まだ日差しが柔らかい早朝。あなたは魔物娘が住むという、村近くの廃屋の前にやってきていた。
女武闘家によるとここに住む魔物娘の正体はネコマタであり、格闘技と雷の魔法が得意らしい。
一通り廃屋を眺めてみるが、中からは物音一つしない。もしかしたらネコマタはまだ眠っているのだろうか。
もしそうならチャンスである。寝込みを襲えば戦闘を有利に進めることができるはずだ。寝込みを襲うのは少しばかり勇者という肩書きに似合わない気がするが、勝つためならしかたない。
あなたはそっと入口のドアを開けて廃屋の中に侵入した。外見は廃屋という名にふさわしくボロボロだったものの、中は意外と綺麗である。やはりネコマタはここに住んでいるのだろう。
あなたは廃屋の探索を進め、寝室に繋がると思わしき扉を発見した。ゆっくりドアノブを回し、鍵がかけられていないことを確認したあなたは、そっと扉を開けた。
わずかに開いた隙間から視線を投げ、中の様子をうかがってみる。
部屋の中にはベッドが一つ。床には衣服や下着やらが脱ぎ散らかされている。ここに住むネコマタはややズボラなようだ。
ベッドにはネコマタの姿が無く、どうやら寝室は無人なようだ。あなたは寝室に踏み入ってみた。
寝室にもネコマタが居ない所をみると、ネコマタは今留守なようだ。初めての戦いを目前に控え緊張していたあなたは、気をそがれた思いを抱いた。
この廃屋にこれ以上いても意味はない。一度村に帰り朝食を取った後、また改めて来るべきだろう。
そう考えたあなたが廃屋から一歩出たとたん。なんと帰ってきたネコマタとばったり出くわしてしまった。
「……あ? なんだよお前、今あたしの家から出てきたよな?」
ネコマタという名前なのだから猫のように可愛らしい魔物娘かと思っていたあなただが、目の前に現れた魔物娘はその想像を少し裏切っていた。
切れ長の目、ほっそりとした首。ピンク色の髪に頭頂付近にはネコミミが生えている。下半身は尻尾を出すためにか際どいローライズのホットパンツを着用し、上はヘソ出しのベスト姿。アンダーシャツは着けておらず、正面からは胸の谷間が、側面からは横乳が簡単に見えてしまう。
大人びた雰囲気に綺麗な容姿。そしてそのパンクな服装に乱雑な口調。どうもこのネコマタは気性が荒いタイプなようだ。
「……そうか、お前魔王が言ってた勇者だな? はん、あたしを退治しに来たって訳か」
あなたは警戒するように睨んでくるネコマタから少しばかり距離を取った。
それにしても、魔物娘であるネコマタが女魔王を魔王と呼び捨てにするのは、あなたにとって少々意外だった。
あなたの表情を察してか、ネコマタは鼻で笑った後口を開く。
「魔物娘が全員魔王の味方って訳じゃないさ。あたしは魔王が何考えてるのか分からないし興味もない。従うつもりだってこれっぽっちも無いよ。ただあたしはこの辺通る奴にちょっかいかけて遊んだり、適当に食料奪って生きてるだけだ」
どうやらネコマタは自由気ままな気質らしく、この辺りを通る商人の馬車を襲うのは女魔王に命じられた訳ではないらしい。
もしかしたら話しが通じるかもしれないと思ったあなたは、ネコマタに馬車を襲うのは止める様言ってみた。
「……はんっ、やだねっ。馬車を襲って遊ぶのはすごく楽しいし、だいたい勇者の言うことを素直に聞いてやる義理も無い!」
ぷいと顔を背けて言い放ったネコマタは、どうも反抗期の少女のように見えた。
交渉が決裂したのならしかたない。こうなったら実力行使だ。
戦いを覚悟していたあなたは、迷いなく腰に帯びていた剣を抜き払った。
「はっ、あたしと戦う気かよ……!」
あなたの戦意を感じて、ネコマタも戦闘態勢に入った。
初めての戦闘を迎えたあなたは、戦いについての重要な情報を知らなければいけない。
