※この作品はR-18です。

ツゴウノイイファンタジー   作:アーチ/arech

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135、ラストバトル・フォルティアロクス

 神技・フルゴルクリスへ向かって、あなたはファリシアの魔技・魔女の剣を持って迎えうつ。

 斬り下ろした魔女の剣はフルゴルクリスの切っ先へと噛みあい、拮抗した。

 

 圧倒的な力と光に満ちる神槍が魔剣を押し返す。あなたは全能力を総動員してそれに堪えていた。

 あなたが扱える全魔力を込めてなお、フルゴルクリスに押されている。魔女の剣でさえも、ファリシアの魔技ですらも、イストワールの神技には通じないのか。

 

 押される。ゆっくりと、確実に。魔剣が弾かれ、神槍に貫かれる運命がそこまで迫っている。

 だがあなたは歯を食いしばってそれに耐えた。このままでは終われない。まだ、まだ、運命には屈しない。

 

 投擲神槍と魔力満ちる刃の拮抗は、あなたからすれば無限にも等しい時間であった。過ぎる一瞬一瞬が永遠にも感じられる。

 魔剣に魔力を込める。限界など超えて、運命などに従わず、この剣に限界以上を込める。

 

 押されつつあった魔剣が、わずかに動きを止めた。のみならず、迫るフルゴルクリスの勢力を削ぎ落とすかのように、ゆっくりと押し返していく。

 腕が軋む。筋断裂が起き、肉が裂ける音が聞こえた。足腰が悲鳴を上げる。関節の骨が擦れ削れているのが分かった。

 

 それでも……それでも、限界以上の力を込める事は止めない。神技・フルゴルクリスにはもう二度と屈さない。

 あなたは深く歯を噛みしめ――歯が砕け散るような錯覚すらを覚えながら――全力で魔剣を斬り下ろした。

 

 魔女の剣がついに神技・フルゴルクリスを押しのける。弾かれた神槍が光を失い、地へ転がるのが見えた。その先に居るイストワールへ、あなたは視線を向ける。

 神技・フルゴルクリスすらを破られたイストワールは……なぜか、一切の感情を消した目であなたを見ていた。それは、はるか地の底を這う蟻を見ているような目だった。

 

 それまでの怒気が一切ない。

 最強の神技を破られたというのに、いったいなぜ。

 その答えは、あなたもすぐ分かった。

 

 ファリシアの魔剣に、ヒビが入っていた。

 限界以上の魔力を込め、強引に力を振るった反動だろう。魔剣は己の威力に耐えられなかったのだ。

 亀裂はすぐに広がり、ファリシアの魔剣が砕け散る。それと同じくして無理をした反動があなたを襲い、力なく膝を崩した。

 

 魔剣は砕けた。限界以上の力を出したせいで、あなたの体はボロボロだった。

 対してイストワールはいまだ無傷。神技フルゴルクリスは確かに破られた。しかし、二度目は無い。もうあなたにはファリシアの魔剣が無いのだから。

 

「散々抗って、最後に迎えるのがその姿か。無様だな。貴様のこれまでの戦いなど、何の意味も無かったのだ。無駄な足掻きでその命をわずかに長めただけにすぎん。名も無き存在よ、しょせん貴様など、その程度のもの。身の程を知ったか」

 

 イストワールの侮蔑に返す言葉はない。彼女の言う通りだったかもしれない。しょせん全ては無駄な足掻き。世界を支配する女神にはかなうはずもなかったのだ。

 だが、なぜだろうか。体はボロボロで、魔剣は砕け、もはや絶望するしか無いこの状況で……あなたはまだ諦めていなかった。

 

 何かを感じる。あなたの全細胞がなぜか言っている。まだ、終わってはいないと。

 そこでようやく、あなたは周囲を包む魔力の気配に気づいた。

 砕けた魔剣から、魔力が溢れている。魔剣に込められていた魔力が、砕けた事によって解放されたのだ。

 

 この魔力は……知っている。そうだ、この魔力は……ファリシアの魔力。

 あなたの脳が痺れる。消え去るファリシアが残した最後の言葉が再生される。

 最後に私が出来るのは、この剣を託す事だけ。ファリシアは確かにそう言った。

 その言葉の意味が、今ようやく分かった。頭ではなく、心で。

 

 ファリシアがあなたに託したのは魔剣ではない。そこに込められた、彼女の最後の魔力そのものなのだ。

 あなたは立ち上がる。体中の筋肉はもう断裂して、関節という関節が摩耗し削れ切っているのに、それでもなお、立ち上がった。

 

