最近、ちひろの楊子がおかしい。日を追うごとに
顔がやつれてやがる。レインがさりげなく
(本人はそう思ってんだ)訊いた。
アイツの訳わらん説明を要約して
『正体不明の英語教師が
視聴覚室で、よくわかんねーモンを生徒や
同僚連中に見せてる。それの影響で
学校が世紀末化』だろうな。
意味わかんねェけど……
「とりあえず
話きこうや」
そいつが居るホテルへ向かった。拉致るために。
俺と裏切り者二人を連れてな。
金髪でチャラチャラしてやがるが目つきだけは
いっちょ前の元ヒモ、芳則。アイツによって
潰された消費者金融<さきざきローン>から
送りこまれたスパイ。俺ンとこから顧客名簿を
盗もうとしたが、レインに説得され、
俺にワビ(一千万)入れて正式に社員となった。
アイツから提示された条件「杏奈ちゃんを護れ。
できなきゃ、立て替えた金を中国で支払わす。
身体を売ってな」を飲んで、舎弟に。
次はマサル。前髪だけ染めたトンガリから
黒へ変わり、丸くなったヤツ。
俺に逆恨みして色々やったが……レインに
シメられ、沖縄でガキがいる
シングル・マザーのそばにいることを
条件に舎弟となった。
あんま、信頼しずきるなよって警告してンだが
「裏切ったら見捨てるから大丈夫」とだけ言って
聞きやしねんだよ。ホント……
お人よし過ぎるぜ。
そのバカ二人に中古の防弾チョッキ。俺には
特製防弾衝撃吸収パーカーと米軍も使ってる
ボディアーマーを渡した。
「あの~」
「はい、なんでしょうか?」
「ここにジョージ・Nという方は
宿泊してますか」
「いえ……」
「すみませんでした~ありがとございます~~」
いつもの片もみあげだけ長い赤茶の短髪から
ツインテールの金髪へ変え、さらに目も
赤いアーモンド型から透き通る蒼い瞳へ
変えてやがる。ジョージ・Nつーやつが
アメリカ人だからとかの理由で、生き別れの
娘設定で作ってんだ。なんでいつもの
ポンチョからゴスロリに服も変えたのかは
知らねーけど。
「さすがに本名で泊まらんよな~」
「そうっスね。これからどうしますか」
「ちょっと付近を……おっ」
下に降りるためにエレベーターへ乗ったときに
件のジョージも鉢合わせた。どうやらチビの
殺し屋も連れてるみてェだから、レインはすぐ
中のすみへ移動。長い付き合いだから
わかってンだ。この場でやる気だってな。
「ジョージ」アイツが声をかけた瞬間、
チビが発砲。芳則が倒れちまい、マサルを
盾にして銃弾を防いだ。チビが使ってンのは
大型リボルバー。4発撃っちまったから
もう2発しか残っちゃいねェ。
お返しにレインがキンバー・ウォーリアを
抜き、5発ほど叩き込んだ。いつものなら
頭をブチ抜く癖に無言で、左手に握る
米海兵隊の特殊部隊が暫定的に採用した
“ICQB
突きつけてやがった。
座り込んだ腹部から赤くなっていくチビが
背中からなんか抜こうとしやがったから
俺がアイツから貰った自動拳銃に改造した
モデルガン、ブルーニ1911で頭頂部を
撃つ。鮮血と脳漿が四角い鉄製箱のなかで
弾けちまった。きたねーな。
「あっ、ゴメンゴメン。他のことかんがえてた」
集中しとけよ。
とりあえず俺は撃たれた芳則とマサルを
闇医者へ連れて行き、アイツは
交流がある中国系不法入国者の
ジョージから話を聞くらしい。
元
俺と同じく長い関係。それにバカ二人よりも
信頼できるぐらい無欲なヤツだ。
心配いらねェ、元ポン中でもな。顔は
整ってるからホストもやれるかもしれねェ。
夕方ぐらいになりアイツから連絡がきた。
『ニュース視て、おねえちゃんの学校が
ヤバイわ』
試しにちひろん家のテレビをみたら……
『中学校で独立宣言!』
『立てこもる教師と生徒たち。中でなにが?』
『屋上から火炎瓶、投下。集まる野次馬に引火』
なるほど……確かに。
これは──やべェわ。
特製防弾衝撃吸収パーカー……セラミック基複合材、炭素ケイ素などを重ねあわせた素材の特別製。
対戦車ライフル弾を300発防げるほどの強度。
沖縄でガキがいるシングル・マザー……
『闇金ウシジマくん』36~38巻、参照。