<あらすじ>
秋月暁人は母・唯子を三好満司に寝取られ、傷心の日々を送っていた。そんな暁人の目の前に唯子から頼まれたという謎の女性・山本洋子が現れ、暁人の心の傷を癒すため「大人のレッスン」を行うと宣言する。洋子のアドバイスにより満司の元妻・三好良枝に会った暁人は、その異常な行動と変わり果てた姿を目の当たりにして、母・唯子の絶望的な未来を予感する。
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---------登場人物---------
秋月 暁人:主人公
秋月 唯子:暁人の母
秋月 暁年:暁人の父
三好 満司:主人公の遠縁(父・暁年の母方の従祖母の孫娘の夫)
三好 聖満:満司の子
三好 良枝:満司の元妻
山本 洋子:謎の娼婦 (「廃神社の巫女https://novel18.syosetu.com/n0812ge/」からのゲストキャラ)
藤原 綾乃:暁人の片思いの人(実は両想い) (オリジナルキャラ)
鈴木一之介:鈴木貫太郎探偵事務所・所長・探偵 (オリジナルキャラ)
パタンジャリ・プールナーナンダ:ヨーガ修行僧 (オリジナルキャラ)
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とぼとぼと重い足を引きずりながら・・・先週のあの場所にまで来ていた。洋子さんの別れ際の言葉を思い出す・・・。
「そうね・・・来週のこの時間、この場所にまた来てくれるかしら。もしその時、私の様子が変だったら・・・今の私とは違う感じがしたら・・・私に声をかけないで、そのまま通り過ぎて頂戴。その時は再来週まで延期よ・・・」
あれはどんな意味なんだろう。腕時計を見ると先週より10分ほど早い。周りを見渡すと既に洋子さんは来ていた。今日はこの前よりも少し落ち着いた服装になっている。しかし、乳首どころか乳輪まで浮き出ていている極薄のタートルネックのセーターやぴったりと下半身にまとわりついて肉體の線がたっぷりと浮き出させているタイトニットのロングスカートは、童貞の暁人から見れば十分に妖艶な格好であった。まさかその服の下は、股間に装着された紐のようなT字ベルトと、乳首ピアスだけなどとはさすがの暁人も想像すらつかなかっただろう。その妖艶な格好とは裏腹に、あたりを控えめに伺うような表情は、先ほどの綾乃を思わせた。まるで少女のような清純さがそこには残っていた。そう感じた途端、暁人を見つけたとき、洋子さんはどんな表情を見せるのか気になり始めた。
「洋子さん・・お待たせ」
暁人がそう言うか言わないかのうちに、振り向いた洋子さんの顔がパッと明るくなった。綾乃の表情と瓜二つだった。そして、その表情は母の表情にもそっくりだった。あの忌まわしい出来事に会う前・・・僕が家に帰った時にいつも見せる母の表情にそっくりだったのだ。
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「じゃあ宿題の答えを聞かせて。良枝さんに会ったと今言ったわね?」
喫茶店に入るなり、洋子さんは直ぐに核心を突いてきた。僕が経験した異常な出来事を聞いている間も「うんうん」等と合いの手を入れることもなく、ひたすら黙ってジッと聞いていた。前回と違って僕の隣に密着して座ってくるような事もなかった。どことなく余所余所しく、とても急いでいる様子・・・。
「あっ・・・御免なさい・・・この前は少し時間が長くて・・・レッスンの時間はもっと短くしようと思って」
