※この作品はR-18です。

魔法科高校生達のもしもの話   作:kamisato

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魔法科高校の劣等生6~7巻、
全国高校生魔法学論文コンペティション前後で起きたかもしれないのif物語

もし、摩利が呂剛虎の脅威を甘く見ていたとしたら…
もし、関本との面会に摩利が一人で様子を見に行っていたとしたら・・・
もし、鑑別内で摩利が呂剛虎と一人で戦っていたとしたら・・・
そして、もし、摩利が大亜連合軍の捕虜になっていたとしたら・・・
これは、いくつものifが重なって生まれたもしかしたらの物語・・・



◆横浜騒乱編~渡辺摩利の贖罪
横浜騒乱編~<襲撃①>


魔法大学付属立川病院。

ここに、魔法科第一高校の生徒が入院していた。

その生徒の名前は平河 千秋(ひらかわ ちあき)。

大亜連合軍に与(・)す(・)る(・)者(・)の現地協力者である彼女は、ある任務に失敗し、その時に負った傷の治療という名目で、この病院の一室に軟禁されていた。

当然、彼女への面会は許可が必要で、正(・)当(・)な(・)手(・)続(・)き(・)を踏んで彼女の元に訪れる者は、第一高校の関係者が大半だ。

 

「その…すまない…シュウ、忙しいのにこんなことに付き合わせてしまって…」

 

「なに、僕が摩利と一緒に居たかったんだ…摩利は何も気にしなくて良いよ」

 

立川病院のロビーで会話する一組の男女。

男性のほうは、他の来院者と同じく私服という出で立ちだが、女性のほうは、第一高校の制服を身に纏っている。

男性の名は千葉 修次(ちば なおつぐ)、女性の名は渡辺 摩利(わたなべ まり)。

修次のセリフに顔を赤らめている摩利の姿は、二人が恋人同士だと認識させるには十分だろう。

 

摩利の目的は、この病院に入院している平河 千秋(ひらかわ ちあき)の訊問。

第一高校で起きた騒ぎの詳細、背後関係についてを千秋から聞くため、正(・)当(・)な(・)手(・)続(・)き(・)を踏んで、この病院に訪れていた。

修次は摩利の付き添いだ。

 

「だが、明日は早朝から出航なのだろう? 準備もあるのに…」

 

「そうだけど、一日目は航行訓練で、僕たち剣術科は、二日目からの海外研修がメインだからね…一日目は欠伸してても問題はないよ」

 

「…まったく、エリカには聞かせられないセリフだな」

 

「ああ、そうだね――」

 

摩利は修次の言葉に呆れて返し、修次は冗談だと言うように、弛緩した笑みで言葉を返す。

しかし、その後の会話が続くことは無かった。

 

突然鳴り響いた非常ベル。

ベルの音を聞き、二人の顔が同時に強張る。

 

「シュウ!?」

 

「火事じゃない。これは暴対警報だ」

 

暴対警報とは、暴力行為対策警報の略。

暴力行為、犯罪行為に第三者が巻き込まれない為の警報であると同時に、治安回復のための協力者を募るための合図であり、行為の発生源が各箇所に設置されているメッセージパネルに表示される仕組みだ。

 

「場所は四階だ」

 

「四階!?」

 

摩利の驚きの声に、修次は最悪な事態を想定した。

今日この病院に来た目的は、摩利の後輩のお見舞いだ。

部屋の階は聞いていないが、摩利の驚きからしてそうなのだろう。

その後輩が誰かの指示で動いていたとなれば、考えられるのは口封じだ。

 

「摩利はここで待て!」

 

「シュウ!?」

 

納得の出来ない顔をした摩利を無視して、修次は自己加速魔法を発動する。

次の瞬間、摩利の目の前から修次が消え、修次は目にも留まない速さで四階に向けて駆けだした。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

