<あらすじ>
秋月暁人は母・唯子を三好満司に寝取られ、傷心の日々を送っていた。そんな暁人の目の前に唯子から頼まれたという謎の女性・山本洋子が現れ、暁人の心の傷を癒すため「大人のレッスン」を行うと宣言する。彼女は暁人に満司の元妻・三好良枝に会えとアドバイスする。
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---------登場人物---------
秋月 暁人:主人公
秋月 唯子:暁人の母
秋月 暁年:暁人の父
三好 満司:主人公の遠縁(父・暁年の母方の従祖母の孫娘の夫)
三好 聖満:満司の子
三好 良枝:満司の元妻
山本 洋子:謎の娼婦 (廃神社の巫女 https://novel18.syosetu.com/n0812geからのゲストキャラ)
藤原 綾乃:暁人の片思いの人(実は両想い) (オリジナルキャラ)
鈴木一之介:鈴木貫太郎探偵事務所・所長・探偵 (オリジナルキャラ)
及川:一之介の部下・秋月家担当探偵 (オリジナルキャラ)
パタンジャリ・プールナーナンダ:ヨーガ修行僧 (オリジナルキャラ)
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第3話 母の未来
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「所長・・またあの子が来てますよ。どうします?」
「ああっ・・秋月さんのところの・・・俺はいないから・・そう言って追い返せ」
鈴木貫太郎探偵事務所・・・表の看板にはそう書かれている。鈴木一之介の祖父の名前だ。一之介は秋月一家が辿ったであろう悲劇の調査結果を部下から聞き、三好満司という自称「調教師」の恐ろしさを嫌というほど思い知らされていた。調べてみると余罪はいくつも出てきた。しかしどれも、刑事事件にはなっていない。それどころか、被害者と思われる婦人方はすべて「堕とされ」ていた。この悪魔のような男に強制的に身も心も変えられ、身を持ち崩し、捨て去られた後も未だにその男を求めているのだ。表面的にせよ何とか家庭を維持しているのは秋月家以外なかった。しかも、追加調査の結果では秋月家は地獄の淵からまだ抜け出ていなかった。やがてこの一家も崩壊してくことは長年、探偵をやっていた一之介にとって明白だった。その息子が来ているとなれば・・・ことは厄介だ。一銭にもならない。追い返すのが一番だ。
「それが・・・「僕の誕生日は4月20日だと伝えてくれ」・・・そう言い張るんです」
「何だって?」
急いでカレンダーを見てみる。4月21日・・・。
「その子・・・ええと秋月・・暁人君は・・・何年生だっけ?」
「ええと・・**高校の3年生ですね・・・生年月日は20**年4月20日になっています」
「つまり・・・18歳になったってことか・・・」
ふっ・・とため息とも苦笑いともつかない声が出てしまう。
「探偵業法を読み込んできやがったな・・・」
刑法に属する「探偵業の業務の適正化に関する法律」いわゆる探偵業法は18歳になれば大人の扱いに分類される。高校生と言えども正当な情報提供をしなければ、訴えられるのはこっちだ。分かった・・・大人の現実をしっかりと思い知らせてやろう・・一之介はそう思いながらも、この青年が少し気にかかり出していた。
「分かった会おう」
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久しぶりに見るその青年は、少し体が大きくなり、顔だちも大人びてきているようだった。そして、少し陰りが出てきたその横顔は大きな苦悩を背負っている顔だった。すぐにピンときた。
「あれ・・・もしかして見ちゃったのか?」
「・・・・はい・・・」
やはり・・・この青年は思っていた以上に賢い。「何を?」と問うて来たら、適当に追い返すつもりだった。この子は母親が姦濫なSMショーに未だに出続けているのを目の当たりにしたのだろうか?だが、その顔は相当なダメージで曇り、弱り果てている。探偵でなくても答えは明白だった。
「もしかしてそれの事だったら、関わんねぇほうが良い。堅気を装っているが、あんなことやっている連中はアッチ方面にがっちり組み込まれている。うっかり手を出すと、高校生だろうがサラリーマンだろうが、コンクリート抱いてT湾に沈められちまうぜ」
