摩利のいる病室は、静寂と暗闇に包まれていた。
真由美が帰ってからどのぐらいの時間が経っただろうか。
窓の外を眺めていただけの摩利に時間の感覚はなく、ぼやけた視界で時計を見れば、日付はすでに変わっていた。
泣き疲れて、心身ともに限界のはずなのだが、眠気は一向に訪れない。
目頭は熱いまま冷めることなく、鼻の奥に詰まった違和感が摩利の現在の状態だった。
この状態に陥った原因。
それは、昨日の午前に
『摩利さん……今から言うことは信じられないと思いますが、冷静にお聞きください……』
『……?』
悲痛な面持ちで、響子の口から告げられた内容。
それは摩利の恋人――
修次は、大亜連合の戦闘魔法師、
突如として聞かされた恋人の死に、摩利は当然戸惑うも、響子の目は冗談を言っている者の目ではなかった。
―― これは夢か?
―― そもそも、シュウは海外にいるはず……
―― なぜシュウが
―― なぜ? そもそもシュウが負けるなんてあり得ない……
―― そうだ……あり得ない……
―― シュウのほうが圧倒的に強かった……なのに……
シュウと
その光景がフラッシュバックしたため、シュウが負けることが想像できず、響子の言葉を信用できない。
そして、摩利は何度も何度も嘘であることを確かめた。
しかし、それでも響子は譲らない。
―― 嘘だ……
―― なんで……シュウが負け……
―― あたし……あたしのせい……なのか?
いくつもの疑問が浮かび、捕虜となった自分に思い至った途端、摩利の思考が停止した。
思考が再開して真っ先に浮かんだのは、未だ自分は夢の中で、目を醒ませば、またあの凌辱の日々に戻るのだろうという想い。
恋人の死という絶望に比べれば、凌辱の日々のほうがまだ耐えられる。それが摩利の出した答えだった。
『摩利さん……信じられないのは分かります……けど……』
響子は自分も結婚間近だった婚約者を2092年の沖縄防衛の戦いで失っていることを
婚約者は任官したばかりで、最初の配属先で戦死したこと。
婚約者の死を未だ引きづっていること。
そして、軍に入ったきっかけというのが婚約者の死であったこと。
最後のほうは、摩利を軍に勧誘するような話に移行していた。
摩利は彼女の言葉にどう返したか覚えていない。
響子はいつの間にか病室からいなくなっていて、摩利の視界は涙でずっと歪んでいた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
11月3日。時刻は朝の9時前。
摩利の病室には、看護師が回診に訪れており、体調を計測する機械を通して、摩利の状態を確認していた。
「渡辺さん、昨日はあまり眠れなかったみたいですね」
「はい……」
摩利の計測結果を見た看護婦の表情は険しかった。
看護婦が言うように摩利は昨日、一睡もできずに、気づけば朝を迎えていた。
「睡眠導入剤は処方していたのですが、あまり効き目はなかったようですね。寝付けないようなら安眠導入機を使いましょうか?」
看護婦が提案した安眠導入機というのは、特定の周波を脳に送り込むことで、入眠を促し、ノンレム睡眠の一番深い状態に入りやすくするための機械のこと。
摩利は今まで安眠導入機を使ったことは無かったが、朦朧とした意識の中、眠りにつけるのならばと看護婦の提案を受け入れた。
「不眠は心的外傷後ストレス障害を悪化させます。安眠導入機を使っても眠れないようならナースコールで呼んでください」
「はい……」
看護婦の指示に従い、安眠導入機を付けて間もなくして、摩利の意識に
徐々に白く塗りつぶされる世界。
その世界の中心で、恋人が微笑みを浮かべて立っていた。
ああ、そうか。これは全て夢なのか。
摩利が見ているのは、
呂剛虎を倒していた後の未来を摩利は恋人と一緒に鑑賞した。
エンドロールは、摩利が第一高校を卒業するシーン。
校門を抜ければ、シュウがあたしを待っていて、人目もはばからずキスをしていた。
そうだ……これが……あたしの……
そして、
摩利の目から一滴の雫が流れると……
摩利の意識は深い底へと沈んでいった……
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
薄汚れたビルの一室。
男たちの下卑た笑い声が部屋に響いた。
男たちがいるのは部屋の中央。
元は事務所だったため、ガラス張りのテーブルと、革張りのソファが二つ向かい合わせで置かれており、大陸系の男4人がテーブルの上でカードゲームに興じていた。
