女神の使徒を抱き終えて迎えた明け方。
使徒たちはあなたとの激しいセックスにより、完全に疲れ果て気を失うように眠ってしまった。
対してあなたは彼女たちのように眠りはせず、身支度を整えて王宮を後にしていた。
まだ夜明けを迎える前の薄暗い空である。十数分もすれば、ほのかに差す光が空を染め上げるのだろう。
夜と夜明けの狭間の頃合いで、あなたは王都の正門を目指していた。
こんな時間に出歩く者などいない。人々は三日に渡る記念祭で疲れ果て、眠りこけている。
人のいない出店や露店が並ぶ王都の街並み。昨夜までの騒ぎが思い出せるような、祭りの後である。
こんな人の居ない時間に一人ひっそりとあなたは歩く。
目的は、王都を離れる為であった。
あなたは女神イストワールを倒し、この世界を女神の支配から解放した。それで、あなたの戦いは終わりを告げている。
平和になった世界に、勇者という存在は必要ない。それはあなた自身が知っており、だからこそ王都を離れようと考えた。
これから先は、この平和になった世界を旅しよう。このツゴウノイイファンタジーの世界で、何の役目もなく、戦いも無く、ただ静かに。あなたはそう考えていた。
だから王都を去るつもりだった。王都は居心地が良く、王宮にはあなたがいつでも泊まれる専用の部屋を設けている。このままだと、ずっと居ついてしまいそうだった。
そしてもしエルフィーネに王都を去る旨を伝えたら、きっと王都をあげての壮大な見送りをする事だろう。
さすがにそこまでしてもらうのは忍びなく、あなたは書き置きを残してひっそりと王都を旅立つ事にしたのだ。
書き置きには、魔物娘たちへのメッセージも残してあった。
自由主義な魔物娘たちではあるが、あなたと共に戦いぬいた事で、また今でもあなたのしもべである事で、人間たちに迷惑をかけるような行いは慎むはずだ。
だから彼女たちも好きに生きるよう、残してある。
まずは王都を離れ、当てもなくさ迷ってみよう。そう考えつつ、あなたは王宮の正門へとたどり着いた。
その正門前には、なぜか見知った姿がある。
正門前でぽつりと佇むのは、長い金髪を纏め上げた、黄金の瞳を持つ魔物娘。魔王ファリシアだった。
「お見送りに参りました、我が主」
彼女はしずしずとあなたを出迎えた。
あなたと絆で繋がる魔物娘たち。繋がっているがゆえ、どこかその心の内を感じ取れるのかもしれない。
ファリシアは、あなたの考えをどこかで感じ取り、こうして見送りに来ていたのだった。
ファリシアは、感慨深げに空を見上げた。
「イストワールの支配が無くなり、この世界はまさしくツゴウノイイファンタジーへと成りました。失われた者は帰ってきませんが、今ここにある現実は永遠に続いていくでしょう」
そう、この世界はイストワールによって死の概念が無くなってしまっている。そして世界が平和となった今、ツゴウノイイファンタジーは永遠に続いていくのだ。
「魔物娘たちもこの永遠の平和の中で、自分たちの好む暮らしを選択するはずです。私は魔界へと戻り、あの地をもう少し良い環境にして大図書館を建造しようと考えていますよ。いずれ、人間たちが魔界を観光できる日が来るかもしれません」
以前ファリシアが魔界に図書館を作りたいと言っていた事を思い出す。あれは本気だったのかと苦笑しつつ、彼女なら魔界を観光地へとする事も出来るはずだと納得した。
ファリシアは、あなたを見つめて微笑した。どことなく、不敵で小生意気な雰囲気を携えて。
「しかし、魔物娘とは元来自由なもの。退屈を持て余したら、あなたに構って欲しくて何をしでかすか分かりませんよ。――その時は、勇者としての姿をまた見せなければいけませんね」
くすりと、ファリシアは笑った。彼女が初めて見せる、見た目相応の子供みたいな笑い方だった。
あなたもまた、笑いを返す。なるほど、確かに。暇を持て余した魔物娘が、あなたに構って欲しくてわざと人々にちょっかいをかけるかもしれない。
その時は……当然、勇者として。その魔物娘を倒し、犯して屈服させよう。
そう、ここはツゴウノイイファンタジー世界。あなたはそこで真の勇者となり、この世界全ての女性を抱く権利を有しているのだから。
あなたはファリシアに見送られながら、正門から王都を出た。
最後に、あなたの背を見送るファリシアが声をかける。
「そういえば、まだ聞いていませんでしたね。あなたの名前は、何と言うのですか?」
あなたは振り向き、答えた。
そう、あなたの名は――。
×××
王都を後にしてさ迷う事、数日。
当てもなく旅をしていたはずなのに、本能的にか、それともすでに凌駕したはずの運命というものに導かれてか、あるいはあなた自身が選んだ選択の果てか、たどり着いたのはあなたの故郷と言ってもいいあの田舎村だった。
ちょうど良いとばかりに、あなたの足は自然と自宅に向かった。
イストワールを倒し、世界を解放した今。自由気ままに旅をして世界を巡る前に、まずは一端の帰郷をするのも悪くない。
そう考えつつ、あなたは自宅の扉を開けた。
もう、そこには誰も居ないはず。あなたはそう思っていた。
しかし、扉を開けたあなたを待っていたのは――。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
メイドスカートを慎ましく持ち上げ、軽く会釈をするメイドの姿。
美しい銀髪に、慈愛に満ちた表情。彼女の名は……セフィリア。女神の使徒、セフィリアである。
考えてみれば、エルネストにクルスククスやツキヨミと共に、セフィリアが生み出されていると考えるのが当然である。
彼女は、きっと待っていたのだ。ここで、全ての戦いを終えたあなたを。
女神の使徒セフィリアとしてではなく、あなたのメイド、セフィリアとして。
それが……セフィリアの選択。
にこりと微笑むセフィリアに出迎えられ、あなたは家の中に入る。
これが、あなたの物語りの終わり。
あなたの旅は、こうしてここに終わりを迎えたのだ。
しかし、あなたが勝ち取ったツゴウノイイファンタジーは、これからも永遠に続いていくことだろう。
次回オマケ二話更新して完結です。