※この作品はR-18です。

白いウサギはふたなりの餌食   作:37級犬築士

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Hシーンはもう少し先です。しばらくは男の娘ベル君が振り回される様子をお楽しみください。


(2)

 甘いものが苦手だ。特に、砂糖をふんだんに使ったケーキ、加工菓子は特に苦手だった。

 

 けど、そんな僕の前にはてんこ盛りのクリームまみれのパンケーキがあった。

 

 うん、見るからに甘そうだ。口にしてないのに水分が枯れていく気がする。

 

 

「うっわ、アイズのそこに小豆も乗るんだ。というか、何で別皿にじゃが丸君」

 

「……合うから」

 

「ほな、皆そろったし食べよっか。今日はウチのおごりやで……リンちゃん」

 

 

 

 

 

「………」

 

 

 僕、何でこんなことに

 

 

 

 

 

  ×  ×  ×

 

 

 

 

 

 その日はいつも通り、ちょっと大胆にオフショルダーの服を纏って、新しい服を買いに繁華街に向かった。

 

 人込みのおおい、大きなストリートから外れた人知れぬ乙女に人気の裏通り、衣服はもちろん、そこでしか買えないブランドのアクセや小物まで、何でもそろう場所だ。

 

 どこを見ても女の人、男っ気の欠片もないさわやかな空間、そんな中を人知れず歩くのは少し罪悪感が募る。

 

 

…でも、今なら

 

 

「あの、この商品ください」

 

「毎度、おやあんた見ない顔ね。観光客かい?」

 

「えっと、そんな所です」

 

「品のいいお嬢さんだね、ほら、包んであげたよ」

 

 気風の良さそうなドワーフのお姉さんが商品を手渡す。板金で作られたアクセサリーを買う、至って何も変ではない少女、ベルははにかんだ笑顔で礼を伝える。

 

「ありがとうございます。また、寄らせていただきます」

 

「あぁ、しっかし別嬪さんだね。声も透き通って、いやあ嫁に欲しいくらいだよ」

 

「!!」

 

「って、女通しで何言ってんだかね……って、どうしたんだい」

 

「……何も」

 

「?」

 

 首をかしげる店主を後に、ベルは少し早足で店をあとにした。

 

 

 

…大丈夫、だよね

 

 

 

 疑われた、万一もあると考えベルは首にかけたペンダントを手に取る。

 

 

「壊れてないよね、たぶん」

 

 一人、ご釣る声は紛れもなく自分の声、ただしそのキーは少し高い。

 

「高いお金出して買った魔法道具なのに……大丈夫、バレてない、ていうかお願い」

 

 たまの休みにだけできる楽しみ、しかしその正体だけは絶対バレてはいけない。

 

 ベル・クラネルが女装癖のある変態だと、そんな噂が広まってしまえば

 

 

…おい、ベル・クラネルが変態だってさ

 

 

…うそ、英雄だと思ってたのに

 

 

 

…ベル、変態……見損なった

 

 

 

「!!」

 

 最後、思い人の冷たい目が心臓を貫いた。妄想だけど

 

 

…バレたらダメ、バレたらダメなんだ

 

 

 今の自分はリン・クラネル、ヘスティア・ファミリアとは無関係な、ただの観光客の女性。

 

 

「気を取り直そう、今日もボクは……いや、私は」

 

 いつもと違うもう一つの自分、謎の美少女リン・クラネルはその新たなる一歩を

 

 

 

「……なにしてるんや、自分」

 

 

「…………はい?」

 

 踏み出そうとした瞬間、背後から聞き覚えのある声が届いてきた。

 

「……なにか」

 

 精一杯振り絞って出した三文字の言葉、振り向くとそこには見知った顔の女性が四人、奇遇なことにどれも面識のある、というかよく知っている人たちだった。

 

「いや、なんか一人ぶつぶつつぶやいてたし、ちょっと興味あってな。ま、それよりもお嬢ちゃん偉い別嬪はんやねぇ、ちょっとうちらとお茶せえへん?」

 

 神ロキ、うちの神様と犬猿の仲にある、通称貧乳神だったか、人を食ったようなこの調子がどこかとっつきにくい、というかよくわからない。

 

 

…もう、どこか離れないと

 

 

 ただでさえバレるリスクにさらされた身なのだ。知っている人と本気にお茶だなんて

 

 

「えっと、それは「もう、いきなり声掛けたら困るでしょ。ごめんね、うちの神様こういう人だから」

 

