※この作品はR-18です。

白いウサギはふたなりの餌食   作:37級犬築士

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ふたなりは人を選ぶ、ただ分かる人にはすごく共感される。だからこの作品はそれでいい


(3) 

「ごめんね、ちょっと長引いちゃって。いっぱい出してスッキリしたよ」

 

「こら、そんなこと言わない。はしたないでしょ」

 

「……」

 

 三人が席に戻る。僕の隣にアイズさんが戻り、向かいに二人も座った。

 

 けど、いまはそんなことより

 

 

「……ッ」

 

「ん、どうしたんや……リン、ちゃん」

 

 笑った顔で、何事もないように振舞っている。

 

 けど、確かにこの人は

 

 

 

…ベル・クラネルちゃん

 

 

 

 

「……なんでも、ないです」

 

 

 知っていた。この人は僕が僕であることを、けど知ってどうしたいのか、そこからが謎だ。

 

 机では、先ほどのようにたわいもない話と、甘い菓子に手を伸ばすだけの時間が流れている。

 

 隣で、あっけらかんとしているこの人は、いつ何を言うのか、まったくさだかではない。僕はそんな危機感で落ち着きようがなくなっている。

 

 

…どうして、この人は

 

 

「……で、最近のアレ……まあしばらくはな、なおらんみたいやし」

 

「ほんと、困るわよね。ま、でも嫌いじゃないし」

 

「ねえ、処理しないと困るけど、あたしも嫌いじゃないね

 

 

「……リンさん」

 

 

「……はい、でもリンでいいです。さんは、なくても」

 

 

 たわいもない話、というには内輪ネタなのかよくわからない。ついて行けてない僕に気を使ってか、アイズさんが僕に話を振る。

 

「リンは、観光客?だよね」

 

 うなずく、言葉にすれば、横でいる神様が何を言うかわからない。

 

「そっか、でもタイミング悪いね。今、ちょっと困ったこと起きてるから、オラリオに」

 

「?」

 

 オラリオに、困ったこと、しかしそんなことに聞き覚えはない。

 

 

「ま、リンには関係ないわよ。それより、もう日が暮れそうだけど、泊まるあてはあるのかしら」

 

「…泊まる、私が」

 

「ええ、そうよ。だって観光なんでしょ。まさか日帰り?」

 

「い、いえ、帰る場所はあります。」

 

「じゃあ、どこか宿でも借りたの?」

 

「え、ええまあ「嘘やね」 !!」

 

 見抜かれた。神々の前で子供たちは嘘をつけない。どこかあざける調子で、ロキさまはさらに言葉を続ける。

 

「嘘つかんでもええよ、もしかして、泊まる場所が無くて困ってる、違うん?」

 

「……そんなこと」

 

「ない、わけないやろ。嘘、わかるで」

 

 

 飄々として、しかしベルにはどこか圧力じみたものを感じてしまう。手に汗が湧き、視線は置き所が無くちらちらと落ち着かない。

 

「えっと、親友の家に」

 

「もう、また嘘ついてる。気を使わんでもええのに」

 

「そうよ、あなた困ってそうだもの。お客の一人ぐらい、うちでは問題なしよ」

 

「!」

 

 段々と、左隣の神様の狙いがわかってきた。

 

 どういう腹積もりなのか、この人は、僕を

 

 

「そうそう、ご飯もあるし、寄ってきなって。ここで会ったのも何かの縁だし」

 

 

「リン、私の部屋なら、好きに使っていいよ」

 

 

 あれよあれよと、逃げ道が無くなってしまっている。

 

 肩に触れられ、手を掴まれ、僕は苦しい表情を面に出すまいと、ぎこちない作り笑いで謙遜するしかない。

 

 

…ぼく、どうすればいいんだろ。

 

 

 道化の神に背中を縮めながら、気が付けばベルは席を立ち幽霊じみた足取りで道を向かう。  

 

 その先は知っている。僕はこのまま、黄昏の館へと連れていかれる。

 

 

 拒否権はない、逃げることは、もう叶わないのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

〇

 

 

 

 

 

 

「どうしよう」

 

 館について、そこから先のことはあまり覚えていない。客人として招かれ、いろんな人にちやほやされたり絡まれたり。大食堂で食べた料理の味もろくに覚えていない。

 

 

…逃げないと、でも

 

 

「ロキさま、いったいなにを」

 

「いや、別に何もせえへんよ」

 

 突然の声、振り向けばそこにはぬっとロキさまの顔があった。というか近すぎる。

 

「!!」

 

「まあまあ、落ち着いて。リンちゃんはほんま弄りがいがあるなぁ、あの紐神にはもったいないで」

 

