※この作品はR-18です。

NGNL白、恥辱のラスト・ゲーム ~人格排泄ルートに陥った天才ゲーマー少女の末路~   作:こーひーまめ

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NGNL白のラスト・ゲーム ~人格排泄ルートに陥った天才ゲーマー少女の末路~

――始めに、『十の盟約』ありき。

 

【一つ】この世界におけるあらゆる殺傷、戦争、略奪を禁ずる

【二つ】争いは全てゲームにおける勝敗で解決するものとする

【三つ】ゲームには、相互が対等と判断したものを賭けて行われる

【四つ】“三”に反しない限り、ゲーム内容、賭けるものは一切を問わない

【五つ】ゲーム内容は、挑まれた方が決定権を有する

【六つ】“盟約に誓って”行われた賭けは、絶対遵守される

【七つ】集団における争いは、全権代理者をたてるものとする

【八つ】ゲーム中の不正発覚は、敗北と見なす

【九つ】以上をもって神の名のもと絶対不変のルールとする

【十】みんななかよくプレイしましょう

 

――これ破ること、神であろうと叶わず。

 

 これが、ゲームが全てを支配するこの世界――盤上の輪廻における、唯一絶対の理。

 

――しかして知性は、禁忌の彼岸で踊ること、止めず。

 

 だからこそ、この世界では欲望に触発された異常と狂気さえ、ゲームへと姿を変える。

 ゲームの形をした禁忌の悪意。

 それが、この『命令主隷カード』だ。

 今宵もまた、この命令主隷カードの犠牲者に、最後の命令が下される……。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「……ん……? ………にぃ?」

 

 テントの幕を潜って現れた少女は、真っ先に己の傍に居なくてはならない存在が居ない事に、激しい動揺を隠せなかった。

 

「にぃ? ど、どどど……どこ……? い、いっしょ、さっきまで一緒にいいい、居たのに…………!?」

 

 ガタガタガタと分かりやすく震え、『にぃ』と呼ばれる片割れを探す少女の名は白。

 今宵、このテントでゲームを行うために来訪したのだが、どうやらそれ所ではない事態に半狂乱で困惑し続けるのみ。

 沢山の棺に囲まれたテーブルに座る、不気味なテントの主は、咳払い一つ。先に事情を説明してやることにした。

 

「あー、ここね。男は入れないの。自動で外に弾かれるよう魔法が掛かってて」

「な、なんで……? 訳が分からない、男女差別はポリコレに違反する流行りじゃない……」

「そ、そのポリ何とかは知らないけれど、どんな種族だろうと男は立ち入り禁止。この賭場では、それがルールよ」

 

 一瞬、呆気にとられたが、テント――賭場の主である女は怪しく嗤う。

 

「……ルールなんて幻想、幻想はぶち殺すべき……俺ルールを守って楽しくデュエル……」

「ささ、私も暇じゃないの。お嬢ちゃんみたいな、ゲームのゲの字も分からなさそうなお子ちゃまは帰った帰った」

「…………ゲームも、分からなさそうな……?」

 

 その一言に、オドオドとにぃを探し求めていた眼が唐突に据わり、ただ女だけを真っ直ぐに射貫いた。

 

「あらあら? 保護者同伴じゃないと怖くて泣いちゃうだなんて、どう考えてもお子ちゃまでしょう? こんな場所に来るのは、十年早いわよ」

「……にぃはしろの保護者じゃない。わたしたちは二人で一つ」

「ぷっ。つまり、お嬢ちゃんもお兄ちゃんも、二人じゃないとゲームもマトモに出来ない半人前なのね? 何のとりえもない人類種らしいわ~」

 

 嘲け笑う女の声に、ぶわり、と、空気が変わる。

 

「……ゲームも、マトモに出来ない……?」

「……ふぅん?」

 

 変なちびっ子という認識を、女はじんわりと背に浮かんだ汗と共に改める。

 あどけない体躯から発するプレッシャーは、決して弱小なる獲物が醸し出せるモノではなく、獲物を喰らい潰す強者が纏うソレと同等。

 

「……『  』(空白)は、売られた喧嘩は買う……そして、ステフ達も返してもらう……!」

「ステフ? ……あー、あぁ、確か、『私』の事だっけ?」

 

 そんな怒気もどこ吹く風と、ステフと呼ばれた女はワザとらしくとぼけ、自らの豊満な胸元に手を当てる。

 

「……確かに、お前の外見はステフ……けれど……」

 

 人の神経をイチイチ逆撫でしてくる態度に、なおさら白はこの女が、自分達がよく知る『ステファニー・ドーラ』でない事を確信していった。

 

「……お前の中身はステフじゃない……吸血種、目論見はまるっとお見通し……」

「んふふふっ♪」

 

 自分の正体を言い当てられたというのに、全ては筋書き通りに進んでいると言わんばかりに、艶めかしく足を大きく開く動きでテーブルから立ち上がった。

 

「そう、私が最近、巷で有名な女攫いの吸血種。残念ながら、お嬢ちゃんのお友達は私のゲームに負け、みんなウチの商品になっちゃったの♡」

 

 このステフって子も、ね。と締めた吸血種が纏う衣装は、漆黒のローブの下に、胸や女性器といった大事な部分だけ繰り抜いた、悪趣味なハイレグボンテージ。

 

「ステフちゃんも元気で可愛い子だったけど、今は私の皮(スキン)の一枚♪ 商売柄、顔とか声を知られるのは余り好ましくなくってねぇ」

 

 他人の身体を乗っ取ることが出来る吸血種の存在は白も初耳であったが、彼女が見て来たもっと荒唐無稽な超常現象の数々に比べれば、この程度の事は全く不思議ではない。

 異世界から自分達をこの世界へ召喚した魔法など、その最たるものだ。

 

「…………最低、吐き気を催す邪悪」

 

 しかし、他人の身体を乗っ取り、下品な恰好をさせて悦に浸る輩の存在は、人生で出会った下衆のトップレコードを余裕で更新。

 それが異世界で初めて出来た友人の肉体を使っているとなれば、尚更だ。

 

(……やっと捕まえた足取り……絶対に逃がさない……にぃが居なくても……!)

 

 白は、ここにやってきた当初の目的を自分一人でも敢行すべく、吸血種にか細い指を突き付けた。

 

「……お前に、十の盟約に則ってゲームを申し込む……」

「へぇ?」

 

 少女が口にした台詞は、あらゆる暴力、略奪、殺傷を禁じ、全てをゲームで決するこの世界において、引き抜いた拳銃を相手へ突き付けるも同然の意味を持つ。

 

「十の盟約、その3。『ゲームには、相互が対等と判断したものを賭けて行われる』――お嬢ちゃんが賭けるモノは?」

「……わたしは、わたし自身を賭ける……煮るなり焼くなり、売るなり好きにしていい……」

「ひゅ~っ♪ 大胆に賭けたわねぇ」

「……代わりにお前は……このリストに書かれた全員の身柄を、わたしと専売契約を結び……既に買われた者が居た場合、その売った顧客リストもこちらに寄越す……」

 

 相手が商人であることを突き止めていた白の兄が、あらかじめ用意していたリストには、吸血種の女が攫ったと見なされている、行方不明になった知人友人達の名前が刻まれている。

 

「なるほど、なるほど……」

 

 確かにこれは、かなり油断ならない相手が仕組んだ条件だと、吸血種は受け取ったリストを眺めるフリをして考察する。

 目的は言うまでもなく、このリストに書かれた全員の奪還だろう。

 だが、十の盟約に則ったゲームは、互いの合意が無ければ成立しない。

 例えば『友人を全員返せ』のような、勝てば商品を一つ仕入れ、敗北すれば在庫を大量に失うような条件では、こちらがゲームに乗らない可能性を危惧したのだろう。

 しかしこの条件ならば、こちらが敗北しても失うモノは、既に商品を買った顧客の信用ぐらい。

 悪くない条件に思える。

 

(と、見せかけて、これは……)

 

 こちらを、完膚なきまでに叩き潰すための布石であると、吸血種は確信した。

 顧客リストを渡す――この一文が意味しているのは、こちらの所在を掴んでいる者を敵に回すという事だ。

 おそらく、この兄妹は自分とのゲームに勝った後、直ぐにでも客の所に乗り込み、ゲームで商品を回収するつもりなのだろう。

 その際に恐らく、様々な好条件を餌に吹っ掛け、釣られた事も気付かぬ相手の全てを根こそぎ奪い取る。

 そして、裸一貫になった客に囁くつもりなのだ。

 

(私のマーケットや、他の客の情報を教えれば、全部返してやる……って所かしら)

 

 商売は市場と客、どちらが居なくなっても成立しない。

 あとは何処からでも崩せてしまうだろう。

 ここまで見越して条件を組んできた相手ならば、ここから更に悪辣な末路を味合わせる用意があるかもしれない。

 

(つまり、こちらも全てを賭けているも同然……)

 

 それら全てを重々承知した上で、女吸血種は――

 

「いいわよ。このゲーム、乗ったわ」

「………撤回は、なし」

「当然――盟約に誓って(アッシェンテ)」

「盟約に誓って(アッシェンテ)」

 

 ゲームに乗ることを確約した。

 これによって、どう足掻いても先の条件を覆すことは出来ず、あとは投げられた賽のまま勝者と敗者が決するのみ。

 

「じゃあ、十の盟約その五。挑まれた私が、ゲームを決定するわね」

「……好きなのを用意すればいい」

 

 ローブを翻した吸血種は、テントの中に一つだけ置かれたラウンドテーブルへと、一対に置かれた椅子へ腰かける。

 

「じゃあ、このカードゲームにしましょう」

「……カードゲーム」

 

 白も椅子に座り、弾いた指の音を合図に光が凝縮して出現した、カードの山札を睨んだ。

 大きさはトランプより、一回り大きいほど。

 黒い札に、うっすらと桃色に発光するハートマークが浮かぶ。

 そのハートの光は、まるで浅く呼吸を繰り返しているように明滅し、得体のしれない不気味さを醸し出している……。

 

「これは、命令主隷カード。聞いたことはあるかしら?」

「……ない、ルールを教えて」

「ええ、少し長くなるけど覚えられるかしら?」

「……早くして」

 

 敵意と不機嫌さを隠そうともしない態度も、これから商品になってしまうと考えれば見納めであり、愛らしさすら感じる。

 気にも留めず、女は命令主隷カードのルールを説明し始めた。

 

「1つ。手札が常に5枚になるよう、自分のターンが始まった時に、共有する30枚の山札から引く」

「……ふむ」

「2つ。先攻は主、後攻は奴隷になって、主となったプレイヤーは、カードを好きな枚数プレイする。奴隷となったプレイヤーは、プレイされたカードで刻まれた命令を、全てを賭けて執行しなければならない」

「…………カードで刻まれた命令?」

 

 白が元居た世界にもパーティゲームとして、カードに書かれた指示を実行しなければならない。といった類の物は珍しくなかった。

 だが、『カードで刻まれた命令』という一文に引っかかりを覚えた白は、吸血種に聞き返す。

 初見のゲームにおいて、不明瞭な部分を残しておくことは、そこから足元を掬ってくださいと急所をさらけ出すのと同意義だからだ。

 

「んー、そうね。これは口で説明するより、実際に見てもらった方が早いかしら」

「……実際に?」

 

 吸血種の女が再び指を鳴らすと同時に、ギィ……と、木々が擦れ合う音が響き、棺の蓋が一つ開く。

 そうして、中に納められていた『商品』の一個――

 

「この獣人種の子を使って、ね♡」

「……っ! いづなたん……っ!」

 

白が探し続けていた友人の一人、初瀬いづながひたひたと白日の下へと歩みを進めた!

 

「……いづなたん! いづなたん、白ダヨー……白、だよ……?」

「……………」

 

 こちらを視認したら反応を返さない筈がない友人は、ただ虚空を見つめたまま不動。

 捕らえられ、一糸纏わぬ幼い裸体を野外に晒しているというのに、心ここに在らずと背筋を伸ばすのみであった。

 

「……いづなたんに、何をしたの……!」

「何を――って、この獣人種は、身の程も弁えずに私にゲームを挑んで無様にこうなった……それ以上の説明が必要かしら?」

 

 白が元居た世界で言う、フェネックのようなケモ耳と尻尾を持つ獣人種、初瀬いづなは、白と兄のゲーム友達と言った間柄であり、そのゲームセンスは種族としての序列は低くとも、そう簡単に後塵を拝すレベルではない。

 

(……どんなイカサマを使われたの……いづなたん……)

 

 十の盟約、その八にあるように、ゲーム中の不正発覚は即敗北となる。

 これは裏を返せば、バレなければどのようなイカサマでもまかり通る事を意味している。

 猛者たちの間では最早一般常識といったレベルの認識であり、『  』が今まで戦って来た数々の猛者達も、多種多様なイカサマを仕込み、確実に勝利をもぎ取ろうとしてきた。

 

(……今回も、間違いない……!)

