この世界ではドラゴンが世界を支配している。西の国では数多のドラゴンが人を襲い、喰らい、暴虐の限りを尽くしていた。
しかし、それに対立し、人間との共存を望むドラゴンもいた。
「俄には信じられん…まさか人の身でドラゴンを殺すとは…」
俺の目の前、理知的な雰囲気を持つドラゴンも人間との共存を目指すドラゴンの内の一体で、リーダー的な存在らしい。
「私も全てを見た訳ではありませんが…状況から見て、まず間違いないかと思われますわ」
深い紅髪の長髪に片方の側頭部の髪を三つ編みにした女性、アイリーンが答える。
あの後、アイリーンと兵士たちに連れられ、俺はここ、イシュガルと呼ばれる東の大陸の国、ドラグノフ王国へとやってきた。あの森から歩いて数十分のめちゃ近くで驚いたが、ドラゴンなら数分で着くくらいの距離まで近づいていたと思えば、アイリーンたちのあの焦りようも理解できる。
「アイリーンよ、お主にも言いたいことがあるぞ。…あのような少数で戦いに向かうなど…死にに行くようなものではないのか」
「うっ…申し訳ありません…ベルセリオン」
「いくら我らが不在の時だったとは言え…な。…お主には感謝しよう。アイリーンたちを救ってもらったことを」
「…ああ。しかし、ドラゴン同士の戦争とは、ベルセリオン…だっけか、あんたらはなんで人間の味方をするんだ?」
周りを見渡せば、目の前のドラゴン、ベルセリオンの他にも何体かのドラゴンがいて子供と遊んだり、兵士たちの仕事を手伝ったりしている。
「何、恩を返すためよ…」
ベルセリオンは昔、アイリーンの先代である王に助けられたことがあるらしく、その恩を返す為に戦っているのだとか。
「…セイギ、と言いましたね」
アイリーンが俺の名前を呼ぶ。この世界では珍しい名前だろう。イントネーションが独特だ。
「私は悔しいのです。…ベルセリオンたちが私たち人間の為に戦い、血を流しているというのに、私たち人間にできることは何もない」
アイリーンの言葉にベルセリオンは何か言いたげだが、口を挟むことはなかった。
「…何か方法を考えていました。ドラゴンと戦う為に、何か出来ることは無いのかと…そして、貴方を見つけた。…頼みます。どうか私に貴方の力を貸していただけないだろうか…!」
アイリーンが俺に頭を下げる。正直言うと、別に受けても良いと思っている。あの程度のドラゴンならば何体いても負けることはないだろうし、せっかく日本男児の憧れの刀、閻魔を手に入れたんだ。刀術を鍛えるのも悪くない。
可愛い女性とエッチなことしたいのはもちろん第一目的だが、俺も男で、魔術師の端くれ、強くなりたいとも当然思う。モテる為には強さも必要だしな。
「この城で一番良い部屋をくれ。あと、一回戦うごとの報酬は俺が決める…どうだ?」
「ぇ……良いのですか!?」
ぱぁ、と花が咲いたような笑顔を浮かべるアイリーン。ふむ、やっぱり美人だな。初めは堅い印象を抱いていたが、女王と言ってもまだ少女を超えたばかり、年相応か。
「最後にもう一つ!」
人差し指を立てて、アイリーンにズイ、と近づく。アイリーンは目をパチパチとさせ、聞く体制に入った。
「あんた……彼氏いる?」
「…は?」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
アプローチは失敗。彼氏どころか夫がいるらしい。まぁ、考えてみれば女王なんだから当然か。うーん、残念。政略結婚らしいから奪い取りたいけど、アイリーンは少なくとも夫を愛していない訳では無いようだ。だから俺の魔力にもそこまで反応していないんだな。
アイリーンはこの世界ではかなりの魔力量を有しており、最強の魔法使いとして名を馳せているらしい。まぁ、それでもドラゴンには絶対に勝てないらしいが。
今までの世界では空気中に魔力が分散していて、どのような場所でもそれなりに目には見えない魔力が浮遊していた。サーヴァント同士の戦いや、大規模な魔術戦が起こった後などは、苦しいほどの魔力の残穢が空気中に残るほどだった。が、この世界では魔力を感じはするものの、気味が悪いほど薄く、酸素自体が薄く感じられるほどだ。