先週は3時間以上も僕のために時間を割いてくれたのだ。夜遅くまでここに居るのも、喫茶店とは言え歓楽街のど真ん中・・・高校生としてはあまり良くないに違いない。宿題は「三好良枝は何で息子の聖満と暮らしていないか?」だった。僕も単刀直入に答えないと・・・。
「聖満を殺してしまうから」
きっと洋子さんはその答えを予想していたに違いない。表情一つ変えずにその答えを受け止めていた。これはたぶん正解だと確信があった。一之介さんもそう言っていた。
「あなたは愛に対して未熟だから・・・きっとそう言うと思ったわ」
違うのだろうか・・・?洋子さんは何を言いたいのだろう・・・?僕の不可解な表情を見て取ったのだろう、洋子さんがニッコリと安心させるように微笑む。
「あなたが、良枝さんに会っていなかったら、そう言っても許してあげたわ。でも今の答えはダメね」
<ピシッ!>
突然、手の甲に痛みが走る。洋子さんの手に竹の様なものでできた20cm位の細長い棒が握られていた。それで鋭く打たれたのだ。
「これは竹箆(しっぺい)と言う禅宗で使われる道具よ。よく「竹箆返し」と言うでしょ?これの事」
きっと職場から持ってきたに違いない。その目は今までと違って、少し冷酷な感じがした。SMの女王様を地で行っているような気がする。もしかして・・・
『私の様子が変だったら・・・今の私とは違う感じがしたら・・・私に声をかけないで、そのまま通り過ぎて頂戴』
いや・・・多分違う。僕に向けたあの時の笑顔は先週会った時の印象そのものだった。
「いいこと・・・時間が無いの・・・この前のように時間をかけることはできないの。スパルタ式で行かせてもらうわ。あなたが間違うたびに、この竹箆が飛ぶから覚悟してね」
ニコニコしながら恐ろしい事を言っている。ひえええっ・・・。一之介さん・・・助けてくださいよ・・・。あなたも連帯責任ですよ!
「そう・・あなたが言ったこと。ある意味で合っているわ。良枝さんと何度か話したから私も分かるの。あなたが答えた通り、彼女は聖満を殺したいほど憎んでいた。でも、同時に強く聖満君を愛していたのよ。愛と憎しみは裏腹なの。愛しているがゆえに死ぬほど憎いの・・・。殺したいほど憎いのに、死ぬほど愛しているの。あなたのお母様は満司さんを殺したいほど憎んでいるのに、死ぬほど愛しているの。強く人を憎むのと強く人を愛する事は同じ感情から来ているの。「大人のために その4」よ」
「そして・・・満司さんはそれを利用するのがとってもうまいのよ」
そう言った洋子さんの目は何だか座っているような恐ろしいものに見えた。
「洋子さんはもしかすると、僕を絶望させるために彼女に会わせたのですか?」
<ピシィッ>
再び手の甲に鋭い痛みが走る。さっきより強くなっているような・・・。
「口答えは今日は無し・・・よく聞きなさい」
その目は僕を強く睨みつけ、恐ろしかった。僕は思わずソファーの一番後まで後退っていた。
「彼女は聖満を強く憎んでいたのに殺すことはできなかった・・・。なぜかしら?」
「・・・・・・・・・」
間違うのが恐ろしくて何も言えなかった
<ピシィッ>
再び打ち据えられる。やはり・・・だんだん強くなっている。今度は打たれた箇所が蚯蚓腫れになっている。
「答えないことは許さないわ。時間がかかるだけでしょ!」
「さあ、考えなさい!答えなさい!」
「聖満よりも満司の方に強く惹かれてしまったから!」
<ピシィッ>
強烈な痛み・・・身をよじらせながらも僕は思わず洋子さんと目が合った。その目は悲し気だった。僕に対する失望だろうか?哀れみだろうか・・・?
