大帝国パトリスではある神話がまことしやかに信仰されている。
それは金の瞳と銀の瞳の神話である。
その昔。金色を瞳を持つ王と銀色の瞳を持つ王妃がこのパトリス帝国を治めていた。しかしその王と王妃の幸せの日々は長くは続かなった。
パトリス帝国に暗い戦争の影が差したのである。この頃のパトリス帝国は今程の大帝国ではない。むしろ小国として栄えた帝国である。
そして中世社会では領土拡大を狙い諸国侵攻は当たり前に行われる侵略行為であった。それはパトリス帝国でも行われていた行為だ。
大帝国パトリスとなる前にこの帝国はある帝国の侵攻により一度滅亡寸前まで追い詰められた事があった。
その時の皇帝は黄金色の瞳を持つ偉大な王だった。エリックやエリオットはその偉大な王と王妃の息子達だった。
周囲から『獅子王』という敬称で呼ばれた偉大な王は滅亡寸前まで追い詰められたパトリス帝国を守り抜き、更には領土まで拡大した。
しかし、その戦争の最中。滅亡寸前まで追い詰められた戦争の最中で『獅子王』の愛妻である王妃が病気を患い、余命幾ばくかの生命となる。
王妃の身体には息子達がお腹の中に宿っていた。『獅子王』と呼ばれる王のかけがえない生き甲斐だった。
戦争はその『獅子王』の奮迅の活躍のお陰で短い期間で終結した。それは今でも有名な伝説として語り草となっている。
だが非情な病魔は確実に愛妻の生命力を奪っていた。このままでは息子達まで死んでしまう。妻は臨月を迎えていた事もあり、出産を決意する。
夫である『獅子王』は思わず叫んだ。
「無茶をするな!もう戦争は終わったのだ。これからゆっくり子供を育てられる」
「いいえ…あなた。私の生命はもう尽きます。それは私自身がよく知っています。だから平和な時代の為にこの子を産みたいの。わかって…あなた」
愛妻の銀色の瞳は揺るがない信念が宿っていた。『獅子王』はその愛妻の信念を貫かせた。
病魔に侵された愛妻が苦しみの末に産んだ子供は双子の兄弟だった。自分と同じ黄金色の瞳持つ黒髪の子と愛妻と同じ銀色の瞳持つ銀髪の子。
無事に双子を産み落とした愛妻は、我が子を2人抱きしめた直後、その生命を落とした。『獅子王』はその場で泣き崩れたという。
この半ば伝説と化した逸話は、人々に伝わる時に、黄金は『生命』や『太陽』を意味して、銀色は『死』や『月』などを表す色として認知されたのである。
そして伝説の存在は双子の兄弟の生き様を決めた。
黄金色の瞳のエリックは皇帝として生きて、銀色の瞳のエリオットは宰相として生きていく事に決めたのであった。
故に銀色の瞳の皇帝が即位したとなればその帝国は滅亡の道を歩むかも知れないという迷信みたいなものが市民にも伝わっているからなのか、エリオットは宰相という立場に拘っている、と言えるのだ。
それは双子の兄エリックも痛い程解る心境である。なのでエリックも黙って皇帝の座に着いたという。
これがこの双子に秘められた秘密であった。