その理由はおそらくドラゴンか。奴らは人語を理解し、魔法を使うほどの知性を持っている人間よりも高位の生物だし、魔力を発散する以上に空気中の魔力を取り込んでいる可能性が高い。ドラゴンがいなくなれば、強い魔術師、この世界では魔導士か…は多く生まれるのではないだろうか。
「ま…ひとまず、良い部屋をもらったことだし、誰か呼ぶか」
俺が創った世界……分かりづらいな…『エタニティ』でいいか。エタニティに接続し、俺のベッドの上で暇そうにしていた彼女を呼び出す。
「…オーフィス。こっち来るか?」
『ん…!…セイギ…行く』
「よっしゃ。こっちに甘いもんはなさそうだから持って来とけよ」
『ん、それはまずい…いっぱい持っていく…』
しばらくして、両手いっぱいにお菓子やスイーツの入った袋を抱えたオーフィスが俺の前へと現れた。むふー、と息を吐き、トテトテと歩いて俺の膝へと乗っかって来た。
「ふふふ…セイギの膝、久しぶり…」
3日ぐらい前乗ってたけどな。
「む…セイギ、この世界、ドラゴンの気配がたくさんある」
「ああ、なんでもドラゴン同士で戦争中らしいぜ?…お前やティアマトに任せりゃあ、すぐ片がつくんだろうけど、それじゃあ面白くねぇ。お前に貰ったマントもまだ使いこなせてないしな」
「…
「その為には、俺には戦闘経験が足りない。無限の魔力に物を言わせる戦闘も雑魚相手なら余裕だけど、それだと不安だし」
俺には師匠なんて都合のいい人はいない。強さで言ったらバグレベルのティアマトとオーフィスも素の力と能力による物だし、婦長も戦士ではなく看護婦だ。八坂や九重、黒歌や白音は近接戦闘タイプではないし(黒歌によると白音は格闘センスがあるらしい)、強いて言うなら静謐から気配の消し方を習ったくらいか。
俺の持つ手札は『無限の魔力』と『聖杯』、『接続魔法』、『閻魔』、『
だからこの世界ではまず、新たな武器と戦闘技術を得る為に行動しよう。こんな大規模な戦争が行われているのなら、おちおちナンパもできない。
「セイギ……ん…」
オーフィスが熱の入った声と共に唇を差し出してくる。乳首テープは辞めたが、透けて見えるほど薄い黒のレースを羽織っただけの相変わらずのファッションでこちらを見上げるオーフィスは俺の肉棒を奮い立たせるには十分すぎる威力を持っていた。
オーフィスの小さな唇に自身の唇を合わせる。黒いレースを脱がせ、産まれたままの姿となったオーフィスを抱き上げその口を啜る。白い肌に赤みが増し、深い黒の瞳に僅かに光が灯る。
「んちゅぅ…♡…ちゅ…♡…むちゅ…♡…ちゅう…♡」
「ぷは…オーフィス…尻をこっちに向けてくれ」
糸を引く舌同士を離し、オーフィスにそう言えば、目の前にオーフィスの小ぶりながらも肉付きのいい尻と太ももが突き出される。その尻を掴み、俺は綺麗なピンク色の筋を一舐めした。筋をなぞる舌はクリトリスからアナルまでを離れることなく通ってようやく離れる。それを何度も繰り返し、アイスクリームを舐めるようにオーフィスの穴を味わっていく。
もちろん、何度も身体を重ねてきたオーフィスも何もしないわけじゃない。俺のズボンを脱がし、飛び出た肉棒に頬を打たれながらもその亀頭をパクリと咥え込み、口での奉仕を始める。
所謂シックスナインの体勢で、お互いの性器を舐め合う。オーフィスは初めて会った時に丁寧に教えたからかこういった前戯が好きで、何も言わなくてもお互いにしたいことが分かり合えるようになったほどだ。
「ぷあぁ…♡……」
「…どうかしたか?」
オーフィスが口を離し、唐突に自分の胸を揉み始める。僅かな膨らみがふにふにと彼女自身の手で形を変え、そのままこちらに振り向いてくる。
「…セイギもやっぱり、胸は大きい方がいい?」
一抹の不安を宿した瞳がこちらに向く。…なんだ、そんなこと気にしてたのか?
