私の可愛い殿下様 ~魔王さまのイチャラブ、ムチムチ克服訓練~ 作:双子烏丸
魔界――そこは、何処にあるかさえ定かでない、闇より暗い暗黒世界。
悪魔、もしくは魔族と呼ばれる住民が好き勝手に暮らす、そんな混沌とした世界で、私は……
「――アリア、向こうの患者さんの治療、お願いね」
「はい、任せて下さい!」
いつもの、私のお仕事。
病院の待合室に顔を出すと、そこには傷だらけのたくさんの魔族が並んでいた。
「ああ、クソっ! 喧嘩でボロボロだぜ」
「なんだヨ。オレなんかほら、肩から腕がはずれているんだゼ」
「そりゃお前はゾンビだからな、またくっつければ済むじゃないか。ガーゴイルの岩の身体だと、砕けたらそうはいかないんだぞ」
「あーあ、待つのが長ーい! 早くしてよね!」
この魔界に暮らす住民……魔族。みんな、色々な姿をしているのよね。
ゴブリンとも呼ばれる猪人族に、ねとねとしたスライム状の粘泥族、腐りかけの屍族とフワフワで可愛い猫娘族、あとはドラゴン――邪竜族も欠かせないよね。見た目だけでも本当に賑やかな感じ。
それに耳が尖っている以外は『人間』に近い魔族だっているんだよ。その魔族も戦士だったり魔法使いだったりで色々とあるんだよ。
ちなみに私は夜魔族……エンプーサ、もしくはサキュバスとも言う種族なのよね。
自慢のルックスで男を誘惑するのが得意なんだけど、私はそれよりも、魔界病院でナースとして働いているのが楽しいのよね。
「ごめんなさい! 一人ずつ治療して行くから、順番に待っててね」
治療は一人ずつじゃないと、出来ないから。
私は回復魔法も使えるからこうして治療のお手伝いをしているけれど、使えるのは体力回復のヒールと状態異常回復の魔法、エスポワールくらいだもん。それにその威力だって応急処置くらいでしかなくて、ちゃんとした治療はお薬だとか使わないといけないから。
全体回復のメガヒールだとか使えれば、魔法の威力が髙ければ……もう少し楽なんだろうけど。
――でも、こうして人助けをするの、不思議と好きなんだ――
――――
「はぁーあ! もうすぐ今日の診察は終わりですね」
今は患者さんが減ったから、少し休憩
私は院長の女僧侶さんに声をかけた。
「今日もお手伝い有難うね。……普通、病院の手伝いをしてくれる魔族なんていないから、とても珍しいもの」
「あはは。たしかに私は、みんなの中でも少し変わっているかもだから」
自分でもおかしくて、つい笑ってしまう。
「私が言うのも何だけど、魔族なんてほとんど自分勝手で優しさなんてなくて、愛することだって知らないのに。
なのにアリアは治療だって喜んでしてくれるし、魔族にしては不思議な子ね」
院長さんの言う通り。魔族は気が荒くて、優しさや愛だとかは無縁なんだ。……けれど。
「確かにそうかもだけど私は、不思議と憧れているんだ。
それに愛だって、いつか」
私はおもむろに、手元に軽くヒールの魔法を出してみる。
手のひらにほわっと浮かぶ、緑色の淡い輝き。うん、とても綺麗。
「ふふっ、本当に魔族らしくないわね。でも……」
すると院長さんは、こんな話をする。
「最近この魔界も、少しは落ち着いて来たわね。
先代の魔王様がお亡くなりになって一時は荒れてたりもしていたけど、その後継ぎが即位してくれてようやく……ね」
魔王と言うのは、魔界を支配する王様みたいなものなんだ。
今は新しい魔王様が魔界を収めているみたいで、それに天界との交流も始めたみたいなの。
おかげで魔界も大人しくなって、魔族の中には私みたいに愛や優しさだって、分かってくれる人も増えているもん。たしか名前は――
「そうそう、いきなりで悪いけれど、私は少し用事があって出かけなくちゃいけないの。
悪いけれど少しの間病院をお願いね。多分、もう患者さんが来るのはほとんど無いと思うから」