部屋に響いた笑い声は、ゲームが決着した為に生じたもの。
案の定、男の一人が盛大にカードを叩きつけると、苛立ちを隠さずソファを立った。
「《しゃぶれ!》」
男が叫ぶ。
その叫んだ先には、衣服は身に纏っていない一組の男女――
摩利は、両腕を後ろで拘束されており、ろくに身動きが出来ないためか憔悴の色が濃い。
逆に関本のほうは、手首に逃走防止のための枷が嵌められてるだけで、身体自体は拘束されておらず、男に媚びを売るほどの余裕があった。
(また……)
叫んだ男は、摩利の前に立って、ペニスを晒している。
摩利に男の言葉を翻訳することは出来ない。それでも、摩利がここに来て経験した数多の凌辱。それらの行為に照らし合わせることで男の発した言葉が『咥えろ』という意味だと察せられた。
摩利に拒否するという選択肢はなかった。
男は手にスタンガンを持っており、男の望んだ行為を取らなければ容赦なく電撃を浴びせられる。
「ぁう……ちゅぱっ……あむぅ……ちゅぱっ……」
ペニスを口に含むという行為。
初めは、悔し涙を流しす程に嫌悪する行為だったが、その後に受けた、
「ちゅぱっ……んぁっ……ちゅぱっ……ちゅぱっ……」
摩利の口淫によって、男のペニスが縦へと伸びる。
鼻腔を突き抜ける据えた匂い。さらには口に広がる強烈な苦み。
ペニスが皮を剥ぎ取った途端、それらの味や匂いが強烈に放たれ、摩利の表情が一瞬曇る。
「うぅっ……じゅるっ……んぅっ……じゅるっ……ちゅぱっ……」
「《もういい! 後ろを向け!》」
男が摩利を突き飛ばした。
言葉の分からない摩利にとって、男の突然の行動は恐怖以外の何物でもない。
咥えさせて終わり、ということはないだろう。
摩利は男の次の行為が挿入であることを祈った。
ここで摩利の取る行動が、男の意図したものでなければ、待ち受けるのは電撃による折檻だ。
摩利は膝立ちの状態で、男に対して背を向けると、ペニスを挿入しやすいように尻を上げる。
途端、臀部を中心に鋭い衝撃が摩利を襲った。
下半身が麻痺し、膝立ちの状態を維持できずに摩利の体が倒れ込む。
「あ゛ぁぁぁっっ!!」
「《倒れるな!》」
摩利の臀部を叩く音。
男による平手打ちが摩利の臀部を染め上げる。
「う゛ぅぅっっ……」
摩利は平手打ちを受けて、もう一度、尻を高く上げた。
摩利の身体は電撃への恐怖で強張っており、高く上げた臀部はプルプルと震えている。
(嫌だ……シュウ……助けて……)
いつ来るかも分からない電撃の恐怖。
摩利は心の中で恋人の名を発し、現実から逃避する以外、取れる行動が無い。
「《じっとしてろ!》」
度重なる男の怒声。
後ろ向きで尻を高くあげる姿勢は、男の表情が見えないため、摩利の恐怖を増幅させる。
この姿勢を維持するべきなのか……
それとも別の姿勢を取るべきなのか……
絶対の正解がない二択を前に、摩利は維持するほうを選び続けた。
維持した時間はほんの一瞬、しかし体感時間はその何十倍にも感じられた。
「んっ……!」
摩利の口から声が漏れた。
その声は、男の手によって臀部を強く掴まれたために発せられたもの。
電撃の恐怖で身を硬くしていた摩利にとって、臀部に走った快感が、甘い痺れとなって身体全体を巡った。
男の両手が摩利の臀部を左右に広げる。
普段は外気に晒されることのない穴が空気を吸い込み、今度はアヌスを基点に快感が巡った。
そして、ついに挿入の瞬間が訪れる。
挿入は一瞬の出来事で、男は何の躊躇いもなく、摩利に腰を打ち付けた。
「―― ひっ!? あっ!! あぁぁぁぁぁっ!!」
Gスポットを擦り上げられ、すぐさま子宮を揺さぶられる。
男が摩利の事を気にする様子はなかった。
ただ自分が精液を吐き出すためだけの行為。男は恐ろしいほどの速さで腰を打ち付け、性欲を満たすというより、鬱憤の捌け口として摩利の身体を凌辱する。
「《緩いぞ! 穴を締め付けろ!》」
「んっ、んっ、んっ、んっ――」
摩利は声を押し殺して、男の行為が終わるのを待った。
男の腰が叩き付ける度、肉を叩く音が辺りに響く。
乱暴に突き入れられるだけの行為。
それでも摩利は少なくない快楽を感じてしまう。
この快楽は、薬物を使われ、度重なる凌辱の果てに獲得した自己防衛手段。
秘所からはポタポタと愛液が落ちて、子宮を突き上げれる度に摩利のボルテージが上昇していく。
「《もっとだ! もっと穴を締め付けろ!》
男は抽送に合わせて、摩利の臀部を平手で打った。
パシッ乾いた音と同時に摩利の臀部に衝撃が走る。
パシッ!パシッ!パシッ!