「我、姿変えれる。もっと大きくなれる」
「んー、そりゃもちろん大きい胸も好きだけど、それよりもオーフィスのことが好きだからな。気にしないぞ。…あ、流石に性別変えられるのは勘弁してほしいが…」
「…うん」
体位を変え、再び向き合う形になったオーフィスの身体に変異が起こる。スラリとした腰のくびれはそのままに、身長が伸び、それに伴って乳房や太ももと言った部位の肉付きが強くムチムチとした魅惑的な体つきになっていく。
「…これで我もセイギと同じ大人…えへ…♡」
「おお…そっちの姿もすげぇかわいいな…」
面影はしっかりと残したまま、オーフィスが大人の女性の姿へと変わった。大人と言っても人間で言う十代後半、俺と同じくらいの年齢だろう。
「えへへ、セイギ…♡」
オーフィスが俺の首に腕を回して、豊かに成長した胸に俺の顔を埋める。見た目は黒髪美人の大人っぽい印象を抱かせるのに、その言動は幼く、それがまた俺の情欲を唆る。顔面にオーフィスのハリのある巨乳が張り付き、感じる柔らかさと香水も何もつけていない筈なのに鼻腔を擽る甘い香りがダイレクトに下半身に響き、肉棒が戦闘準備に入る。
「んっ…♡」
聳り立つ肉棒がオーフィスの膣の入り口に当たり、今にもその穴を蹂躙しようと熱り立つ。身体が大きくなっても変わらずに小さい蜜壺は硬く閉じているが、分泌される液が滑りを良くし、少しずつ中を俺のモノに開け渡していく。
「ぁっ…♡!…ぅん…あぁ…ん…♡…!」
艶を帯びていく声を聞きながらオーフィスの胸に手を伸ばす。婦長や八坂、キアラに比べたら控えめだが、それは比較対象が大きすぎるというだけで、オーフィスの成長した乳房は十分過ぎるほどに俺の欲を刺激する綺麗ながらもいやらしいものだった。
寧ろ、均衡の取れた美しいスタイルを生み出している。まぁ、もちろん大きい胸でも小さい胸でも全員が優劣などつけられないほど好きだけど。
「はぁっ…♡!んっ…あん…♡!」
クリクリと人差し指と親指で乳首を摘み、愛撫する。真っ白い地肌に似合う桃色の突起は服を着たとしても分かるほど勃起し、その小さな蕾を懸命に主張している。
成長した為に以前までは正面で向き合うことのなかったオーフィスの顔が目の前にくる。その整った顔と本来の無機質さが無くなり始めている表情が額がくっつくほどの距離まで近づき、我慢などせずに唇を重ねた。
オーフィスのピンと勃っている乳首が俺の胸に当たり、その度にオーフィスの身体が震える。その震えに重ねるように口内を侵し、腰を動かす。
緩まることのない膣内を掻き分け、遠慮のない中出しを行う。子宮口のこじ開けた隙間から吐き出される種を注入し、身じろぎするオーフィスを抱きしめる。
「ふぐっ!!♡ああううぅ♡!んんっ♡!んー♡!」
オーフィスの声が合わせている唇の隙間から漏れる。果たして痙攣しているのは俺の肉棒なのかオーフィスの膣内なのか、或いはその両方か、振動するような刺激に急激に射精感が登ってくる。
「出すぞ…」
「ぅんっ…♡!」
ブビュッ!!ビュルルルッ!!グビュゥゥッ!