今からどこかに出かけるみたいな院長さん。
一人で病院を任せられるの、ちょっと心配だけど少しの間だけなら。
「はい! 私に任せてください」
「ありがとうね。……それじゃあ、行ってくるわね」
院長さんは出かけて、病院には今私一人。
誰もいない待合室、私は受付で退屈そうに眺めていた。
――本当に誰もいないのね、何だか退屈――
自分の大きな胸を受付に乗せて、枕代わりにして寝そべる。
すると私は。
「……あっ」
少し身体が熱く火照るのを感じた。呼吸だって上気して……息が漏れる。
火照りも息も段々と熱くなって、それに身体だって疼いてどうしようもないくらい。
――ううっ、まただよ。……あんっ――
また息が漏れる。私はもう我慢出来なくなって、自分の手で身体を弄ぶ。
「はぁん……あんっ」
とても、とっても気持ちがいいの。
揉んでいる胸はとろけてしまいそうで、先っぽは固くぴんと張っているの。
それに下だって、気が付くとしっとり濡れているもん。股のあそこだって、触っている指だって。
「ふぁ……きもち、いいのっ。ああっ……きゃあん!」
気が付くと弄ぶ手の勢いはもっと大胆になって、声も大きくなる。
座っている椅子も、胸を乗せている机までぐっしょり濡れ出して。病院を汚して悪いと思ったけど気持ちいいんだもん。
――これ以上受付を汚すのは、駄目だよね――
私は股からこれ以上漏れないように指で強く押さえる。
「あっ、ちょっと……きついっ」
出ないように押さえて、でもまだ隙間から少し漏れ出そう。もっと強くしないと。
それに受付だって白濁した母乳でべちょべちょ。
私は身体の疼きを我慢しながら下も、机もふき取ってそれに、まだ乳が出ている自分の大きな胸、その両乳房を咥える。
「……はむっ、むうっ……はぁ」
口に広がる甘い味。私は自分で自分のおっぱいをちゅうちゅうと音を立てて飲んで、喉を潤していた。
でも自分でこうしていると猶更興奮する感じもしてしまうの。吸うたびに気持ち良くて、ゾクッとする。
――こんなのまるで変態だよね。でも、私は夜魔族だからどうしても――
夜魔族――エンプーサの私は、異性からの精気を吸収するのが生態なの。だからどうしても身体がそれを求めて、勝手にこうなっちゃうの。
鎮めるには、異性――男の人と交わって、精気を吸収しないとなの。
――けど、私は好きでもない人とそんなのするの、嫌だもん――
だけど私は好きな人と、それこそ本当に……愛する人としたいの。
こんなのも魔族とは程遠いかもだけど、それでも私はそうしたくて。
でも私は夜魔族。身体だって、こうなった時は男の人と交わらないと、だめなの。
けれど好きでもない人となんて。そんなのは嫌で、でもそうしないと収まらないから。だからこれまでも嫌々していたんだ。
――嫌だからずっと我慢していたけど……あっ、はぁん――
また強く身体が疼いて、のけ反って呼吸が荒くなる。
「はぁ……はぁ……っ」
――もう耐えられない、かも。私は――
そんな感じで私は一人で悶々としていると。
「殿下ーもうすぐ病院ですよー」
「そんなの見れば分かるだろ! さっさと連れて行け、全身が痛くてたまらんぞ!」
「もう! ラハールさん、無理をするからこんな事になるんです」
外から聞こえる、女の子二人とそして男の子の声。
――新しい患者さんだ。ちゃんとしないと――
私はまだ身体から沸く欲情を無理やり我慢して抑えて、身なりを整えて受付で待つ。
すると扉を開けて、入って来る患者さん達。
「すみませーん。ここの病院、開いてますかー?」
先にひょこっと顔を出したのは、赤いリボンを頭と胸につけて白くてひらひらした服を着た長い金髪の女の子。
