。
ズキンッ
頭痛が少し酷くなった。
なんなのよ、ホントに…
同時に胸が苦しくなった。
まるで、勇者様に抱かれた時のような感覚。
は?あの農民に恋してるの?なんで?自分が気持ち悪い………
「まぁ!大丈夫でしたか!?お怪我はございませんか?!」
農民の体をベタベタ触っている。
胸の苦しみが酷くなった。
農民に焦がれている?
いや、確かに元々婚約者だったけど、今はさっぱり何も感じていない。
農民が何しようが農民の勝手だろ。
いうならば、無関心だ。
それなのに、なぜあの女に怒りを抱いているのだろう?
この話はフィクションです。実際に人を刃物で傷つけたりしないように。
今日はこれでおしまいです。ありがとうございました。