 

 ゲームは、既に始まっている。

 どのような些細な情報からでも、イカサマトリックの手掛かりを掴まなくてはならない白の眉間にシワが寄り、いづなの裸体を凝視するが――

 

「考え事も良いけど、続けて良いかしら。ルールはぜ~んぶ聞いておかないと、酷い目に合うわよぉ?」

「……黙って、いま考えちゅ」

「――この子みたいに、ね♡」

 

 シュッ。

 と、風切り音と共に、女の手が山札を経由し、いづなへと向けられた。

 ドロー、カードスロー。流れるような動作で放たれた一枚のカードが、いづなの額へと突き刺さる――

 

「……っ、吸い込まれ、た……?」

 

 そんな当然の物理法則を無視し、カードはいづなの頭へと吸い込まれていった。

 刹那、まるで電源が入ったロボットのようにビクンと身体が震え、

 

「ァ! …………ぅ?」

「……い、いづなたん……!」

 

 初めて反応らしい反応をした友人に、白の表情が芽吹くように緊張を解き、第一声。

 

「はい、命令を受理しました」

「……いづ……?」

「直ちに実行します」

 

 有り得ないほど淡々とした機械的口調に、背筋が凍り付いた。

 しかも、変化はそれだけに留まらない。

 地面から現れた、たっぷりローションが塗られた極太ディルド。

 それへと、迷いなくいづなは己の尻――アナルの入口へと押し当て、

 

「このディルドを――ロリ獣人種ケツマンコへと、根元までぶち込ます♡」

 

 両脇を開いて腰を突き出し、プニっとした未成熟の性器を見せつけるようなガニ股ポーズで、宣言してのけた!

 

「……なっ!? ま、待って、それなんてエロゲ……!」

 

 口では冗談めかしていたが、手は反射的に友人の狂行を止めようと椅子を立ち、いづなへと伸ばされたが――

 

「ッ゛!?」

 

 バチィ!

 と、介入を拒むような痺れに阻まれ、尻もちをついてしまう。

 

「残念♪ 命令実行中は、外部からの物理的干渉は全てカットされちゃうの。人類種如きが無理に越えようとすれば、どうなっても知らないわよぉ?」

「……くっ、いづなたん! いづなたん!」

 

 物理的干渉と言った以上は、精神を揺さぶる事はできる筈だと、白は彼女が正気を取り戻すことに賭けて名前を呼び続ける。

 

「っふふ♡ 命令主隷カードには、微弱な洗脳効果があってね」

「はっ♡ はっ♡ はっ♡」

 

 しかし、吸血種が言う通り、いづなの瞳と額にはハートの文様が浮かび上がっており、発情期の獣のように舌を出した蕩けきった表情で、ヘコヘコと腰を動かし亀頭とアナルを擦り合わせる事に夢中。

 友人の必死の静止にすら、欠片も耳を傾けず、

 

「本来ならゲームが潤滑に進むよう、羞恥心を取り除く程度なのだけれど……生き物って頭空っぽになっちゃうと」

「はっ♡ はっ♡ はっ――」

「『加減』って言葉すら忘れちゃうのよねぇ……♪」

 

 

「おげピゅッ!♡×?」

 

 

 メリメリメリブチュ! と、肉を強引に引き裂く音と、内蔵を轢き潰されたような間抜けな悲鳴!

 宣言通り、両足を跳ね上げ全体重を掛けると、いづなは一気に根元まで己のアナルへと極太ディルドをぶち込んだ!

 ディルドの形へと歪にせり上がる腹部。

 ピン、と天頂に向けVの字に筋張る両足。

 そして――

 

「ピッ――お゛っ……ン゛オ゛オ゛オ゛オォオォォォォ~~~~~~~~!!♡♡♡ ヒッぎッひいいぃぃぃいいぃぃ~~~~~~~~~~~~~!?♡♡♡」

 

 文字通り身をズタズタにする破壊的アクメに、仰け反りアヘ顔を晒し、ケツイキにケダモノ嬌声を響かせた!

 

「ひっ……!」

「の゛お゛お゛ぉぉぉおぉイグッ!♡ イグッ!!♡ ケツマンコイグッ!!!♡ ロリ穴拡張アクメでイギっ、イギぢっ、イギぢぬ……イギ死ぬぅぅぅ……!♡×」

「あ……うっ……」

 

 鼓膜を揺るがすほどのイキ声と、眼球を裏返し、食い縛った歯から零れた唾液交じりの泡を、ビンビンに勃起した貧乳乳首へと垂らす友人の変わり果てた姿に、白は茫然自失の呻きを漏らす事しかできない。

 

「はいはい。お尻裂けてイキ死んじゃう前に、やることがあるでしょう?」

「ぎッ! イギっ、ぎっ、ぎぃぃ……は……はい゛ぃ……♡」

 

 白の言葉には微塵も反応を示さなかったというのに、吸血種の命令は絶対と言わんばかりに、ビクンビクンと痙攣を繰り返す身体へと鞭を打ち、両指を震わせ、

 

「め゛っ、め゛いれっ、命令、完遂、ぢまし……だ……♡」

 

 不出来なダブルピースを作り、解呪の言霊を紡いだ瞬間――

 

「ぶぴッ♡ ぃ――――…………」

 

 いづなの額に飲まれて行ったカードが飛び出し、女の手元へと戻っていった。

 

「はい、よく出来ました♡」

「……えっ、あ……」

 

 カードがいづなの体内から出ていくと同時、まるで悪い夢でも見ていたかのように、彼女の尻穴へと突き刺さっていたディルドは消滅し、もう手を伸ばしても痺れるような感覚が襲い掛かって来ない事が分かると、

 

「……い、いづなたんっ!!」

 

 即座に白はいづなへと駆け寄り、その華奢な身体を抱き起した!

 

「……いづなたん! いづなたんッ! しっかり!」

「………………」

 

 あれほど激しい痴態を晒した姿とは一転、ただ無表情で虚空を見つめるいづなの身体には一切の力が入っておらず、手の甲はだらんと地面を擦っている。

 しかし、身体は未だ絶頂の余韻に震えており、陰核が充血しきって顔を出す肉筋はアーチを描く失禁に濡れ、白の細腕なら両方とも入ってしまいそうなほどガバガバに拡張されたアナルも、ヒクヒクと風通しよく内臓が動いていることを証明していた。

 生きているのに空っぽ――抜け殻。

 そんな単語が、白の脳裏に過った。

 

「……もう一回だけ、聞く」

 

 混迷に沸き立っていた頭が、透き通っていく。

 淡々と、それでいて己が名に似つかわしくない、

 

「いづなたんやステフに、何を、したの」

 

 ドス黒い殺意を込めて、白は吸血種を睨み質した。

 

「何って、ゲームをしただけよ。ささ、商品によるデモンストレーションも終わったし、ルールの続きを説明するわね♪」

「…………」

 

 今すぐにでも友人をこの様な目に合わせた怨敵を破滅させてやりたいという衝動と、ゲームのルールを理解せねばという本能が白の中でせめぎ合い、

 

「………………続けて。余計なデモは要らない。口だけで、全部分かる」

 

 結局、友人の報復より、ゲームの理解を選んでしまう自分の不出来さを噛み潰すよう、続きを促した。

 

「とまあ、こんな感じに3番目のルール。入れられたカードに刻まれた命令は実行し、『完遂のポーズ』を取って『命令完遂』を口にして初めてクリア。解呪されて体内から出ていくわ。そして、命令を完遂した奴隷は主になって、主は奴隷に交代。次のカードを奴隷に使う。基本はこの繰り返しね」

「……出て行ったカードはどうなるの」

「出て行ったカードは、そのまま捨ててゲームから除外するか、1枚だけ自分の手札に加えるかを選べるわ。すんごい命令だった場合、自分の物に『キャプチャ』して、逆に相手に使っちゃうのも良いかもね♪」

 

 自分が切ったカードは、『1枚だけ』相手が奪える。

 白の背筋に、冷たい物が走った。

 それが意味しているのは……、

 

「……1枚だけ奪える。ということは」

「察しが良いわね、4つめ。カードは一度に、何枚でも使用していいわ。複数の命令を使うと、それらが使用者の苦痛や恐怖を伴う『負の体験』から自動でミックスされ、1つの命令になるの」

「……一度に、何枚……でも……」

 

 いづなが受けた壮絶な凌辱で使われたカードは、たった1枚。

 アレに付加して、4枚もの命令を付け加えられたら……。

 

「その点は5つ目。種族的な限界を超えた『空を飛べ』とか『装甲を剥がせ』みたいな命令や、ダイレクトに『死ね』みたいな命令は自動で改編されるようになってるから。命令をこなすのに必要なモノも、カードが全部用意してくれるわ」

 

 だから出来ない事ばっかりの人類種は、それだけで超有利なベリーイージーモードなのよぉ♪ と、見え透いた最後の挑発は聞き流し、ゲームへの理解を深めていく。

 

「……勝利条件は?」

「相手が命令のギブアップを認めるか、実行不可能な状況に陥る。もしくは、山札の一番底にある『支配者』のカードを引けば勝ちよ。これが6つめ」

「……底の1枚を引けば、どんな展開でも勝ち……山札の合計は?」

「30枚。手札は5枚でスタートするから、始まった時は20枚になるわ」

「……他のルールは?」

「無いわよ、これで全部」

 

 この僅かな問答の最中――既に、白は己の勝利を鮮明に弾き出していた。

 

(……根幹は、棒消しゲームと一緒)

 

 異常で変態的なれど、本質的には最後の1枚を目指し、山札を削っていくゲームならば……全ての条件は整っている。

 

(……このゲームは、しろの得意分野)

 

 二人、零和、有限、確定、完全情報。

 いわば、チェスや将棋、○×ゲームといった、内容に一切の運や感情が絡むことのないジャンルのゲーム。

 機械やAIが支配する領域――その玉座に君臨するのが、この白と言う少女だ。

 

(……負けは、無い)

 

 そっと抜け殻の友人を寝かせ、毅然と立ち上がった少女の燃ゆる瞳の裏側では、超高速で処理し終えた無数のパターンが仕舞われている。

 相手がどのようにカードを切っても、どのようにカードを回収しても、最後には支配者のカードを握っているのは自分。

 一呼吸にも満たないような僅かな時間で、白はこのゲームに起こりうる数学的な全ての展開を暗算予測しきっていた。

 30枚のカードが織りなす、あらゆる展開パターンを網羅し記憶できている白にとって、残る敗北の可能性は、ただ一つ。

 

(……どんな命令にも、絶対に負けない……!)

 

 どのような過酷な命令だろうと完遂し、ゲームを最後までやり遂げる。

 勝利へと続く道筋を組み上げた白は、なお油断なく、対敵を睨んだまま席に着いた。

 

「ふふっ♡ さぁ、ゲームの始まりよ。まずは」

「……カードはしろが切る……いい?」

「あら、どーぞどーぞ♪」

 

 楽が出来て良いわぁと、余裕を見せる女を無視し、白はカードを切って自分、相手に5枚ずつ手札を配る。ディールのイカサマを防ぐためだ。

 

「じゃ、ゲームの素人さんに先行は譲ってあ、げ、る♪ あぁ、それと。言うのも今更なぐらい当然だから黙ってたけれど――」

 

 女は、自らが乗っ取るステファニー・ドーラの面貌を蛇の如く怪しく歪め、嗤う。

 

「貴女の命令は、このお友達の身体で受け止める事になるから、選ぶカードは慎重に」

「……じゃあ、コレとコレとコレ」

「選らんだ方が――ひょ?」

 

 シャッ、シャッ、シャッと女の話半分に、白が切ったカードが友人であるステフの額に吸い込まれていき――

 

「デュフフ……ステフちゃぁん……♪」

「な゛っ!?」

 

 強烈な性臭を放ち、全身にぶよぶよと脂肪が乗った、生理的嫌悪感を嫌でも掻き立てられる全裸の中年が、女の隣に出現した!

 背中を丸めて呼吸は荒く、口元はだらしなく緩み、だと言うのに股座の剛直だけはご立派に、圧倒的な存在感を誇示している!

 

「ほ、ほほ、ほら……おじさんのおちんちん、10万でご奉仕してくれるんだろぉ……? い、今更、無しとか、いい、言わないよねぇ……?」

「はぁ!?」

 

 頭に刻まれた命令は、その瞬間に本人も理解できる。

 故にこの、あまりに迷いも容赦もない仕打ち――

 

「ちょ、貴女っ、友達相手に手加減とか無いわ」

「口答えするなこの淫売ビッチがぁぁぁぁぁぁ!!!」

「んぐぼぉお!!?」

 

 3枚のカードを組み合わせた【オッサンのイラマチオザーメンを一滴残らずごっくんする】という命令に、当惑を隠せないステフの唇を塞ぐよう、オッサンのデカマラがぶち込まれた!

 

「おごぉ!? ぐびゅ、お゛っ、おげぇぶぇぇ!? ご、ごんな、ぐざっ、汚物ちんぽを゛っ、どもだぢに、あなだっ!?」

「オラッ! オラッ、もっと奥の、喉マンコでご奉仕するんだよぉ!」

「ごぶぷおぉ!?!?」

 

 椅子に座ったままの横顔を強引に鷲掴み、自分の股座を力任せに女の鼻先へと押し付けまくる乱暴なイラマチオに、たまらずステフの碧眼が裏返る!