言葉を使わない原始的な躾。
摩利は身体を強張らせながらも、男の性欲を満たすために必死に膣に力を入れた。
「んっ、う˝っ、う˝っ、う˝っ ――」
息も絶え絶えになって、摩利の口からくぐもった声が発せられる。
そして、身体はじっとりと汗をかき、これまで浴びてきた精液と混ざり合って、摩利の身体から異様な匂いが立ち込めた。
摩利の鼻はすでにおかしくなっているため、多少の匂いに対して思うことはないが、男にとってはそうではない。
腐臭によって顔を歪めた男は、すぐにでもこの行為を終わらせようと、摩利の首に力を込めた。
「お˝ぇぇっ!?」
男の両手が摩利の首を締め上げる。
突如、迫りくる死の恐怖。
身の危険を感じたことによって、摩利の身体が硬直する。
その結果、摩利の膣は今まで以上にぎゅっと締まり、男は狙い通りとでも言うような嗜虐的な笑みを浮かべた。
男は、摩利の締まった膣を使い、自分のペニスをしごいていく。
男にとって、摩利の美貌や、外見的特徴はすでに何の意味も為していない。
摩利はペニスをしごくためだけのただの道具で、ここにいる男たちにとって、凌辱の限りを尽くした摩利のことなど汚いオナホールでしかなく、その汚い道具を使うことは、男の本位によるものではなかった。
この男が摩利を犯す動機は、カードゲームで負けたことによるもの。
今の摩利とのSEXは、男たちからしたら罰ゲームでしかなく、射精をするためならどんなことでも平気でやる。
「お˝ぇ˝ぇ˝っ……ぐる˝……じぃ˝……も……や˝め˝…でぇ˝ ――」
摩利は膝立ちのまま、背を弓のように大きく逸らして、バックから激しく犯される。
悲痛な叫びは声にならず、普段の落ち着いた声からは想像もできないほどの汚い音が摩利の口から発せられた。
首絞めによるSEXは、男にとっては快感でも、摩利にとっては苦痛でしかない。
そして摩利が意識を手放す瞬間、男も遂に射精を感じ、腰を打ち付ける速度が急激に上がった。
「我要射精!《イクぞ》!」
「んお˝ぇっ……お˝ぇ˝っ……お˝ぇぇぇぇぇ˝!! ――」
男の切羽詰まった声が響き、摩利の視界が白く染まる。
荒々しいほどの抽送が止まり、男の両手がより一層、摩利の首を締め上げた。
射精は摩利の子宮に密着した状態で行われ、その瞬間、今までの苦痛が嘘だったかのように摩利はとてつもない多幸感に襲われた。
男のペニスから出た熱い粘液が、摩利の子宮に注がれる。
それと同時に摩利の秘所からとめどない量の水が滴った。
当然、その水は、腰を密着していた男にもかかって、射精の余韻を台無しにされた男が怒りの感情をあらわにした。
「《くそったれ!》」
「あ˝ぁぁ……あ˝ぁぁ……あ˝ぁぁぁぁっ!?」
男の怒声と共に《バチッ》と音が鳴った。
意識が朦朧としていた中、突如として浴びせられた衝撃に、摩利は一瞬にして目が醒める。
「あ˝ぁぁぁぁぁっっ!!」
その衝撃は一度では終わらなかった。
男はスタンガンを手に持ち、摩利の無防備な背中や臀部に向けて、何度も何度も押し付けた。
「《このクソアマ!!》」
「い˝や˝ぁぁぁぁぁっっ!! あ˝ぁぁぁぁぁっっ!!」
その責め苦は、仲間の男たちから静止の声がかかることでようやく止まった。
摩利は息も絶え絶えになり、自分の漏らした水の上に突っ伏して、悲惨なことになっている。
「《くそ!》」
摩利を犯していた男が別の部屋に消えていった。
他の男たちは、摩利を犯す気は毛頭なく、摩利の悲惨な姿を見て顔を顰めるだけだ。
そして、そのうちの一人が、摩利に向かってタオルを投げた。
行為が終わった後、摩利の身体がどんなに汚れていても水浴びが許されることは無い。
水浴びの代わりに許されるのは、ぼろぼろのタオルで体を拭くだけで、それも拘束されている摩利にとっては、自分で行うことが出来ず、摩利の身体を拭くのは、摩利と一緒に監禁されている
道具となった摩利の手入れは、ここに監禁されてからずっと関本の役目になっていた。
「《ふん……あとはお前の好きにしろ……》」
タオルを投げた男が今度は関本に向かって、小さな
この男の行動が何を意味しているか、摩利も関本も知っている。
摩利が男に犯されている間、空気と化していた関本だったが、平袋を受け取った途端の彼の変わりようは異様だった。
「摩利……」
関本が自分の名前を呼んだ。
第一高校に通う中で、一度も呼ばれたことのないファーストネーム。
関本が摩利を見る目は、先ほどの男と同じもの。
「やめ……ろ……」
関本が摩利の身体に歩み寄る。
抵抗の言葉も、制止の言葉も関本に通用しないことは分かっていた。
摩利に抵抗する力は残っていない。
思いもしなかった関本との関係。
同じ風紀員としての関わりだけで、同級生以上の関係になることなど無かったはずだ。
関本が平袋を破くと、中から現れたのはゴムできた薄膜だった。
シュウとの性交時に何度も見かけた避妊のための道具。
関本は取り出したゴムを自分のペニスに取り付けると、自分が恋人であるかのように摩利の身体を愛でるのだった。