 あなたは――腰にさげていた剣を引き抜いた。ランガが作りしあなたの剣を。魔物娘たちの魔力が込められた、絆の剣を――。

 今、その剣に、魔王ファリシアの魔力が満ちていく。砕けた魔剣から溢れる彼女の魔力が、あなたの剣に吸い込まれていく。

 

 あなたの剣に埋め込まれた魔水晶が淡く輝きだした。ネコマタの、リッチの、パイレーツ、グリュイエール、ミズハ、フェンリル、リュミス、アルメリア、アイ、クロナ、ランガ――そして、ファリシアの魔力が、共鳴している。

 魔王ファリシアの魔力を宿し、今ここに、あなたの剣は真の完成を迎えた。

 

 分かる。分かる。魔物娘たちの意思を宿し、魔物娘たちの魔力を剣に宿し、今ようやく理解する。

 これこそが、あなたの剣。女神イストワールに仇名す意志の刃。

 

 もはや迷いはない。あなたは剣に込められた魔力を解放する。

 刃が淡く煌めき、魔力が溢れ出す。あなたを慕う魔物娘たち全員の魔力と意思を束ねた反逆の剣が、ここに産声を上げる。

 

「――!? させるかぁっ!」

 

 その時、この光景を見つめていたイストワールはいったい何を思ったのか。

 驚愕に息を飲み、目を見開き、我を忘れたように絶叫して攻め込んできた。

 彼女はその瞬間、初めて感じたのだ。あなたに対する……いや、あなたたちに対する、恐れを。

 

 このままではまずい。そう感じたからこそ、神槍を引き戻す暇もないと見て、神剣を新たにその手に宿して斬りかかってきたのだ。

 イストワールの神剣があなたに迫る。神剣は強烈な光で輝いていた。神技・カエルムラミナを発動している。カエルムラミナの神気の刃を放出するのではなく、神剣に留める事によって最大威力を維持しているのだ。

 

 あなたは魔力の解放をキャンセル。強大な魔力を剣に纏わせたままで、神剣エルネストによる神技カエルムラミナを迎撃する。

 真っ向からぶつかり合った刀身。あなたの剣は、ごくあっさりと神剣エルネストを砕き折った。

 

「――バカなぁっ!」

 

 あまりにも当然のように、あまりにもあっさりと、神剣エルネストは敗れ去る。

 イストワールは叫びながら大きく飛び退き、深く足を折り敷いて神弓クルスククスを手にする。

 

 光り輝く矢を神弓につがえ、キリキリと引いていく。神技・ソルサギッタの構え。

 あなたは、剣を持つ右手を弓引くように構えた。

 

「神技・ソルサギッタ!」

 

 神速の一矢が放たれる。それと同時に、あなたも一歩踏み込んで剣を投擲した。

 スキル、三段突きと堕天の一撃を同時発動。複合スキル堕天の一突きによって、ソルサギッタを迎撃する。

 

 速度は互角。一瞬にして三つの刺突を放つ三段突きは、ソルサギッタの一矢と同等の速度を有しているのだ。

 しかしてその威力は――。

 

 ソルサギッタの矢と投擲されたあなたの剣が衝突する。そして、ごくあっさりとソルサギッタの矢は砕け散った。

 ソルサギッタを打ち破ってもなお、あなたの剣は止まらない。当然だ、スキル堕天の一撃は狙った対象を過たず穿ち破壊する。

 

 あなたが狙ったのはソルサギッタの一矢ではない。神弓クルスククスなのだ。

 光の速度で放たれた投擲剣は、狙い過たずイストワールが構える神弓を穿つ。神弓はその弓柄から弦までを断ち切られ、砕け散った。

 

「ッ!? こんな、事が……!」

 

 あなたは堕天の一突きを発動すると同時に、イストワールに向かって駆けていた。

 それだけではない。剣を投擲する際に、その柄にリュミスの毒糸を巻き付けており、それはあなたの鞘と繋がっている。魔法の毒糸を伸縮させ、投擲した剣を引き戻す。

 

 あなたの剣が糸に絡めとられるように巻き戻り、見事鞘の中へ納まったと同時、イストワールとの間合いは致命的なほどまでに狭まっていた。一足一刀の間合いである。

 イストワールは神杖ツキヨミを召喚し、構える。左足を引き、わずかに前傾となって右肩を下げ、左手に掴む神杖を腰に構え、右手で神杖の柄頭を握る。

 そして、あなたも奇しくも同じ構えを取っていた。

 

 両者共に、抜刀の構え。

 イストワールの抜き打ち先の先が放たれる。

 あなたの石火の抜き打ちが放たれる。

 

