※この作品はR-18です。

未来の英雄たる貴方へ   作:ジョニーマーシャル

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初投稿です


1話

 いつからだろう、彼の瞳から光が消え目元に隈が出来始めたのは。

 

 私は思い出す、都市を襲ったあの悲劇を。

 

 あの日、ヒーローは敗北したのだと。

 

 それ以来、手紙を残し彼は姿を消した。

 

 その時はあまりの忙しさに彼について考える余裕もなかった。私の発明が多くの人に必要とされていたからだ。

 

 不謹慎だが私の発明が多くの人に認められ、必要とされるのは心地がよかったし社会のために働いていると言う実感もあった。たけど……

 

 私の心は満たされなかった。

 

 その日、私は自分が酷い人間であることを知った。

 

 皆のためではなく(ワンフォーオール)、一人のために(ワンフォーワン)。

 

 それを知ってから私の欲望は押さえられなくなり彼に繋がるかもしれない伝手を最大限に利用し彼の居場所を見つけ出そうとした。

 

 結果、彼は案外すぐに見つかった。

 

 というのも彼自身、コスチュームをどうするか決めあぐねていたらしく私からの連絡がない場合は彼の伝手を利用して新たにコスチュームを作る予定だったらしい。

 

 そりゃあオールマイトの伝手を使えばコスチューム問題も解決できるよね……

 

 彼のコスチュームは既にボロボロに成っており彼を見かけることのなかった僅かな間にもヴィランとの激しい戦いがあったことは想像に固くない。

 

 なぜすぐに私に連絡をしなかったのか問いただすと、避難所となった雄英での私の活躍を聞いて引き抜くのは忍びなかったらしい。

 

 また、私が充実しているように見えた……と

 

 他にも自分といたら危険な目に遭うだろうから遠慮したとも言われ、彼は他人を思いやる気持ちが大きい人だと再確認した。

 

 私が作ったコスチュームへの義理から私以外に製作を依頼することを渋っていたと聞いて嬉しく思う反面、やはり危ういと感じた。

 

 彼を支える人は今は少ない。

 

 本来なら他の同級生達と共に雄英で行動する方が良いんだろうけど、世界がそれを許してくれない。

 

 また彼を支えるはずの同級生も今は家族の身を守ることで手一杯だ。

 

 反ヒーローの思想

 

 ヴィランの脅威

 

 混乱する市民

 

 何より世界を滅茶苦茶にして悪の権化(死柄木弔)

 

 悲しみと恐怖に満ち溢れ、世界が闇に覆われていく

 

 そんな状況を打破するために彼は英雄に成ると言う。

 

 英雄が必要とされる時代。

 

 発明のことしか頭にない私でもそんな時代がどんなものなのか分かる。

 

 それは暗黒の時代だと。

 

 多くの人が傷つき、助けを求めている。

 

 たぶん彼はそんな人々を救うのだろう。

 

 きっとこの暗黒時代に終止符を打つのだろう。

 

 でもそれは未来のことだ。今じゃない。

 

 軍神と呼ばれた人間は、いったい何に祈れば良いのだろう

 

 英雄が助けを求めたとき、いったい誰が彼を助けられるのだろう

 

 彼を支える人が必要だ、彼を助ける人が必要だ。

 

 私が助ける

 

 みんなを救う英雄を

 

 彼がみんなを救うまで

 

 それまでは、私が何度も助けて見せる。

 

 そう誓い、彼と行動を共にするようになった。

 

 家族や雄英の皆さんには申し訳ないと思ったが彼と行動するにあたって私の痕跡も消す必要があった。

 

 家族とも連絡を取ることは出来なくなった。それは彼を守るためでもあり私の家族を守るためでもあった。

 

 今、世界に存在している巨悪は彼を狙っているためだ。私にも命はないと何度も念を押された。

 

 それでも私は彼を助けたかった。

 

 世界一のヒーローをコスチュームを作った発明家! 

 

 そんな肩書きが欲しいんじゃない。

 

 誰かを助ける人(ヒーローにとっての)を助ける、

 最高のヒーローを目指す(ヒーローに)彼を助けたい。

 

 それが私の夢だから。

 

 そんな想いを抱いて彼と行動して数ヵ月がたった。

 

 彼も私も顔を隠してヴィランと戦った。混乱した世界ではヴィランだけじゃなく元は一般人だった人も欲望のままに暴れまわるようになり世界はさらに混沌と化していった。

 

 私たちはたくさんの人を助けたが中には助けられなかった命もあった。

 

 助けられなかった人の家族から責められることもあった。

 

 助けたはずの人に裏切られたこともあった。

 

 あと一歩を救えた命があった。

 

 そんな日々を過ごしていく内、彼の瞳から徐々に光が消えていくのが見えた。いや、彼だけでは無いのかもしれない。もしかしたら私もそうなっていたのかもしれない。

 

 私の個性は困っている人、助けを求めている人を探す際には役に立ったがそのせいで人の死ぬ瞬間を捉えてしまうことが多々あった。

 

 はじめの頃は吐いてしまい助けるどころでは無いこともあり、助けると誓ったのに助けられるはめになったことが何度もあった。

 

 いつしか吐くことなく冷静に状況を伝えられるようになり、彼のサポートを問題なく行えるようになった。

 

 そんな日のことだった。

 

 激闘だった。

 

 彼や自警団、協力者と名乗る(ステイン)赤い男。

 

 相対するのは超常解放戦線、その支援を受けたグループ。怪人を初め、違法薬物に手を染め明らかに正気を失った者たちが個性の力を全開に襲いかかってきたのだ。

 

 私たちは全力で戦ったが数の不利から苦しい戦いを強いられた。それでもなんとか奴らを撃退した私たちに待っていたのは更なる絶望だった。

 

 守るべき人々のなかに奴らの仲間がいたのだ。それは無残な光景だった。

 

 裏切り者の個性は《かまいたち》

 

 戦いが始まるとその男は個性を発動させ狂ったように人を切り刻んだのだ。そいつは直ぐに取り押さえられたが問題はその後だった。押さえつけられた状況でその男は謎の薬を飲み個性を暴走させたのだ。

 

 その光景はさながらミキサーに入れられた人間を見ているかのようであったらしく、文字通り多くの人がみじん切りにあった。

 

 助けるはずの人を助けられないと言う後味の悪い結末に彼は苦しんだ。

 

 暗い日々はその後も続いた。

 

 人を助けられなかった日が連続し、彼の精神は疲弊して行き、遂に限界を迎えた。

 

 自分を責め、私を責め、助けられなかった人に謝り、私に謝った。

 

 身も心も傷だらけなのに、弱音は吐かず、涙を流さない彼を見て、

 

 私は

 

「──────────」

 

 その日、私と彼は身体を重ねた。

 

 その日からだろうか。

 

 辛いことがあった日はコスチュームの採寸という名目で彼と身を何度も重ねるようになったのは。

 

 

 




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