ランガと修行をする日々が続くとある日。温泉旅館の一室で夕食を食べ終え一息ついたあなたは、ふと考え込んだ。
日々ランガと斬り合う中で己の剣技が研ぎ澄まされ、確実に強くなっている実感はある。それもこれも魔王ファリシアを倒すために、今よりも強くなろうとあがいているのだ。
だが、ファリシアを倒すために必要なのは、個人の強さだけだろうか。
魔王ファリシアと勇者であるあなたを比べて、唯一あなたが勝っているのは共に戦う魔物娘がいることである。
ファリシアはあまりにも強い。その強さゆえに魔物娘たちは恐れにも似た畏敬を抱き、彼女に近づこうとしないのだ。すなわち、ファリシアには頼れる仲間がいない。唯一リッチはファリシアを慕っているようだが、彼女はすでにあなたへ屈服し、しもべとなっている。
またファリシアは、魔物娘は自由に好き勝手生きればいいという気風を持っている。それがゆえに彼女は徒党を組まない。魔物娘を屈服させしもべとするあなたと戯れあうため、呪いの魔法によって数人を部下にしているがその数も少ない。現在のところ、王都のパラディンとエルフの国のリーシャしかいないはずだ。
つまり、あの恐るべき底の見えない強敵を倒すには、しもべとした心強い魔物娘たちの力が必要不可欠なのだ。
そしてファリシアに対抗しようとするのなら、あの二人の魔物娘は戦力として決して外せないだろう。そう、かつてあなたを苦しめたあの二人、グリュイエールとアルメリアだ。
しかし、そもそもがライバル関係のこの二人。あなたのしもべとなったからといって、その関係が簡単に改善するはずもない。
ランガと同盟関係である今、おそらくファリシアと戦う時はランガにアルメリア、そしてグリュイエールの三人が肩を並べて戦うことになるだろう。その時三人ともかつてのようにいがみ合ったままでは、勝てる戦いも勝てなくなる。
せめてグリュイエールとアルメリアの関係だけはある程度改善しなければ。そう考えたあなたは、一つの妙案を思いついて、早速この旅館の一室に二人を召喚した。
燃えるような真っ赤な髪をくくりツインテールにした小柄な魔物娘、火竜グリュイエール。
宝石のように煌めくエメラルドグリーンの髪をなびかせる妖艶な魔物娘、ダークフェアリーアルメリア。
召喚に応じた二人は、互いを見るや不機嫌そうに顔を逸らした。
「……ちっ、いきなり呼び出したから何かと思えば……アルメリアと仲良くしろだと?」
「一度は私と対等に戦えた勇者のことをある程度は認めていたのに、あろうことかそんなことを言うなんて……あなたって意外と知恵が回らないのね」
「妾がこいつと」
「私がグリュイエールと」
「仲良くなるなど」
「絶対にありえないわ」
召喚した二人にもう少し仲良くなってくれないかと、まずはダメ元で頼んだあなた。すると二人は今のように、仲が悪い癖に妙に息が合った否定の仕方をしてきた。
「そもそも勇者よ、貴様何をランガなどと同盟を組んでいるのだ。奴などさっさと倒して屈服させてしまえ。くくっ、そう、アルメリアのように無様にイかせてしまえばいいのだ」
「……あらグリュイエール。ランガを屈服させろという言葉には私も頷きたいけど、その後聞き逃せないことを言ったわね。誰が無様ですって?」
「貴様に決まってるだろうアルメリア。くくっ、今思い出しても笑えるな。貴様があれほど好き者だったとは……くははははっ!」
哄笑するグリュイエールに、アルメリアの眉の端がぴくぴくと上がる。完全に怒っているが、頼むから旅館を破壊するような真似だけはしないでほしい。あなたは心の中でそう願った。
「そういえばグリュイエール。私この前面白い話を聞いたのだけど」
「ほう、面白い話だと? 妾からすると貴様の痴態以上に面白い事は無いのだがな」
「なんでも、以前王都に現れた火竜が勇者に倒され、王都の人々の前で無様にアクメをキメてしまったとかどうとか」
「……な、なんだと」
グリュイエールの頬に、薄ら冷や汗が伝いだした。
「しかも、あろうことかお尻で……いえ、その火竜がイき狂っていた時の叫びから抜粋すると、ケツ穴でアクメをしてしまったとか」
「……」
「ああ、その火竜ってどれほど無様なイキ顔を大勢に晒したのでしょうね。グリュイエール、誇り高き竜であるあなたの意見、ぜひお聞かせ願いたいものね。あら、そういえばあなたって、火竜だったかしら? 偶然ね」
