※回想のみです。行為自体はありません。
襲撃事件で第一高校が受けた被害は大きく2つ。
機密文献の流出、生徒の行方不明だった。
行方不明になった生徒は二人。
ブランシュのリーダーである
同じく剣道部所属の
生徒が行方不明になったことにより、第一高校は世間から大きく非難を浴びた。
学校側は、マスコミの対応に追われ、捜索は全て警察に委ねられた。
しかし、一ヶ月経っても警察の捜索に進展はなかった。
警察は無能ではないが、一つの事件に割ける人員は少ない。
それに魔法師関連の事件となると対応できる人間はさらに限られる。
さらに捜索を困難にしている要因として、ブランシュは全国各地に拠点を持ち、下部組織を含めるとその拠点の数は膨大だった。
そのような理由から警察の捜索が行き詰っていた頃---
第一高校の生徒たちにより
警察には知る由もないが、第一高校では学校側の意思とは無関係に、生徒による捜索部隊が組織されていた。
捜索部隊には生徒会首脳陣および、司波達也と達也と仲の良いメンバー数人、さらに剣術部所属の
捜索はおもに十師族直系である七草真由美と十文字克人が家の力を利用して、情報を集め、
結果として、紗耶香がいたブランシュの拠点は壊滅し、そこで性処理として扱われていた紗耶香は無事に救出された。
保護された当時の紗耶香は見るも無残な状態だったが、保護されてから三ヵ月が経つ頃には日常生活が送れるまでに回復していた。
そして紗耶香の救出から三ヵ月が経っても依然として、
しかし、司甲についてはブランシュのリーダーである
「ちょっと聞いてるの!?桐原くん!!」
紗耶香が膨れた顔で桐原に声をかけた。
季節は、夏。
紗耶香と桐原は学内にあるカフェのテラスで時間を過ごしていた。
桐原の目の前に座る紗耶香は夏の装いにふさわしく、白のノースリーブワンピースという恰好だ。
今は夏休みの最中だが、剣道部と剣術部に所属する二人は、夏休み期間中も頻繁に学校に通っていた。
「聞いてたっての。九校戦の準備のほうだろ?紗耶香に心配されるまでもなく、俺の優勝は間違いなしさ」
間違いなしとはいささか誇張が過ぎるが、恋人である紗耶香の手前、桐原本人も恰好つけている自覚はあったし、紗耶香の話を言葉半分に聞いていた自覚もあった。
話半分に聞くことは今に限ったことではない。
紗耶香と話をしている最中、桐原はふとした瞬間にあの日の紗耶香を思い出してしまうのだ。
あの日…それは紗耶香を救出した日。
紗耶香はあの日、あるビルの地下室に閉じ込められていた。
最初に見つけたのは桐原だ。
紗耶香が閉じ込められていた部屋を開けたとき、最初に思ったのは『くさい』だった。
湿度が高く、カビくささとイカくささが混じった匂いを不快に感じ、鼻を押さえたのを覚えている。
そして目に飛び込んできたのは全裸で壁に貼り付けらていた女性だった。
手首と足首には枷が嵌めらており、女性は力なく前のめり垂れ下がっていた状態だった。
桐原はその女性を見て、近づいていいものか逡巡した。
頭は垂れ下がっており、顔は見えなかったが、この状況で女性を見れば、それが紗耶香であるという推測は経った。
床には無造作に卑猥な道具がいくつも落ちており、さらには拷問道具と思われる鞭や物騒な器具が落ちていた。
それらを余すことなく使われたのだろう。
卑猥な道具にはどれも液体や茶色い固形物が付着していた。
女性のほうには、体の至る所にミミズ跡があり、跡はどれも紫色に変色していた。
そして乳首の先端、そこには本来あるはずのない人工物がつけられており、桐原はここで行われていた行為がどういったものか想像して、遂には思考を停止した。
その時、桐原の後に続いていたのはエリカだった。
桐原が部屋に踏み込んだ後、桐原が立ち尽くす姿を見た彼女はその先を想像した。
そして、桐原と違って逡巡することなく、女性の元へと駆け寄った。
桐原はその後のことを良く覚えていない。
気づけば、紗耶香は救出されていて、自分はいつのまにかビルの外にいた。
救出された後の紗耶香はすぐに病院へと運ばれ、約一ヶ月もの間、面会謝絶の状態だった。
そして面会許可が下りた後、そこには2年間の記憶を失った壬生紗耶香という女子生徒がいた。
記憶は第一高校に入学してすぐ、渡邊摩利に勝負を挑んだことまでは覚えているらしい。