優しそうでふわふわした雰囲気の子。魔界には不似合いで、もしかして天使かなって思ったけど、その背中には悪魔みたいな赤黒い羽が生えているの。本物の天使なら白い翼だよね。
でもやっぱり天使みたいだし……もしかして噂に聞く堕天使かな。
「ねぇフロンちゃん、もしかして空いてないの?」
そんな事を言うのは、黒いビキニ風の恰好をした、もう一人の女の子。
真っ赤なツインテールな髪の、勝気と野心できらきら輝く赤い瞳。こっちの子はさっきと違っていかにも悪魔って言う雰囲気。名前は……エトナさんって自分で言ってたよね。
病院に入って来たのはそのエトナさんと、さっきの天使っぽい女の子、フロンさんの二人。
「あのー、もしかして病院の人ですか?」
私と目があったフロンさんはそう声をかけて来た。
それにエトナさんも。
「何だ、人いたんだ。……ねぇ! さっさと教えなさいよ!」
二人に詰め寄られ、私は何とかこう答える。
「院長さんは留守ですけれど、病院は……空いてますよ」
するとエトナさんは私を睨んで、見下すような視線を向ける。
「ふーん、そうなんだ。誰が治療するかは知らないけど、ま、いいか。
……プリニーども! そう言うわけだから殿下をさっさと入れな!」
「はいッス!」
掛け声とともにたくさん入って来たのは、今度は丸っこいペンギンのぬいぐるみみたいな種族、プリニー達。
わらわらと集まって誰かを担いでいるみたいで、そのまま待合室のベンチに降ろして行った。
「エトナさまー、言われた通りお運びしましたッス」
「おう! ご苦労さーん。んじゃ、次はゲヘナの海に私のプリンを買って来なさい」
「……えっ!? それはないッスよ、エトナさま!」
「ここまで運んだら、ご褒美にイワシをくれるって約束だったじゃないッスか」
「……殿下がこんなになったのに相変わらずのエトナさまのワガママ、やってらんねーッス…………グハアアッ!」
プリニー達はみんな抗議していたけど、突然エトナさんはどこからか出した大槍を振りかぶって
――抗議したプリニーの一匹を吹き飛ばした。
病院の天井を粉砕して空に飛んで行ったプリニーは、キラリ星になった。
これに青ざめる私、それに残ったプリニー達。
「……で、次は誰が星になりたい?」
エトナさんの人睨み。これでみんな一黙りする。
「わ、分かったッス! それじゃ、俺たちはさっそく行って来ますッス!」
「先に逃げ……げふん、行くなんてズルイっスよ!」
プリニー達はあっと言う間にみんないなくなってしまった。そして……。
「それじゃ、ラハールさんの治療、お願いしますね」
さっきプリニーがベンチに寝かせていった、三人目……患者さんは。
「うう、何で我がこんな目に」
そこに寝ていたのは、ラハールさんと呼ばれた傷だらけの男の子。
鋭い目つきで、二本の触覚みたいな長いくせ毛が伸びる青い髪の子。赤いマフラーとズボンの恰好は本当に男の子っぽくて、正直、『殿下』って呼ばれる身分だなんて思えなかった。
でも、殿下……って言うことは、もしかして。
「んじゃ、殿下を病院に運んだことだし、城に帰ろっかフロンちゃん」
けれどそれよりも、そのいきなりな言葉に私は驚いてしまった。
「……えっ! この人、置いて行っちゃうのですか?」
「何か文句でもあんの?」
今度は私を鋭く睨むエトナさん。
「ひっ!」
ビクッとして私もつい涙目になってしまう。変なこと言ったら……何されるか分からないもん。
「……ごめんなさい、何でもないんです」
「そ! ならいいわ。
そうそう……天井の修理代は魔王城につけといて。殿下の小遣いから差し引いとくから」
そう言ってエトナさんはくるりと背を向けた。
「んじゃ、後はよろしく。
……殿下は治療が終わったら勝手に戻って来てよ。帰って来なかったら、魔王の座は私が頂いちゃいますから」
「今日はニジレンジャーの特番があるんですから、見逃せません!