「き、貴様……だ、誰からその話を……」
「ネコマタにリュミスの魚料理をごちそうしたら教えてくれたわ」
「あの電撃ネコっ! 何をしてくれているのだ!」
グリュイエールは、今すぐ旅館から飛び出してネコマタの元へ行きそうなほど鼻息を荒くしていた。それを見てアルメリアは愉快だとばかりにくすくす笑っている。
グリュイエールはその嘲笑に気づいて、歯をむき出しにせんばかりに怒りの形相でアルメリアを睨みつけた。
「やはり……貴様とは一度明確に決着をつけなければいけないようだな」
「あら、封印の影響でまだ完璧に力を取り戻せていないあなたなんて、私の敵じゃゃないわ。以前のことはもう忘れてしまったの? 小さい脳みそね」
「抜かせ。貴様こそ魔界の門が閉じてまた力を失いつつあるのではないか? くくっ、そうだとすればファリシアと戦うどころではないな。勇者の期待にすら応えられんではないか」
「……舐めないでちょうだい。あの時魔界の風は十分に流れ込んだわ。まだしばらくはこの力を維持できるのよ。そうね、今のあなたを五回倒せるくらいには余裕があるかしら」
「……面白い、試してみるか?」
「あら、後悔するわよ?」
本当に仲が悪い魔物娘たちだ。そうあなたは深くため息をついた。ほんのちょっと会話をさせるだけですぐ決着をつけようとする流れに持っていく。
だがこれではダメなのだ。ファリシアに勝つには、魔物娘たちの十全な連携も必要となる。せめて共に肩を並べて互いが互いをサポートできるくらいには仲良くさせなければ。今のままではどちらかが追い詰められた時、もう一方は嬉々としてその光景を楽しむだろう。想像するだけでひどい状況だ。
こうなれば先ほど考え付いた妙案を実行するしかない。
その妙案とは、この二人を共通の目的の下に協力させ、その過程で互いに歩み寄らせるというものだ。具体的には、二人に性的奉仕をさせ、その流れの中でお互いがお互いを気持ちよくさせようと歩み寄らせ、最終的にはキスをさせるのだ。これならばあなたも気持ちいいしデメリットはない。
名付けて、仲良しレズキス大作戦。一瞬あなたは、なんだこの頭悪い作戦名は、と思ったが、気にしてはいけない。
あなたはぎゃいぎゃいといまだ言い合いを続ける二人を尻目に、さっさと裸になった。そして言い合う二人の間に、そのいきり立つ立派な物をつき付ける。
「……っ! な、なんだ突然。頭がおかしくなったのか、貴様」
「くっ……こ、こんな物をいきなり見せるなんて、品が足りないわ。反省なさい」
ひどい言いように心が傷つくあなただが、それをぐっと堪え、毅然として二人に告げる。
このままだと本当に戦いかねないので、ここは一つ、どちらがチンポを気持ちよくできるかの勝負で決着をつけて欲しい。グリュイエールたちのヒートアップする心を利用するような、まさに最適の提案だ。これで二人は自然とあなたへ奉仕するだろう。
「……は? やはりおかしくなったのか貴様」
「本当に品がないわね」
なぜか白い目をする二人に、あなたはたじろぐ。作戦は完璧だったはずなのに、どうしてこうなるのか。いったいどこで間違ってしまったのだろう。
だが、あなたは間違ってなどいなかった。言い合いをしていた二人は大きくため息をつき、落ち着きを取り戻したようだ。
「まあいい。確かにこのまま言い合いをしていてもらちが開かん。とはいえ妾らが戦えば、勇者にも迷惑がかかるか……」
「しかもこの国にはランガも居るわ。性格上私たちが戦えば面白おかしく観戦してくるだろうし……それは腹立たしいわね」
「……いいだろう、ここは勇者である貴様の顔を立て、その頭がおかしい対決内容で決着をつけてやる」
「ふん、望むところよ。はっきり言って負ける気がしないわね」
……どうなることかと思っていたが、なんとか二人はこの奉仕対決の提案に乗ってきた。
さあ、重要なのはここからである。二人に奉仕対決をさせるていで、どうにか互いが分かり合えるよう誘導しなければいけない。
すなわち互いが互いを気持ちよくなるよう行動させ、最終的にはレズキスまでさせて絶頂に導くのだ。
グリュイエールとアルメリア。二人の顔を見比べて、あなたは思う。
……できるのか、本当にそんなこと。
それができるかどうかは、ここからのあなたの手腕にかかっているのだ。