そう脅しながらジロッと睨みつける。ここでビビるようだったら同じ・・・適当に追い返す。その青年が一瞬ひるんだように目を見開くが、すぐに強く睨みつけるように見返してくる。・・・いい目だ。
「いいえ・・・今日知りたかったのは三好満司の元妻、三好良枝さんの現住所です。部下の探偵の方から聞きました。良枝さんに会って証言を受けてきたと。彼女もまだ満司を「待っている」と言っていたと・・・」
「もしかして、満司への復讐のためにその女性を傷つけるつもりじゃないだろうな?」
犯罪にかかわるのはごめんだ。やはりお引き取り願おうか・・・。
「いえ・・・本当の幸せを知りたくて・・・」
「はあ?」
「ある女性に言われたんです。三好良枝さんに会えば「本当の幸せ」が分かるって」
何だ・・・やっぱり子供か・・・。今時、中二でもそんなことは聞かないぜ・・・。だが、実直そうな高校生からいきなり出た「女」に一之介の探偵としての興味が沸き起こる。
「誰だい?その「ある女性」って?」
「なんだか娼婦のような格好をしていました。裸同然の格好をして、厚化粧で、豊胸手術もしているようでした。でも、なんだか母のような感じで・・・その・・母の・・・あの時の・・・ステージでの衣裳に似ているってだけじゃなくて、どことなく、雰囲気が・・・」
「おい・・・それはやばそうな女だな・・・近づかない方がいいタイプ・・・」
すぐにピンとくる。家が乱れたとき、男子が陥る「毒婦」の影・・・。
「外見だけならそうですね・・・でも、あなたにとっては母もそうですか?」
「いや・・・お母さんは別だよ・・・いきさつは君もよく知っているだろ?」
「きっとあの人もそんな感じじゃないかと・・・思うんです」
あっ・・・それも毒婦の手口だからね・・・一之介はこれ以上関わる危険性をひしひしと感じ始めていた。お引き取り願おう。メモを隣でとっていた秋月家の担当探偵である及川に目配せする。心得たとばかりに及川が説明を始める。
「暁人君・・ごめんな。探偵業法で個人情報は親族にしか教えられない。三好良枝さんは君のお父さんの「はとこ」つまり6親等の親族になる・・・6親等が民法上はぎりぎりの「親族」なんだ。でも君からみると良枝さんは7親等になってしまう。お父さんには教えられるけど君には駄目なんだ。それにその教えてくれた女性だって、雲をつかむような話だし・・・」
所長のいつもの視線・・・追い返せ・・・を受け、及川は事務的な説明でピリオドを打つ。及川も秋月家の一件がひどく厄介で複雑な事件であることを調査済みである。この青年をこれ以上巻き込ませたくない。だがそれで引き下がるような暁人ではない。
「一之介さんが言った「やばそうな女」・・・その事を教えてくれた女性・・・その方は自分を「山本洋子」だと名乗っていました。偽名や嘘だとは思えません。半年前、母が勤めていたところと同じところに勤めていたと・・・」
及川が調査ファイルに目を通す。失踪中の唯子の行動記録を見ているのだろう。
「あっ・・・有った。所長これですね」
及川が得意げに調査ファイルの一点を一之介に指し示す。どうやら偽名でも、嘘でもないらしい。仲の良かったホステスとして源氏名と、届けられた名前が記入されている。確かにその中の一人に「山本洋子」がいる。だが、その店名は一之介でも知っているようなあまり評判がよろしくない「札付き」の無届営業店だった。高校生なんかがウロチョロしに行くような店ではない。
「確かに君の言う様に、お母さんが働いていた店に「山本洋子」と名乗るホステスがいた。だが、そこまでだ。すでに辞めている。我々はそこまでしか調べられていないし、風俗嬢の場合は、届けられた名前がたとえ実名だとしても追跡が困難なことが多い」
その上に無届店ならほぼ絶望的だ・・・だがこのことは言わないほうが良いだろう。
「洋子さんとは来週会うことになっているので別に構いません」
「プツッ・・・」
一之介は飲みかけのお茶を吹き出しそうになる。
「おい・・止めておけ・・・大きなトラブルに巻き込まれるぞ」
「すでに僕は・・・僕たち一家は巻き込まれています。そして僕は、今回の解決に納得がいっていないんです」
「どうしても行くのか?」
「・・・はい・・・」
もう一度その目を覗き込む。こいつ・・やっぱりいい目をしていやがる。
「分かった。及川・・・三好良枝の住所を教えてやれ」
「・・・えっ?所長それはちょっとまずいんじゃ・・・」
「かといってその「ゴモラ」って店まで行って、三好良枝の住所を聞かれたら、こいつはもっと酷いトラブルに巻き込まれちまうぞ」
「えっ?・・・」
