噂が呼んだ怪人(エロパロ) 作:藍那研究助手(停職中)
パソコンのディスプレイから漏れ出したブルーライトの輝きのみを照明とする薄暗い室内に、マウスのクリック音とキーボードを乱暴に叩く無機質な音が響く。
「――でさあ、こないだ学生時代の友達からすげー久しぶりに連絡あってな、『久しぶり遊ぼうぜ』って言うからわざわざ行ったんよ」
ウレタン塗装の剥げた古めかしい勉強机に座り、男が一人ボソボソと低い声で喋る。男はインカムマイク付きの大振りなヘッドセットを装着しており、インターネットの動画サイトを通じて流行りのシューティングゲームの実況プレイをしている様子だ。
「最初は普通に盛り上がってたんだよな、当時流行った都市伝説のバカみたいなパロディが今更流行りだしてるとか、同級生の誰それが結婚しただのなんだの……」
淡々と喋りながらも彼の手元は忙しなく動いており、ヘッドセットからは激しい発砲音が絶え間なく漏れていた。
「まあ同級生の結婚話とかは正直わりと憂鬱な気分になったけど。それなりに楽しく話してたわけよ。昔は結構仲良かったから、久しぶりに会えて割と嬉しかったし――っし!」
ゲーム画面にWINNERの文字が現れ、画面の端に表示されている数名のリスナーからの「やるじゃん」「おめでとう」といったコメントに目を通しながら、男は小さくため息をつく。
「ありがとー。……んで、昔話とかに花咲かせて、ってやってたらいきなり向こうが、スッとね、勧誘してきた訳よ。有名なマルチの!」
男は近頃抜け毛が気になり始めた頭を掻きむしり、怒気を孕んだ声でひとりごちる。
「もうね、『こいつマジか』とか、『こいつから見た俺ってそういう感じか』ってアホらしくなって。トイレ行くフリしてそのまま帰ったった。そんで即着拒とブロックしてやったわ!」
男は画面に表示された「GJ」や「wwww」などの文字列を読み流し、ふと時計に目をやると時刻はすでに午前2時を過ぎていた。
「……ま、『ご無沙汰な友人からの急な誘いはろくなもんじゃない』ってのはマジな、マジ。みんなも気をつけて、って所で今日の配信はここまで。付き合ってくれてありがとさ〜ん」
少々声を弾ませつつ、そんなふうに締めくくると動画の配信を終了してパソコンの電源を落とし。彼は大きくため息をついた。
「……同級生はだいたい結婚してるってのに、俺はカノジョも無しの半ば引きこもりの無職童貞、しかも数少ない昔の友人からも裏切られ、ってか」
やってらんねぇ、などとつぶやきながら彼は席を立ちベッドへと飛び込む。もぞもぞと布団に潜り込み、深く深くため息をついた。
カチ、カチと時を刻む時計の音に耳を傾けるうち、彼の意識は闇に沈んでいった。
※
――ぼふん。
「ゔっ……」
それなりの重量が勢いを着けて飛び込んできたような衝撃に、男はたまらずうめき声をあげた。彼は何が起こったのか理解できないままに目を開けるが、真っ暗で何も見えない。
混乱のさなか、男は自分の上で何かがもぞりと蠢くのを感じた。
「――うわっ!?」
彼は思わず手を出し、恐怖のままに腹から上半身へ向け這い上がってくる何かを抑える。そうして突き出した手が触れたものは――とても暖かく柔らかな、触り心地のいい人肌であった。
押し出した感触は軽く、未知の侵入者は小さな悲鳴とともにあっさりとひっくり返り、彼の足元に倒れ込む。
彼はその間に上体を起こして枕元にある照明のリモコンを手探りで掴み取ると、明かりを点けた。
「な、なんなんだよいきなり……ッ?!」
LEDの明かりが闇を照らして侵入者の姿を浮かび上がらせると、男はその衝撃のあまり絶句する。
「――え、お、女の子?」
黒い布からまろび出た、白く細い肢体。背中まで伸びた濡烏の髪の間からは人形を思わせる端正な顔が垣間見えていた。
前の開いた黒い布――マントだろうか――を除き衣服は身に着けておらず、眩しいほどに艷やかな肌を惜しげもなく晒している。
――仰向けに倒れ、あられもない格好を晒した美しい少女。
そんな一種非現実的な光景を前に、その胸元のなだらかな膨らみの先端で色付く桃色に――無毛の丘の下で無防備に晒された鼠径部、その間で閉ざされた秘唇に――男の視線は自然と釘付けとなる。
絶句する男の視線の先で少女の瞼が開かれ、鳶色の瞳と目が合った――その次の瞬間、気付けば彼の体は少女へ覆い被さっていた。
薄い桜色の小さな唇を、男の舌がえぐる様に蹂躙する。驚いたように見開かれた鳶色の瞳を、彼はどこか他人事のように眺める。
――何故? どうして? なぜこんな場所に? 居るはずが無い。
混迷を極めた男の思考は、既に手遅れとなった現状について少しでも把握しようと空転していた。
この部屋は彼の聖域である。かつて自慰に耽っているさなかで家族に扉を開けられた羞恥と怒りのままに取り付けた部屋の鍵は彼しか持っていない。
内側から鍵をかけてしまえば、家族であろうと物理的に破壊しなければ部屋へ入ることは出来ない。そんな音を立てて侵入すれば、篭りがちな生活の中で気配に敏感となった彼ならたとえ寝ていようと気付かないはずが無い。
ではこの少女はどこから、なんの目的でここへ来たのか?