 

「ごぶっ、やめっ、いぎ、いぎができっ、おえっ、おご、おげえぇぇぇ!!!」

「ぶひぃ~、ステフちゃんの喉オマンコさいこ~。いいよいいよ~、その窒息寸前の間抜け面、すっげぇチンコに来るよ~」

「ぶっ、ぶじゃげっ、ざ、さっさと、だして、射精すもの、だじぇえぇぇぇ!!!」

「ふひひっ、じゃあドスケベなステフちゃんのリクエストにお答えして――」

 

 オッサンは、根元まで一気にペニスを打ち付けると、そのまま――

 

「顔面便器になってもらおうかなぁ~!」

「ぐぶぇ!?」

 

 力任せに倒れ込まれ、たまらずステフの身体が椅子から転げ落ちる!

 仰向けに倒れ込んだステフを介抱など、当然する訳もなく、オッサンはまるで和式便器に跨るように整った顔面へと尻を押し付けると――

 

「射精すぞ、ちゃんと飲めよ肉便器っ!」

「ごっ、びゅぶぇえぇぇぇ~~~~~!?!?」

 

 まさに小便でも足すような形で、ステフの喉奥へとザーメンをぶちまけた!

 

「ぶえっ、ごっ、ばびゅ、が、っ、がっ、あごぁ………!?!」

 

 まるで頭を潰された虫のように、手足をじたばたと藻掻かせて抵抗する女だったが、圧倒的な質量差を人類種の肉体で覆すことなどできる訳もなく、

 

「うっ……ふぅ~~~……」

「ぶぎょぶあぁぁぁぁ~~~~~!!?」

 

 オマケと言わんばかりの放尿まで、胃の中へと直接注ぎ込まれてしまう!

 

「ふい~、射精した射精した。よっこいせぇ」

「あ……あがっ……あがぁ……ァ…………!」

 

 ようやくオッサンが顔面から腰を退かしたが、限界まで瞼を開き、陰毛が張り付いた口をぽっかりと開けたまま、ひっくり返ったカエルのような姿勢から女は動けない。

 息をするだけで汚物の臭いがむせ返りそうなほどに汚染された呼吸と、便器扱いされた屈辱やショック、単純に椅子から倒された衝撃がまだ残っていたせいである。

 しかし、放心状態な便器の様子など、オッサンは歯牙にもかけず――

 

「さて、じゃあ次はステフちゃんの、むちむちデカパイでも味わおうかな」

「ッ!?」

 

 自分の胸を鷲掴みにされた痛みで我を取り戻すと、一目散にダブルピースを作り、呪文を唱えた。

 

「めっ、『命令完遂』ッ! さっさと、消え失せなさいッ!!!」

「ぶ、ぶひぃ――――――…………」

 

 蹴り飛ばされると同時に、色んな意味で濃かったオッサンは短い悲鳴だけ残し、跡形もなく霧消。

 命令を完遂した女の額から、白が使った3枚のカードが飛び出した。

 

「【ごっくん】カードをキャプチャ! 私の物にするわ!」

 

 その中から、1枚のカード【ごっくん】を取り出して掴み取ると、女は身体を起こし、正気を疑うような目で白を睨み上げた。

 

「な、なによ今の命令ッ!? あ、貴女っ、本当にこの子と友達なの!? うぷっ――も、もしかして性奴隷とかそんな奴ッ!?」

「……いや、特にそういうのじゃない。普通の関係」

「嘘だっ!!!」

 

 嘘を言ったつもりはない白は、心底心外だと言った表情を浮かべ、

 

「……どうやら、分からないようだな。これが俺達の結束、絆パワーの力……!」

「き、絆パワー!?」

「……ステフならチョロ……ゲフンゲフン優しいから、後で事情を説明したらきっと許してくれる」

 

 実際は怒り散らすだろうし喚き散らすだろうし泣き散らすだろうし、三日三晩ぐらいは部屋に閉じこもったままかもしれないが、最終的には立ち上がり、また普段通りに戻るだろう。

 そういったステフのタフさを、白は内面とてもすごい事だと羨んで、認めている。

 

「……だからステフを盾にすれば、私が手を緩めるなんて、思うな」

「くっ……!」

 

 吸血種の女があえて自分の姿や、強靭な獣人種の身体ではなく、散々コケにしてきた人類種の身体を憑代に選んだのは、商品になった知人友人を取り返しに来る連中への肉盾として利用するため。

 これだけで何もできずに負けていった連中も少なくないため、女にとってはイージーゲームへと持ち込むための常套手段だったのだが、

 

「どうやら一筋縄ではいかない相手、のようね……半人前のゲーマーと馬鹿にしたのは、謝ってあげるわ……うふふうっぷ……」

「……別に謝らなくていい。どうせお前には再起不能になってもらう」

 

 込み上げる嘔吐感と格闘しながら認識を改め、油断ごと胃に戻し込むと、自分の椅子へと女は座り直して、手札を握った。

 

「ふん、最初は少し可愛がってから壊してあげようって思ったけれど――そっちがその気なら、こっちも加減は要らないわよねぇ……!」

「……っ」

 

 女の手札は先程キャプチャした【ごっくん】を合わせて6枚。

 その中から、女は4枚のカードを選び取った。

 

「受け取りなさい、命令よ!」

「ひゃうっ……!」

 

 今度は、白の頭に4枚のカードが吸い込まれていき、頭に異物が入ってくる奇妙な感覚に、思わず声が出てしまう。

 

「……っ!? なに、このっ……ふざけた命令……!」

「あら、だったらギブアップしても良いわよぉ?」

 

 内容を理解した瞬間、苦虫を嚙み潰したような軽蔑を浮かべながら、白は周囲を見渡し始めた。

 命令は既に始まっている。

 その証拠に、静寂が支配していたテントの中に、どこからともなく低く不気味な羽音が聞こえ始めていた……!

 

「……どこから、どこから来る……!」

 

 命令を避けられない以上、内容を受け入れるしかないと分かっては居ても、せめてどこから来るのかぐらいは身構えたいと、不安と焦燥に動いてしまう首。

 

「ああ、このパターンなら知ってるから教えてあげる」

「……えっ」

「上から来るわよ、気を付けなさい」

 

 女の声に、反射的に首を上に向けた白のあどけない顔へと、

 

「ふぎゃうっ!?」

 

 彼女の顔程もある、大きな羽虫がボトリと落下した!

 

「―――!?!?!? にぃ!? 取ってコレ、にぃ~~~!?」

 

 巨大な虫が顔面に張り付いているというおぞましさに、思わずここに存在しない兄へと助けを求めてしまう白だったが、4枚ものカードを切って作られた命令は、当然この程度の嫌がらせで終わりにはならない。

 白の顔面に張り付いた羽虫は、パンパンに膨らんだ腹の部分に溜められた、毒ガスを放出する!

 

「うぶっ!? けほっ、けほっ!?」

 

 粉が混じった大量の粉塵ガスは、一瞬で小柄な少女の全身を包み込み、皮膚に付着するだけでなく、体内にもかなりの量を吸い込んでしまう。

 

「あ~らら、いっぱい吸い込んじゃった」

「けほっ! あぐっ……」

 

 羽虫は自分から離れ、テーブルの上に停まる。

 まるで鋏のように大きな顎をカチカチと不気味に打ち鳴らすが、毒粉塵をモロに吸い込んだ白の視線は、既に虫の事など眼中に入らない。

 

「……はっ……ぁ……ぅ……ひんっ……あぅ、あっ……ア~…………♡」

 

 僅かな間に頬は紅潮し、呼吸は肩でせねばままならないほど。

 額には玉の汗が浮かび、怒りに燃えていた視線も上向きで、虚ろに揺れている。

 一見すれば風邪でも引いてしまったかのような症状だが、

 

(な、なんで……? こんな、し、した、い……)

 

 下半身で燻っていく、秒ごとに肥大化していく衝動は、

 

(いますぐ……くちゅくちゅ……オナニー、したいのぉ……♡)

 

 あっという間にショーツへと一本筋を作り、明確に異常を訴えていた!

 

「毒物に強い森精種や獣人種すら一発で発情させる粉塵ガス、気に入って貰えたかしら?」

「……ふ~……ふぅ~……ふ~っ……♡」

「おやおやぁ? あれだけイキがってたのに、もう私の声も聞こえないのかしらぁ?」

「……うる……さい……♡」

「あら、反応あり。すごいわね」

 

 この凄いは嫌味でなく、純粋な褒め言葉であり、森精種や獣人種用の媚毒ということは、人類種にとっては強烈な依存症や中毒症が残りかねない程に凶悪な代物。

 そんな物を未成熟な身体で摂取しながらも、まだ瞳に理性の光を残す精神力には、中々の怪物性を感じずには居られなかったが、

 

「じゃあ、命令内容も分かってるわよねー?」

「……めいれい……ないよう……♡」

 

 劣情に疼き悶え、朦朧とする意識の中でも、洗脳によって刻まれた内容だけは鮮明に思い出すことができる。

 奴隷は椅子から立ち上がると、自らのロングスカートを捲りあげ、

 

「はい……しろは……命令通り……」

 

 触れても居ないのにグチョグチョに濡れたショーツを脱ぎ捨て、はしたなくガニ股を開き、

 

「これから【虫の媚毒でド淫乱になったトロトロおマンコを見せつけ、本気チン媚びダンスを披露します】……♡」

 

 命令通りヘコヘコと腰を前後に振り、下品に踊り始めた!

 

「……ふっ……ふっ……ふっ……」

 

 両手で摘まみ上げたスカートから見え隠れする、小さな肉豆がぷっくりと勃起した、陰毛も生えていない秘部から滴る愛液を床へと飛び散らせながら、一心不乱に腰を動かす白。

 子宮と女性器をアピールするようなダンスは、確かに大衆に見せられたものではない淫猥さではあったが――

 

「んー、イマイチねぇ……本気でやってないでしょ、貴女?」

「……っ!」

 

 これだけでは命令をクリアしたことにならないとダメ出しを受けてしまい、動揺が表情に出てしまう!

 

「……こっ、これが、限界……」

「限界? この程度で?」

「……そ、そう……」

 

 限界。というのは事実であり、元から女性的な恥じらいに関しては無頓着気味な白であっても、これは流石に羞恥心が酷く勝る。

 命令による洗脳と言っても、効力はあくまで微弱。

 カードの影響がなければ、そもそも踊り方から教わる必要があっただろう。

 

「……ルール5つ目……限界を超えた命令は、改変される……だから、これが、限界っ……!」

「…………」

 

 腰を浅ましく振りながらも、口を達者に回して涙目を浮かべる奴隷の理屈を前に、女は――

 

「ぷっ」

「……なっ」

 

 思わず、失笑を堪え切れなかった!

 

「くっ、ぷくくっ……♪ やっぱりまだお子ちゃまねぇ、貴女」

「……何が、言いたい……!」

「この程度で限界なんて、ひひっ……♪ 随分と生温い所で育ってきたみたいで、大いに羨ましいわぁ」

 

 今回ばかりは油断でも何でもない、確信から来る嘲笑が浮かんでしまい、サディスティックさを隠そうともしない愉悦に、頬が歪む。

 

「ま、別に良いわよ? それが本当に限界なら、そのまま踊り続けても」

「……え……?」

「でも、貴女。なんで命令主隷カードが、『遂行』だけじゃなく、『ポーズと呪文』も唱えないとダメな意味、本当に分かってる?」

「……ポーズと、呪文の、意味……?」

 

 ダブルピースと『命令完遂』の呪文は、只の悪趣味な余興ではない。

 だとすれば、なぜ、わざわざ警告されるほど重要な意味を持つ理由は――

 

――さて、じゃあ次はステフちゃんの、むちむちデカパイでも味わおうかな。

 

「……ッ!? しまった、まさか、この命令で出て来たモノはッ……!?」

 

 白は戦慄と共に、丸テーブルの上へと視線を移す。

 そこには、自分の手札と、山札――それ以外には何もない。

 先程まで、確かにいたはずの、虫が居ない。

 便器イラマの壮絶さに気を取られ、ゲームとしての本質を見抜き損ねた迂闊さを、呪う間もなく、

 

「ぐびぎぃ!?!?」

 

 下半身から脳天へと突き抜けるような激痛が、幼い全身を走り抜けた!

 

「ぎっ!? ひぎっ!? ぎひっ、いッぎぃいいぃぃ!?!?」

 

 訳も分からないまま、人生で感じたことが無い程の鋭痛に歯が食い縛られ、荒れ狂う痛覚が起伏に乏しい少女から、想像もできないような絶叫を引き絞る!

 

「い゛っ、いだいっ! 痛いいだいいだいイ゛ダイ~~~~~~!?!?」

「あっはははは♡ そりゃ痛いでしょうよ? クリちゃんを全力で虫に噛まれちゃ」

「な゛ぁっ!?」

 

 海老ぞりに反り返っていた身体を強引に曲げ戻し、なんとか自らの下半身へと視線を下した白が目撃したのは……

 

「む゛っ、むしっ!? さっきの、虫がきひぃぃ~~~~~~ッ!?」

 

 鋭利な両顎で小さなクリトリスを器用に挟み潰し、自分の股にぶら下がる羽虫の姿だった!