本人曰く、それ以降の記憶は覚えていないということだった。
見舞いには、桐原が一番多く通った。
紗耶香本人は見ず知らずの男が頻繁に病室に来るのを良く思っていなかったらしい。
それなのによく恋人の関係を受け入れたなと、桐原は思ったが、その言葉に続いて、『心配させてごめんね』と言った。
今、桐原の目の前にいる紗耶香からは、救出当時の面影は何一つとしてない。
肩からむき出しの肌にはシミ一つなく、白い肌が日差しの中で輝いている。
桐原は紗耶香の顔をまじまじと見た。
そこには美少女剣士、剣道小町と呼ばれるにふさわしい容姿があり、こちらが途端に見つめたせいか、少し恥じらいながらも睨み返してくる。
この目の前の美少女が一体どんなことをさせられていたのだろうか…
紗耶香と恋人になって、他愛もない会話の中、桐原はふと思ってしまうのだ。
結果、この発作とも呼べる現象は股間に血液を集中させる。
発作を鎮めるためにも桐原はアイスコーヒーに口を付けて、背後からの不意打ちで盛大にコーヒーをこぼすことになった。
「ちょっと!?」
目の前の紗耶香まではコーヒーが飛び散ることはなかったが、テーブルの上は悲惨のありさまだ。
紗耶香が驚いた声を上げると同時に視線が桐原の背後に移った。
「さーやに桐原先輩、こんにちは」
桐原の背後から声を上げたのは千葉エリカだ。
「おい!、てめー何しやがる!」
紗耶香がテーブルの上を片づけてるのを見て、本来やらせるべき相手に向かって桐原は吠えた。
「いやーこの暑い中、さらにお熱い二人を見ちゃってつい」
ついじゃない、と桐原は怒るが、『だって無言で長い間見つめ合ってるんだもん。いたずらもしたくなるじゃないですか?』と続けて言われて、桐原は赤面した。
本人からしたら、ほんの一瞬だと思ったていたが、傍から見たらどうやら長い時間見つめあっていたらしい。
紗耶香もエリカの言葉を聞いて赤面していた。
カフェの店内には、エリカの友人である司波達也とその仲間たちがいたことも赤面させるに拍車をかけた。
「桐原先輩、きちんとさーやを守ってあげてくださいね」
エリカがひとしきり紗耶香をからかって満足したあと。
桐原にしか聞こえない声でエリカは言った。
このやり取りは毎度のこと。
エリカは桐原に会うたびに何かを確認するようにそう告げる。
そして最後に『さーやが可愛いからって婚前交渉はご法度ですから』と言って去っていくのだ。
自戒しろと暗に言っているのだろう。
あの日、紗耶香を救出した日、あの現場を見たひとりとして、エリカは紗耶香を案じていた。
そのため、エリカは、桐原を紗耶香の護衛として認めているが、恋人としては認めていない。
何故なら、桐原は紗耶香を傷つけた者と同じ性別だから。
当然、エリカは男全員をゲスだとは思っていない。
しかし、人はいつでもゲスになり得る。
エリカは桐原が道を踏み外さないように、老婆心ながらも忠告していた。
「わかってるさ」
離れていく背中に向けて、桐原は自分にしか聞こえない声で呟いた。
「さて、そろそろ帰るか」
カフェに入ってからそれなりの時間が経っていた。
お互い飲み物はすでに空になっている。
また、これ以上、エリカ達の好機の視線に晒されたくないという思いも強い。
紗耶香から反論はなく、桐原の声掛けと同時に席を立った。
時計の針は午後四時を回っている。
夏至を迎えたばかりなので、日が沈むにはまだ早い。
それでも、二人は寄り道することなく、紗耶香の住む宅へと家路をたどる。
桐原は、紗耶香の送り迎えには常に気を張り巡らせていた。
当然、油断はなく、むしろ目に見える範囲の通行人は、全員に対して警戒している。
しかし、必要以上に警戒してしまったことで、
隣で歩く紗耶香の足が突然止まった。
釣られて桐原の足も止まる。
どうした?と桐原は声をかけようとしたが、紗耶香の怯えた表情を見て、言葉が詰まる。
桐原は慌てて、魔法を起動しようとしたが、魔法が起動する前に桐原の意識は暗闇へと落ちていった。
桐原の紗耶香に対する想いって小説の入学編では描写が無いんですよね。
小説版だと、横浜騒乱編でそれらしい描写があるのですが、読んだ当初は全然結びつかず…
私はコミカライズ版の魔法科高校の優等生で桐原の紗耶香に対する想いを知りました。