「あなた本当に馬鹿ね。いいこと。愛する人が自分の子を身籠った時、男性はより深い愛情をその女性に感じるの。そしてもちろん我が子にも。女性もそう。命が宿った瞬間、その命と父親をより深く心から愛するようになるの。これは自然の摂理・・・どんな生物でも共通した特徴よ。そうでなければその生物は自分たちの子孫を次世代に残していけない。それが「愛」の実態。「愛」の本質は次世代のためにある。これが「大人のためにその5」よ。科学者の中には「愛」とは利己的な遺伝子が次世代に残るための幻想だって言い切る一派まであるわ。でも、人間は複雑な生き物なの。レッスン1と2を思い出して。愛する人を傷つけ、苦しませることでしか愛せない人は愛する人が身籠ったらどうなるかしら?」
答えは自明だ。その子が危ない。その子を傷つけ、苦しませてしまう・・・。ハッとして答えに行き当たる。
「もし子供を傷つけたくなければ、その女性と子供を引き離す」
「そう・・・では、その男に変えられてしまった女性は?」
「その女性の分身である子供が傷つけられ、苦しめられることを望んでしまう・・・もしくはその子供から無理にでも距離を置こうとする」
「そう・・・前者が今の良枝さん・・・後者が以前の唯子さん」
「・・・・・・・・・・・・・」
そう言う事だったのか・・・。でもこれが・・・真実だとすると・・・
「そう・・・あなたを深く愛しているお母様は今、二重の苦しみを受けている。家族と言う檻とあなたと言う根源的な愛の二重の苦しみ・・・。多分、敢えて受けている」
「・・・・・・・・・・・・でも・・・それでは・・・やはり・・・母を救うことは絶対に・・・」
<ピシィッ>
しまった・・・口答えをしてしまった。だが先ほどより痛くない。身体が慣れてきてしまったのだろうか?洋子さんは悲しそうに僕を見つめている。
「あなたに何で良枝さんを合わせたと思う?」
「良枝が子供を傷つけ、苦しめているところを見せるため・・・」
<ピシィッ>
また違った・・・だが今までより痛く感じない。痺れるような感覚が残り始める・・・。
「良枝さんが母の未来の姿だから・・・」
思わず目をつぶってしまっていた。だが、竹箆を受けることはなかった。
「そう。そこにあなた達を救う「本当の幸せ」の糸口があるからよ」
逆の事を考えていた。
「人形を代償にして、オナニーに耽り・・・あられもなく男を求めている・・・死ね・・・死ね・・・と何度も言って・・・それが幸せですか? 僕には良枝さんに絶望しか見えませんでした」
「そう・・・彼女には絶望しかない。でも本能だけで生きている。満司を強く愛し、求め、請い願い、狂ってしまっている。でも、子供には手を出さなかったの・・・それが彼女の本性だから。それが彼女の基本だから・・・それがあなたたちの救い」
「そうとは思えない。いたっ・・」
<ピシィッ>
また違った・・・痛みより痺れるような感覚が強くなる。手の甲は蚯蚓腫れが4列にもわたってついている。
「じゃあ何で良枝さんはあなたに手を出さなかったのかしら?」
「・・・・・・!!・・・・・・・・・・」
「良枝さんも唯子さんに写真を見せてもらっていたのよ。とても羨ましそうだったわ。だから・・・途中で彼女・・・気が付いたのよ。あなたが誰か・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「子供と無理心中を図った・・・っていうの多分、満司を取り戻すための狂言よ。それを満司さんがうまく利用した。彼も聖満を愛している・・とても歪んだ形でね」
「あなたのお母様も・・・唯子さんも同じ・・・あなたと、お父様と、家族・・・それが基本なの・・・それが女の・・母親の・・本質なの・・・」
「でも・・・母は・・・僕や父よりも・・・満司の方を愛しているんでしょ?より強く愛しているんでしょ?僕らに愛が向いていないんでしょ?」