 

「はっ、はなじでっ、しろがらっ、はなれでぇぇぇぇぇ!!!」

 

 巨大な虫に触ることに拒絶感すら覚える間もなく胴体を掴み取ると、反射的に引き剥がそうと引っ張るが、

 

「お゛っ!×? おぎいいぃぃいいぃぃぃ~~~~~~~~!?!?」

 

 虫の咬合力は、種類によっては人間の皮膚を容易く食い破るほど強い。

 ガッチリと噛み締められた顎は白程度の力ではビクともせず、むしろ逆に引き剥がされまいと、力を強めていく!

 

「ちぎれるっ!? しろのグリトリス、がみちぎられるぅぅぅぅ!?」

「ほら、これでよ~く分かったでしょ? ポーズと呪文が必要な理由が。さっさと消さないとコイツ等、命令の範疇を越えていくらでもエスカレートするのよねぇ♡」

「わがった! 分かったがら、これっ、ごれ取ってぇぇえぇぇ!!」

「ふぅん? それはつまり、ギブアップ、って事で良いのかしら?」

「い゛っ……!?」

 

 ギブアップ。それはつまり、ゲームの敗北を認める事。

 涙でグズグズに泣き爛れていた瞳孔が、引き縮まって強張る。

 

「私が貴女にしてあげられる干渉は、本当に心苦しいけど、ギブアップを聞き届けてあげる以外、何もないの。もし、ゲームにも負けたくないし、楽になりたいなんてワガママを通すならぁ~……?」

 

 後は言わなくても分かるだろうと、意地悪く微笑んで、女は深く椅子に腰かけた。

 仲間のため、『  』のプライドのため、ゲームの敗北など絶対に認められはしない。

 

「……ぅ゛……ぁぁぁ……!」

 

 つまり、白が選ぶ道はたった一つしか残されていなかった。

 

「………………て……くだ、さい……」

「ん~、なんて言ったの?」

 

 あらゆる道理を押し込め、己を必死に納得させ、捨て鉢気味に奴隷は叫ぶ!

 

「しろの本気おマンコダンス、見て……ください……ッ!!!」

 

 そのまま、クリトリスに虫をぶら下げた無様な恰好で、腰を再びヘコヘコと動かし始める!

 

「ふぅ♡ ふぅ♡ ふぅぅぅ~っ♡」

「あらぁ、すごいすごい♪ さっきより大分マシになったわ」

 

スカートを両手で摘まみ上げてガニ股を開くポーズ自体は変わらないが、苦痛と恥辱に歪んだ形相も含め、その必死さは段違いだ。

 

「どう、ですかっ、しろの、おマンコダンスはぁ……♡」

「ん~、それでもまだ、マシになったって程度ねぇ……この子がやったのは、もっと凄かったわよぉ?」

 

 そう言って吸血種の女は、自らの胸元――ステファニー・ドーラの胸元へと手を当てた。

 

「っ……ステ、フも、これ、やらされっ……♡」

「やっぱり揺れる物が皆無なのもあるのかしらねぇ……ステフちゃんの時は、こんなに時間かからなかったんだけどなぁ~? 産まれ持ったモノの差かしら?」

「く……ぐッッ…………ッ!!!」

 

 ステフの声で、ことゲームに関して『あの』ステフ以下と罵られる。

 激しい対抗心と洗脳が織り交ざり、女として大切なタガが、また一つ外れていく……!

 

「……ぅぅぅ~~…………!!」

 

 言葉にならないうめき声をあげ、奴隷は自らのスカートを脱ぎ捨て、上着だけの姿になると、

 

「………すぅ……んくぅ!♡」

 

 覚悟を決め、フリーになった両手を自分のロリマンへと突っ込み、そして――

 

「……ほ、ほーら……処女ロリマンの、ガチハメ準備万端、生くぱぁ……だよ……♡」

 

 腰を突き出し、蜜が滴る己の膣内を完全公開し始めた!

 

「……種付け願望むき出しな淫乱メスガキの、本気おマンコダンスで……おチンポ、ガッチガチに勃起していって……ね……♡」

 

 色々と耳年増な白だろうと、絶対に口にしない様な単語の数々も、洗脳の後付け知識だ。

 微弱だからこそ、その効果は判断力や潜在意識すらも狂わせていく……!

 

「どうっ♡ ですかっ♡ クリから、虫ピアスぶら下げたっ、ご開帳ダンスっ♡ ぺちぺち、虫が揺れてっ、おチンポぶら下げてるみたいな♡ みっともない無様チン媚び踊りっ♡」

「もう一声、もう一声って所よ、頑張ってぇ♪」

 

 声援を受け、まさに盤上に挑むといった真剣一色な表情で、下品な淫語を口にし、クリトリスに噛み付いた虫をフリフリと揺り動かす白。

 本人は勝利に貪欲なゲーマーの性に従っているつもりであるが、傍目から今の姿を見れば、ただの物狂いな痴女にしか見えなかった……。

 

「ふーむ……よし、お嬢ちゃんは初心者だし、このぐらいで勘弁してあげましょうか」

「っ!」

「さ、ポーズと呪文をどうぞ?」

 

 しかし、もう止めて良いと言われれば、こんな変態の真似事を続ける理由は一秒たりともない。

 すぐさま奴隷は、くちゃぁ、と膣口から糸を引く指を引き抜いて、ダブルピースを作り、

 

「【命令完すッ!?!?」

 

 あと一言で完成する呪文を、喉奥へと引っ込ませてしまった。

 

「――あらぁ? どうしたの? 言って良いのよ?」

「……い、いま……しろの、おマンコ、おマンコの膣内に……な、なに、か……入って……?」

 

 指が抜かれ、締まる筈の肉ヒダの間に挟まる異物。

 

(……うそ……虫、これ、虫の、虫の……!?)

 

 ソーセージ状の、丸くて長く柔らかい物体に、心臓が止まりそうなほどの危機感が走り抜けてしまったが故の本能的な静止。

 

「そんなの、ちゃんと呪文を言えば消えるじゃない?」

「ぁ……!?」

 

 だが、当然の指摘に気付けなかった数秒の遅れが、

 

「め、【命令完すい】っぎぃ!!?!」

 

 ブォスゥゥゥぅ……―――♡

 と、刺し入れた虫の腹に再度溜まった媚毒を、膣内に直接ぶちまけられるという、凄惨な結果を生むことになってしまう……!

 

「イグッ!? いぐいぐイグううぅうウゥゥゥ~~~~~!?!? しろマンゴイっぐううぅううぅぅ~~~~~~~~~~~~~~~!?×♡ んおおおおぉぉぉぉぉぉ~~~~~!?♡♡♡」

 

 膣内を無数の針で串刺しにされたかのような、暴虐的な毒素。

 それを膣内にぶちまけられ正気で居られるはずもなく、イキ狂いながら仰け反り絶頂!

 全身が悶え震え、舌が飛び出し、首筋をカっ切られたような激しさで潮と尿が噴き出す!

 

「お゛っ、かっ――かひっ、ふひっ!? か、はぁ……ふぅ~、ふ~、ふぅ~~……!」

 

 しかし、致命傷に等しかった絶頂を受けた割には、正気を取り戻すのも早く、

 

「……ふぅぅ……よく、も、やって……くれた……」

 

 息荒く机に突っ伏したままではあったが、確かに相手を睨み上げられるほどの気力と気迫が、未だ白の中で健在であった!

 汗ばむ額から飛び出した4枚の使用済みカードが、狂乱しかねない程の絶頂に耐えきれた最たる理屈だろう。

 

「あら残念。毒が回り切る前に消えちゃったのね」

 

 毒もカードが創り出したモノならば、命令完遂のワードが奴隷の口から飛び出した瞬間、消え去ってしまうのがルールだ。

 実際、白の淫核に噛み付いていた羽虫も既に消滅しており、跡にはジンジンと腫れあがったクリだけが勃起主張しているのみ。

 

「でもまあ、最初の毒は効いてるでしょうし、これで良いとしましょう。運が良いわねぇ貴女? あんなの本格的に人類種の膣内で回っちゃったら、おマンコ敏感になり過ぎて、イキ死んじゃってたかもよぉ?」

「……う、るさい……ひぅんっ……♡」

 

 口では強がってみせる白だが、あくまで消えたのは毒素のみ。

 毒によって引き起こされた重度の発情状態は、確実に数日間、白の幼い身体を苛み続けるだろう……。

 

「……はぁ♡ はぁ♡ しろの、ターン……手札は2枚、よって、3枚引く……」

 

 下腹部から広がる甘美な疼きを、勝負に徹することで強引に誤魔化そうと、椅子に座り直し、カードをドローする。

 

(……想像、以上に、これ、キツいぃ……♡ あと、こ、これが4回……も……? 支配者を引く方針を変えて……いや、ダメ、相手を降参させられる確証がない……けれど……長引かせていいゲームでもない……!)

 

 刹那の間に白の脳内で交錯する、無限にも等しい可能性の網羅。

 支配者を引きに行くなら、ここで使える枚数の限界は3枚。

 これらを組み合わせて、もっとも強力なコンボを思考し――

 

「……くらえっ……!」

「いやぁん♡」

 

 白が選び取ったカードが、わざとらしい喘ぎ声をあげる女の額に吸い込まれていく。

 

「ぁ…………」

「…………」

 

 主である白に出来る事はここまで。

 あとは投げかけた命令が、奴隷を屈服させることを信じるのみ。

 白が選んだ――

 

「んぼぶぅ!」

 

【スライムに頭部を丸呑みされ、その状態で電撃拷問を受ける】という凌辱を!

 

「もがぐっ、ぐむおぉぉ!?」

 

 唐突に虚空から降ってきたスライムが、すっぽりとステフの頭部を包み込む。

 緑色のスライムは非透明なタイプであり、どこか棒人間を連想させるシルエットへとステフの姿を変貌させる。

 

「ごぶぅ!? ぽぶぷっ……!」

(……よし……!)

 

 まるで宇宙服のヘルメットのように隙間のなく、スライムが口や鼻、呼吸穴を塞がれた状態。引き剥がそうと掴んでも沈み込むだけであり、間抜けな見た目とは裏腹に、実態は残酷な拷問具とさして変わらない。

 思惑通りの命令になり、白は内心で感じた手ごたえに拳を握る。

 

(……これで、【命令完遂】は絶対に口に出来ない……)

 

 呪文を唱え、ポーズを取らなければ命令を完遂したことにならないのなら、どちらか片方が絶対に出来ない状況に追い込めば良い。

 口が塞がれてしまえば、たとえ吸血種だろうと、ましてやステフの肉体ではどうやっても呪文を唱えることはできない筈だと踏んだ作戦であり、

 

(……そして、ギブアップは【選択】できる……!)

 

 女のルール説明にあった【命令完遂】と【ギブアップ】の違いを白は聞き逃さず、虎視眈々と活かせる場面を伺っていたのだ!

 

(……【選択】すればいいなら、首を振るだけで……意思表示だけ出来れば、口が塞がってても関係がない……)

 

 頃合いを見て【ギブアップ】するか否かを尋ねてやれば、勝てる……筈のゲーム。

 しかし、懸念すべき事態が無くなった訳ではない。

 

(……あとは……ステフ……耐えて……!)

 

 この戦法で考え得る最悪の展開は、本当に最後まで吸血種の女がギブアップを選ばなかったケースだ。

 口では手を緩めないと言い切った白であったが、そもそも兄と誓い合った最終勝利条件は『全員の奪還』。

 その中には当然ステフも含まれており、再起不能など最も望まぬ結末だ。

 

(……布石は揃ってる……人類じゃ、こんな責め……長時間は耐えられない……)

 

 相手のゲームへの理解度。

 人間では耐えられない命令。

 見せた容赦や呵責とは無縁の冷酷さ、勝利への貪欲さ。

 勝算はあれど、かなりの博打に出ている内心を悟られぬよう、ポーカーフェイスに白は務める。

 

「おぐっ、ガッ、ごぷっ、ごぷぷっ……ぷぐっ!?」

 

 バチ、バチと光の筋がスライムの外皮を走り、やがて――

 

「ぶぎゃごぶがごおぉおおおぉぉぉおおぉぉ~~~~~~~~~!!×?×」

 

 肉を焼き焦がす雷撃となって、ステフの身体を覆った!

 肺から噴き出した大量の空気がボコボコと気泡を作り、全身の肉を痙攣させながら、出鱈目な悲鳴が響き渡る!

 

「ボゴォ、ごっ、ごっ、ぼっ、ゴボォオおおぉぉぉ!×? がぶっ、がぶぇっ、か、かか、カ――ガん゛お゛お゛おぉ~~~~~~~~~~……!!!」

(……頑張って……! ステフ……耐えて……!)

 

 尋常ではないほど野太い絶叫をあげ、椅子に背を預けたまま浮き上がった腰が、パックリと開いた膣内をはしたなく見せつけるステフ。

 女の尊厳など塵に吹き飛ぶ自らが課した壮絶な凌辱に、白はただひたすら祈り続けることしかできない。

 

「が……げっ! げっ! ぇ! ぇぎ、きぷ、きぷぇ…………」

 

 一通り跳ね狂った奴隷の活きが、目に見えて悪くなると同時に、スライムは一旦放電を止めると変形を始め、形成した触手を伸ばし始めた。

 2本は豊満な胸をボンレスハムのように縛り、1本は膣へと伸びて行き、命令を遂行できない奴隷に、更なる苛烈な淫辱が襲い掛かろうとする――

 

(……今ッ!)

