九校戦の最中に起きたかもしれない物語
もし、新人戦の最中、達也と一色愛梨たちが出会っていたら・・・
これは、いくつものifが重なって生まれたもしかしたらの物語・・・
この回はif導入部のため、エロはありません。
九校戦~<邂逅>
九校戦6日目。
九校戦は、4日目から本戦が一旦お休みとなり、そこから五日間、一年生のみで勝敗を競う新人戦が行われる。
九校戦6日目は、新人戦の3日目にあたり、魔法科高校一年生だけで行われる競技も半分を消化していた。
現在、新人戦の優勝を争っているのは、第一高校と第三高校。
他の7校はその2校に大きな点差をつけられている。
そして、優勝争いを演じている第一高校と第三高校の間にも、徐々に差が開きつつあった。
「栞…今回は残念だったわね…」
「ふふっ…参加した競技、どれも3位にも入れないなんてね…」
「むぅぅ…まさか、スピード・シューティングに続いて、ピラーズ・ブレイクでも上位独占とはのぅ…」
本日行われた試合を以て、新人戦、女子ピラーズ・ブレイク、女子バトル・ボートの全日程が終了した。
結果はピラーズ・ブレイクが1位から3位までを第一高校の選手が独占。
女子バトル・ボードは、第一高校の選手が1位という結果だった。
第三高校は、女子ピラーズ・ブレイクに
栞はピラーズ・ブレイクの前にスピード・シューティングにも出場しているのだが、そこでも第一高校の生徒に敗れてしまい、第四位の結果で終わっていた。
栞に慰めの声をかけたのは、栞と同じ第三高校の
栞の返答には少しばかり自嘲の念が感じられたが、表情はどこか清々しい。
愛梨は、慰労会の名目で、栞と沓子を誘い、ティーラウンジへと向かっていた。
九校戦で、栞と沓子が出場する試合はもう残っていない。
愛梨も、新人戦で出場する試合は残っておらず、あとは本戦の女子ミラージ・バットに出場するだけだ。
それもあってか、三人ともすでに張りつめていた糸は切れており、ティーラウンジへと向かう足取りは軽いように見える。
愛梨は栞の体調も心配していたが、それも杞憂だったようだ。
栞は、ピラーズ・ブレイクで敗れた後、サイオンの枯渇により意識を失ったため、先ほどまで医務室で休んでいた。
本人が大丈夫ということで、沓子の決勝戦後に連れ出したのだが、ティーラウンジに足を踏み入れた途端に足は止まり、慰労会は明日まで待てば良かったと後悔した。
ティーラウンジには先客―――
第一高校の制服を身にまとった男女4人が歓談していた。
うち3人は、愛梨たちも見知った顔だ。
愛梨は、ティーラウンジに足を踏み入れて立ち尽くす羽目になったのだが、横の二人はそのままティーラウンジへと進んでいく。
二人の進行方向は何故か4人がいる席だ。
愛梨が慌てて二人に声をかけると、その声に気づいたのか、そのうちの一人とばっちりと目が合ってしまった。
(うぅ…もう引き下がるわけにはいかないわね…)
さきほどまでの動揺から一転、淑女の振る舞いで席へと向かう。
「歓談の最中、申し訳ございません。いまよろしかしら?」
愛梨が率先して声をかける。
「あら、一色さん、それと十七夜さんに四十九院さん、あなた方もティータイムですか?」
「ええ、慰労会を兼ねて。司波さん、ピラーズ・ブレイク優勝おめでとう」
「ありがとう」
愛梨が深雪へと祝勝の言葉を述べると、それに続き、栞が雫を、沓子がほのかに対して祝勝の言葉を述べる。
栞と雫、沓子とほのかは、同じ競技に出た者同士、面識はすでにあった。
「深雪、達也さん…」
雫の言葉に深雪と達也が顔を合わせる。
「お兄様…」
「ん?…ああ、いいんじゃないか」
雫、深雪、達也の間で主語のないやり取りが行われる。
そして、達也の言葉を得た雫は、愛梨に向かって思いがけない提案をした。
「ねぇ…良かったらご一緒しない?」
「!?」
愛梨は雫から発せられた言葉に目を開く…
「おお!それは良い提案じゃの!」
「ええ、お邪魔でなければ、ご一緒させてください」
「!!?」
愛梨の驚きを無視して、栞、沓子が雫の提案を快諾する。
その二人の行為に愛梨はさらに驚愕するが、深雪の視線がこちらに向けらているのを思い出して、無理やりにでも淑女の様を取り繕う。