<ヒュンッ>
僕はついに耐えられなくなって、振り下ろされた洋子さんの竹箆を掴んでいた。洋子さんの目に涙が浮かんでいたからだ。もうやめて欲しかった。洋子さんのために・・・。
無理に竹箆を掴もうとした僕は体勢を崩し、洋子さんを巻き込みながら覆いかぶさるようにソファーの上に倒れていた。鞄が倒れ綾乃にもらった紙袋が飛び出している。洋子さんが一瞬「ビクッ」と体を震わせ、驚いたように目が大きく見開かれる。
「・・・・・・・」
無意識にしたことに唖然として言葉も出ない。再び洋子さんの身体が「ビクン」と震えたかと思うと、睨みつけるような、強い意志の感じられる洋子さんの眦(まなじり)が再び僕に向けられていた。その目は透き通る様に清らかでとても美しかった。
「愛が強い事と、強い愛は違うの・・・確かにお母様は・・唯子さんは・・・強く満司さんに惹かれ、依存し、そして愛してしまっている。でもその愛は強いだけなの・・・」
「強いだけ?・・・さっぱり分かりません・・・教えてください・・強い愛ってどういうことですか?それは母さんが満司に感じていることと同じじゃないんですか?」
洋子さんの息が顔にかかるくらいに近づいてしまっていた。フルフルと肉體を小刻みに震わせている洋子さんの顔が悲し気に少しゆがむ。僕は急いで、洋子さんから離れると元の場所に腰かけ直した。洋子さんは起き直ると、まるで少女のように気まずげに顔を赤らめ、身体をまだ小刻みに震わせているように見える。
「強い愛とは・・・積極的な愛・・・受け入れるだけでは得られない愛のこと。むしろ受け入れがたい愛を渡すこと・・・「大人のためにその6」よ。お父様にそれを思い出させて・・・」
父が強い愛を持っている?どういう事なんだろう?それにどうやって?・・・。僕が考えあぐねている間にも洋子さんの身体が再び「ビクン」と震え・・・呼吸が乱れ始める。ふと落ちたカバンを見ると、綾乃からもらった紙袋からクッキーの包みが飛び出していた。
「あら・・・お誕生日?・・・From A. F.・・・うふッ・・・それが片思いの方ね・・」
「近所に住んでいるんです・・・幼馴染で・・・腐れ縁・・・名前は・・・」
「だめ!・・・私に言ってはダメ・・・」
洋子さんはそう言いながら僕の口を塞いでしまった・・・前回はあんなに知りたがっていたのに・・・。そして今日も急に・・・突然苦しそうになり始めている。肩で息をして、額に脂汗が浮かんでいる。
「だ・・・大丈夫ですか・・・すみません・・・これ奪っちゃったりして」
僕は竹箆を拾い上げると洋子さんに手渡そうとした。しかし、竹箆を受け取ろうとした洋子さんの手はぶるぶると震え、再び取り落としてしまう。
「今日はこれまで・・・時間をかけすぎたわ。続きはまた・・ら・・・来週・・同じ時間に
・・・。それまでの宿題を出すわ。今度は・・・あなたが・・・お父様を鞭打ちなさい」
「はぁ?・・・どういうことですか?」
そう言いながらも洋子さんは身支度を整え始める。
「さっき言った「強い愛」をお父様に思い出させなさい。あなたのお父様は・・・思いやりが有りすぎる・・・時には愛する人を悩ませ、苦しめ、傷つけないと・・・得られない事がある。優しさが愛の芽を摘んでしまう。答えは血みどろの中でしか得られないこともあるのよ・・・真実を聞き出しなさい・・・あなたが傷つき・・・あなたが絶望し・・・あなたが血反吐を吐くような真実を・・・聞き出しなさい・・・お父様が躊躇するようなら鞭を振るって聞き出しなさい・・・。それがお父様に「強い愛」を思い出させるきっかけになる」
洋子さんは席を立つと二人分のコーヒー代をテーブルに置き、フラフラとした足取りで出口に向かっていく。
「大丈夫・・・信頼があれば聞き出せる・・・真実を伝え・・・真実に向き合うことを恐れない勇気があれば・・・答えが見つかる・・・お父様と向き合いなさい・・・互いを信じ、互いに向き合う勇気があれば・・・乗り越えられる・・・」