 抜き打ち先の先。それは最速を極める抜刀術。この一刀の先を制する物など無し。

 だがあなたは知っている。かつてあなたの剣が、流派石火の理合へと届いたことに。

 抜き打ち先の先を相手に、流派石火の抜き打ちが本懐を遂げる。わずかに、イストワールの抜き打ちよりも先んじたあなたの剣が、神杖の仕込み刃を襲った。

 

 刃と刃が触れあった途端、神杖の仕込み刃が砕ける。あなたの剣の方が先を行った。ゆえに神杖の抜き打ちには力が乗らず、打ち砕かれたのだ。

 神杖ツキヨミもまた、ここに砕け散る。イストワールの心胆に与えた影響は砕け散る刃の欠片よりも鋭かった。

 

「何が――何が起きている!? なぜ、この私が追い詰められる!? おのれ――おのれぇっ!」

 

 イストワールの体に強大な神気が集まる。それを一瞬にして放出。あなたはその威力に体を吹き飛ばされた。

 数度地面を転げ回るが、すぐに剣を突き立て体勢を安定させ立ち上がる。

 イストワールとの距離は遠い。先ほどあれほど近くまで迫っていたのに、再度あそこまで肉薄するにはどれほど困難を極めるか。

 

 そして、次に剣の間合いまで迫る事は決してありえないとあなたは知った。

 イストワールは、神槍セフィリアをその手に握っていた。来る。神技・フルゴルクリスがまた放たれる。

 しかし、あなたのその予想は覆される。

 

 イストワールの体に、握る神槍に、神気が集っていく。空から降る神気が、地から溢れる神気が、周囲に漂う神気が。更に、更に、更に。

 この天照大全世界に満ちる無限の神気が、今イストワールに集まっていたのだ。

 

 イストワールの背に光の翼が生える。神槍が強く光り輝き、世界を照らす。

 イストワールは光の翼を羽ばたかせ、空に舞い飛んだ。そして神槍を掲げる。投擲の構え。神技の構え。

 

「消してやる――消し飛ばしてやる! 名も無き存在よ、貴様の存在など、ただの一かけらすら残さん!」

 

 あなたは知る。これこそがイストワールの全力の姿。全身全霊の神技。

 もはやそれはフルゴルクリスではない。この天照大全世界の無限の神気を込めて放つ、イストワールにのみ許された最大最強の神技。それがもうすぐあなたを襲い来る。

 

 だが、その無限の神気を神槍に込めるわずかな時間があれば。

 あなたは剣を振り被った。剣に込められた魔力を全解放する。刃が薄暗く光り輝く。魔物娘たちの魔力が雄叫びを上げる。

 

 これが決着の一撃だ。あなたとイストワールは共にそれを悟った。

 イストワールが槍を深々と引き、あなた目がけて投擲した。

 

「極光神技・ルクスアエテルナエ(永遠の光)!」

 

 放たれた神槍と共に、光の渦が広がった。世界を冒す、神気の輝き。天照大全世界そのものを込めた、極光の神技。イストワールの全身全霊の一撃。

 それを前に、あなたは剣を斬り下ろす。魔物娘たちの意思と魔力を一つに束ねた、フォルティアロクス。薄暗く輝く魔力の波動が刃となって放たれる。

 

 神気の光と魔力の闇が衝突する。せめぎ合う。

 互角――そう、互角だ。ついにイストワールを相手に、あなたは互角へと至った。

 しかし、無限の力を手にするイストワールと違って、あなたの力は無限ではない。互角へと至った一剣も、徐々に徐々に押されていく。

 

「消えろ――消えてしまえ! 貴様の存在など、我が世界には必要ない!」

 

 呪いにも似たイストワールの怨嗟と共に、ルクスアエテルナエがあなたへ迫りくる。

 永遠の光は尽きる事なく広がり続け、輝きと共に全てを冒しつくす。光の渦は尽きず、滅びず、永遠に輝き続けるのだ。

 永遠の光を前に、魔力の闇はどこまでもか細い。イストワールにとってそれは、吹けば散るほどに粗末な、取るに足らぬ力だった。

 

 負ける。このままでは負ける。だが、どうすればいい?

 全ての力を尽くした。あなたを信じる魔物娘たちの全能力を総動員している。それでもなお、かなわぬのなら……どうしろと言うのか。

 奇跡か。奇跡が起きるのを願うのか。

 

 しかしここはイストワールの世界。彼女に仇名すあなたに決して奇跡など起こりえない。奇跡の確率すらもイストワールの手中にあるのだ。

 だからあなたは、これまでの軌跡を思い返した。

 

 あなたのこれまでの旅路。これまでの戦い。はたして全ては無駄だったのか? イストワールに敗北する為にこれまでの全てが存在したのか?