奥に精液を吐き出すとお互いの魔力が混ざり合うのを感じる。汗や唾液を含む体液が何度も交換され、魔力が発散されると同時に龍神のオーラの質が高まる。
「んぶぶ…♡…ヂュ…♡…ぇろ…♡」
続くオーフィスとのキスが吐精の余韻を際立たせる。木製の少し硬めのベッドに沈み、俺の上に重なるオーフィスと結合を外すことなく二回戦へと突入するのと、ドアがノックされるのは同時のことだった。
「あ、あの…アイリーンです。入ってもよろしいでしょうか?」
既に覚えた凛とした声が聞こえてきた。アイリーンだ。
「…少し待ってくれ」
一人だった俺が、一時間も経たない内に女を連れ込んでいるところを見られるのはアイリーンが女王でなかろうと少しまずい。名残惜しいが、オーフィスと身体を離し、彼女にシーツを被せて隠し、服を着てアイリーンを迎え入れる。
「お休みの所すみません。どうしても聞きたいことがあって…」
「構わないぜ…何だ?」
アイリーンに部屋に備え付けられていた椅子を差し出して、さりげなくシーツを被るオーフィスを背中に隠せる位置で相対する。
「ありがとうございます…実は…」
「ああ、ちょっと待て」
「はい?」
「敬語はいらない。あんた王女様なんだろ?俺が使ってないんだから、あんたもやりやすい口調にしてくれ」
「…いえ、私は普段からこの口調ですので…」
「…そうか」
「はい」
「…」
「……っ、で、ではお話があるのですが…」
なんかよそよそしいな。余所者だし仕方ないのか。
アイリーンのいう話とは、俺とドラゴンとの戦闘の話を聞きたいというものであった。「少しでもベルセリオンたちの助けになればと考えて」と前置きを入れていたが、その顔には自分で闘いたいという思いがはっきりと浮かんでいた。
「…俺が思うに魔力が問題だな」
「魔力、ですか?…私も貴方ほどではないが、それなりに持っていると思いますが…」
「いや、魔力量の問題じゃない。そもそも、ドラゴンには人間の魔力がほとんど効かないんだと思うんだよ。どれだけ強大な魔法をぶつけても魔力が人間のものなら精々が薄皮一枚ってことだ」
「それでは…貴方はどうやって…?」
「簡単だ。ドラゴンはドラゴンの魔力でしか殺せないってことだ。詳細は省くが、俺はドラゴンの力が使えてな…その魔力を纏わせた攻撃ならば面白いほど通用した」
茶色ドラゴンに初撃を入れた時の違和感はそれだった。予測では首を両断できるほどの魔力を纏わせた斬撃が効かなかったのも、そう考えれば辻褄が合う。その後のオーフィスの力を伴った攻撃はスパスパ入ったし。
「やはり…そうだったのですね」
「やはり?」
「はい。考えていたことの一つではありました。…そうですか。…ならば、私の魔法も役に立つ筈です」
アイリーンがなんの変哲もない木の枝と鉄の盾を取り出して木の枝に魔力を通す。魔力が葉脈のように広がり、アイリーンが木の枝で盾を叩くと、木の枝は無傷のままで盾は木の枝型にへこみ形を変えていた。手に持ったままではなく地面に置いて叩いていたら盾はバラバラになっていただろう。
「彼らドラゴンの力を我ら人間に付加すれば…私も戦える…」
…別に俺に止める資格は無いし、止める気も無い。アイリーンの戦う覚悟を戦う俺が否定しては侮辱になってしまうだろう。
「それこそが、悪しき竜と戦う力…
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
初めて参加した戦争に赴く。その際、竜の力を付加したアイリーンとアイリーンによって竜の力を付加された兵士数名が俺と一緒に参加した。俺にも付加してくれようとしたが、それは断った。まだ俺もオーフィスの力を全て扱える訳ではないからな。
ベルセリオンの部下のドラゴンの背に乗せてもらい、数多のドラゴンと対峙した。集落を襲い人を喰らおうとする敵側のドラゴンを閻魔を持って斬り伏せ、オーフィスの力を限界まで引き出し、身体を慣れさせる。オーフィスとの信頼度は問題ない為、身体さえ慣れればおそらく禁手にも至れるだろう。