「…えっ…ええ…良ければ是非、お願いいたしますわ……」
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雫の言葉をきっかけに一同は席を移動した。
女子6人は学校ごとに分かれて、向い合わせに座り、唯一の男性である達也が議長席という並び。
愛梨は女性6人に囲まれている唯一の男性へと目を向ける。
席を移動して間もなく、お互いが軽く自己紹介したのだが、達也の自己紹介が愛梨にとって今日一番の驚愕だった。
それは、愛梨がライバル視している
司波 達也という名前は第三高校の選手たちの間では怪物と称されている。
第三高校の天才技術者、
それが今、女子たちに交じってお茶をしていることに驚愕し、さらには深雪の兄であることを聞いて驚愕した。
そして、お茶会が始まってからある程度の時間が経ち、お互いそれなりに打ちとけてきた頃―――
「あいにくこれ以上の
「栞は達也さんに一度調整してもらうべき…してもらえば、どれだけすごいか実感する」
ことの始まりは、雫と栞が吉祥寺と達也、どちらがエンジニアとして優れているかから始まった。
いまでは、達也がエンジニアだった場合、栞の起動式の性能がどうなるかに論点が移り、雫が『絶対向上』するに対して、栞は『これ以上の向上は見込めない』と対立していた。
ちなみに愛梨たちは、達也のことはさん付け、深雪たちのことはは呼び捨てで落ち着いた。
「雫…信頼してくれてるのは嬉しいが、栞の魔法は、
「あっ…そっか…残念…」
達也の言葉で、雫は自分が熱くなっていたのを自覚したのか、あっさりと雫が身を引いた。
しかし、栞のほうは、そのままの勢いで会話を続ける。
「
「いや…」
「ほほぅ…それは面白い話じゃの、ついでにわしのも調整してはくれんか?」
「いや…待っ…」
「お兄様…栞さんの調整をお受けしてもよろしいのでは?」
怒涛の展開。
達也が話を遮る前にあれよあれよと進んでいく。
深雪は、兄が吉祥寺 真紅郎より劣っていると言われたことに腹が立っているのだろう。
深雪が賛同したことで、達也が断る理由はなくった。
達也が栞、沓子の言葉に少なからず動揺していた頃、同じく愛梨も動揺していた。
(栞、本気なの!?)
調整は、使用するCADのスペックと、CADを使用する魔法師の力量に合わせて十人十色の調整が必要だ。
調整を行うことのメリットは、魔法効率が向上し、サイオンの消耗が抑えられたり、魔法の発動速度が改善するといったことが挙げられるが、調整のためには、CADのスペックと魔法師に合わせた起動式の修正が必要だ。
その起動式の修正を間違えると、逆に使用者に精神的負荷を与えてしまう。
精神的負荷は、眩暈や吐き気、最悪、幻覚症状に及ぶ。
そして、起動式の修正の難しさは、起動式が複雑なほどハードルが上がる。
栞の扱う魔法、
実力が伴わないエンジニアが栞の起動式を修正すれば、結果は悲惨なものになるだろう。
それを初対面の(さらに異性の)エンジニアに任せても良いという発言に、愛梨は動揺を隠せない。
そんな愛梨の動揺に気づいたのか、栞は愛梨に向かって微笑んだ。
その表情に、愛梨は栞の真意を理解する。
(そう…私のため…なのね…)
栞は自分が実験台となり、達也の力量を図る気なのだろう。
深雪と愛梨はそれぞれ本戦のミラージ・バッドに出場することが決まっている。
二人が対戦するとき、達也の力量を知っていれば、少なからず、対策を立てるのに役立つだろう。
(まったく…)
思いがけない事態に進展した慰労会。
愛梨はこっそりとため息をつくと、ケーキの乗った皿に手を伸ばし、今だけはこの場の雰囲気を楽しむのだった。
【お詫び】
リクエストをいただいた方には申し訳ありません。
カップリングは変えていませんが、細部はリクエスト通りとはいきませんでした。
許容できなければ次回以降、回避推奨です。
細部の変更箇所
・邂逅シーン ⇒ ラウンジでの歓談に変更
・行為シーン ⇒ きっかけを沓子に変更、愛梨の衣装はミラージ・バットのみ(個別)に変更