結局夜遅くまでピクシーたちを抱き続けることになったあなたは、早朝になるまでの短い時間で仮眠を取った。
そして朝日と共に目覚め、ピクシーたちと別れを告げて再度森の外を目指す。
途中やはり迷ってしまうものの、そこは早速しもべにしたピクシーの長を呼び出し、道案内をしてもらうことで難を逃れた。
最初から案内してもらえば良かったのでは、とあなたは思わなくもなかったが、二日続けての寝不足でもうそんなことはどうでもよく感じていた。
ようやく静寂の森から出た後は、以前も訪れた最寄りの村に立ちより、そこからひとまず馬車で王都に向かうことにした。さすがにこの素朴な村から西の地にあるというホムラの国へ直接向かうことはできないのだ。
王都からならホムラの国への交通路がきっとあるだろう。そう考えたあなたは早速王都行きの馬車に乗りこみ、連日の寝不足のせいで道中すっかり寝こけてしまう。
起きた頃には昼時になっていて、無事王都についていた。あなたは馬車から降り、とりあえず昼食を食べることにする。
西の地にあるホムラの国に着くまで、どれほど時間がかかるか分からない。下手をすると数日かかることもありえる。そう考えたあなたは、豪勢に分厚いステーキを昼食にし、ついでに保存食も補充する。
そして準備が出来た後、王都の入口付近にある様々な目的地を行き来する馬車の停留所へ向かい、そこでホムラの国に行く馬車が無いか探してみた。
だが、さすがに遠い西の地へ直通する馬車はない。おそらく途中でいくつか馬車を経由すればたどり着くのだろうが、あなたはそこまで詳しい道中を知らなかった。
どうしたものか、と行きかう馬車の群れを眺めながらあなたは立ちすくむ。
「……おや、勇者様ではないですか……」
すると、フード付きのローブをまとった一人の少女があなたに話しかけてきた。
その少女のことをあなたは知っている。占い師だ。
「……こんなところで……何をしているのですか?」
占い師は馬車が往来する停留所で立ちすくむあなたのことを不思議に思ったらしい。小首を傾げて訪ねてきた。
これは渡りに船だ。占い師にホムラまでの道のりを占ってもらえばいい。
「ホムラの国までの道のりですか……ふむ……」
占い師は少し考え込むように俯いた後、あなたを見上げた。
「それでしたら……占いをするよりも直接ご案内しましょう……実は私も……ホムラへ行こうとしていたのです……」
思ってもいなかった返答にあなたは礼を言う。まさかタイミング良く占い師がホムラの国へ行こうとしていたとは、実にツゴウガイイ。
「では……ひとまずあの馬車へ乗りましょう……そこからの道のりは……おいおい教えます……」
占い師に先導され、馬車に乗りこんだあなた。行き先は人気が無いのか、乗り合わせている人々は誰もいなかった。
そのままあなたと占い師を乗せ、馬車が出発する。
あなたはがたがたと揺れる馬車内で、占い師はなぜホムラへ行くのかと尋ねてみた。
「……ホムラの国は、私の出身地ですから……久しぶりに帰郷してみようと思ったまでです……」
占い師がホムラの国出身とは、さすがに予想をしていなかったあなた。驚きつつも、いまだ知識のないかの国のことを聞くチャンスだと理解する。
あなたは占い師に、ホムラの国について色々教えて欲しいと頼むことにした。
「……ええ、構いませんよ……」
占い師は頷きながらも、なぜホムラの国のことを知りたがるのか不思議に思ったようだ。
それでも彼女は質問を挟まず、あなたへホムラの国のことを教え始める。
「ホムラの国は……火山地帯にある国です……そのため気候は暖かいというよりも……暑いと言ったほうがいいでしょう……」
言いながら占い師はホムラの国の暑さを思い出しのか、ローブの胸元を指でつまんでパタパタと翻していた。
「……火山のおかげで暑い地域ですが……その地熱によって地下水脈が温められているようで……入浴に適した温水がところどころ湧きだしているのです……ホムラの国はこの湧いた温水を利用して……温泉を作り観光名所としていますね……勇者様も一度は行ってみてはいかがでしょうか……?」
あなたは温泉というものに入り、肩までお湯につかって疲れを癒す想像をしてみる。
思えばアルメリア戦からまだそれほど時は経っていない。ホムラの国に着いたら一度温泉に入って疲れを癒すのもいいだろう。
あなたはすっかり観光気分になっていたが、占い師は構わず説明を続けていく。
「……火山地帯の恩恵は温泉だけではなく……様々な宝石や鉱石も発見できるのです……ホムラの国は見つけた鉱石や宝石を加工して……装飾品や武器にして売っています。特に武器は有名らしく……王都の人々からは鍛冶の国とも呼ばれているとか……私は武器について無知ですが……何やら刀と呼ばれる片刃武器が良く作られているとか……しかし形や大きさも様々で私にはさっぱりです……」