「ええ、別にいいんじゃない。いっぱいいた方が楽しいし」 

 

「……でも「ほら、アイズたんもええやろ。というか、これで五人なったら割引できるし……うちの財布事情的にも助かるんやけど」

 

 

「………ッ」

 

 

 

「別に、私はどっちでも……君は」

 

 

 

 どうしたいの?その言葉を発した彼女に目が奪われた。

 

 腰まで伸びるその見事な金髪、見間違いのはずはなく。早朝に城壁で何度も見てきたその尊顔は

 

 

「……あいず、さん」

 

 

 不意に、その名を口にしてしまった。よりにもよって、一番会いたくないタイミングで、僕の想い人は目の前に立っていた。

 

 

「なんや自分、うちのアイズたん知ってたんか。まあ有名人やし、アイズたんも良かったな、こんなかわいらしいファンがおって」

 

「……ふぁん?」

 

 アイズさんの目がこちらを向く。きょとんと、いつもらしいどこか抜けた調子、僕の姿を見ても特に変化は無い。

 

 

…バレてない、よね

 

 

 思い人にバレる、ひとまず最大の失態は置きそうにないみたいだ。

 

 

「あの、……冒険者のこと、興味があって」

 

「ん、なんや自分冒険者志望かいな?」

 

「いえ、そういうわけでは」

 

「じゃあ、観光客?…いや、でもどこかで」

 

 いぶかし気に、ティオネさんが僕を見てくる。早く解放されたい、これ以上ここにいたくない。

 

  

…どうしよう、とにかく今はここを

 

 

 

「で、お店いったら何頼むの」

 

「いいじゃない、言ってから決めれば。今日はロキの奢りだし。」

 

「いやぁ、できれば穏便に」

 

「でも、罰だから……ちゃんと五人分、ごちそうになる」

 

 

 

…うん、なんかもう僕も同伴する流れで話が出来てる。

 

 

 

 

 

 

〇

 

 

 

 

 

 気が付けば、僕はアイズさん達と一緒にこじゃれたカフェに同席していた。

 

 目の前で、ロキさまとアイズさんが座って、僕の両隣りにティオネさんとティオナさんがいる。

 

 

…帰りたい

 

 

「さ、食べよっか。ねえリンちゃん、私のもあげるから一口頂戴」

 

「あ、なら私も。ここのクリームくせになるのよね」

 

「あぁ、どうぞ……はは」

 

 逃げようにも、もう物理的に挟まれてしまっている。

 

 

…というか近いし、なんかいい匂いだし

 

 

 右を見れば豊満な谷間が目の毒である。逃げ場を求めて、僕は左のティオナさんの壁を見つめている。

 

 

「……なんか、不本意な視線感じる」

 

「!…気のせいではないかと」

 

「なんやなんや、リンちゃんうちらといて緊張しとるんやね。片意地はらんでいいんやから」

 

「…は、はぁ」

 

 

 そんなの無理だ。

 

 露呈すればすべてが終わる時限爆弾を抱えているんだ。とにかくぼろを出さず、このまま時間が経つのを待てばいい。

 

 目の前の菓子にフォークを突き刺す。真っ白なクリームと季節の果物、蜜の染みた焼き菓子と一緒に口に運ぶ。

 

 うん、美味しい。美味しいのはわかるけど、甘すぎる。

 

 

「……ん、んんッ!!」

 

「あぁ、もう急に飲むから。あなたけっこうそそっかしいのね」

 

「……うっ、すみません。実は、甘いもの、慣れてなくて」

 

「あぁ、だからブラックコーヒーなんだね。苦いの飲めるんだ」

 

「あんたは舌がお子様なだけよ。ほら、お姉さんに舌見せなさい」

 

「……ッ」

 

 左隣で抗議の声を荒げるティオナさんは他所に、僕の顔はティオネさんに掴まっている。

 

 口を開けてと、拒否する間もなく僕は舌を触られる。

 

「……ひぁ、あぁ」

 

「あら、ちょっと白くなってる。ね、ここのスイーツにポーション使ったものあったわよね。口の怪我、それ食べて直そうね」

 

 ぽんぽんと、頭を撫でられた。もとから年の差はあったけど、今のぼくなら余計幼く見えるのだろうか。

 

「ぶー、なんか二人いいムードじゃん。うらやましい」

 