病院の廊下にけたたましい金属音が鳴り響いた。

二人の男がぶつかり合い、そして距離を取る。

 

片方の男―― 千葉 修次(ちば なおつぐ)は、目の前で危険な気配を漂わせている男に向かって魔法を放った。

加重系魔法『圧斬(へしき)り』。

細い棒や、針金に沿って極細の斥力場を作り出して接触したものを切断する魔法。

男との距離は修次(なおつぐ)が持つ小太刀の間合いの外だ。

しかし、修次が小太刀を持つ右手を振り下ろした瞬間、短い刃の延長線上に斥力場が生まれ、男の頭上に斥力の刃が襲い掛かった。

 

今度は「ガンッ」と鈍い音が、刃と男の腕から鳴った。

修次と相対する男は徒手空拳だが、破れた袖からは金属製の籠手(こて)を身に着けていることがわかる。

 

修次は、これまでの攻防で目の前の男との力量差を感じ取っていた。

人食い虎―呂剛虎(リュウカンフウ)

対人近接戦闘において十指に入ると称される大亜連合(だいあれんごう)の白兵戦魔法師。

 

修次も近接魔法戦技の権威として知られる千葉家の人間。

彼もまた、三メートル以内の間合いなら世界でも十指に入る達人と称される白兵戦魔法師だ。

 

歳が近いこともあり、修次と呂、どちらが強いか話題に上ることも多く、彼らはお互いのことを知っていた。

 

噂に違わぬ怪物。それが修次が抱いた呂の印象。

徒手空拳のため、相手の間合いは約1m。

数回の攻防の結果、相手の間合いで闘っては勝機がないと判断した。

 

今度は、腰元まで振り下ろされた小太刀を素早く斜めに切り上げる。

圧斬(へしき)りを警戒した呂は、小太刀の軌道上に右手を叩きつけるが、その右手は何の抵抗も受けずに空を切った。斥力の刃は兆候のみでキャンセルされており、見えない刃に幻惑された呂の体は死に体になっている。

修次は、その隙を見逃さず、すかさず小太刀を斜めに切り下ろすと、呂の肩に見えない刃が深々と刺さった。

致命傷ではないが、有効打としては十分。

呂は肩口を抑えて苦痛で表情が歪んでいた。

 

修次の目的は、致命傷を与えることではなく、時間稼ぎをすること。

しばらくすれば、正規の機動隊員が到着することだろう。

 

何故、日本の病院に大亜連合の戦闘魔法師が現れたのか、摩利の後輩はそれほどの者に狙われるほどの機密情報を持っているのか、この戦闘の間にいくつもの疑問が浮かび上がった結果、呂を捕らえることを目的として、階段への逃げ道を塞ぎつつ、呂の間合いに入らないように闘っていた。

 

戦闘が開始されてから約5分。

そろそろ、機動隊員が到着する頃だろう。

修次の背後から複数の人の駆ける音が聞こえてくる。

 

「シュウ!!」

 

「な!?摩利!?」

 

そして、足音と共に背後から聞こえたのは、恋人の声。

修次の視線は呂に固定されたままだったが、突然聞こえた恋人の声に動揺してしまった。

 

呂はその隙を見逃さない。

自己加速魔法をかけたのか、呂が猛スピードで突進してくる。

修次は咄嗟に防御の姿勢を取るが、衝撃が来ることはなかった。

呂は修次の目の前で直角に折れ曲がると、スピードを緩めることなく、修次の横をすり抜ける。

 

修次が動揺していなければ、その突進がフェイントであることは見抜けただろう。

しかし、後悔している暇はなかった。

 

修次はすぐさま身を翻す。

呂の進行先には、機動服に身を包んだ男数人と、第一高校の制服を身に纏った女子生徒がいる。

 

「摩利!!」

 

「危ない!!」

 