「やった…!効いてるぞ!!」
「すげぇ!ドラゴン相手に戦える!」
付加術によってドラゴンの力を得た魔導士、滅竜魔導士となった兵士たちが士気を上げる声を叫ぶ。
流石に何人かは怪我を負ったが、それでも人の介入した第一回目の戦争は大勝と言える戦果だった。
西のドラゴンはこちらの何倍もの物量で、押し負けていた戦況もこちら側が有利に傾き始めた。その戦果を知った兵士たちは次々と滅竜の力を求め、多くの滅竜魔導士が生まれた。
何度かの戦いを終えた時、滅竜魔導士となった一人の兵士が味方の兵士と竜を殺して逃げたという報告が突如上がった。これにはアイリーンを筆頭に多くの人々が混乱した。その兵士の名は誰にも分からず、イシュガルには竜との共存を拒む人もいるので、その思想を持つ隣国の国民が兵士になりすまし、自国の竜を殺す為に滅竜魔法を得た、という結論が出たが、それで収まるほど小さな出来事ではなかった。
そして、続く戦争の最中、動揺を気丈に隠すアイリーンに畳みかけるようなことが起きた。戦争中、突如現れた見たことのない黒いドラゴンにより、ベルセリオンが殺されたのだ。黒いドラゴンは敵味方構わずに暴れ、こちらの竜もほとんどが殺された。
一度戦ったが、決着はつかなかった。ドラゴンは自身の持つ属性の魔力を含む物質全てを食べて吸収することができるが、奴は属性関係なく魔力全てを捕食するらしく、相性は最悪とも言える相手だった。『接続』を使い嫌がらせしまくって、時間稼ぎをして撤退させることに成功したが、俺一人では今のままだと勝つには難しすぎる相手だ。
誰もを嘲笑うかのように黒竜は、人と竜を殺し、戦争は望まぬ形で終結へと向かって行っていた。その時、滅竜魔導士となった兵士たちに変化が起きた。力を抑えきれずに暴走し、段々と竜の力に蝕まれていき、体の一部、或いは全身が竜の物へと変わり果て、黒竜のように暴れ回ったのだ。
しかし、その暴走もまた黒竜によって制圧の皮を被った蹂躙にて滅ぼされ、、元滅竜魔導士だけではなく、近くにいた敵ドラゴンも味方もほぼ全員が死亡した。
その時黒竜は一度だけ声を発した。
『我は全ての魔を喰らう竜。魔竜アクノロギアである。我こそが竜王。全ての竜を殺す竜王である』
黒竜、アクノロギアの登場により、戦争は勝者無く終結し、数えきれない程の竜と人の屍の上でアクノロギアだけが立っていた。
『貴様は竜でも滅竜魔導士でもないようだが、ドラゴンの力を持っているな。次に会った時に、必ず殺してやる』
一度目の戦闘の終わりにアクノロギアは俺に向かってそう言った。消耗していたのか、他に目的があったのか、戦争を終わらせたアクノロギアは空の彼方へと飛び去っていった。
味方の竜は殆どが死に、辛うじて生き残った竜もいつの間にか姿を消していた。俺がいたからか人死には少なく、国として維持できる程度には人が生き残っており、終戦からの落ち着きを取り戻しつつあったその時。
「私です!アイリーンです!」
竜へと変貌した滅竜魔導士たちと同じようにアイリーンにも変化が起きた。顔の左半分に鱗のような痣が浮かび、瞳の色彩は黒くなっている。他の者たちは数日で竜になってしまったが、アイリーンは魔力の高さ故か変化の速度が遅いようだ。
まだその美貌は失われていないし、彼女の意思がしっかりと残っていることは一目見れば分かるだろう。
「よるな化け物め!斬るぞ!」
しかし、そう思っているのは俺だけのようで、兵士たちはアイリーンがアクノロギアのようになると喚いて恐れ、アイリーンの夫である軍の将軍はアイリーンに対し化け物と罵り、剣を突きつけた。
「此奴もアクノロギアのようになるぞ!!いや…そもそもこいつのせいであの化け物が生まれたのだ…!…此奴は人類の敵だ!ひっ捕らえろ!」
「いやお前らどの口が言ってんの?」
向かってきた男のうちの一人に踵落としを食らわせて気絶させる。