まとまらない思考の中で、男は無理矢理にも結論づけた。
――これは自身が見ている淫らな夢である、と。
現実であれば自分の部屋にこのような少女が存在するはずがない、入れるはずがない。
それにもしも現実であれば、既に終わったも同然な人生は本当に終わってしまう。そんな恐怖から逃れるように、彼は自身の夢の産物であるの結論づけた美しい少女の体へ溺れる。
小さな唇を割り、並びの良い歯をなぞるように、柔らかい舌を絡めとるように、男の舌は少女の口腔を貪った。
「〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
十数秒もそんな事を続けていれば、呼吸を奪われた少女が微かに身を捩りながら声にならない声を上げた。
「…………!?」
その目尻からポロポロと零れ落ちる涙が視界に入った瞬間、男の思考が僅かに正気に引き戻された。
「あ、ご、ご、ごめ……!?」
慌てて体を離した男が尻もちをつき、ベッドが軋みを上げる中で少女は喉元に手を当ててむせ返る。咳をする度に発展途上の小さな乳房が小刻みに揺れ、男は知らずに生唾を飲み込んだ。
少しばかり頭が冷えた彼は、改めて少女に視線を向ける。身に着けているのは、今のやり取りでしわが付いた黒いマント一着のみ。床には彼女のものと思しきシルクハットが転がっている。
……まるで露出狂とマジシャンを混ぜたが如き異様な風体をした少女は涙と唾液に濡れた顔を上げると、男に視線を向けた。
死刑宣告をされる囚人の如き心持ちで身を竦めた男の想像とは裏腹に、少女はベッドの上を這いずるように彼へとにじり寄る。
そして、男の顔を見上げながら、情けなく投げ出された彼の脚を抱きしめるように掴んだ。
「〜〜〜〜〜〜ッッッツ!!!!!」
今度は、男が声にならぬ声を上げる番であった。彼は上体を起こし、今度こそ自らの意志をもって少女をベッドに組み伏せた。
「誘ってるのか……! 誘っているんだろ……!? そんな格好で……! こんな時間に……! 忍び込んできて……!!」
搾り出すように小さく、まるで言い訳をする様に男は叫ぶ。
左手で華奢な肩を押さえつけると、右手で小さな膨らみを覆うように掴んだ。
汗の滲む吸い付くような柔肌を転がすように揉みしだくと、小さいながらも柔らかな感触とその下の肋骨の硬さ返ってくる。そのアンバランスな手触りは男の興奮を強く促した。
「………ッ!」
親指と人差し指で解すように左の乳房を弄び、その先端の桜色を強く捻ると、痛みからか少女が小さく声を上げて仰け反る。
そんな反応がとてもいやらしく思えて、男は思わず胸元に顔を埋め小さな乳首へとかぶりついた。
「――ッ! ッ! フッ……アッ!」
薄く小さな乳輪をなぞる様に舌を這わせ、唇と窄めた舌で乳首を強く吸い出せば、その強い刺激に少女は体を捩って小刻みに小さな悲鳴を上げる。
男はトランクスの中で未だかつてない程の硬度へ至った剛直を少女の細い脚に擦り付けていた。その柔らかくも張りのある感触に暴発しそうになるのを必死で抑え、彼は一度少女から体を離す。
「…………っ」
男は荒い呼吸を繰り返しぐったりしている少女を見下ろした。
汗と涙と唾液に濡らし虚ろな目をした横顔には濡烏の前髪が乱れて張り付いている。長い後ろ髪はベッドの上で乱雑に広がっている。
唯一身体を隠せるマントは殆どベッドの外へと投げ出され、留め具のある首元の僅かな範囲しか覆えていない。
小さな身体には滲んだ汗が浮いており、左の乳房は滴る唾液でてらてらと光っていた。
「………………」
男の視線は無造作に投げ出された少女の脚から遡り、その固く閉ざされた性器へと注がれる。誰にも触れられた事が無さそうな、穢の一つも感じられないそれを前に、男はごくりと生唾を飲む。
おもむろに少女の両膝を掴み脚を大きく広げさせると、男は荒い息を整えながらその未踏の地へ顔を近づける。