絞り出すような声・・・ドアを押した洋子さんはとても苦しそうだ。意識を失いそうな、ぎりぎりの表情を浮かべている。それでも意志の力を振り絞り、なんとか正気を保っているようだった。でも・・・僕は洋子さんを引き留めておかずにはいれなかった。どうしても最後の言葉が気になった。どうしても聞いておかずにはいられなかった。
「乗り越えられる?何に?・・・」
振り返った洋子さんの目が定まっていなかった。限界を超えているのがよく分かった。僕は急いで立ち上がるとドアに向かっていた。だが、僕の声がもう聞こえないのだろう・・・洋子さんは質問には答えず、弱弱しく一言だけ返してくれた。
「いいこと・・・もし…「強い愛」を思い出させられなかったら・・・お父様をここに連れてきなさい・・・ヒントは・・・け・・契約書・・・」
そう言うと逃げるようにドアから消えていた。追いすがるように外に出たが、洋子さんの姿はどこにも見当たらなかった。気のせいか洋子さんの残り香には、獣の匂いが混じっているような気がした。その香りはとても、艶っぽく、妖しく、蠱惑的だった。席にもどり、ふと足元を見ると洋子さんが置いていった竹箆が落ちていた。
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喫茶店を出た時にはほとんど意識が薄れかけていた・・・。倭男さんとあの子が、暁人君が・・・似すぎている。外見は似ていないのに・・・私を強く見つめる目・・・控えめだけど確信に満ちた眼差し・・・常に理論的に考えようとする強い意志・・・似すぎだ・・・あの眦(まなじり)・・・。あれほど距離を取っておくつもりだったのに・・・鞭を用意してまで、離れているつもりだったのに。鞭を振るう度に、彼が痛がる様子を見せる度に、私の心が同じように傷つき、被虐の快感に襲われていった。そしてディルド・・・洋魔子が何か仕掛けたに違いない・・・こんなに早く作動を始めるなんて・・・勤務時間外は止まっているはずなのに・・・早く・・・記憶を消さないと・・・。洋魔子が暁人の意中の人を知りたがっているのを感じていた。・・・強く感じたこと・・・強く意識したことは・・・洋魔子も消せない・・・・何か良からぬことに使おうとしている・・・だから隠している・・・イニシャルを・・・早く忘れて・・・それだけでも・・・忘れないと・・・でも・・・それは私も知りたかったこと・・・暁人の意中の人・・・私も気になってしまった・・・だめ・・・だめ・・・間に合わない・・・・
「ブブッブブブブツッ・・・」
歓楽街の路地裏に逃げるように入りこんでいった娼婦は、人目が無いのを確認するや否や、焦れたようにロングスカートをたくし上げると股間に手を這わせ始める。すでに股間からはポタポタと淫液が滴り落ち、地面に点々と恥ずかしい染みを作っている。
「ひゃぁんんぁぁぁぁぁ・・・」
強烈な快感で体が仰け反り意識が遠くなっていく・・・。極薄のセーターにプックリと浮かび上がった乳首をつねり上げ、掻き毟る様に股間くねらせながら、汚れた欲望を満たしはじめる。そして、その愁いを帯びて優しげだった表情が次第に邪悪で冷酷なものに変わりはじめる。
洋子から洋魔子に代わった瞬間、股間に這わせる指の動きが大胆になり、貪るような動きに変わり始める。妖しげなオーラが全身を漂い、獣の香りがきつくなっていく。
「うふっふふっ・・・あはははつ!何一つ忘れていない・・・お前の記憶・・・全部残っているわよ洋子!」
もうそこには山本洋子は居なくなっていた。優しく貞淑そうな顔立ちに似合わない、邪悪な表情がその顔面いっぱいに広がっている。
「そう・・お前も感じたの・・暁人を鞭打って・・・サディスティックな欲望を・・・暁人を調教する快感を・・・覚えてしまったのね・・・うふふっ!」