 

 今。この瞬間。

このタイミングを、白は待ち望んでいた!

 

「……勝負あった……! ギブアップするなら、今……!」

 

 地獄へのボーダーラインで指し伸ばされた、救いの手。

 今ギブアップすれば、狂ったゲームは終わり、スライムからも解放される。

 降りるならここしかなく、これより先は転がり堕ちていくだけの末路のみ。

 完璧なタイミング。まさに土壇場へと、白はステフを追い詰めていた!

 

「ぷ……ぽぷ…………」

「……聞こえてるなら……首を動かして……イエスなら縦、ノーなら横……!」

「ぺ……ぷ……ぇ……」

「……早く、選んで……!」

 

 しかし、所詮は机上の空論でしかなかったのか……計算が狂い始める。

 ビクン、ビクンと、椅子でグッタリ崩れ落ちたまま、ステフから反応が帰って来ないのだ。

 

「……分かってるの? 喋れないなら、命令遂行は口に出来ない……お前は、チェスや将棋でいう詰みに陥った……!」

「へっ……ぷへ……」

「……これ以上続けても、何の意味も無い……決着はついた……!」

「こぽ……ごぽ! ぉ……」

「だからもう、ステフの身体から出てって!!!」

「あら、それならもう出て行ってるわよ?」

「お願いだか……ら……ぇ……?」

 

――心臓が、見えざる何かに握り潰された。

 致命的なミスを犯した者が等しく体感する、重力が逆転したような浮遊感と、落下し、頭を強くぶつけてしまったような衝撃が、白に、襲い掛かった。

 思わず伏せていた顔を上げ、いつの間にか浮かんでいた目尻の涙も払わぬまま、白はステフを見る。

 すっぽりとスライムを被り、椅子に崩れかかるようにもたれ掛かり、大きく股を開いて失神する……いや、これは、本当に――失神、なのだろうか?

 神速で再計算を続ける白の頭脳が結論を導き出す前に、回答は白の背後から聞こえて来た。

 

「ごめんなさいねぇ、大事なトコで野暮なツッコミ入れちゃって♪」

「………………ッッッ!!?」

「でも私、感動しちゃった。ステフちゃんのこと、口ではツンツンしながらも、本心ではすっごく大切にしてるのねぇ。こういうの、なんて言うのかしら。いい表現とか無いのかしら?」

「…………なん……で…………!?」

 

 聞こえる訳のない口調。聞こえる筈のない声。

 その二つが、同時に白を殴りつける。

 背後へと振り向く、限界まで強張った瞳が映したのは――

 

「……いづな……たん……!?」

「はーい、どうも、いづなたんでーす♪」

 

 明らかに初瀬いづなでは無い『何か』が、紛れもないいづなの声と姿で手を振る、悪夢のような光景であった……!

 

「……なん……どうしっ……ルール……!!?」

「ふふふっ、すっごぉい♡ 素敵な絶望顔、このまま永久保存しちゃいたいぐらい」

「どうしてっ!!!」

 

 席から立ちあがってまで飛ばされた怒号すら、大好物だと言わんばかりに初瀬いづなの面貌を邪悪に微笑ませ、吸血種の女は種明かしを始める……!

 

「どうしてって、口にしちゃうと簡単な事なんだけどね? カードが刺さった瞬間、ステフちゃんの身体から、いづなたんの身体へと移動しました。そ、れ、だ、け♪」

「……命令が……刺さる、瞬……間……」

 

 今にして思えば――確かに、カードが吸い込まれ、スライムが振ってくるまでの間、女は異様に静かだった。

 スライムに襲われるステフの身体から、部屋に寝かされていたいづなの身体へと。

 あの時にはもう、女は移動を終えていたのだ。

 

「……そ、そんなの……イカサ……マ……!」

「心外ねぇ。確かに命令は遂行しないといけないけど、受けた命令を【自分の人格が入った身体でやらないといけない】なんてルール――この命令主隷カードのルールには無かったでしょう?」

 

 全ては、吸血種の掌の上。

 始めにわざわざ、いづなの身体でデモンストレーションをやったのも、全ては緊急時の避難先を確保するための仕込みだったのだ。

 

「……だ、から……全部……分かってて……!」

「悔しかったら貴女もやればいいじゃない……あ、ごめんなさい。人類種ごときじゃ、こんな芸当、できる訳が無かったわよねぇ?」

「……ッ、っ~~~~~~~!!!」

 

 完全にしてやられた屈辱に、白は言葉にならない呻き声をあげ、血が上り切った赤面で女を睨みつける。

 ここで手を出さなかったのは、リアルファイトはご法度なゲーマーとしての矜持であったが、実際に手を出したところで、ひ弱な白の力では、屈強な獣人種の身体を得た女には何の意味も無かっただろう。

 

「絶対にっ……許さない……絶対にだ……!」

「あー、そんなことよりも良いの? えらい事になってるけど?」

「何がっ!?」

「ステフちゃん」

「ステ……ふ……ぅっっ!!?」

 

 女の最低な種明かしに、奥歯を噛み締めている場合ではなかった。

 先程までのいづなと同じなら、ギブアップはできず、ましてや命令完遂もポーズも出来る訳が無く放置されていたステフの身体は――

 

「げ……げぶぇ…………♡」

「……ぁ……あぁぁ……」

 

 口から、膣穴から、乳穴から、スライムに好き放題に侵入され、何倍にも膨張してしまっていた……!

 

「ステフッ!!! ――あう゛っ!?」

 

 思わず駆け寄ってしまった白の手がカードの結界に阻まれる最中にも、ミヂ、ミヂヂ……♡ とおぞましい音を立て、風船のように更に膨らんでいく腹と乳房!

 まだ息はあったが、本当に破裂してしまわないのが不思議なほどに、ステフのシルエットは丸々とした異形と化していた!

 

「ぶっ……ぶくぶくぶくぶぐ……♡」

「あらまぁ、もう指で突っつくだけで、パァン♡ ってなっちゃいそうじゃない。さすが宣言通り、容赦の欠片もない」

「……い……ぁ、や……ぁぁ……!!!」

 

 このような拷問めいた、無意味な仕打ちを命じてしまった主は、ただ尻もちをついて震えながら、スライムが捻じ込まれ、限界を超えて拡張した奴隷のマン穴を見つめる。

 

「……ステ……フ………」

「ご……ごべぇ……♡♡」

 

 茫然自失する白の眼前で、スライムが再び雷を蓄え始め、発光。

 この状態で電気ショックなど流されては、確実にステフの命は無いだろう。

 止める手段はない。ただ、茫然と、スライムに友人が犯し殺されるところを見せつけられる――

 

「はい、【命令完遂】。さ、帰った帰った」

「ぐぽゲッ!!?♡」

「………………えっ……?」

 

 最悪のショーは、しらけ切った観客の一声で、一瞬にしてお開きとなった。

 

「げふっ♡ へふっ♡ えごがっ――へ、へぢげっ♡」

 

 スライムがステフの体内から消滅し、空っぽの器が、椅子から転げ落ちる。

 

「ふーむ、おマンコガバガバ、お腹はダルダル、ブクブクおっぱいも……うわっ、完全に肉チューブ。このままだと誰も買わないわよねぇ……あとで修繕しなきゃ」

「……どうし……て……?」

 

 なぜ助けてくれたのか?

 完全に白目を剥いて仰向けに転がる商品の、水が入った革袋のように垂れ切った乳を摘まみ上げ、やれやれと一息つく女の意図が全く分からない。

 とうとうマトモに回転しなくなった頭で、白は尋ねた。

 

「決まってるじゃない。このままだと採算が合わなくなりそうだから、止めにしたの」

「……さい………さ……ん……?」

「そ、人類種が一体完璧に使い物にならなくなって、それで人類種が一体入荷するんじゃ、採算が合わないでしょ?」

「……ぁ…………」

 

 ああ、確かにそれならば納得だ。と、感情がぐちゃぐちゃになってしまった心の、損得だけを考える部分が、狂った理屈をストンと理解してしまう。

 

「それに、お友達を殺しちゃったら、確かに貴女は壊れちゃうでしょうけど――それじゃあ、面白くないでしょう?」

「……おも……しろ……く……?」

「ええ♪ こんなの序の口。もっともっと面白い命令がまだまだ沢山あるのよ、命令主隷ゲームには♡」

「……だか……ら……」

 

 まだ、終わらせるわけにはいかない。

 いづなの尻尾をフリフリと上機嫌に動かし、吸血種の女はテーブルの上に置かれたカードを手に取って座り、足を組む。

 既に、支配者は私だと、そう言わんばかりに崩壊寸前の奴隷を見下して。

 

「自滅なんて綺麗で退屈な決着なんて認めないわ♪ 貴女にはこの命令主隷ゲームで、そこの人類種みたいにグチャグチャで下品で無様な姿にしてやってから――」

 

 

「完全なる『敗北』の二文字を叩き付けてあ、げ、る……♡」

 

 

 慈悲なき処刑宣告を、叩き付けた。

 

「……はい、ぼく……?」

 

 グチャグチャに。下品に。無様に。

 女の言葉は、実際にそうなった友人を見せつけられながら下された宣言は、酷く白の心を揺さぶった。

 

「……にぃ……」

 

 なぜならば、女が発した言葉は――兄と、自分の、二人の口癖に、どこか――

 

「……ない……」

「ん~? ギブアップか命乞いならもっと大きな声で」

「……敗北は、ない……!」

「――えっ?」

 

 気が付けば、己の犯した過ちに壊れかけていた奴隷は居なかった。

 代わりに慄然と立っていたのは、未だにゲームを、勝利を諦めていないゲーマーの姿。

 

「『  』に敗北の二文字は……ないッ!」

 

 覚醒。

 そう呼ぶ他にない復活は、再び奴隷に闘志を漲らせ、続行の意思を示すようにテーブルへと導き、カードを手に取らせる。

 これは自分独りのゲームではない。

『  』が勝ち取って来たモノ全てを賭けたゲームなのだ。

 

「……次はお前の番。私が使ったカードは、どうする……」

「へっ? いや、貴女、まだやるつもり? お友達をこんな目に合わせてもまだ」

「……ステフには、あとで謝る……!」

「あっ、あとで謝るって貴女っ!?」

「引くの、引かないの……!」

「わっ……私は……」

 

 人類種の、しかも子供が発するようなプレッシャーに動揺してしまう吸血種。

 他の種族に知られれば、笑い者では済まないほど屈辱的で恥辱的な己の有様を、女は甘んじて認めなければならなかった。

 

(……ウソウソウソ、あっれれ~? おかしいぞ~? 普通ならこれで、泣いて命乞いギブアップコースなんだけどな~? どうなってんのよ、アレ)

 

 数々の獲物を商品にして来た女をしても、目の前の少女のゲームへの集中力、勝利への執着心は、怪物と表現するほかに無い。

 

(しかも、自棄やハッタリじゃないわよね。まだ全然、本気で勝つ気よね)

 

 そんな怪物が、こちらの首を刈り取らんと虎視眈々、隙を伺っているとくれば、嘲弄した薄ら笑いを浮かべている場合ではない。

 滲む脂汗を気取られぬよう、女はあくまで絶対的有利を確信した風に、

 

「っ……はいはい、最後まで付き合ってあげるわよ。私は【スライム】のカードを頂くわ」

「……分かった」

 

 抜け殻なステフの額から、既に飛び出していたカードが、女の宣言によって意思を持つように手元へと飛翔する。

 

「これで私の手札は3枚。よって、2枚ドローするわ」

「………………」

「さ~、どうしよっかしらぁ♪」

 

 口調とは裏腹、本当にどうしたものかと、女は慎重に思案せざるを得なかった。

 

(チッ……ここで引きに嫌われた……多分、耐えられるわね……)

 

 温存しておきたいカードを使わずに、目の前の人間種を確実に再起不能にするのは到底不可能。

 

(山札から逆算すると、これを含めて、最高あと3回の命令……壊せない可能性も、視野に入れた方が良いかしら……)

 

 女の方針は、山札の底に眠る【支配者】のカードを握るという選択を、あえて含めない。

 その前に、心をへし折ってやった方が圧倒的に早く、めんどくさい計算も不要で楽だからだ。

 

(この子に、それは通じない……? いや、でも今更【支配者】を引きに行っても……?)

 

 時に、揺るがぬ自信は、相手を揺さぶり自壊させていく。

 絶対的な不利は変わらずとも、勝負の流れは確実に、白き少女へと傾き始めていた。

 

「ふん……じゃあ、これよっ!」

「…………ッ!」

 

 切ったカードは3枚。

 カードを吸い込んだ脳裏に反響する命令を、白は違わず復唱する。

 

「……【発情逆バニー、実況オナニー】……!」

 

 力強い宣言と共に、テーブルの上には多数のアダルトグッズが出現した!