彼が今までにネットで見た写真や動画のそれらとは違い彼女の秘部は僅かな黒ずみもなく、ピタリと上品に閉じている。
割れ目をそっと指で広げて剥き出しの鮮やかな肉色が顕になると、彼はその周囲を指でなぞり、人差し指を穴の中へ侵入させた。
「ギッ――!?」
小さな悲鳴とともに少女が身を弾ませると、彼は驚いて指を引き抜く。そして今度は更に顔を近づけ、内周をなぞる様にしながら粘る唾液を纏わせた舌を侵入させた。
「フッ――?! ッ! ンッ! ア゙ッ!!」
身体を痙攣させつつも、男の頭を腿で挟み弱々しく押し退けようとする少女の両手を逆に掴んで抑える。そして男は更に顔を埋め少女の内部を舌で蹂躙し、そんな反応に愉しみすら覚え始める。
そうして反応を十分に楽しんだ男は少女の股座から顔を離すと、下着を突き破らんとばかりに怒張した自らの半身を見下ろした。
そして自らの唾液に濡れた少女の大切な場所と見比べながら、ゆっくりと窮屈なトランクスを脱ぎ捨てる。
肩で息をし、ぼんやりとした虚ろな目で彼を見上げる少女の顔を覗き込むと、男は今にも張り裂けそうな自らの陰茎を唾液で濡れそぼった割れ目へ、そっとあてがった。
「い、いい、よな。いいん、だよな? そっ、そのつもりでっ……きただろ? じゃなきゃ、こ、こんな格好で俺のベッドに……」
興奮しきった、しかし今にも消え入りそうな声で、男は少女に問いかける。まるで言い訳をするように、ありもしない大義名分を求めるように。
「フーッ……フーッ……」
少女は答えない。思えば現れてから一度も言葉を発していない。
しかし男はもう止まれなかった、止まるつもりももう無かった。
ブレーキが効く最後の瞬間は、彼が少女の唇を奪い涙を見て身体を引いたあの時。
続行させたのは少女自身だ、と彼は自身に言い訳する。
感じる感触はもはや夢であるとは思えない。夢心地ではあっても、これが現実であると男も心の中では理解していた。
すでに手遅れではあるが、これから本当に取り返しのつかない一線を超えることを、男は心の中で決意する。
――世間には赦されずとも、少女自身が許してくれるならば。
男は勝手にそう思い込むと、大きく息を吐いた。
「い、いくよ……ッ!」
弾けそうなまでに膨らんだ亀頭が、少女の秘部に触れる。
「ゥ……?」
手を添えて、ゆっくりと入り口を探りながら、男は腰を動かし。
探り当てたそこへ、ゆっくりと押し進む。
「ギッ……!?」
少し進めば、肉を押し広げられる痛みに少女が悲鳴を上げた。
男はその口元を手の平でとっさに塞ぎつつ、少しずつ体重をかけながら少女の中へと押し通る。
「~~~~~ッ! 〜〜〜〜ッ!」
少女がポロポロと涙を溢しながら身を捩りくぐもった声を上げる中、男は荒い息を吐き、目一杯腰を突き入れた。
「――イ゙ッ! ア゙、ヴヴ〜〜〜〜ッ!?」
少女が身体を反らせながら痙攣する。痛みに頭を振り乱し涙を溢す顔と、大きく押し広げられ血を滲ませたそこを見下ろしながら、男は自分が彼女の初めてを、処女を奪ったのだと強く実感した。
狭さ故の強い締め付けから来る強烈な快感に意識を持って行かれそうになりながら、男は感慨に耽る。
――これがセックスか、と。
「フーッ……フーッ……!」
「ヴッ、イ゙……ッ!」
男が腰を動かす度に、少女は小さく痛みに喘ぐ。
「フーッ……ウウ……!」
ゆっくりと入口付近まで引き。
「ア゙ッ――!?」
一気に突き入れる。
「はーっ……はーっ……」
少女の口から手を離し、彼は彼女に体重をかけすぎないように注意しつつ上半身を前のめりに倒す。
少女の小柄な体躯は男のやや肥満気味の上半身によってほとんど覆い隠されてしまう。
彼は少女の長い黒髪に顔を埋めながら、陰茎を彼女の最奥まで挿入すると、抜き差しせずグリグリと押し付け始める。
「グウゥ……アア……ッ!」
「すーっ、はーっ、すーっ、はーっ……」
苦し気なうめき声を上げる少女の髪の匂いを胸いっぱいに吸い込みながら、男は再びゆっくりと腰を前後に動かし始める。