まずここはツゴウノイイファンタジー世界であるため、あなたの剣で魔物娘を斬りつけてもなんら猟奇的なひどい事象は起こらない。敵味方共に、攻撃を受ければ体力が失われるだけだ。そして体力を失えば気を失う。死という概念を迎えることはまず無い。
そして戦闘の際に重要なのはあなたと敵の能力、つまりステータスの差が大事である……が、ここで事細かにステータスを表示するよりも、単純にレベル差で戦力を比べる方が分かりやすいだろう。
ちなみにネコマタのレベルは15、あなたのレベルは9である。はっきり言ってネコマタの方があなたより強い。
しかしそれは絶望的な戦力差ではない。あなたの持つ情報をうまく生かせば、ネコマタに勝つことは可能である。
そしてネコマタに勝つことができれば、あなたは魔物娘であるネコマタとセックスすることができるのだ。
勇者であるあなたが持つ特別な能力。それは魔物娘を犯して身も心も屈服させるとその魔物娘があなたの仲間になるという、契約の能力だ。更に、仲間にした魔物娘はあなたの意思で召喚することができる。
この契約と召喚を用いて魔物娘を手下とし、女魔王を打倒する。それが勇者であるあなたの使命である。
ネコマタを倒して彼女を配下にしたいあなただが、うかつに攻撃を仕掛けることはできない。
なにせレベル差が結構あるのだ。ここはまず様子見が妥当だろう。
「勇者の癖に、びびってんのかよっ!」
ネコマタは、剣を突きつけ一向に攻めてこないあなたの姿に焦れたのか、猛然と襲いかかってきた。
一歩二歩と間合いを詰めるその速度は速い。あっという間に剣の間合いを殺されたあなたは、なすすべなくネコマタの強烈な蹴り技を喰らってしまった。
大ダメージである。女武闘家と互角というネコマタの格闘技は、あなたよりはるかに優れているらしい。
「もう一撃、喰らえっ!」
ネコマタは先ほどの一撃に手ごたえを感じて気を良くしたのか、追撃を行ってきた。
しかしあなたもやられっぱなしではいられない。ネコマタの蹴りを迎えうつ軌道で剣を振るった。
「はぐっ!?」
足と剣が衝突しカウンターを取ったあなたは、ネコマタにかなりのダメージを与えたようだ。ネコマタは痛そうに片足で飛び跳ね後ろに下がる。
好機と見たあなたはネコマタに再度斬りかかる。ネコマタは必死で身をかわして剣を避け、カウンターの蹴り技を放った。あなたは剣を盾代わりにしてそれを受け止め、切り返しを放つ。ネコマタは大きく後退し、あなたの一撃を避けた。
一進一退の戦いだ。ネコマタは先ほどまでの勝気な様子がなくなり、悔しげに唇を噛んでいた。
「~~っ! くっそー、これじゃあらちが開かねぇ……!」
ネコマタが突如右手を引いた。なんらかの行動に繋げるための動作だ。しかしあなたとネコマタの距離は離れている。この距離でいったい何をしようとしているのだろうか。
あなたはすぐにネコマタの意図を察する事ができた。女武闘家が言っていた落雷の魔法だ。
それを喰らえばあなたの体は痺れ、一方的に攻撃されるだろう。しかし今から魔法を阻止するため近づいても、ネコマタの魔法の方が早く発動するのは自明である。
こうなれば落雷の魔法が発動した瞬間に回避するしかない。発動する瞬間さえ分かれば十分避けることは可能である。
そして、発動するタイミングもあなたには分かっていた。ネコマタが魔力を溜めた右手を突き出した瞬間。その時に魔法が発動するのだ。
「――くらえっ!」
ネコマタが気合を放って右手を突き出した。
その瞬間、あなたは前方に飛び込むようにして大きな前転を行う。
先ほどまであなたが立っていた位置に落雷が落ちた頃には、前転していたあなたはネコマタの懐に飛び込んでいた。
「あっ……! うあぁぁっ!」
その勢いのまま強烈な斬り込みを放ち、その一撃がネコマタの体力を全て奪う。
あなたの勝利だ。そして、お楽しみの時間である。
「くそっ、あたしが負けるなんて……ひゃぁっ!?」
体力がつきたネコマタを屈服させて契約するために、あなたはネコマタの体に手を伸ばしていった。