 

「くっ……んぐぅぅぅ♡」

 

 白の格好も、それに伴い胴体だけ隠していないバニースーツに変貌。

 強烈な獣欲が足元から全身を突き抜けていき、ただでさえ毒で敏感になっていた乳首がビン、と勃起し、肉壺からは蜜が溢れ出始める。

 

「はーっ♡ はーっ♡ ふーっ♡」

 

 荒い息遣いで、逆バニーの痴幼女は自分の腕ほどありそうな太さのディルドを手にし、頬に当て、命令を実行し始めた!

 

「ぴょーん♡ エッチなしろうさぎちゃんの、公開オナニーショーへようこそー♡」

 

 感情の起伏が薄い本来の自分とはかけ離れた、媚び媚びの発情メス声を、澱みなく吐き出す白。

 

「これからぁ、食いしん坊な下のロリマンコにぃ♡ ぶっ~といニンジンさんを食べさせて、オトナのメスイキっ♡ しろうさぎが、いつでも妊娠準備完了の、発情肉便器ウサギだってこと、証明しちゃいま~す♡ ちゅ♡」

 

 手始めに、ディルドへと軽いキス。

 そして、そのまま――

 

「お~む♡ じゅっ……じゅぞぞぞぞ~~~~~♡♡♡」

 

 顔面をひょっとこに変形させた、バキュームフェラでディルドをしゃぶり始めた!

 

「じゅぞ♡ じゅぽ♡ おいしっ、チンポニンジン~♡ 偽物でもぉ、しろうさぎは見境ないド淫乱だから、れろぉ♡ お下品バキュームフェラで、ご奉仕しちゃうのぉ♡」

 

 まるでアイスキャンディーでも持つような手つきで、一心不乱に水音を立てて喉奥までしゃぶり尽くす姿に、不満や躊躇は一切感じ取れない。

 まさに本人が宣言した通り、見境の無いド淫乱のような悦楽に身を委ねきっており、

 

「じゅぶぷぅ~~~……ッぱぁ♡ えへへ、これぐらいかなぁ♡」

 

 糸引く唾液でベトベトになったディルドを眺める瞳は、期待感にハートの輪郭すら浮かび上がっている!

 

「それじゃあ、さっそく……とろとろロリおマンコで、一口にしちゃいま~す♡」

 

 そのまま躊躇いなく股をM字開脚すると、鬼頭を膣口へとあてがい――

 

「んっ――おおぉぉぉぉぉ~~~~~~~~~♡♡♡ おチンポ入って来たぁぁぁ~~~~♡」

 

 ズプズプズプゥ♡ と、一気に異物を膣内へと捻じ込んだ!

 

「んぃぃ~♡ おチンポおいしぃ~♡ マン肉えぐれて、子宮悦んでるぅ♡ ザーメン欲しくて、もう降りて来てるのぉ♡」

 

 鼻息荒く、ディルドをピストンさせヨガリ狂う姿に、どこか神秘的ですらあった神童の面影など、最早ない。

 

「と、こ、ろ、でぇ♡ さっきからぁ、気になってるオスも多いと思うけどぉ……」

 

 ここに居るのは、自分のマンコを一心不乱にほじくり返し、

 

「しろうさぎは、実はなんとぉ……処女で~~~す♡」

 

 処女膜すら見世物にする、処女ビッチだった!

 

「こんなドスケベウサギが処女で意外だったぁ?」

 

 ディルドが刺さったままの腰をフリフリさせ、オスのチンポに媚びる挑発を続ける白ウサギ。

 

「というわけで宣伝しま~す♡ この処女膜をティッシュ感覚でぶち抜いてくれる、しろうさぎを女の子じゃなくて、只の肉オナホだって分からせてくれるご主人様、いつでも募集中で~す♡」

 

 両手でマン穴へとハートマークを作り、己の純潔を売り物にしてまで快楽に溺れ、乱れ、ヨガリ狂う。

 恥も外聞も捨てた変態オナニーは、ハートを作った手のままディルドを挟んで、くちゅぐちゅとクライマックスに向けて際限なくヒートアップしていき、

 

「十の盟約なんて気にしないでぇ♡ いつでもどこでも、ヤリ捨て種付けレイプ、期待してっ♡ あっ、期待するだけでぇッ♡ 力任せ種付けプレスで、ボテ腹妊娠想像するだけでイクっ♡ イク、イクイクッ――」

 

「イックぅぅ~~~~~~♡♡♡」

 

 ビクンっ♡ と痴肉を仰け反らせ、ピンと両足を張り詰め、白はメスイキ咆哮をテント中に響き渡らせた!

 

「おっ――ほぉぉ~~~……♡ ほー……♡ ほー♡ レイプ妄想オナニーさいこぉ……しあわせぇ~……♡」

 

 最後には作法と言わんばかりに失禁のアーチまで作り、白ウサギは恍惚に全てを委ねて余韻に浸る。

 

「う、うっわぁ……」

 

 その性奴隷として完璧すぎるオナニーショーを前に、主は感嘆や嘲弄を向ける前に、ただただドン引きするのみ。

 誰もそこまでやれとは言ってない。と、言葉を失うばかりだった。

 

「すごっ……あれっ? 洗脳こんな強かったかしら今回の命れ」

「……はい、【命令完遂】……お終いっと」

「うわっ!?」

 

 当惑してカードを眺める女の前で、イキ惚けていたはずの少女はあっさりとダブルピースを作って、命令を体外に排出。

 淫乱ド変態ウサギの媚び笑いは、一瞬で雲散霧消。

 逆バニー衣装も消え去り、感情表現が薄い、いつもの白の表情へと様変わりしていた。

 

「えっ、なに? いや、何なの貴女……さっきの?」

「……何って、お前が出した命令を実行してやっただけだけど? しろ、もしかして何かやっちゃいました……?」

「な、何かやっちゃいました~、じゃないでしょ!?」

 

 狐につままれたような後味の悪さに、特別何か被害を被ったわけでもないのに、いづなの尻尾まで逆立てて女は怒鳴る。

 しかし、白は尿で濡れた秘部を淡々と袖で拭い、心底鬱陶しそうに女の方を見ようともせず、

 

「……ヤることはカードが教えてくれたから、そのままやっただけ」

「そ、そのままやっただけ……って」

 

 ただカードの微弱な洗脳通りに実行するだけとは言え、あれだけ尊厳も何もかも捨てるような自慰を、はいそうですかと行うことが、どれだけ困難であることか。

 

「へ、へぇ~? すごいのねぇ~? 私ならあんな最底辺クソビッチの真似事、絶対できないわぁ~? 実はアレ、貴女の本心だったりするんじゃ」

「そこは大丈夫……もう何やってたか忘れた」

「わすっ!?」

 

 だと言うのに、目の前の少女は、あれだけ披露した痴態を、綺麗さっぱり忘れたと素面で言い切り、

 

「……あとはお前を消せば、覚えてる人間は誰も居なくなる」

「な、なっ……」

「――【実況】のカード、貰い受ける」

「なぁっ!!?」

 

 相手を完膚なきまでに叩き潰すべく、既に次の命令へと意識を集中させていた!

 目をひん剥いて固まった女よりも、重要なのはここで引くカード。

 

「……『  』のドローは全て必然……ドローカードすら自らが創造する……!」

「そうなのっ!?」

 

 流石にそこまでは出来ないし、ぶっちゃけ言いたかっただけだが、勝手にビビってくれているため、効果は充分。

 

「……しろの手札は、いま3枚。よって山札から2枚……ドロー!」

 

 このゲームに終止符を打つべく、命令主隷カードを力強く引き抜いた!

 

(ま、まぁ、良いわ……ちょっとばっかし驚かされたけれど、状況は何も変わってない……)

 

 無表情で手札をじっくり眺める白を睨み、いづなの肉体に潜む吸血種は、完全に奪われたペースを整えるように、ほくそ笑む。

 

(私がお友達の身体を乗っ取ってる以上、この子は強烈な命令は下せない……!)

 

 確かに精神的に吹っ切られはしたが、絶対的かつ根本的な有利は覆されてはいないのだ。

 

(もし万が一、それでもヤバい命令を使って来たら、また別の身体に逃げればいいだけ……この獣人種まで壊されたら予算は完全にオーバーしちゃうけど、私に耐え切れない命令は無い!)

 

 更に女は、自分の手札にあるカード――白が使った命令を奪った、2枚の切り札がある。

 

(あの子がどれだけ恥も外聞も捨ててようと、あと1枚――あと1枚さえ来れば、なにも問題ないわ……!)

 

 つまりこのターン、どんな命令が下ろうとも、己の有利――ひいては勝利への道は決して揺るがない。

 

(勝つのは、わた――)

 

 

「……それはどうかな?」

 

 

 はず、だというのに。

 

「し……?」

 

 自分を射抜く眼光が、既に負けているのはお前だと、慄然に告げていた。

 

「な、なにをっ、言い出すかと思えば」

「……お前は次に、『私がお友達を盾にしてるのを、もう忘れちゃったの?』と言う」

「私がお友達を盾にしてるのを、もう忘れちゃたの? ………はっ!?」

「……よしっ、当たった」

 

 人生で一度は的中させてみたかった、言いたかっただけ二号を完璧に当て、帰ったらする兄への自慢話が出来たと小さくガッツポーズ。

 

「……もう関係ない。お前が誰をどう盾に使おうが、すべて無意味な命令が手札に揃った」

「はぁっ!?」

 

 このゲームで、数多の種族を破滅させてきた自分ですら知らない、必勝法の攻略法。

 それを今見せてやると、白は5枚の手札全てを公開し、

 

「……これで、チェックメイト!」

「ひっ……!?」

 

 女の脳内へと、命令を叩き付けた!

 

「ぇ――えぇぇ!? な、なにこれ知らな――」

 

 吸血種が何かを言えたのはそこまで。

 突如として天井から降ってきた正方形の囲いが、ドスン! と、土埃を上げ、女を中に閉じ込める!

 降下してきた囲いには、ドアが一つあるだけで他には何もなく、即席の小部屋と呼んだ方が相応しい。

 これこそが、白が編み出した絶対勝利の命令であった。

 

「……勝った」

 

 この部屋は、白がかつて暮らしていた世界の創作で、少し前に流行った物を模した一室だ。

 純白の小部屋にはドアこそ付いているが、これは簡単には開かない。

 唯一の脱出口を開けるためには――

 

「……これぞ、『○○しないと出られない部屋』の陣……!!」

 

 部屋で決められた条件を満たさなければならないという、とても都合がいいルールが存在するのだ!

 

「……これでアイツは、チェスや将棋でいう詰みに陥った……」

 

 勝利を確信し、白は静かに瞳を閉じる。

 

「……確かに、命令を他の身体で受けられるのは、このゲームにおいて反則級のアドバンテージ」

 

 一見すれば他の身体に逃げ込み、命令から生贄離脱する能力は、このゲームでは無敵に思える。

 

「……けれど、さっきのしろみたいに、『命令は絶対にこなさなければ』ならない。他人の身体に逃げようとも、これは不変」

 

 それは、一瞬の閃きだった。

 今までの命令は、何かが勝手に身体を犯し、自分からは何もせず――いわば抜け殻でも勝手に命令内容をクリアすることが出来ていた。

 しかし、先程の【発情逆バニー、実況オナニー】のように、『自分から何かをしなければならない』命令ならば?

 例えばそれが、洗脳でどうこう出来る様な、『高度な知性』を必要だとする命令だとすれば?

 あのオナニーショーの命令を受け取った瞬間、白の脳裏に渦巻いていたのは、その疑念ただ一つのみであった。

 

「……誰かが難しい命令を実行しないといけない以上、もうアイツは、どこにも逃げられない」

 

 誰になろうと、どこに逃げ込もうと、今回白が下した命令も『自分から何かをしなければならない』タイプの命令だ。

 

「……しかも、誰の良心も痛めることはない、良い命令」

 

 オマケに、いづなの身体に負担をかけるようなモノでもなく、

 

「……だけどアイツには、あんな恐ろしい命令……クリアできる訳が無い」

 

 それは、命令内容を思いだすだけで、思わず身震いすらしてしまうほどに鬼畜の所業。

 彼女が思い浮かぶ限り、最も突破が困難な命令の攻略は、絶対不可能だと断言できた。

 

「……あとは、ギブアップを待つ……だけ……ふぅ」

 

 勝利を確信した白から、張り詰めていた緊張の糸が解け、グッタリと椅子にもたれ掛かった。

 

「……強敵……だった……」

 

 意味不明の初見ゲームに、絶対不利な身体的ハンデ。

 そして、心身ともに削り取っていく、命令と言う名の凌辱……。

 体力的にも精神的にも、白という器を限界ギリギリまで使い潰した、まさに紙一重の勝利だった。

 

「……にぃ……しろ、一人でも頑張ったよ……」

 

 額に手を当て、ランプが揺れるテントの天井を仰ぎながら、もう久しく会っていない気がする兄の姿を思い浮かべる白。

 

「……帰ったらご褒美、沢山もらう……にぃから……にぃの……♡」

 

 ゲームには勝利したが、命令によって発症した重度の発情は、消えず。

 勝負事が抜けた脳内へと、代わりに大好きな兄への気持ちだけが流れ込んでくる……。

 

「……さっきのは嘘だから、にぃ♡ しろを好きにしていいのは、にぃだけ♡ このおマンコも、乳首もぉ……んぃい♡」

 

 劣情、安堵、謝罪、その他諸々。ふわふわとした頭が全てをごちゃ混ぜにし、自然と服を捲りあげ、両手を乳首と股間へと伸ばすよう仕向けていた……。

 

「……はぁ♡ はぁ♡ にぃ、ああいうの好きかな……?♡ しろが、あんなエッチな恰好で、誘惑したら……こうやって、強引に……んんっ♡」

 

 いつもより強め、激しめに行う自慰は、蜜壺をかき混ぜる度に、小さなぷっくり乳首を指で潰すたびに、白の腰を喜悦に浮かばせていく。

 

「……そしてぇ♡ お汁でトロトロの指をしろに見せて、にぃが持ってた、本みたいにぃ……♡ しろを、無茶苦茶に、しろのおマンコをぉ……♡」

 

 言動は随分控えめであったが、命令されていた時とは比べ物にならないほどの本気汁を、膣へと出し入れする指に絡ませ、

 

 

「犯しッ!♡♡」

「あ、ドア開いた」

 

 

「――…………」

「いやー驚いたわぁ、どういう仕組みコレ? 人類種のとこではこんな物が……あら?」

「…………て?」

 

 絶頂から、どん底へ。

 賢者タイムなど比ではない、転がり落ち、崩れ落ちていく破滅の音を、白だけが聞いていた……。

 

「あら? あらあらぁ? これは……お邪魔しちゃったかしら?」

「っ!? ~~~~~~~~~~~~~!!!!!」

 

 今日一番に声にならない絶叫を上げ、真っ赤に熟した全身を抱え込むように縮こまる白!