及川は自分の手元の資料をもう一度見返していた。「仲の良かったホステス」欄には「山本洋子」のほかにも数名の名前が書かれている。その一番下に「三好良枝」の名前が書かれていた。
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「この辺のはずなんだけど・・・」
秋月暁人は及川からしぶしぶ渡された三好良枝の住所を頼りに、早速行動を開始していた。鈴木探偵事務所から小1時間ほど電車を乗り継ぎ、目的地付近にたどり着くことが出来た。15時を少し回ったところ。まだ暗くなるまでには時間がありそうだ。都市部のゴミゴミとしたこの一角は、安アパートや古びたワンルームマンションが所狭しと立ち並んでいる。付近は林立する高いビルに日射を遮られ、15時だというのにもう日が陰っている。暁人が生まれ育った一日中日光が当たるように計画的に配置された高級住宅街とはだいぶ様相が異なっている。すさんだ雰囲気が漂い出ているようで、およそ幸福な状態とは思えない。早速「三好」や「秋月」の苗字を持った表札を探し始めるが、表札や名札などが出ていない部屋がほとんどであった。
途方に暮れてとぼとぼと歩いていると、向こうからベビーカーを押した母親らしい人物が歩いてくるのが見える。暁人が目を惹かれたのは、母親にしてはやや年齢が高そうなこと、洋子程ではないにしろ露出度の高い、極彩色の派手な服装をしている事だった。そして、近づくに従い驚くべきことを発見し、すぐに目が離せなくなる。露出の高い服装から露になった肌には「刺青」が施されているのだ。それも1か所や2か所ではすまない。首筋から始まって、大きく衿ぐりが開き露になった乳房の上部、両腕や両足も手首から肩口、足首から太ももまで、およそ露出している部分全てに、さまざまな紋様の刺青が彫り込まれていた。そういえば、洋子さんの手首にも、似たような紋様の刺青が施されていた。洋子さんの身体の他の部分はどうなっているのだろう?ふと洋子の裸が頭をよぎり・・・頭を振って邪念を払う。
(やくざの情婦?・・・)
堅気の女性でないことは明らかだった。凝視が気づかれないように、その女性の顔を改めて盗み見る。
(三好良枝の写真と似ている)
及川さんから見せてもらった写真は満司との結婚時の15年も前のモノだったが、面影は十分に残っている。気づかれないように一旦すれ違ってやり過ごすと、角を曲がる振りをしてすぐに尾行を開始する。
5分ほど尾行をしていると、その女性は古びたアパートの1室に入っていった。部屋番号を確認し、当該する共同の郵便受けの名札を見たが、何の名前も書かれていなかった。裏側に回って当該する部屋の窓を見てみると雨戸が閉じられ、中の様子は全くうかがい知れない。散々迷った挙句、暁人はその女性の部屋の呼び鈴を押していた。何回か押しても、中から反応はない。居留守を使っているのは明らかだった。こちらもここまで来た以上引けなかった。迷惑を承知で、呼び鈴を押し続ける。
「うるさいわね!赤ちゃんが起きちゃうでしょ。何か用?」
怒気を含んだつっけんどんな女性の声がして、チェーンをしたままのドアが半分開かれる。さすがに「本当の幸せ」って何ですかとは聞けない・・・。
「あの・・・満司さん・・・三好満司さんに頼まれまして・・・」
そんな嘘がポッと出てしまった。きっとプロならもっと上手くごまかせるのだろう・・・。どうせなら探偵術をもっと聞いておけばよかった・・・。だが、今の嘘はヒットだったようだ。
「あら~満司様の・・・」
良枝の声が急に猫なで声に変わった。ガチャガチャとドアチェーンが外される音がして、中に入るように促される。
「もうっ・・・ぼっと立ってないで、入って!入って♡」
中に一歩足を踏み入れた途端、異様な光景に思わず足がすくむ。6畳一間の安アパートの中には、SM用の器具が所狭しと並んでいたからだ。まだ童貞で、18歳になったばかりの暁人でも、「三角木馬」「磔台」「天井から何本もぶら下がっている滑車とロープ」「浣腸器」「オマル」といった器具が具体的に何に使うものなのかのは分からなくても、何を象徴するものなのかはすぐに察しが付いた。すべての窓は雨戸が締めっきりになっており、部屋全体が天井から床まで真っ赤なラシャ布で覆われている。その中央に、籠製のクーハンに寝かされている赤ん坊の姿があった。そのほかに生活感が感じられるものは何もない。
(母さんもこんなところで、三好聖満(きよみつ)と1年間も暮らしていたのだろうか?)
