魔法科第一高校が襲撃を受けた後のif物語
もし、秘匿情報が持ち出されていたら・・・
もし、壬生とエリカの戦闘に第三者が介入してエリカが負けていたら・・・
そして、もし、司一がテロリストのアジトにいなかったら・・・
これは、いくつものifが重なって生まれたもしかしたらの物語・・・
1話はif導入部のため、エロはありません。
魔法科高校の劣等生の世界観を楽しんで頂ければ幸いです。
入学編~<起>
紗耶香は目の前で行われていることをじっと見つめていた……
機密文献──
この国の魔法研究の最先端を収めた文献。
国が管理しているからこそ、その最先端技術は世の中のために使われている。
しかし、それがもし、私利私欲のため、混沌を生み出すものの手に渡ればどうなるだろうか……
壬生紗耶香は、
機密文献が組織の手に渡ることで、この世界で起きている差別の解消につながると信じている。
その思考は誰かに誘導されたものであったが、当の本人である紗耶香に自覚はできない。
目の前で行われていることが法に触れる行為であっても、壬生は同士──ブランシュメンバーが行っているハッキング作業の成功を祈っていた。
「……よし、コピーは完了だ」
作業を行っていたメンバーが記録用キューブに文献のコピーが完了したことを告げる。
その声と同時に轟音が鳴った。
音の発生源を辿れば、ドアが四方を切り抜かれて倒れている。
「……産業スパイと言ったところか」
扉があった先から声が聞こえた。
声の主は、銀色に輝く拳銃型のCADを構え、淡々とした口調でここでの行為を言及する。
しかし、それは独り言の類。
返答など端から期待せず、声の主はCADの引き金を引いた。
それに合わせて機密文献にアクセスしていたハッキング用のデバイスが砕け散る。
続いて、
時間にして一瞬の出来事。
その後の数秒、ブランシュメンバー全員は、常識外の光景に意識を凍り付かせていた。
紗耶香もそのうちの一人だったが、声の主を知る紗耶香は他のメンバーよりも立ち直りが早かった。
「司波くん……」
呟いた紗耶香の隣で、慌てて男が拳銃を構える。
紗耶香は隣の男の行為が理解できなかった。
差別撤廃を願う同士のはず……
なのにどうして人の命を奪う武器を突き付けているのだろうか。
争いしか生まない武器を平然と後輩に向ける同士に紗耶香は困惑していた。
制止の声を出すことが出来ない。
自分がこの男の仲間だという事実が、紗耶香の思考を低下させる。
私は学校の後輩、ブランシュの同士、どちらを優先すべきなのだろうと。
そんな逡巡の最中、隣の男は突如前かがみに倒れこみ、激痛の声を上げながら床を転げまわった。
「壬生先輩。これが現実です」
その後に続いた後輩の言葉に紗耶香の感情は爆発した。
達也と紗耶香の間でいくつもの問答が飛び交った。
そして、問答のたびに突き付けられる自分の過ち。
反論が出来なくなったあとの紗耶香の行動は逃走だった。
その紗耶香の動きに合わせて残りのブランシュのメンバーも同時に動く。
小さな発火音のあとに白い煙。
さらには魔法師にとって耳障りなノイズがあたりに充満し、魔法の発動を阻害させる。
達也は横をすり抜ける紗耶香を無視して、煙の中の男たちに向けて魔法を放った。
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紗耶香は自分の最高速で講堂の出口へと向かった。
今の紗耶香の思考は、この場から逃げることだけに支配されてる。
学外にある組織の中継地点への帰還。
そのことだけが、自分の思考にべったりとまとわりつく。
出口まであとわずか。
しかし、そのままの勢いで外へと出ることはできず、出口から一人の女子生徒が軽い足取りで講堂へと入ってきたことで、紗耶香の足は減速し、ついには止まった。
「せーんぱい、はじめまして。息を切らしてどうしたんですか?」
その女子生徒は朗らかな声でそう言った。
今、組織によって学校が襲撃されていることを微塵も気にかけていない、
声にはそんな軽々しさも含んでいる。
「……誰」
警戒心をむき出しにして紗耶香は目の前の女子生徒に問う。
「1年E組の千葉エリカです。先輩と同じウィード。剣が取り柄だけのか弱い女子生徒ですよ」
紗耶香は彼女の自己紹介に嫌悪した。
「そう。悪いけど千葉さん。そこをどいてくれるかしら?」
別にどかなくても横を通り過ぎればいいだけの話。
なのに、そんな言葉が紗耶香の口をついたのは、彼女の隙のない佇まいから。
彼女を前にして、事を起こさずに通り抜けることはできないと踏んだからだ。
「急いでいるの。あなたとここでお喋りするつもりはないわ」
紗耶香は姿勢を少し前かがみにして、直ぐにでも駆けだせるように重心を前に置いた。
「えー、それは残念。私、壬生先輩のこと尊敬してたんですよ。」
目の前の女子生徒は私のことを知っている?