「何言ってんの、女どうし、ノーカンよ。……でも、あんた本当に可愛いわね。子ウサギみたいで、ちょっといじめたくなるわ」

 

「!!」

 

「これこれ、リンちゃんが困っとるで」

 

「ティオネ、好きなの」

 

「さあ、どうかしら……ねえ」

 

 解放される。けど、四人の視線が集まってる。

 

「うん、でも確かにリンちゃん可愛いよね。私、もっと仲良くなりたいなぁ」

 

「……私も、気になる」

 

「せやせや、まだまだ時間もあるし、きょうはとことんまでガールズトークや!!」

 

 

 

 

「………」

 

 

 

…もう、どうなってもいいや

 

 

 

 逃げ場がない。左腕にくっつくティオナさん、ティオネさんには頭を撫でられている。というか、二人ともなんか熱い

 

 

「ほんと、初対面なのに、どうしてかしらね」

 

「うん、なんか親しみ湧くよね。んっ……匂い、かな」

 

「!」

 

「ね、確かに良い匂い。女の子なのに、ちょっとドキドキするわね。色気かしら、もしかしてアマゾネスの血でも混じってるのかしら?」

 

「いえ、ぼ……ただのヒューマンですから」

 

 二人が柔らかい。ティオネさんに関してはその豊満なふくらみが腕に当たってる。

 

 匂いとかいうけど、二人の方が良い匂いする。

 

 どこか、甘酸っぱいような、香水というにはどうも生っぽい

 

 

「ちょっと二人とも、リンが困ってるから」

 

 

「ええ、だって可愛いし、良い匂いだもんほら、アイズも近づいてみたら」

 

 

「!!」

 

 

「そうね、ほら、席変わりましょ。ロキも隣に座ってみたら」

 

 

 二人が立つ。入れ替わるように、ロキとアイズがベルの両横に座る。

 

 座るや、ロキがベルの体に抱き着く。詰め物もない、AAサイズのブラとシャツだけの平坦な胸、バレるかと思ったけど、そこに関してはロキさまと変わらないから、頭の中で納得がいってしまった。

 

「なんや、自分内と同じかいな。わかるわかるで、でもなんやろな、この色気溢れる出で立ち、うちにはないものを感じるで」

 

ロキの手が小脇や太ももに触れる。服越しだけど、その先は

 

 

「や、止め……そこは」

 

「ロキ、困ってる」

 

「い、いたたたたっ、わかったから、耳が取れる!!」

 

 アイズが抱き着き、無理やりロキをベルの体から離す。半ば抱き寄せ、庇うように、そうなればすなわち

 

 

「!!!」

 

「ごめん、痛かった?」

 

 

 痛い、痛いかと聞かれれば、それは肯定だ。

 

 背中に感じるふくらみの感触、そしていつも遠目に感じていた異性の匂い、アイズさんの存在を嫌でも強く感じてしまう。

 

 

「あ、あの、胸が」

 

「……?」

 

 不思議そうに、首をかしげる。

 

「気にしてない、女どおしだから、大丈夫だよ」

 

 そう言い、アイズさんは僕を一層抱きしめる。

 

 脇からお腹に腕を回され、うなじのあたりに息が触れる。

 

「君、良い匂いだね……なんだか、知ってる人に似てる。」

 

「…あの、そんな……ふぁっ!?」

 

 首元に顔をうずめて、アイズはベルの肌に舌を当てた。

 

 匂いを嗅ぎ、そして抱きしめる腕に一層力が入る。

 

「あ、あいずしゃん」

 

「あらら、なんだか新しいぬいぐるみでも貰ったみたいね」

 

 茶化すように、ティオネさん達はそんなどこかずれた言葉を言い合っている。

 

 おかしい、アイズさんの様子が、今まであってきた彼女の様子とは、どこか違う。

 

 

…体温、上がってる。興奮、している?

 

 

「……ごめん」

 

「!」

 

 急に、また拘束が外れる。体を預けてたから、そのまま横に倒れそうになる。

 

 

「なんや、お手洗いかいな」

 

「……」

 

 何も言わず、そそくさとアイズさんは行ってしまった。

 

「…ちょっと、わたしもスッキリさせてもらうわ」

 

「そうだね、ちょっと我慢できそうにないや」

 

 立て続けに、ティオネさん達もその場をあとにした。 

 

「?」

 

「ま、気にせんでええよ。せっかく二人きりやし、ちょっとお話でもせえへん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ベル・クラネルちゃん 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

 




今回はここまで
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