はぁ、呆れる物言いすぎて哀れにすら思えるな。アイリーンが居なけりゃとっくの昔に戦争に負けて死んでた筈の癖に。というか戦争になる前に皆殺しにされてただろうに。
「やめて下さい!お腹の中にはあなたの子が…!!」
「ふざけるな!オレに化け物の子供などいない!!」
は?ガチかこいつ。
「おい、お前が生きてんのは誰のおかげだよ?…碌に戦争にも参加しなかったお飾り将軍が自分の蒔いた種すら否定すんのか?」
「ウッ!?」
閻魔を抜いて、アイリーンと兵士たちの間に入れば男たちは足を止めて後ずさる。一回でも戦争に参加していたのなら俺のことも知っているだろうし、特に将軍は腰抜かしてる所を助けてやったからよく覚えていることだろう。
「キ、貴様も同じ…化け物だ…!お前ら!こいつらを幽閉しろ!…もうドラゴンなんて懲り懲りだ!」
将軍の命令を受けても兵士たちは震えるだけだ。それだけアクノロギア、ドラゴンという存在への恐怖が染み込んでいるのだろう。
「く、くそ…!!…お前ら何をして…!?」
「お、お願い…します…。どうか、どうか子供だけは…!」
「何度も言わせるな!俺の子などおらぬ!今すぐ腹を裂いて確かめてやろうか!?」
振り抜いた剣をアイリーンに落とそうとする将軍の手首を斬り飛ばす。一瞬も経っていない瞬きすらも許さない斬撃…に見せた攻撃。将軍の手首の位置を過去、或いは未来にて斬ったという事実を現在に固定するというほぼ防御不可能の不可視の攻撃。防ぐ為にはそもそも俺に攻撃されるという可能性を生み出さない程の強さを持つか、同じように時空や次元に干渉するかしかない。
これを無限に行うとアクノロギアでも堪らなく鬱陶しいだろう。めっちゃキレてたし。
俯いたままだったアイリーンを抱き上げ、天井を突き破って国から出る。とりあえず俺がこの世界に来た時最初にいた森へと行き、アイリーンを優しく地面に下ろした。
「ぁ…え…?」
「悪いけど勝手に連れてきたぞ」
「ぁ…ありがとう…ございます…」
呆然とするアイリーンの目尻には涙が溜まっており、どういう言葉をかけるか迷ってしまう。そもそも言葉をかけるべきではないのかもしれない。ここで俺が「あんな奴忘れろ」だの「気にするな」だの言っても意味は無いだろう。
それよりもまずはアイリーンの竜化を防ぐのが先決だ。
「…オーフィス」
名前を呼び終わる前に肩に柔らかい感触が落ちてくる。
「我、来た」
上から覗き込んでいるのかオーフィスの美麗な黒髪が視界を遮る。今までの中で竜化してしまった奴らはすぐに自滅したり、アクノロギアに殺されてしまったから、確かめることができなかったが、アイリーンは竜化のスピードが遅い。助かる方法があるかも知れない。
聖杯を使おうとも思ったが、造り変えられている人間の身体をさらに造り変えることになるので最終手段にしておく。
「オーフィスならアイリーンの竜化を防ぐ方法が分かるか?」
「うん。多分」
アイリーンがこちらに振り向く。
「ほ、本当ですか?…あれ、小さい…?…あの時はもっと大人だったのに…」
ああ、やっぱり俺とオーフィスがそういうことしてたの知ってた…というか見てたのか。意外にむっつりなのか?いや、今はどうでもいいか。
「ん…確実じゃないけど」
この世界の人間は全くドラゴンの魔力に耐性が無いから身体が拒絶反応を起こしてる。その拒絶反応とは竜化のことで、何故竜化するかというと人間の魔力と体がドラゴンの魔力に押し負けて無理矢理竜の力に耐えられる体へと造り変えられているから。なるほど、世界が違うなら人間の耐性やら性能やらが違うのも当たり前なのか。
「でも才能によっては変化に抵抗できる人間もいる。アイリーンはまさにそれ。最後にはドラゴンになるけど」
「…で、治す方法は?」
単刀直入に聞く。
「アイリーンの中にあるドラゴンのオーラを吸い取るか、別の魔力で上書きするのが一番だと思う」
作者:アイリーン原作読んでても可哀想だったなぁ。大人っぽく…てか大人の色気の強いキャラで好きなキャラなので頑張ります。