驚いて後ろを振り返る。ドアの前にはほぼ半裸の良枝が立っていた。カチリ・・後ろ手にドアのかぎが施錠される。
「うちの中では、面倒なのでいつも下着だけでいるのよ。満司様もそう」
といっても今、良枝が身に着ているのは半透明のスリップ一枚だけで、ブラジャーもショーツも身に着けていない。乳首も、股間の翳りもほぼ丸見えの状態だった。暁人は目のやり場に困ってしまったものの、そこに官能的な美しさを見出せなかった。良枝の身体には悍(おぞ)ましい刺青がいたるところに掘り込まれ、乳房は豊胸手術を受けて極端に大きく変えられているようだった。
「うふふっ・・どう?私の肉體・・・」
まるで暁人に挑みかかるように、良枝はうら若い雄の目の前で半透明のスリップを脱ぎ捨ててしまう。邪悪な紋章がいたるところに掘り込まれた、異様な肢体が暁人の目の前に全て晒される。
「・・・・・・・・」
異常に大きな胸部に目がいってしまう。極限まで膨れあがった乳房は母や洋子に比べるとだらしなく垂れ、乳首は黒ずんで異様に大きい。極端に肥大化した乳首は、芋虫のように伸びきってグニャリと垂れ、その芋虫に貫通するように何十個ものピアッシングが施されていた。思わず母親の乳首に施されたピアッシングが・・・満司の女の証であるピアッシングが頭をよぎる。股間の翳りに見えたものは陰毛ではなく、おどろおどろしい邪悪な紋章をかたどった淫紋であった。その淫紋が赤黒く光ったように感じた途端、良枝の目に淫らな光が帯び始める。
「ねえ?どう・・・私の肉體・・・満司様の・・おっしゃられるままに・・・肉體を変えてきたわ・・・」
良枝にじりじりとにじり寄られ、暁人は思わず後退ってしまう。
「このピアスの一つ一つが、私と満司様の愛の思い出」
醜く伸びきった乳首に施されたピアスを一つずつ愛おし気に摘み上げ、そのたびにぴくぴくと肉體を反応させて、喘ぎ声を上げていく。
「そして・・・ここには結婚指輪をはめて頂いたものよ」
股間を大きく蟹股に開き、暁人の目の前で恥ずかしげもなく腰を突き出す。極端に肥大化し醜く膨らんだクリトリスを貫通するように、左手の薬指にはめられるべきものが装着されている。
「満司様と交わるたびに、この指輪がオチンポ様に当たって、こすれて、気持ちいいらしいの・・・。私も、これがねじれる度にクリちゃんがとっても気持ちいいわ。満司様の事をとってもよく感じられるの・・・。ねえ綺麗でしょ?」
指輪の端をつまみ上げると、クリトリス全体をねじり上げるように引っ張り始める。
「はぁああん・・・ドロドロと二人の愛の証が・・・この指輪に沁み込んで・・・私たちの愛を高めあっているのよ・・」
ディルドを咥えた膣口から、ドロドロの白濁した愛液がまるで涎のようにたれ始め、太ももをつたって垂れ始める。グロテスクなものを見せつけられ、暁人は思わず顔をそむけてしまう。じりじりと後退した途端、足元に転がっていた男根をかたどった淫具につまずきそうになり、思わずその場にへたり込む。すぐ顔の横に赤ん坊が寝ているクーハンがある。その時になって初めて、暁人はその赤ん坊から生き物の気配が感じられないことに気が付く。泣き声はおろか呼吸音すら感じられない。暁人は必死の努力で良枝から視線をそらし、その赤ん坊をよく見てみる。精巧な人形であった。
「ウフフ・・聖満・・・・ママはこれからお楽しみだから・・・いい子にしていてね」
急いで良枝に視線を戻す・・・いつのまにか暁人のすぐ目の前に立ちふさがるように仁王立ちしていた。
(しまった・・・)
暁人に恐怖の表情が浮かび上がる。良枝は生贄の恐怖におののく表情を上からうっとりと見下ろすと、舌なめずりしながら言い放つ。
「さあ、あなたの精を頂戴・・・」
