2回目のシャワーを浴び、リビングにて半同居人の義理の妹が作ってくれていた昼食を食べた後、椅子に座りながら右手に体内に隠していた物を取り出す。
一つの傷も汚れもないそれは光り輝く黄金の杯。万能の願望機、聖杯である。かつて、この間桐家の当主であった蟲ジジイをぶっ飛ばした際、残っていた聖杯の欠片。俺はそれを自身の心臓と同化させ、無意識に溢れ出す魔力を貯蓄していく魔力タンクとして運用しているのだ。そのおかげでかつてはただの一欠片であったこれも立派な願望機となっている。
しかし、いくら聖杯とはいえ限界はある。そのため俺は聖杯のキャパシティがオーバーしない為に定期的に聖杯を使い、願いを叶えている。最も下手に巨大な望みを叶えるとどういった結果になるかわからない為、石塊を金塊に変えたり、軽い自然災害を止めたり、流行り出したウィルスを無くしたりとかが主な消費目的だ。
まぁ、保険でもあるがな。魔法を行使する際、万が一リバウンドで悪影響があった時、聖杯があればほぼほぼのリカバリーが可能だろうからな。
ちなみに右腕に刻まれている六画の令呪も俺の魔力タンクとしての役割を持っているが、アサシンもバーサーカーも俺の命令は基本聞いてくれるので、消費する機会が無くあまり意味をなしてはいない。
「うーん、そうだな。今回は…あっそうだ。『間桐慎二の魔術回路を一本増やせ』」
聖杯が光り輝き、魔力がほんの少し減ったことを感じるが、微々たる程度だ。そして30秒後、ポケットに入れていた携帯が激しく震えだす。
「もしもし」
『…もしもし、じゃないよ…兄貴…』
電話の相手は俺の可愛い義理の弟だ。
『身体がめちゃくちゃ痛いんだけど…街中で叫んじゃったんだけど…絶対兄貴の仕業だよね…?』
「仕業だなんて酷いな…お前が魔術使えるようになりたいって言うから兄ちゃんが魔術回路増やしてやったのに」
『いや言えよ!事前に!ただでさえくそ痛いのに日曜の昼に爆撃してくんなよな!!』
「はいはい。わかったって」
『いーや絶対分かってない!!大体この間だって僕をいきなり衛宮の家にほっぽり出して、衛宮のやつはこっちの気も知らないで「慎二じゃないか!お前も飯食っていくか」なんて呑気なことを言い出して、衛宮の後ろからはセイバーやらライダーやら遠坂やら桜やら
楽しそうな義弟の声を右から左に聞き流す。ピッ、と携帯の電源を切り、聖杯を胸の内へとしまう。最近は俺の魔力の質が上がったのか、聖杯に魔力がたまる速度が上がっているような気がする。そろそろ前々から考えていた方法を試してもいいかもしれない。静謐はあまりいい顔はしないだろうけど。
さてと、腹ごしらえも済んだし、久しぶりに静謐や婦長を連れて外出でもしようかな。
新しく創った婦長専用の医療室から婦長を呼び、いつの間にかついてきている静謐を伴って外出する。現代的な私服を纏った婦長と静謐は周りの注目をよく集める。ただでさえ目立つ美女二人が一人の男を挟んで腕を組んでいるのだ。嫉妬と羨望の視線が誇らしくもあり、煩わしくもある。
こういう時はちょっと男として優越感に浸りたくなってしまう。俺は右側にいる婦長を抱き寄せ、軽いキスをした。周りからは女性の歓声と、男どもの怨嗟の声が聞こえた。
チュ、とリップ音を立てて婦長から唇を離す。すると婦長は真剣な顔でこちらを見てその柔らかな唇を動かす。
「緊急治療を始めますか?」
おっと、それはまずい。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
金には困っていない為、二人とのデートは高級スイーツを食べたり、服を買いに行ったりと、とても贅沢なものを楽しめる。荷物も届けてくれるサービスがあるし、なくても使い魔に任せればいいし。
一通り休日デートを楽しんだ後、家に帰れば、また昂ってきた魔力を抑える為に二人と肌を重ねる。
風呂場で汗を流しながら、子犬のように甘えてくる静謐と絡み合い、ベッドでは聖杯に願って用意させたドスケベ衣装を着たナイチンゲールを押し倒す。
そうしてあらかたの魔力を発散させた後。
うん。やはり思う。足りないと。この二人に不満があるわけじゃない。寧ろ最高だし、永遠に抱いていたいと思うほどだ。だがサーヴァントとはいえ今は受肉した人間。毎日の俺とのセックスは二人が喜んで受け入れてくれるものでも、身体的な負担があることは拭えない。
やはり、一度並行世界へと移動してみようか。いや、それよりもまず先に試したいことがある。
ベッドの上で両隣にて眠る静謐と婦長の暖かさを感じながら、考える。俺の右腕には今、令呪が刻まれている。これはマスターの証、サーヴァントを召喚するための切符。そして、俺は今聖杯を所持している。
つまりは呼べるはずなのだ。
「新しいサーヴァントを…」
俺の持つ聖杯を求めてくるサーヴァントを召喚する。それも女性のサーヴァント、できれば美少女or美女でお願いします。俺に男色の毛は無いが男の娘ならワンチャン…やめよう。
まぁ、問題はある。聖杯を求めるということはつまり願いを持つ者が呼ばれるということ。やばい願いを持つ者が召喚されれば、最悪世界が滅ぶ。だから万全を期さなければならない。
まぁ、令呪6画もあるし、やばそうなら自害させればいいだろ。
楽観的だが、正直そんなに恐れることはない。無限の魔力を宿した俺の身体はそんなに柔じゃ無いんだ。俺はそう思い、眠りについた。
翌日、静謐とナイチンゲールを伴い、俺は地下の魔術工房へと訪れていた。かつては趣味の悪い蟲蔵だったここも俺の劇的ビフォーアフターによってなんということでしょう、綺麗な広場となっているではありませんか。
茶番はさておき、魔法陣を前にして聖杯を掲げる。
満せ満せ満せ〜満〜せ〜満たしてちょーだい。五回繰り返してほんにゃらかんにゃら、祖にはクソッタレな神様、俺の魔力に応えられる美少女or美女よどうか応えてください。全世界の輪より来たれ、安寧と魔力豊富なイケメンを望むもの〜。
完璧な詠唱を終え、魔法陣に強大な魔力が現れる。吹き荒れる風が止むと、そこにはいた。間違いなくサーヴァントと呼べるだけの存在が。
「A---------------------Aaaaaaaaaaa、aaaaaaaaa----------------!!!!!!」