あなたはこれまで両刃である剣を得物としてきたが、どうやらホムラの国では片刃である刀と呼ばれる得物が有名らしい。
剣を得物とするあなたでは、片刃の刀は手に馴染まないかもしれない。しかし、ホムラの国が鍛冶に精通しているというのは期待が持てる情報だった。
占い師の話を聞いていて頷いていると、彼女は不思議そうな目であなたを見ていた。
「武器の話になったとたん……非常に興味深そうに聞いていましたね……勇者様がホムラの国を目指す理由は武器が欲しいからですか……?」
占い師の問いにあなたは頷いた。隠していて得するわけでもないので、静寂の森での戦いとその際に剣が折れたこと、そして西の地にいるランガという魔物娘なら強力な剣が作れるかもしれないということを占い師に伝える。
「ランガ……ですか。私も聞いたことがあります……ホムラの国の姫であるミコト様が……どうやら件のランガと仲が良いとか、悪いとか……」
あなたは思わず、どっちなんだと言ってしまう。
「私も……よく分かりません……ミコト様は武術に熱心で……そのランガ相手に腕試しを挑んだことがあるとか……その際にランガと仲良くなったとか……その癖時折ランガに不意打ちをしかけて倒そうとするとか……結局返り討ちにあっているとか……とにかくそんな噂があります……」
それはいったいどんな噂なのだろう。正直まともな噂とは思えないあなただった。
ともかく、件の魔物娘ランガは今のところホムラの国に迷惑をかけていないようだ。
これならばランガと戦うことなく交渉ができるかもしれない。戦わずして協力関係に至れるなら、それ以上ツゴウノイイことはないだろう。
「……あ、勇者様へ大切な情報を教えるのを忘れていました……」
突然占い師がそんなことを言うものだから、あなたは自然と姿勢を正した。
大切な情報とは、いったいなんだろうか。もしかしたら、何か先行き悪いことかもしれない。
そんな不安にかられるあなたに、占い師がゆっくり口を開く。
「ホムラの国の人々は……もちろん私もですが……ヤトメと呼ばれる種族で背が小さいです……しかしその体つきは見た目相応ではなく個体差があり……胸が大きい方も珍しくありません……私はこんなですが……」
……大切な情報とは、それなのだろうか? そうあなたは聞いてみる。
すると占い師は当然とばかりに頷いた。
「勇者様には魔王を倒すという目的があります……そのためたくさんの女性を抱いて強くなって貰わねばいけません……ホムラの国の人々は小さいですが……勇者様を飽きさせずに楽しませることはできるはずです……と、私もホムラの国出身なので……このことを伝えてそう期待させる責務はあるかと……」
確かに、ホムラの国の人々を抱いて強くなるのも勇者の責務である。
すっかりファリシアの魔剣のことで頭がいっぱいだったが、ホムラの人々とのセックスも忘れてはいけないのだ。
そのことを改めて自覚すると、先ほど伝えられた情報は確かに大切なものだ。
小柄な種族、ヤトメというホムラの人たち。しかし背は小さくても胸が大きい者もいるらしい。
思えば、いわゆるロリ巨乳とセックスしたことがなかった。ホムラの国ではそういうロリ巨乳との行為をたっぷり楽しめそうだ。
しかもホムラの国には温泉がある。温泉でヤトメたちと一緒に癒されるというのも悪くはない。
ホムラの国を目指す旅は始まったばかりだが、すっかりあなたは楽し気な気分に染まっていた。
温泉がある。ヤトメは見た目ロリやロリ巨乳もいる。ランガとは敵対することは無さそう。ここまでツゴウノイイ情報を聞くと、浮かれるのも仕方がないだろう。
そんなあなたを見て、占い師は静かに微笑していた。
「……どうやら肩の力が抜けたようですね……詳しくは分かりませんが……いつか迎える魔王との戦いに不安があったのでしょう……せめてホムラの国に居る間は勇者様に癒しがあると私も嬉しいです……」
どうやらあなたの体に力が入っていると察した占い師は、気を使ってくれたようだ。
あなたはそんな占い師の気遣いに礼をいい、ふと彼女の占いの腕を思い出して何となしに聞いてみる。
これから先、勇者である自分の行く末を占って欲しい、と。
「分かりました……では……」
快く応じた占い師は水晶玉を取り出し、それを静かに見つめた。
占い師はおそらくこの水晶玉に魔力を込め、予知めいた占いを導き出すのだろう。
あなたが答えを今か今かと待っていると、段々占い師の表情が暗くなっていく。
彼女は困った様に目を伏せて、申し訳なさそうに口を開いた。
「占いによると……勇者様が敗北する確率……100%のようです……」
……。
あなたと占い師は、しばし黙りあった。もう楽しげな空気はそこにはなかった。
馬車がガタガタと荷台を揺らしながら走っていく。ホムラの国はまだ遠そうだ。