均整のとれた美しい肢体を包む、装飾がほどこされた薄手のボディースーツ。
歩くたびに銀色の長髪が輝きながら揺れ、冷厳なる銀の双眸には神秘性が満ちている。
どこまでも美しく……そして底知れない冷徹さを感じさせるその佇まい。威圧感。
それが、この世界の管理者である女神、イストワールの姿だった。
イストワールは、天より差し込む光の階段からゆっくりと降りてくる。ブーツの踵が奏でる硬質の音が、静かに鳴り響いていた。
声をあげる者は誰もいない。その圧倒的存在感に飲まれたのか、あなたは口を動かす事すらできなかった。
使徒セフィリアは階段下でひざまずき、イストワールが降臨するのを待ち構えている。
その時、セフィリアの周りに三つの光が現れた。
神々しい輝きと共に、三人の女性が現れる。セフィリアと同じ意匠のボディースーツを纏った彼女たちの正体を、あなたはすぐに察することができた。
女神の使徒たちだ。イストワールが復活したことで、消え去った彼女たちも共にこの世界へ顕現したのだろう。誰もがイストワールと似た無機質なボディスーツを纏っている。
美しい長髪をねじり、大きな三つ編みにした凛々しい姿は、使徒エルネスト。
艶やかなショートカットに、口元に微笑を浮かべるのは、使徒クルスククス。
常に瞳を閉じ、小柄な体を隠すボディスーツにホムラの国で見られる袴を組み合わせたツインテールの少女は、使徒ツキヨミ。
女神と共に復活した使徒たちは、数秒ほど事態が把握できてなかったのか、周囲を見回した。
そして天上に伸びる階段とその上から降りてくるイストワールに気づき、深々とひざまずく。
「そうか……ようやくイストワール様が復活したのだな」
足を折りながら冷たくも美しい声を響かせたのは、使徒エルネストだ。
「私たちの力が足りないせいで、イストワール様には長年不自由をさせてしまいましたわ。この罪、どうか御裁きください」
粛々と罪科に恥じる声音は、口元から微笑を消した使徒クルスククスの物。
「……」
使徒ツキヨミは、瞳を閉じたまま無言を貫く。しかし復活したイストワールの姿に、深く感じ入っている様子だ。
階段をゆっくりと降りてきたイストワールが、ついに使徒たちの元へとたどり着く。
「いい。此度の事は私の慢心が起こした事。お前たちに罪などありはしない。それよりも今後の働きに期待しているぞ」
「……妾たちにはもったいなきお言葉」
ツキヨミが更に頭を垂れて答えるが、イストワールはすでに彼女たちへ意識を向けていなかった。
イストワールがその視界に収めるのは……あなただ。
女神の冷厳な銀の瞳を見て、あなたの背筋が震える。
「セフィリア。こうして復活できたのは喜ばしい事だが、少々予定していた展開とは違っていたな。一つ聞きたい。なぜ勇者に魔物娘をしもべとする力を与えたのだ? 予定が変わったのはそのせいだ」
「……それは……」
「私が勇者に与えし力は、この世界の人々を贄として力を増す能力。すなわち女性を抱きレベルを上げる力に他ならない。それさえあればファリシアを追い詰めるのに十分だった。だが、お前は勇者に魔物娘をしもべとする力を与えたな。おそらくは完璧を期すための判断だと思うが、結果的には少々過剰な力だったと言える。おかげであの名も無き者は我が意に逆らい、愚かな選択をした」
こつり、と。地面を踏みしめる踵の音を立てて、イストワールは地上へと降り立った。
「あれはもう要らんな。セフィリア、槍を」
「……しかし、イストワール様……」
「槍を渡せと言った」
「……はい」
ひざまずくセフィリアがイストワールに向けて両手を差し出す。するとその手に聖槍が現れた。
イストワールが聖槍を手にした瞬間、槍に神気が満ち、光り輝いた。
あの輝き、この威圧感。先ほどセフィリアが放った神技・フルゴルクリスと同一……いや、それを圧倒的にしのいでいる。
イストワールは槍を片手で持ち上げた。投擲の構えだ。
「勇者よ……いや、いまや名も無き存在よ。もうお前は用済みだ。永遠なる安寧の底に沈め!」
イストワールが神気纏う聖槍を投擲する。
光り輝く槍は投擲の軌跡に光の帯を残しながら、あなた目がけて疾走した。
全ての力を使い果たしたあなたに、これに抗うすべはない。
ただ、神々しい光を目の当たりにしながら……その全身を神気の光に飲みこまれ、ゆっくりと意識を失っていった。