少しだけ引き、彼女の奥を押し広げるようにゆっくりと押し付ける。そんな動きを繰り返しながら、その速度を徐々に上げていく。
「ギッ……アッ………イ、アアッ……!!」
押し寄せる快感の波に、男の欠片程残っていた自制心は溶け落ちてゆく。彼は少女の背中へ手を回し圧し潰さんばかりに抱きしめながら、少女の小さな膣を肉棒で
乱暴に抉る。
「ア゙ア゙ァ゙アッ! ギィィッ!」
少女の顔が苦悶に満ち、悲鳴を上げるほどに男の快感は増してゆき、腰の速度は限界まで早まってゆく。……そして。
「ああッ……出る……ッ! うッ!」
「〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッ!!!!!」
男は最後に力いっぱい腰を叩きつけ、声にならぬ絶叫を上げる少女の最奥、その先まで到達せんとばかりに勢い良く射精した。
「くっ……うっ……まだッ、出るッ……!」
円を描くように腰をくねらせ彼女の奥をかき混ぜながら、彼は精巣を空にする勢いで精液を搾り出す。
「はぁ……はぁ……」
全ての精を吐き出し終えると、男は少女と繋がったまま疲労感に身を任せて体の力を抜く。
彼は今までに感じたことがない心地よさを伴う倦怠感に揺蕩いながら、彼は少女を抱えて横になる。
「ふぅーっ……」
大きく息を吐くと、男はぐったりとして荒い息遣いを続ける少女の顔へ視線を向ける。身勝手極まりない性行為を終え、性欲に茹だっていた彼の頭も徐々に冷え始める。
これからどうなるのか、やはり捕まるのだろうかという思考がジワジワと心地よさを奪い始めていた。
「……まあ、どうせ詰みが見えた人生だ。かあさんには悪いけど、もう、どうでもいか。童貞も好みな子で捨てられたし」
――幸いにして、男が抱いた今後への不安は。
「………………」
――ある意味杞憂で終わることとなる。
男は、少女が薄らと目を開けていることに気付く。
涙や汗でぐちゃぐちゃになった顔のまま、少女は彼の腰に細い腕を回した。
弱々しい力を込め、男に抱きつく少女。
――そして。
「今回の被害者の母親、記憶処理完了しました」
報告を受けた壮年の男は、手に持っていた缶コーヒーを一つ報告者である青年に手渡して深くため息をつく。
「お疲れさん。ハァ……しかしよりによってマルチ勧誘時の話のタネにSCP-471-JP-EP-2が使われるとはな、本当にタチの悪い……」
そうぼやいて、彼は缶コーヒーのプルタブを開けてぐいと中身をあおる。
「ありがとうございます。彼らの学生時代に流行ったSCP-471-JP-EPがベースですから、元同級生との会話のとっかかりには最適なんでしょうね……彼を曝露経路にした失踪者、既に四人出てますし……おまけにあと二人『気のせい』にできない曝露者が残っていると。幸いなのは、失踪者が行っていた動画配信でSCP-471-JP-EP-2の詳しい内容を話さなかったことですね」
貰ったコーヒーを飲みながら、青年もまたうんざりした様子でため息をついた。
「……しかしバラまいてる張本人はうつ伏せ派で当日爆睡してたときた。言っちゃなんだが、アイツこそ攫ってほしかったもんだな」
「聞かなかったことにしておきます。それにしても、実体が女性型になるだけで爆発的に被害者が増えるなんて……」
不謹慎な冗句を受け流し、やれやれと肩をすくめて見せる青年を、壮年の男は鼻で笑う。
「性癖暴露されて泣いてたくせに。ま、これも悲しい男のサガってやつかねェ、かの怪人も厄介な性質を身に着けやがったもんだ。……俺も正直ちょっと相手してみたかったくらいだぜ」
「やめてください。あと、そんなことしたら職場だけじゃなく奥さんにも怒られますよ」
「冗談だって! さ、そろそろ次の現場行くぞ!」
そんなやり取りをしながら、黒スーツの二人組は「密室で息子が失踪した」という通報を行った女性の家の前を離れた。