 ネコマタとの戦いを思い出す。リッチとの戦いを、パイレーツやグリュイエール。ミズハとの出会い。フェンリル、リュミス、アルメリア。アイとクロナとの鍛錬。ランガとの斬り合い。

 

 魔王ファリシアと、今やその名も存在も失われたかつての魔王の想い。

 そして――あなたが抱いた決意。全ては繋がっている。これまでの軌跡があったからこそ、ここまでこれた。

 

 これまでの旅路、これまでの戦い。それは決して無駄ではなかった。だからイストワールとここまで戦えた。魔物娘たちと戦い、そして彼女たちと共に力を合わせて戦ったからこそ、今あなたはここに居る。

 奇跡など存在しない。だから、あなたは軌跡を信じた。これまでの軌跡は、ここから先の軌跡へ通じていると信じた。

 

 剣に軌跡を込める。これまでの全てを。長くに渡った、あなたの物語りを全て、剣に込める。

 ゆえに、その剣の名はフォルティアロクス(勇気ある軌跡)

 あなたの、あなただけの剣であった。

 

 さあ、剣に思いを込めろ。

 

 ――ゆっくりとだが、確実に。あなたの剣が、フォルティアロクスの刃が、ルクスアエテルナエを押し返す。

 

 さあ、剣に軌跡を込めろ。

 

 ――ゆっくりとだが、確実に。あなたの剣が、フォルティアロクスの刃が、ルクスアエテルナエを切り裂いていく。

 

 さあ、叫べ。イストワールの世界を凌駕しろ。

 

 ――あなたは、雄叫びを上げ、深々と剣を斬り下ろした。

 

 永遠の光の中に、薄暗い魔力の刃が疾走する。

 光を斬り断ち、闇が溢れる。世界が変わる。イストワールの神気世界が、崩れ落ちていく。

 決して消えぬ永遠の光は切り裂かれ、輝きは色を失って消えていく。

 

 神槍セフィリアはあなたの剣フォルティアロクスの前に両断され、砕け散っていた。

 そして、あなたの刃は、その先のイストワールすらも……。

 

「バカ、な……」

 

 光の翼で空を舞うイストワールは、呆然と呟いた。

 

「ありえない……この、私が……負ける、などと……そんな都合の良い幻想など、ありえるはずが……」

 

 イストワールの翼に亀裂が入る。彼女の神威満ちる無機質なボディスーツが、ボロボロと砕け散っていった。

 光の翼は千切れ、イストワールが地へと堕ちる。女神は堕天し、天照大全世界が崩れ落ちていく。

 

 世界が変わる。イストワールの世界が、消えていく。

 極光・天照大全世界は砕け散り、元居た神界があなたの前に現れた。地へ落とされたイストワールは、呆然とへたり込んでいた。

 

 彼女からはもう神威を感じられない。全ての力を費やしてあなたに負けたのだ。もはや彼女は無力だった。

 そしてそれは、この世界がイストワールの支配から脱した事を証明している。神界すらも崩れ落ち、エメラルド色の空が青空へと移り変わった。

 

 そこには新たな世界が広がっていた。あなたが勝ち取った世界。魔物娘と人間が同じ大地で共に過ごす、女神の支配から脱したツゴウノイイファンタジーが。

 ふと、気配を感じてあなたは振り向く。

 

 あなたの背後では、いくつもの光がわき上がっていた。光は次々と魔物娘たちの姿を形作る。

 イストワールが敗れた今、消し飛ばされた魔物娘たちの肉体がその意思に導かれて、再生を果たしたのだ。

 

 ネコマタが居た。リッチが、パイレーツが、グリュイエールが、ミズハ、フェンリル、リュミス、アルメリア、アイ、クロナ、ランガ、そしてファリシア。

 ファリシアは、静かに微笑し、あなたへ向かって跪く。

 

「あなたの勝利、しかとこの目で見届けました。我が主よ……あなたを、信じていました」

 

 ファリシアの言葉を聞いて、全てが終わった事を感じた。

 ……いや、まだ終わりではない。あなたにしかできない最後の役目が、まだ果たされていない。

 

 そう、ここはイストワールの支配から脱した真にツゴウノイイファンタジー。あなたはその世界でただ一人の男であり、この世界の全ての女性とセックスできる権利を有している。

 さあ、最後の仕上げだ。堕天した女神イストワールを犯し、彼女を屈服させ、永遠なるツゴウノイイファンタジーをもたらすのだ。

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