下から見上げる良枝の股間には、よく見ると細かな刺青が陰唇を取り囲むように施され、卑猥な形を際立たせている。ビール瓶のような巨大なディルドが秘肉をめくれ上がらせ、伸びきって弛緩した膣口から抜け落ちそうになっている。腰に回したベルトから伸びた紐によって何とか抜けないように固定されているものの、ガバガバに伸びきった膣は巨大なディルドですら物足りない様だ。そしてすぐに気が付く・・・クリトリスの根元には管状のリングが装着され、内側に向いた何本もの針が肉に突き刺さり、常に淫らな刺激を与え続けていることに・・・。母親に装着されているものと・・・あの時・・満司によって見せつけられた母の淫らな姿と重なっていく・・・。大きさは異なるものの、その淫具の仕組みはまったく一緒だった。
(この人は・・・母の成れの果てだ!)
恐怖でおびえる暁人の顔に、良枝の刺青が施された手が伸び、暁人に跨る様に全裸の肉體が覆いかぶさる。柔らかな乳房が暁人の制服を着た胸に押し付けられる。雌の濃厚な性臭が暁人の身体を包み込み、抵抗の力を奪っていく。
(うふっ・・・怯えちゃって・・・可愛いわね)
良枝の刺青を施された手が暁人の頬をゆっくりと愛おし気に撫であげ、毒々しい真っ赤なルージュがのった唇が暁人の唇に迫る。
「お母さん・・・・」
思わずそう呟いた暁人は観念したようにギュッと目を閉じてしまう。一瞬、良枝の動きが止まり、暁人の顔を驚いたように見つめ直す。
「ぶぶぶっ」
その時ディルドの鈍い振動音が股間から響き始める。
「はああん」
突然の振動に良枝の顔が快感に歪む。突然の快感に耐えきれなくなった良枝は、その場に突っ伏し、股間をぎゅっと閉じ合わせながら必死で擦り上げ始める。まるでペニスの様に肥大化した醜いクリトリスを一心不乱に捻り上げている。
「ああん・・・満司様・・・ご主人様・・・あなた様のおチンコ様を象ったディルド最高です・・・あんあん・・・良い・・・ああん・・・幸せ・・・・」
隙をついて暁人は急いで立ち上がり、逃げるようにドアに向かおうとして人形が入ったクーハンをうっかり蹴飛ばしてしまう。一瞬、良枝の動きが止まり、逃げ出した暁人の方を呆然と見つめる。だがすぐにクーハンから飛び出した人形を見とがめる。
「あら・・・駄目じゃないの聖満・・・ママの邪魔をしちゃ・・・ああん・・・ほら・・・ママが嘗めてあげる・・・」
そう言った良枝は、人形の股間に唇を寄せると、オムツをはぎ取るように脱がせて、その股間を舌で嘗め始める。
「うふふっ・・・聖満・・・気持ちいでしょ・・・ほら・・・幸せでしょ・・・こんな小さいうちから・・・ああん・・・満司様ったら・・・そんなに良枝のオマンコをついて・・・あああぁ最高ですわ・・・」
狂っている・・・良枝の表情は今や明らかに常軌を逸していた。もう暁人すら目に入っていないようだ。人形の股間に舌を這わせながら、ディルドの入った股間を淫らにくねらせ、狂ったように股間をかきむしっている。そして、手近にあったロープを手繰り寄せると、自らの身体に巻き付け始める。
「はあん・・・お縛り下さいませ・・・満司様・・・ご主人様・・・私の淫らな肉體に・・・縄が馴染んで・・・はあああぁあぁ」
「あっはん・・・いい・・・はあん・・・・最高です・・・・もっと強く縛って・・・はあん・・・いい・・・はああん・・・良枝・・・幸せ」
ふと良枝の胸元を見ると人形にも縄がかけられている。それも首に・・・・良枝が肉體をくねらせるたびに、深く食い込んでいる。
「お前が悪いのよ・・・聖満・・・お前が生まれてきたから・・・満司様の気持ちが・・・離れていった・・・・ご主人様が・・・居なくなった・・・早く死になさい・・・ほら・・・ママと一緒に・・・逝くのよ・・・ほら・・・逝け!・・死ね!死ね!死ね!」