 ここはアイズさんの部屋、何やら遊ぶものを持ってくるからと、三人が部屋を後にして、僕はベッドに腰掛けていたのだが、そのベッドからぬるりとこの神は現れた。

いつから、というかどうやって隠れていたのだろうか。

 

「…あ、先言っとくけど。別にうちはこれを世間に広めるつもりもないし、ただまあ、あんたとはちょっと仲良くなりたいだけやから。」

 

「…はぁ」

 

 信じられない。というか何を考えているか本当にわからない。道化の神、その意味合いをこんな形で知るとはまず思いはしなかった。

 

 身が硬くなる。わけもわからず連れこまれ、このまま自分がどうなるか、怖くなる。

 

 

「あらら、随分と警戒しとるね。」

 

「誰のせいですか、ぼくは、もう帰りたいです」

 

「それは困るな、今帰られたら、うちショックで口が軽くなるやもしれんな」

 

「!……そんな」

 

「ま、別にひどいこともせえへんから。というか、うちはもう席を外すし……あとは三人と仲良くしてやって欲しい、うちから言えるのはそれだけや」

 

 ベッドの反発を利用し、ロキさまは足取り軽く部屋を後にする。

 

 入れ替わりで、席を外した三人も部屋に戻って来た。

 

「あれ、ロキはどうするの?」

 

「ま、あとは皆さんでお好きなように、うちは部屋に戻るわ」

 

 首をかしげる一向、しかし特に気にすることなく部屋は閉じられた。バタンと、やけに耳煩く響いた気がした。

 

 逃げ場はない、そう言われた気さえした。

 

 

「リン、どうしたの?」

 

 

「…なんでも、ないです」

 

 

 声が震えた。もういっそ、全部打ち明けて頭を下げてしまえばいいかもしれない、そんな破滅的な選択すら肯定しそうになる。

 

 女の姿になっているせいか、心の熱が異様に冷めている。少しの音で体が震え、本当に華奢で弱弱しい人間に変わってしまったみたいな。

 

「……ねえ、リンは着替えないの」

 

「そういえばそうだね、荷物とか持ってないの?」

 

「えっと、そういうのは預けていて……だから、宿は一応」

 

「え、泊まるところが無いわけじゃないの?」

 

「えっと、それはロキさまが」

 

「そうよ、ごめんなさいねうちの神がいい加減で。でも、せっかく会った仲なんだし、ちょっと遊んで行かないかしら。」

 

「服なら、私の貸してあげるよ。」

 

 ティオネさんはボードゲームとカードを両手に、アイズさんはどこからか取り出した寝間着を持って

 

 ロキさまに関してはなんとも言えないけど、ここの三人は本当に他意はないみたいだ。

 

 

…うん、信じていいのかな

 

 

「えっと、じゃあお借りします。どこか、脱衣所は」

 

「何言ってるの、ここで着替えればいいじゃん。女通しなんだから、リンは細かいね」

 

「!!」

 

 

 着替える、今ここで、そうティオナさんは言った。

 

 

「もう、そんなこと言ったら余計着替えづらいでしょ。」

 

「でも、私もティオネも気にしないでしょ」

 

「そうだけど、まあそうね」

 

「……てぃ、ティオネさん!」

 

 どうしよう、このままだとここで着替える羽目になる。

 

 思考を回転させる。バレずに着替えられて、なおかつ自然な理由を

 

「……お風呂、入ってきたら」

 

「!」

 

 突然の助け舟、それは今隣に座り足に手を置くアイズさんからだった。

 

 

…さっきから近い、それに、ちょっと熱っぽい気がする。

 

 

 しかし、それでも助け船だ。ベルはその意見に全力で乗っかる。

 

 

「あの、ついでにお風呂もお借りします。」

 

「え、じゃあ場所はわかる、アイズついて行ってあげたら」

 

「……うん」

 

 

 ひとまず、これで難は逃れた。かに見えた。

 

 

 ベルとアイズが席を立った後、二人は

 

 

 

「ねえ、リンのことだけど」

 

「うん、わかってる、美味しそうだよね。お昼も出したのに、また元気になっちゃった」

 

 どことは言わない。腰布をばたつかせ、何かを冷ますように空気を入れている。

 

「あんたも私も大変だものね。ね、これからだけど」

 

「うん、あたしたちも行こ。でも、その前に」

 

 

…するり

 

 

「ごめん、先にさ、口でしてくれない。お昼にしてあげたから、お願いだよ。」

 

「……もう、仕方ないわね」

 

 

 

 




続きはまだストックありますので、どんどん投稿していきます。
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