この学校では、ウィードの学生など
「できれば、ゆっくりお喋りしたいなと思っていたんですが―」
ゆったりと喋る彼女の口調に苛立ちが募る。
背後からいつ達也が追ってくるとも限らない。
同士たちが達也相手にどの程度やれるのか、それとも達也を倒して背後から来るのは同士たちか…
どちらにせよ、ここで時間はかけられない。
彼女の続く言葉を無視して、紗耶香は思い切り地面を蹴った。
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保健室では、エリカの治療が行われていた。
治療の場には第一高校の校医のほか、エリカの同級生である達也。
それに生徒首脳陣の真由美、摩利、克人がいた。
襲撃のほうは全て鎮圧されたが、問題は山積みだった。
この事件について、学校側が把握していることはあまりにも少ない。
外部からの襲撃者は剣道部の部員が手引きしたという事実が明るみになったが、
その首謀者とみられる
エリカの治療に首脳陣が付き添っているのは、壬生と最後に相対したのがエリカだったからだ。
達也が駆け付けたときには、エリカ一人、地に伏している状態だった。
エリカの技量があれば、壬生に後れを取ることはないと踏んでいた達也はその事実に困惑した。
そして、同時にエリカがいるから大丈夫だろうと壬生を逃がした己の過ちを自覚する。
「千葉さん、治療中のところ悪いけど何があったか話してくれる?」
声を発したのは真由美だ。
剣道部の中心メンバーだった壬生がいなくなったことから、最後に相対したエリカから少しでも情報を聞き出そうという意図があってのこと。
「多分、先輩たちが期待しているような情報は話せません…」
「私が言えるのは、壬生先輩との勝負の最中に眼鏡をかけた男子生徒が現れたことぐらいです」
「多分、アンティナイトを使われたんだと思います」
「体の自由が利かなくなって、壬生先輩からの太刀を受けた後のことはもう…」
首脳陣には眼鏡をかけた男子生徒に思い当たる節があったのだろう。
エリカの話を聞いた後、真由美と摩利は顔を見合わせ、克人は考えをまとめるように目を伏せた。
「しかし、これで振り出しに戻ったな…」
摩利の言葉には悲壮感が漂っている。
これだけの事件が起きていながら、手がかりは少ない。
鎮圧した襲撃者から話を聞けば、核心に迫ること情報が聞き出せるかもしれないが、襲撃者は警察に引き渡すために、今は先生方が拘束しており、すでに話を聞くことはできない。
ここから先は、大人たちにまかせるべきなのだろうが、首脳陣はそれではいけないと考えている。
「多分、事件の背後組織はブランシュという反魔法組織でしょう」
達也から声が上がった。
声色は普段通り落ち着ているため、推測なのか確信なのか摩利達にはわからないが、ここにいる全員、ブランシュという組織名については聞いたことがあった。
「それは確かなの?」
真由美から上がる疑問はもっともだ。
「先輩たちは…剣道部員がブランシュの下部組織、エガリテのメンバーであることは知っていましたか?」
達也から逆に問いかけられる。
真由美や摩利は部活連にまで手が回らない。この場で知っているとしたら克人だろう。
「やはり、そうなのか…」
一人考え込んでいた克人は、目を開き、正面から達也を見据える。
克人もブランシュという考えが推測としてあったのだろう。
続く達也の言葉はブランシュであることの確証であった。
「それで、やつらをどうするか…という話ですが…」
達也からは剣呑な雰囲気が漂っている。
真由美も摩利も、達也と出会って間もない。
それでも、彼がこの件に関して、積極的にどうにかしようとしている態度が信じられなかった。
彼はどちらかといえば、厄介ごとを招くことはあっても、自分で厄介ごとに飛び込む性格でないと摩利も真由美も思っている。
「このまま、警察に任せるのであれば、確実にやつらを取り逃がすでしょう」
「警察が無能というわけではないですが、これから調査を始めるには時間がかかる」
達也の言い分はもっともだ。
しかし、それは自分たちであっても同じことではと真由美は考えたが、達也の口ぶりから何か手掛かりがあると推測するのは容易だ。
「ブランシュについて、以前からある人に調査をお願いしていました。やつらのアジトは、その人が知っているでしょう」
達也が視線を保健室の扉に向けたと同時、扉の前に気配が生じた。
「小野先生?」
真由美の声に、遥は曖昧な笑みを浮かべた。
臨時カウンセラーである彼女がここにいる理由を達也以外、検討がつかない。
「小野先生、それで奴らの居場所はわかりましたか?」
達也の問いかけに真由美か摩利かそれとも両方からか、困惑の声が上がった。
「司波君は、やつらの居場所を知ってどうするつもりなの?」
遥の問いかけは真由美や摩利も気になっていたこと。
それに続く達也の答えは簡潔だった。
「叩き潰すつもりです」
それが当たり前だと言わんばかりに彼の口調はいつも通り。
「一人でいくつもりか?」
克人の低い声による問いかけは、聞く者の耳によっては非難しているとも感じられる。
「ええ、学校側の力を借りようとは思っていません。自分の生活範囲に危険分子がいて、
相手はテロ組織。本来、一介の高校生が決して立ち向かう相手ではない。
ましてや、ウィードである達也に何ができるのであろうと、この場に彼と同学年の1科生がいたら、一笑に付していたことだろう。
「あたしも行くわ」
声の主は、ベッドから無理矢理立ち上がろうとしているエリカからだった。
魔法で治癒したとはいえ、数日は安静が必要な身体だ。
それでも、責任を感じているエリカの意思は固い。
「いや、わたしが行こう」
摩利からエリカの代わりにという意味で声が上がる。
エリカは摩利に掴みかかろうとしたが、話を端で聞いていた校医がエリカの傷口を抑えて無理矢理にベッドへと押し戻し、エリカは苦虫を嚙み潰したよう顔をした。
「渡辺は校内に残れ。ここは俺が行く」
「十氏族に名を連ねる者として、それにこの学校の代表者として、この事態の責任は俺にもある」
「じゃあ…」
「七草。お前も渡辺と一緒に学校に残れ。この状況で生徒会長が不在となるのはまずい」
「俺一人で…」
達也から<一人で十分>という言葉が出かかったが、最後まで言い切る前に克人が睨みを聞かせて黙らせた。
克人が行くことは決定事項なのだろうと達也は説得を諦め、克人から遥へと向き直る。
「では、小野先生、敵のアジトを教えてください」
次話からエロ回です。