一人の機動員が、摩利を大きく突き飛ばした。

入れ替わるようにして、摩利の居た場所に機動隊員が壁を作る。

しかし、呂の巨体が機動隊員にぶつかった途端、機動隊員のほうは勢いよく壁に衝突した。

 

呂のスピードはそれでも緩むことなく、徐々に背中が小さくなる。

そして、廊下の端、階段のある場所で折り曲ったことで、呂の姿は完全に掻き消えた。

 

「追え!!」

 

機動隊員の一人が叫ぶ。

そして、叩き付けられた隊員を含む全隊員が、呂の後を追って階段の先へと消えてった。

 

「摩利!!大丈夫か!?」

 

修次は呂を追わずに恋人の元に駆け寄った。

 

「ああ、大丈夫だ…すまない、シュウ、私が声を上げたばかりに…」

 

「気にするな…それよりも…摩利に何も無くてよかった…」

 

「私よりもシュウは大丈夫――って肩から血が!?」

 

「ん?…ああ、大したことはないよ、少し擦りむいただけさ」

 

「本当か…」

 

「ああ、これくらいなら回復魔法ですぐ治るよ」

 

「そうか、よかった………」

 

「摩利、それよりも、さっきの男が誰だか分かったかい?」

 

「いや、一瞬だったからな…顔もあまりよく見えなかった…」

 

「そうか…奴は、大亜連合(だいあれんごう)の戦闘魔法師、呂剛虎(リュウカンフウ)だ」

 

「な!?あれが!?何故、どうしてここに……」

 

「これは推測だけど、摩利の後輩を狙ったんだと思う。背後にいるのは大亜連合軍かもしれない」

 

「まさか…」

 

「摩利、君はもうその後輩と関わらないでくれ、君が心配なんだ…」

 

「シュウの心配はわかる…けど、学校の先輩として、後輩が巻き込まれているのであれば、無視することはできない」

 

「摩利、呂剛虎は危険だ…絶対に戦おうとはするな…約束してくれ…」

 

「シュウ………」

 

「そうか…なら、しばらくの間、決して一人にならないでくれ…呂剛虎は狂暴な魔法師だ…『人喰い虎』の異名は伊達じゃない」

 

「大袈裟じゃないか…私でも何とか―――あっ」

 

修次が摩利を引き寄せる。

突然の行動に摩利は顔を赤らめたが、この行動の意味を察して、摩利は修次の胸に顔を埋めた。

 

「摩利、僕は君が心配なんだ…頼む…約束してくれ」

 

「…ああ…わかった…約束する」

 

その言葉を聞いて、修次の不安が和らいだ。

摩利は未だ修次の胸に顔を埋めたままの為、その表(・)情(・)は(・)見(・)て(・)取(・)れ(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)が、これ以上の念を押す必要ないだろう。

 

「今日は摩利と離れたくない…」

 

「…シュウ…けど、明日からの訓練が…」

 

「…明日の訓練には参加しない。相手が相手だったからね、この傷を理由に公傷休暇を取るよ」

 

「でも………」

 

「僕と一緒にいるのは嫌かい?」

 

「そんなことはない!…一緒にいられるのは嬉しい…けど…」

 

摩利は一緒にいるだけで済まないことを理解しているのだろう。

修次と一緒にいれて嬉しいが、任務を休む修次とい(・)か(・)が(・)わ(・)し(・)い(・)行(・)為(・)に及ぶのが後ろめたいのだ。

 

「大丈夫、傷ついた兵士を慰(・)め(・)る(・)行(・)為(・)に、後ろめたさなど何もないよ」

 

「なっ!?――シュウ!!」

 

顔を真っ赤にして怒鳴る摩利。

先ほどの真剣な雰囲気が嘘だったと思えるほどの色惚け具合。

修次は、その年下の恋人を手玉にとることで悦に浸った。

しかし、呂剛虎(リュウカンフウ)との戦闘で負った傷が疼いたことで、修次はこの先の未来に一抹の不安を感じるのだった。

 

 

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