と言うことで、私も先に戻ってますね、ラハールさん。早く元気になってくださいね」
エトナさんもフロンさん、二人ともラハールさんを残して行ってしまった。
――行っちゃった。……まさか本当に置いて行っちゃうなんて――
いきなりの事で、私も驚いたままだった。
怪我人を放って勝手に出て行くなんて酷いと思った。けれど、悪魔なら当たり前なのかな。
だって親兄弟も平気に裏切るくらいだもん。むしろこうして病院に連れて来ただけでも良い方かも。
だけどそれより。
「おのれぇ、薄情者どもめ……ガクッ」
さっきベンチに乗せられたラハールさん。
そうだ、ワタシは魔界病院のナースだもん。ナースはナースとしての、お仕事をしないと。
「あの、大丈夫ですか?」
私が声をかけると、彼は横目で私を見た。
「お前が、治療してくれるのか」
素っ気なく、彼は不愛想にそう言う。
「はい。院長さんは出かけていて私一人だけだけど、治療は出来ますから。
……頼りにならないナースで、ごめんね」
私はまだまだ見習いだもん。見ると傷は深そうだし、本当なら院長さんがいればいいんだけど。
そう弱気になっていると。
「何を謝るんだ。
悪魔なら弱った奴にトドメを刺すくらいの根性じゃなければな。……最も、このオレさまにはそんな物、通用しないけどな」
ボロボロになっても、ラハールさんは私に不敵な笑みを見せた。あんなになってもそう笑えるなんて。
「何だか励ましてもらったみたい。ありがとう、えっと……ラハールさんで、良いですよね」
名前はそれで合っているはず。
彼は少し顔色が悪くなった様子で、返事を返す。
「礼など言うな。…………気持ち悪くなるだろうが。
まぁいい。あいつらの話を聞いていただろ、オレさまはラハール、この魔界を支配する魔王様だ。
――そんなオレさまの治療をさせてやるんだ、光栄に思うがよいぞ」
ラハールさん、やっぱり魔王さまなんだ。まだ信じられないけど……それでも。
けど魔王さまでもそうじゃなくても、それ以上に今は私の患者さんだもん。だから私に出来ることは――
「はい。それでは早速、まずは診療室まで移動しないといけないですね。
ここは待合室ですし、治療するには……」
私はベンチで横になったままのラハールさんに近づく。
「一人では動けないみたいですから、私が手伝います。少し、抱き上げさせて頂きますね」
そう言って私が彼に触ろうとすると。
「……っ! 止めろっ」
ラハールさんは思いっきり拒絶するように、はね退けた。
「オレさまはお前のような胸や尻が大きくて、ムチムチしたのは苦手なんだ!
だからこれ以上その身体を近づけるな!」
どうやらラハールさん、私の身体が苦手みたい。でも夜魔族なんだもん、仕方ないよ。
「そう言ってもここではちゃんと治療が出来ないですよ。
だから……」
「それでもムチムチは駄目だ! もし触られるくらいなら、このままくたばった方がマシだ!」
私は困ってしまった。
だってあの傷じゃ動けないし、でもラハールさんはあんなだし。
――どうしたらいいんだろう。……そうだ!――
私はある考えが思い浮かんだ。
またラハールさんに、手を伸ばす。
「オレさまは無理だと言っただろ。これ以上近づくなら……」
「大丈夫ですよ、ラハールさん」
私の手の平から放たれる、ほわっとした淡い緑色の光が放たれる。
光はラハールさんのもとに届いて、その身体を包み込む。
「……これはちょっと身体が楽になった気がするぞ。痛みだって少しだけだが、和らいだ」
ラハールさんの言葉、私は嬉しくて微笑んでしまった。
「回復魔法のヒールです。私の魔法、そこまで威力はないけれど、応急処置くらいにはなると思って。
これで、診療室まで動けますか?」
少し驚いたようなラハールさんの顔。だけど、彼は不敵な笑みを浮かべると。
「ふっ、気が利くじゃないか。我の部下に欲しいくらいだ。
礼を言うぞ。さて……」
真っすぐな瞳で、ラハールさんは私を見つめる。
「オレさまも名乗ったんだ、お前の名前も聞かせろ。せめてもの礼だ、直々に覚えておいてやろう」
――!
私はドキッとした。
――何だろう、この感覚。胸が熱くてドキドキするって言うのかな。あの瞳で見られたら私――
「おい? 何を顔を赤くしている? オレさまが聞いているのだぞ、早く答えないか」
ラハールさんの言葉に私はハッとした。
そうだった、聞かれたのならちゃんと答えないと。
「私はアリア。ここの魔界病院の……ナースです」
「アリア、か。悪魔にしてはマシな名前じゃないか」
軽く微笑むラハールさん。私は何故かまたその顔に、見惚れていた。
「さて、おかげで動けそうだ。
診療室まで自分の足で行ってやるとも」
そう言ってラハールさんはベンチから起き、足を降ろして立ち上がろうとした。……けれど。
「――うぐっ!」
途端に、凄く痛そうな顔をして、またラハールさんはうずくまった。
やっぱりまだ傷が痛かったんだ。
――このまま放ってはいけない――
思わず私は駆け寄って抱き起そうとした。でも、うっかりラハールさんがムチムチが苦手だって忘れちゃってた。
豊満な私の身体で強く抱きしめてしまったラハールさん、彼は顔を青ざめて固まる。
「これは、この感覚はっ……!」
そう言ったのが最後、ラハールさんは白目を向いて、泡を吹いて倒れてしまった。
「ラハールさん! 大丈夫ですか、ラハールさんっ!」