暁人はこの場から早く立ち去らなければならないと分かっていながら、まるで足に根が張ったようにその光景に釘付けになっていた。到底その異常な光景をやり過ごすことはできなかった。そして気が付いてしまった。良枝の目に涙が浮かんでいることを・・・、良枝の首にも縄が巻き付いていることを・・・。
「やめろ~!」
暁人が良枝にとびかかり、首の縄を押さえつけるのと、良枝が絶頂に達するのはほぼ一緒だった。
「ひあぃぁああああああああああ」
絞り出すような絶叫を上げながら、良枝がその場で失神する。良枝の股間から潮ともお漏らしとも言い難い液体が流れ出し、真っ赤なラシャ布を濡らしていく。ブブブッというディルドの音だけが不気味な部屋に響いていた。
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暁人はとりあえず、失神した良枝の頸部に絡みついたロープを外すと、小水で汚れた部分をふき取ってあげていた。周りを見渡し、近くにあった毛布を醜く変えられた裸体にかぶせる。近くに転がっていた赤ん坊の人形をその手に抱かせると、アパートを後にした。
外に出ると空は真っ赤な夕焼け空に変わっていた。あまりの出来事に疲労困憊した暁人は、良枝のアパートの近くにあった猫の額ほどの小さな公園を見つけ、一息つけることにした。公園のベンチでひとりボッと夕焼け空を眺めていると一人の見知った男に声を掛けられた。
「よう!「本当の幸せ」は見つかったかい?」
鈴木探偵事務所の鈴木一之介所長だった。
「あれ?尾行していたんですか?」
「まあな・・・違法行為をして知らせた情報で、依頼人に危害が加えられたってことになったら、間違いなく免許取り消しだ。エージェント15名、事務職員10名の小さな探偵事務所だが、家族を考えれば100名近い人間が路頭に迷う」
ホレッと言って、缶コーヒーを投げてくれた。
「しかし・・・危うく童貞の危機だったじゃねえか?」
「えっ・・なんでそのことを?・・・」
急いで自分の周りをチェックし始める。盗聴器がどこかに取り付けられているはずだ。
「ここだよ・・・制服の襟首のすぐ下・・・ここに取り付けると当人も相手も気が付かれないでよく声が拾えるんだ」
一之介はそう言いながら暁人についたマイクを取り外し始める。
「ほらこれ・・・高いんだからな」
この人、いつもビジネスライクなことばっかり言ってる割に、なんだか良い人のようだ。
「そこまで聞いていて、なんですぐに助けに来てくれなかったんです」
「やばくなったら行っていたさ。だが残念ながら俺たちは警察じゃない。捜査権なんてものはないんだ。踏み込んでも家宅侵入罪や暴行罪で訴えられるのが落ちだ。だから本当にやばいとき以外は出れないんだよ」
やはり・・・この人は良い人だ。いや、もしかするとめちゃめちゃかっこいい人なのかもしれない。
「有難うございます。僕を心配してくれて・・・ところで・・・なんで僕が童貞だと?」
「何となく分かるよ・・・実際そうだろ?」
「知りません!」
お陰で随分と気が楽になった。頂いたコーヒーを一口すする。そしてやっと気が付く・・・。
「あの・・お金はどのくらい?」
「ああ・・やめとけ・・・ボディーガードまで計算に入れると10~20万円ぐらい行っちゃうから、高校生には無理だ。今回は缶コーヒー代を含めておごりだ」
そう言って片目を閉じる。ウィンクのつもりだったのだろうが、あまり決まっていない。まあ誰にでも欠点はあるのだろう。
「その代わり、あの良枝の刺青の紋様について教えてくれ。この絵柄のうちどんなものが使われていた?特にあそこの部分・・・」
そう言っていくつかのカードを取り出す。そこにはドラゴンや蝶などのデザインに交じって、上下逆さまになった十字架、星形、さらに見たこともない邪神のような像、なぜか666という数字など、オドロオドロしい絵柄も多数混じっていた。