 当然、本気オナニーの痕跡など、この程度で隠せるわけがない。

 

「もしかして、勝ったと思ったから安心してオナっちゃってた? 私がもう出てこれないと思って?」

「~~~!!! ~~~!!! ~~~~~~!!!!!」

「ぷっ、ぐふっ、んぐふふふふっ♪ 恥ずかし~、傑作! 今度、お客様にバカウケ間違いなしのネタとして言いふらしてあげるわ♪ ゲーム中、もう勝ったと思ってオナニーしてるとこ見られた、子供のくせにどうしようもない変態の人類種が居たって」

「どうやって!!!!!」

「ん~?」

「どうやって、部屋を出たの!!!!」

 

 露骨な話題逸らしであったが、こっちはこっちで弄り甲斐がある話題だと、あえて吸血種の女は種明かしに興じ始めた。

 

「どうやってって、普通に? 条件をクリアして?」

「どうやっても無理! あんな条件無理!」

「確かに? 最初は命令の意味が分からずに、ちょっとばかり困っちゃったけど……使い方さえ分かれば、案外難しく無かったわよ? この――」

 

 女が手に持っていたのは、手の平サイズで薄長い長方形の物体――機械。

 白が住んでいた世界では、子供ですら平然と持ち歩く、超技術の塊。

 命令によって出現したそれ――スマートフォンを、ひらひらと見せつけながら、

 

「【えすえぬえすで、お友達を10000人作らないと出られない部屋に閉じ込められる】って、変な命令」

「ひっ! 無理ゲーっ!」

 

 改めて口にされると、なおさら身の毛もよだつ恐ろしい命令を、女はいとも簡単に完遂して脱出してのけていた……!

 

「無理ゲーって、そこまで言うほど? この端末の性能があれば簡単じゃない。魔力も用いずに、不特定多数が一気に交信可能! 種族や性別の壁すらなく、音声だけじゃなくて文字や画像、動画まで送受信がこんな簡単に」

「……無理無理無理無理……絶対イカサマした貸して確認する」

「あっ、うん、良いけど後で返してね?」

 

 未知の発想と超技術を前にして興奮冷めやらぬ女とは対照的に、青ざめた表情で白はすっかり私物化しているスマホを取り上げ、SNSアプリのアカウントを確認する。

 

(……確かに1万人――今、もっと凄い勢いで増えてるけど、こんなにフォロワーができるはずない……こんな短時間で……!)

 

 白がこの命令に絶対的な自信を抱いていたのは、単に自分が逆立ちしても不可能だからだけではない。

 確かな理論と勝算があったからこそ、こんな簡単に脱出されたのには、何らかのイカサマがあったと思い至ったのだ。

 イカサマさえ見抜けば、勝利はその時点で己の物だ。

 

(……SNSの存在をたった今知ったような情弱知識で……サクラも使わずに、こんな早さでフォロワーを作れるわけ……!)

 

 魔法で知覚情報を誤魔化したり、スマホそのものに何らかの物理的干渉を加えたりと、手段はいくらでもあるはずと、目を皿にして画面を食い入るように操作する。

 なお、殆どの手段は、人類種の白一人では看破できないという前提が頭から抜けていたが、その心配は無用であった。

 

「…………なん……だと……?」

 

 確かに、この手段なら。

 イカサマなど一切使わずとも、1万人のフォロアーを速攻で作ることも不可能ではないと、白でも納得できてしまったからだ……。

 

「だからイカサマなんてしてないって言ったでしょ? 私はただ、『商品の宣伝』をしただけよ」

 

 女が言う『商品』とは、抜け殻になった女性のこと。

 そして、あの部屋に持ち込めた商品は、たった1つだけ。

 白の震える手の内で光る、スマホの画面に映っていたのは――

 

「『新入荷! ロリっ娘獣人種ちゃんの恥ずかしい所、完全大、公、開っ♡』って感じで、ね♪」

 

 いづなの身体を使った超ド直球、修正モザイク一切なしの自撮りポルノ画像であった!

 最初は簡単なピース姿の全裸自撮りから、指で作った輪を口元で前後させ、舌をレロレロと動かす動画。他にもエロ蹲踞スタイルからの求愛腰振りダンスや、おマンコの中身を実況公開などなど。

 それらの動画と共に、金銭でいづなを売買する旨を記した過激すぎる内容は、あっという間に拡散され、ひっきり無しに通知を鳴らし続けており――

 

「えっ!? なんで私の画面が表示されなくなったの!? まさか壊れた!?」

 

 運営によるアカウント凍結という形によって、ようやく一旦の終着を迎えた。

 

「うっそー!? 全財産出しても良いからいづなたんを購入したいって人、むちゃくちゃ居たのよぉ!? え、待って待って待って、それだったら一週間レンタル制にしたとしても、あれだけの人数だから、えーっと……あーもう! とにかく勿体なーーい!!!」

 

 瓢箪からコマと言わんばかりに、全く想定外なところから沸いたとんでもない商機が、同じぐらいの唐突さでご破算になってしまい、頭を抱えて女は叫び喚く。

 しかし、本当に頭を抱えなければならないのは、彼女ではない。

 

「……そ、そんな……こんな、方法、で……簡単に……」

「はぁぁ~~~……ま、でも、着想は得たわ。これ絶対に使える。獣人種辺り、こういうの得意よね。まずはお得意様用に発注するとして、あとはその前に……」

 

 狙いすまし貯めていた5枚のカードを全て使った命令を、

 

「【命令、完遂】」

「…………っ!!!」

 

 いとも簡単に完遂されてしまった主こそが今、絶体絶命の窮地に追いやられていた!

 じっとりと、獲物を完全に捉えた蛇のような目つきで、ダブルピースを構えたいづなの唇に舌が滑っていく……。

 

「と言う訳で、【分身】のカードを貰うわ。色んな意味で、良い命令だったわよ? よく気付いたじゃない、抜け殻に命令を受けさせたら、頭をガッツリ使う内容は完遂出来ないって所に」

「……ぐ……ぅ……ぅぅ……!」

「確かにあの命令なら、お友達をこれ以上傷つけなくていいもんね~?」

 

 大振りのフィニッシュブローを外した代償は、あまりにも大きい。

 切り札が不発に終わってしまった上に、狙いまで完全に露呈してしまった。

 手の内も心中も丸裸にされてしまった状態で掴み取る勝利が、どれほど遠く儚い幻想か。

 

(……まだ、まだ終わってない……まだ終わってない……まだ終わってない……!)

「さて、私は2枚。カードを引いてっと」

 

 俯き、親指の爪を噛みながら、何かを、打開策を捻り出せと、白は自分に言い聞かせる。

 しかし、全神経を集中させ、思考を巡らす必要など既に無い事を、彼女はまだ知らない。

 なぜならば、女が【分身】のカードを手にしたことで、

 

「聞いてる~? お嬢ちゃ~ん、残念なお知らせなんだけど~?」

「……うるさい、考え中黙って」

「私、やることが出来たから、これでサクッとお嬢ちゃんの人生、終わらせちゃうわね~」

「て………………?」

 

 既に白を、ステフやいづなと同様に、『商品』にする手筈は全て整ってしまっていたのだから……!

 

「それっ♡」

「あうっ!?」

 

 いま、聞き逃してはならない事を口走らなかったかと上げた額に、刺さる3枚の命令。

 それは、吸血種の女が初めから、集める事に執心していたカード達を束ねたコンボだ。

 

「どう? 気に入って貰えたかしら、私の必殺コンボは?」

「えっ……あっ……うそ……こ、こんな命令……だめ、だめぇ!!!」

 

【スライム】【ごっくん】【分身】。

 この3枚を揃えた者こそが扱える、まさに一撃必殺の処刑宣告。

 それが――

 

「【アバタースライムを呑み込んで、アナルから人生終了人格ゼリー排泄】……ま、正直これが揃ったら勝ちなのよ、このゲーム」

「……ま、まさか、ステフも、いづなも、みんなも……これで……こんなので……!?」

「大、正、解♡」

 

 懸念ではあった。

 どうすれば生物が、あのような生きた抜け殻と化すのか?

 勝敗の結果、賭けたモノを奪われてああなったのかと仮定し。

 ゲーム内容そのものには、直接関係ないモノと勝手に判断し。

 直接倒して聞き出すつもりだった手法を白は今、自身の身体そのもので教えられようとしていた……!

 

「さ、文字通りお嬢ちゃんの全部が詰まった人格ゼリー、お尻からウンチみたいにひり出しちゃいましょうね~♡」

「ひぃっ……!!?」

 

 気が付けば、眼前にはザーメンを固めたような白濁色のスライムが鎮座している。

 大きさは白の頭丸ごとほどあり、呪術を宿しているのか、薄桃色に怪しく発光を繰り返す姿からは、まるで絞首刑の括り縄のような重圧感を放っていた……。

 

「……ま、まって、むりっ……こんなの、詰んでる……だって、人格、排出しちゃったら……!!!」

 

 命令は人格を排泄することだが当然、人格が体外に出て行ってしまったら、ダブルピースも【命令完遂】もできる訳が無い。

 やらなければ敗北、やってもゲームが続行不可になるこの命令。

 人類種ではどのような対応策もない、完全なチェックメイトであった。

 

「……ぁ……ひ……ぎ……ぎぶ…………」

 

 悟らされる。もはや、計算や駆け引きなど無意味。

 死よりも残酷で無様な最期を確約され、完全に青ざめ、震えた唇が、自然と降参を紡ごうとし――

 

「あらら~? 『くーはくに、敗北の二文字は無い』んじゃなかったのぉ?」

「ッッっ!!?」

 

 白にとって命よりも大事な、二人で築き上げてきたプライドへと爪を立てられた瞬間、反射的な反骨精神のまま、絶望に曇った瞳がハッと持ち上がる。

 

「そ、そう! 『  』に、敗北の二文字はぐげボッ!!?」

 

 その、瞬間。

 命令をなかなか実行しない奴隷へ鞭を振るように、跳ねたスライムが白の鳩尾を抉り込んだ!

 

「ごっ……プゲぇ……!!!」

 

 軟体生物といえ、中々の質量と速度が乗った一撃。

 ボクサーのハードブローに等しい打撃は、華奢な身体を浮き上がらせ、苦悶の声を胃液と共に噴出させるには充分。

 

「お゛っ……ごおぷっ……ひゅ……」

 

 急所を殴打され、お腹を押さえたまま、プルプルと震えた足で悶絶する白。

 倒れたり、泣き叫ぶ間もなく、眼球を裏返して涎と胃液を垂らしたまま開く、浅い呼吸を繰り返す口へと、

 

「ぴゅごべぇっ!!?!?」

 

 チューブ状に身体を伸ばしたスライムが襲い掛かる!

 

「ごぎゅっ! がふっ! ぶっ、ごぐぶぅううぅぅぅ~~~~~~~!!?!!」

 

 顎を限界までこじ開け体内へと侵入を試みる、ビチビチとのたうつ怪物!

 内蔵に異物を詰め込まれる痛みと恐怖に、半狂乱になりながら抵抗する白であったが、ただでさえ非力な彼女の力技でどうこう出来る相手ではない。

 

「ごぶっ、ごげっ、ごぎぇ!!?」

 

 徐々に、徐々にと、膨れ上がった喉が脈打ち、白のお腹が膨れ上がっていく……。

 そうして、全てを呑み込み終えた頃には、妖精すら思わせるスラっとしたシルエットは見る影もなく、

 

「ぐぷっ……お……お゛え゛っ…………」

 

 直立するのすら困難なほどの、巨大ボテ腹へと変貌を遂げていた!