洋魔子はもどかし気に極薄のセーターをたくし上げると、伸びきった乳首を痛めつけるように直接捻り上げる。
「あんあん・・・いいわ・・・良いわよ・・・洋子・・・・うふふっ」
「鞭を使えば接近しなくても良い?男を感じなくて済む?・・・うふふっ・・洋子・・・お前・・・だんだんチョロくなってきたわね・・・操りやすくなってきたわ・・・私の記憶が・・・すべて事実だとでも思っているの?」
洋子と洋魔子、2人が共有する記憶は今まで、実際の経験や体験で得られた事実のみの記憶で構成されていた。洋魔子は部分的に記憶を残すことで、洋子の行動をある程度操作出来ることに気が付き、邪悪な目的で利用していた。しかし、洋魔子が人格の半分以上を占めるに至った今、魔洋子はより確実に洋子を操作する方法を見出し始めていた。二人が共有する記憶をある程度なら、自分に都合のいいように改変できることにきがついたのだ。
もともと脳は「マインドセット」と呼ばれる記憶の最適化を行う。脳はマインドセットにより、事実の取捨選択を行い、再構築し、最終的な記憶が構成される。この際、脳は都合のいいように情報を結び付け意味を持たせてしまう。時には事実と正反対の意味づけを行い、そのまま事実として再構成してしまう事もある。洋魔子は自身の記憶をマインドセットの際に邪悪な目的のために都合よく再構築して、偽の記憶を作り出すことに成功していた。その間違った記憶を元に行動する洋子は、無自覚のうちに邪悪な行動に誘導されてしまうのだ。
「鞭を使ったスパルタ教育の有効性」
「体罰による即効性が出る教育」
暁人への母性的な関心と性的な興奮とを関連付けながら、今では否定されているこれらの教育法を事実のように再構築し、鞭打ちの正当性として強烈に記憶に残す。案の定、洋子は暁人に近づくことの危険性から、鞭をつかったスパルタ教育に飛びついていった。バックの中に竹箆をそっと忍ばせておいたのは洋魔子だ。邪悪な笑いが止まらなかった。洋魔子にとって洋子はまさに理想のエージェントになっていた。正義の心を持った悪魔の手先・・・良かれと思って行う事がすべて逆、悪魔の目的に利用されていく・・・それが今の洋子だったのだ。
「あははははつ・・・バーカ・・・操作されているとも知らないで・・・暁人への調教・・・とても自然に行われているじゃない・・・暁人も何の疑いも抱いていない・・・でも、しっかりと性癖を植え付けている・・・彼・・・最後の方・・・うっとりと反応しているわよ・・・お前に鞭打たれて・・・痺れたような・・・何とも言えないマゾの顔・・・暁人・・・だんだん染め上げられている・・・警戒を抱かせない洋子のお陰で・・・マゾ豚になってしまっている・・・うふふふっ・・・あはははははつっ」
サディスティックな快感に・・・ついには絶頂に達し、邪悪な快感にのたうち回りながら、がくがくと肉體全体を打ち震わせて失神していた。
しばらくたち、肉體の疼きを癒した魔洋子はむっくりと起き上がると、洋子の記憶を吟味し始める。そして、邪悪な発見に思わず口の端を上げながら嘲笑を浮かべてしまう。
「近所に住んでいる幼馴染のA.F.・・・うふふ・・・この情報で十分・・・すぐに分かってしまうわ。調教されてしまった母親によって・・・・うふふふっ・・・暁人・・・皮肉なものね・・・お前の初恋の人は母親の裏切りによって犯されるのだから・・・早く見たいわ・・・それを知った時のお前の顔・・・可愛い顔が絶対的絶望で歪んでいく瞬間・・・楽しみね・・・あはははははっ」
〇感想や何らかのコメントを頂くと嬉しいです。よろしくお願いします。
〇本小説の登場人物のうち「山本洋子」に関しては以下のサイトで書かれている小説の登場人物になります。ご興味があればご一読ください。
https://novel18.syosetu.com/n0812ge/