「これと、これ、それにこれも・・・」
良枝さんの肉體に掘り込まれていた刺青が確かに混じっていた。記憶をたどり、示されたいくつかのデザインを指摘する。
「さすが童貞パワー!目に焼き付いてるな・・・」
「だから、高校生をからかわないでくださいって」
「見込んだだけはあるな・・・中々の記憶力だ・・さっきの嘘も堂に入っていた。将来探偵をする気はあるかい?」
「えっ?・・考えたこともありませんでした」
「そうだな・・・捜査権もない。しょぼい仕事ばかりだ。だが、本当に依頼者に寄り添えるのは探偵だけなんだ。それに今の警察では解決できない事例が増えてきている・・・」
「もしかして僕はその調査のために利用されたんですか?」
「えっ?・・考えたこともありませんでした」
一之介さんがおどけた調子で肩をすくめてみせる。さっきのウィンクよりはましなジェスチャーだった。
そろそろ進学塾に行かなければならない。
「最後に一つだけ教えてください。良枝さんの事、別件で調べていたんなら知っていると思います。彼女は実子の聖満の親権をなぜ主張しなかったんですか?父親より母親のほうが普通は親権が認められるはずです。あんな不気味な赤ん坊の人形を抱えて生きて行くくらいなら・・・」
「知ったら後悔するかもしれないよ?いいのかい」
「・・・・・構いません。実は洋子さんの次回に向けた直接の宿題がそれだったんです。だいたい答えは分かりました。でもこの結論が・・・合っているか・・・僕には自信が無くて・・・」
「まあ、童貞には無理だろうな・・・」
「だから・・・高校生をからかわないで・・・」
「殺そうとするからだよ」
「・・・・!・・・・」
「君も見たはずだ。あの女の精神が崩壊していることを。彼女は10年前、生まれた赤ん坊と無理心中を図ったんだ。満司に捨てられ、その原因を生まれた赤ん坊のせいにした。母親としては失格だな・・・」
一之介さんは「母親」を強調してそう言っていた。一之介さんが何を言いたいのか薄々分かった。探るような視線が僕の目を覗き込んでいる。母の顔が良枝さんの顔と一瞬重なった。思わずぞっとして頭を振っていた。
「気にするな。あの女は今でも「女」と「母親」が同居しているんだ。無理心中を図った夜の記憶を毎日繰り返している。あの女はそこから這い出れないんだ」
やはり・・・良枝さんは母の未来の姿だ・・・。でも、洋子さんはなぜそれを僕に見せようと思ったのだろう。このことは何を意味しているのだろう?
「今日は本当にありがとうございます。おかげで何か吹っ切れました。これから一人でよく考えて「本当の幸せ」の答えを見つけてみます」
「そうだな・・・そいつはお前さん自身で出すべき答えだ」
そういった一之介さんの顔はどこか洋子さんの表情に似ていた。何かまぶしいものを見るような、失った過去を懐かしむような・・・。
すでに夜の帳が下りて当たりは真っ暗になっていた。
「しまった・・・塾に行かないと」
「良ければ近くまで送ってやるよ。ミニクーパーの狭い室内でいいんなら」
「もしかして、BMWじゃない頃のですか?」
「BMWのミニクーパーなんてないよ」
一人で考えたかった。申し出を辞去し、一之介さんとは公園で別れた。一之介さんが「アバヨ」と言いながら後ろ向きで手を少し掲げる動作は、やさぐれ感があって今日のジェスチャーの中で一番決まっていた。
〇感想や何らかのコメントを頂くと嬉しいです。よろしくお願いします。
〇本小説の登場人物のうち「山本洋子」に関しては以下のサイトで書かれている小説の登場人物になります。ご興味があればご一読ください。
https://novel18.syosetu.com/n0812ge/