 

「え゛っ……えぎっ……い゛……」

 

 もはや呼吸をするだけで強烈な嘔吐感に襲われ、ギチギチに膨れ上がった腹が内臓を隙間なく圧迫。

 妊婦よりも膨らんだボテ腹からは、スライムの怪しい光が漏れ出し、桃色に光を放っている……。

 

「じ、じぬ……お、おなか、はれつして……こ、ごれぇ……」

 

 意味など無く、ただ立ち上がる事すらできない異常事態を拒むように、机に縋りつき、なんとか上半身を乗せる姿勢に持っていく白。

 

「ふぅ~、ふぅ~、ふぅ~……!」

 

 たったそれだけの行為でも、過去一番の重労働なのは間違いなく、上がった息を整える。

 

「あらあら、そんなにお尻を突き出して。人格お別れ排泄ショーに相応しい格好になったわねぇ♡」

「……ぐっ、うるざ……げぷぅ……」

 

 テーブルからスライム入りの腹袋をぶら下げて、これから中身を全てひり出さないといけない小さなアナルを突き出した格好は、どことなくギロチン台に固定された死刑囚を彷彿とさせた。

 無論、本人にはそんなつもりはなく、女の下品な嘲弄にも言い返したい気持ちは山々であったが、吐いてしまいそうな不快感に見開いた眼で口元を抑える事しか不可能。

 本当に吐いてしまったら、文字通り全てが終わってしまうのだから。

 

(もう……むりっ、まけっ、ここからなんて、もう何もできない……!)

 

 今回ばかりは、本当に逆転の手段は残ってないと、白は己の完敗を認める。

 異常な量の汗と、ボロボロと零れ崩れていく涙には、痛みだけでなく、こんな奴に負けてしまった悔しさが多分に含まれていた。

 

(ごめんなさい、にぃ……しろ、がんばったけど、ダメだった……)

 

 このままゲームを続ければ、ステフやいづなと同じく抜け殻肉人形化。

 戻す事ができるのかすら分からない、商品になってしまう訳にはいかない。

 ギブアップ以外に、助かる方法はなかった。

 

(でも、にぃ……やるだけは、やってみる……から……!)

 

 自分を売り込むのは慣れていないし、こんな奴の言いなりになるなど、死んでしまいたいぐらい御免であったが、即商品にされてしまう事は無い筈だ。

 それだけの価値や、愉しみ甲斐はあると、自らを売り渡す決意と共に値踏みする。

 

(どれだけひどいことされても……よごれても……はずかしくても……ぶざまでも……ぜったい、にぃが迎えにきてくれるまで、しろ、たえるから……!)

 

 屈服ではなく、前進するための、降伏。

 大きく息を吸い込み、苦難が待ち構える活路への第一歩を口にした。

 

「ぎ、ギブア」

「じゃ、私【ギブアップ】しまーす♪」

「………………はぇ?」

 

 無念にも、その第一歩から、滑り落ちてしまう結果となってしまったが……。

 

「いやー、負けた負けた。ざんね~ん」

「ぎ、ぎぶ……なん、で……?」

 

 なぜ、いま、この状況で?

 あとはニヤニヤしながら待っているだけで勝てたゲームに、なぜサレンダーする?

 理解の範疇を越えた狂行に、喜べるわけもなく困惑だけが脳髄に木霊する。

 

「気付いてるでしょう? 次のターン、貴女は5枚のカードを引くことができる。山札は残り11枚で、私の手札は今2枚。これじゃあ、次のターンに貴女が命令とか気にせずに5枚カードを使うだけで、【支配者】を確定で引かれちゃうじゃない?」

「それ……でも……?」

 

 気付いている。とっくに気付いていたし、必ずそうなるように考えて手札を切っていたのだが、その次のターンが来ないため、無意味となった計算だ。

 いづなの身体を伸ばし、椅子から立ち上がる女が、なぜギブアップしたのか?

 白が、その意図を思い知らされるのは――

 

「んぎぃ!!?」

 

 腹のスライムが、グネグネと出口を求め、蠢き始めた後のことになる!

 

「おごっ!? だめっ! 出る、出て来ちゃダメッ! しろのなかみ、持ってっちゃだめぇぇぇぇ~~~~!」

 

 白の人格を移し終えたスライムが、仕事を終え、アナルから出ていこうと活動を開始してしまったのだ!

 耐えがたい便意にアナルがひくつき、ぷっ、ぷぅと、断続的に間抜けな音を立てながら、押し出された体内のガスを放出する!

 

「んひぎぃいいぃぃ~~~~!!! 出ないでっ、出ないでぇぇぇぇ~~~~~!!!」

 

 泣き叫ぼうとも、自分から出ていこうとする排便をコントロールする機能など、人体に備わっているわけもなく、直に溜まっていた便を全て食い尽くしたスライムの頭が、白のケツ穴から顔を出す!

 

「ひっ――」

 

 自分の存在そのものをケツ穴から排泄する。

 その未知なる恐怖に、とうとう白の心は、

 

「ぎっ――ギブアップっ!!!」

 

 完璧に折れ砕けてしまった……。

 

「んー?」

「ギブアップ! ギブアップギブアップギブアップ!!! もう負け、しろの負け! 負けだから許しで、降参! お口でもおマンコでも何でも好きにしていいから、人格うんちになって死ぬのいや゛ッ! これとめでぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

 喚き散らす、恥も外聞もない降伏宣言。

 尻を突き出したポーズでこんな最後以外なら何でもいいと、憎き相手に懇願する姿は、どんなゲームでも気丈に戦い抜いた少女が晒すには、あまりにも無様で、必死であり、

 

「え、ギブアップなんて出来る訳ないじゃない? 勝ったのは貴女でしょ?」

「へっ――――」

 

 そして、無意味であった……。

 

「んー、可笑しなことを言うわねぇ? ゲームはもう【貴女の勝ち】で終わってるのよ? なんで貴女がギブアップする必要があるの?」

「だ、だってこれ、これ、消えて、しろ、消えてない、出ていっちゃう、きえてない、きえたくない…………!」

 

 ガチガチと歯を鳴らし、呂律も語順も滅茶苦茶な勝者の言葉に、女は心底気の毒そうな表情をいづなで作り、

 

「まあ、確かに本来はギブアップした【奴隷の身体からはカードが出ていく】けど……」

「だから、だったら……!!!」

「でも【負けを認めたのは私が先】、だったでしょう? あら、と言う事は嘘じゃなかったのね? くーはくに敗北の二文字は無いっていうア、レ♪」

「お、おま、え……だから、だからぁぁぁ…………!!!」

 

 掛け値なしの絶望に歪んだその顔が見たかったと、あざ笑う内心を微塵も隠さず、手遅れを断言した!

 

「い……いや……待って……まって、まって……勝った、しろが勝ったなら……!」

「あちゃー、そうよね顧客のリスト! 私、負けちゃったんだから、盟約に従って用意しないといけなかったわねぇ」

「そうじゃない! 止めでっ! これ止めてだずげでッ!!!」

「それは盟約とは関係ないでしょ。貴女が私に要求したのは、顧客リストだけ。お尻から人格を無様排泄して消えちゃうのを助けることーなんて賭けてないんだから、私にやる義務――ないでしょ?」

「ァ……う゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ~~~………………ッ!!!」

 

 可憐な少女から出ているとは思えない、獣の慟哭めいた低音が響く。

 それは、どう足掻いても助からない、己の最後を悟った呻きであった……。

 

「にぃぃぃ!!! 助けてにぃぃぃ!! しろいや、こんなのいやぁぁぁあ!!!」

「あははっ、可愛い女の子の断末魔は飽きないわねぇ~♡ これだから、このゲームで仕入れするの止められないのよぉ~♡」

 

 もはや邪悪な本性を隠そうともせず、吸血種の女は小躍りで指を弾き、短い尻尾のようにまで出てきている、白のお尻へと透明な大瓶を出現させた。

 

「ちなみに、知ってても教えるけど、私たち吸血種って魂を宿した血で栄養を取るのよ。だから、貴女が今からひり出す魂そのもの――人格ゼリーって、それはもう極上のデザートでねぇ~♡」

「いやっ、あっ、あぁっ、出ちゃう出ちゃう出ちゃうもう~~!!!」

「ステフちゃんやいづなちゃんみたいに、無駄なく残らず美味しく頂いちゃうから、安心して肉人形になってねぇ♡」

「い゛やい゛やい゛やああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~!!!」

 

 首をぶんぶん振り回し、渾身の大声で最悪な末路を拒絶したのが、トドメだったのか。

 

「アひっ――♡」

 

 プツン、と、最後の綱が切れたような知覚だけを残して、

 

「オ゛ッほオオオォォオオオォォォォォォォ~~~~~~~~~~~!!♡♡♡」

 

 白の人間卒業排泄が始まった!

 

「でりゅ♡ でりゅでりゅでりゅ~~~~~!?♡ しろ、しろが出て逝く、逝く、いぐっ!!? に゛ゃ、に゛ゃにごれぇぇええぇぇ~~~~~~♡♡♡」

 

 野太いオホ声を上げ、ガンギマリな強烈アクメにアヘ顔を晒し、最後の知性が質問を飛ばし散らす。

 

「それは残塊すら残らないよう、肉体と魂の結合を速やかに解くために性感をぶっ壊す魔術が」

「オホぉっ♡ いぐっ、イグイグイグ~~~~♡ ケツアクメで逝ぐぅぅうぅ♡ 頭の中身ぜんぶぜんぶアナルからひり出してイグッ、イグぅぅぅぅ!!♡♡♡」

「って、もう聞こえてないわねコレ」

 

 女の細やかな解説も、全ては下品で壊れた嬌声や、聞くに堪えない排泄音に飲み込まれて消えていく。

 

「ぎぴいぃぃいいぃぃぃぃぃ~~~~~~♡♡♡ まだでりゅ、でまぐりゅぅぅぅ~~~~~!!♡♡ オ゛っ、オ゛っ、んの゛お゛ぉぉぉぉ~~~~~~~!!♡♡♡」

「すごっ、大量じゃない♡ 魂の質とか、精神力がそのまま量に直結するんだけど、間違いなくニューレコードよコレっ♡」

「え゛っ、え゛へっ、しんきろくっ、やっだ、これ、よろこ、よろこんでぐれっ♡ オほっ、ほひぃぃぃいぃ~~~~~~~!!!♡♡♡」

 

 体液でグズグズに壊れきったイキ顔が笑みを浮かべ、ゼリーだけでなくうれションまで垂れ流してハイスコアを無邪気に喜ぶ姿に、感情が薄く儚げだった白という少女の面影は、もう無い。

 

「はひぃ~~~♡ すぎょい~~♡ あたましぬ~♡ にんげんやめりゅ~♡ からっぽになりゅ~♡ なりまひゅ~♡ あひっ、あへへぇ、え゛ひぃ~~~……♡」

 

 ここに居るのは、垂れ切った舌でテーブルを舐め、だらしない惚けアヘ顔で余韻に震えながら、人生最後の絶頂を心から堪能し終えた――

 

「えプギッ!!♡ ――ぃ――…………」

 

 ビクン、と間抜けな断末魔を上げ……崩れ落ちる。

 ケツから全てを排出し終えた、新しい3つ目の肉人形だった……。

 

「ふぃ~、大量大量♪ すんごい量、食べきるのにいくらかかるかしらぁ♡」

 

 収穫し終えたゼリーは澄み切ったスカイブルーの色をしており、かなり大きなガラス瓶をパンパンに満たしながら、ホカホカと湯気を上げている。

 これが、かつて白だったモノの中身であり、吸血種の餌だ。

 

「乾燥しないように、しっかり封をしまして~っと」

 

 いづなの指をフリフリするだけで、テキパキと見えざる何かが動いて、ビンの梱包を行っていく。

 

「ラベルは……せっかくだし、欲しがってたコレでしてあげましょう♪」

 

 勝者のために取り出した顧客リストの裏面を再利用し、最後に張られたラベルには、生産者の顔写真と名前がバッチリと描かれていた。

 

「ん~、完璧完璧。さて、味見の前に、移動だけ済ませなくちゃ。どこから足が付いたのかしら……?」

 

 蓄えは充分できたし、これからは少し自重した方が良いかもしれないと、小首を傾げながらテントの中身をテキパキと転移の魔法陣へと収納していき、修繕予定のステフも雑に棺桶に入れて押し込んで、

 

「さて、と」

「………………………」

 

 最後に残った、光がない瞳で虚空を見つめる、白だった肉。

 

「十の盟約、その一。この世界におけるあらゆる殺傷、戦争、略奪を禁ずる。でも――」

 

 それを、顧客にどうやって様々な種族の肉体を仕入れているのかを尋ねられた時の、常套句と共に、

 

 

「『落ちている物』を拾って売っちゃダメなんてルール、どこにも無いのよねぇ♪」

 

 

 ひょいと担ぎ上げ、自分も転移魔法陣の中へと姿を消す。

 ゲームが行われたテントがあった場所には、もう何も。

 白が最後に遺した勝利さえも、残ってはいなかった……。

 

 

 

                       ~END №××~

                       『勝利の人格排泄』

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