フルダイブヴァーチャルゲームから未来へ転移したら世界が滅んでた件 作:罪袋伝吉
ランカープレイヤーの主人公『黒田鉄雄』は、ただ、普通にゲームを楽しみたかった。
陰キャでも恋をしたかった。厄介な女の子でも好きだった。
フられるよりも辛い事は、裏切られることさ。
わかるだろうか。
俺は辛い。作者は辛い。主人公に幸あれ!!と願いつつ物語は始まります。ええ。辛いこともあるけど、それよりも辛いことだってこの世にはもっともっとあるし、どんどん起こったりもするけど主人公、ドンマイだ。
という物語になる……と、思う。
失恋というにはもはやそれは黒歴史な記憶だった。
いや、あれは本物の恋なんかじゃない。あんなものが初恋であってたまるか。
忌々しいと苦々しいが半分。何も疑わずにいた自分への苛立ちと腹立たしさとクソ女への憎悪で全部。
時間をつぶすために開いたVRtubeの動画で笑うあいつのアバターの面が気に入らなかった。
「何がオススメ動画じゃ、バカヤロウ」
俺は即行で画面を消した。
ゲーミングチェアの背もたれにもたれ掛かり、頭をバリバリかきむしる。
忌々しい、本当に忌々しい。
俺はゲーミングチェアの横のラックからタバコの箱を取って咥え、火を付けて思い切り吸い込むと、ぶはぁぁぁっと盛大にその煙を吐き出した。
身体に悪いとかPCに悪影響があるとか思うかも知れないが、どっちももうそんな時代じゃない。
タバコを吸ってもコンビニとかで売っている細胞修復剤やらそういう薬を飲めば肺に入ったヤニは分解され無害になるし、PCなんて物が一家に一台とか数台とかあった時代なんてそんなもん100年も前の話。
企業のマザーコンピューターと無線で繋げられるモニターやVR機器があればどこでもいつでも性能やスペックなんぞ関係のないコンピューティングが出来る時代だ。
そりゃあ月額料金がかかるしプランもピンからキリまであるが、それが今の時代のあたりまえだ。
要するにクラウドサービスやらなんやらが恐ろしく発展したものと思ってもらえればいいだろう。
というか自前でPCなんぞ持っているのはどこぞの研究機関やら高精度な演算を必要とする宇宙開発をやってる企業とかぐらいじゃないだろうか。まぁ、しらんけど。
要するに俺のいる世界、2×××年代はそういう世界だってことだ。
俺は『黒田鉄男』。フリーゲーマー、つまりは企業とも契約せず、動画配信もやっていないゲーマーをやっている。
いや、大抵のゲームやってる人はそれ。本当にそれなんだよ。最初はそれなんだ。
ゲームをやる人はやっぱりそれぞれだけど、ゲームは基本、遊んで楽しんで、だと思うんだよ。
それに別にプロゲーマーを目指す奴がいてもいいし、配信やってもいいし、スポンサーつけて金持ちになる奴がいてもいい。それは個人の自由だしね。
だけど俺は自由に遊びたいし配信とかやって広告収入を得るとかそういうのはあんまし好きじゃ無かったんだよ。
俺はゲームが大好きだった。
FD・VRGは様々なジャンルはあれど自由度が高くて人それぞれのプレイスタイルで楽しむことが出来る。
それに、いつゲームをやろうがどこでやめようがそんなもんは個人の気分次第ってもんだ。
一つのゲームにこだわらずいろんなゲームに手をだして、それぞれをそれなりに楽しめばいい。
そこが一般プレイヤー、フリーゲーマーの良いところだ。
だが、プロゲーマーとなればそういうのも出来なくなる。
企業と契約したプロゲーマーは今の時代、芸能人やアイドル、プロスポーツ選手などと同じ括りで扱われる。
一昔前に流行したVT○berの活動をさらに大きくしたような感じと言ったらわかりやすいだろうか。
プロゲーマーになれば、そりゃあよっぽどの事が無ければ生きる金に困る事はないだろうし好きなゲームをやって飯が食える、なんか不都合な事はあるか?と言う奴がいるが、俺に言わせればそんなのはクソくらえだ。
企業に関われば型にはまったプレイを要求されるわ、マネージャーとか付けられてスケジュールを勝手に組まれたり、ゲーマーに必要な食事と称してクソマズイ栄養食やらオエッとなるようなドリンク剤を与えられて健康管理されるわ、VRtubeなどのバラエティー番組やらお笑い番組に出演させられたり、歌まで歌わされてしかもダンスまでやらされる。
しかも奴らは企業イメージを気にして自分達の推奨するゲームしか公式プロゲーマーにやらせないのだ。
何より自分が今まで使ってきたアバターが企業にとってイメージ的に合わないなら、勝手に企業が作ったチャラチャラしたアバターに変えられたりする。
あんましそういうのは好きじゃないというか勘弁して欲しい。
だけど、名前が上がるにつれていろいろとウザい連中がわいてきた。
ゲーム内で接触してくる企業勢プレイヤーは沢山いた。そういう企業勢プレイヤー達は徒党を組んでギルドを作って運営している。
自分のところのギルドで自分達のファンを囲うという目的と、目立った奴やカリスマ性のある奴を見つけて自分の企業にスカウトするという目的だ。
何がウザいのかと言うと、ギルドにスカウトしてくる系。俺が立ち寄ったクエストの最寄りの街で現れては勧誘してくる。
ギルドの幹部とかリーダー、つまりアイドル的な奴が勧誘してきた場合、断ったらファンの取り巻き達によってなんか掲示板が炎上したり悪口やらあること無いことを言いふらされたりしてもうめっさウザい。
俺に勝ったらギルドに入れ!系の展開に持ち込むバカもいたが、まぁ、ソロで難関クエストをこなすレベルの俺にとっては赤子の手をひねるようなもんであっさりと返り討ちするわけだが、そういう奴の取り巻きは全く教育がなってないというのか頭に血が登るのが早いというのか、それこそ全員で襲いかかって来たりするのでタチが悪い。無論、全員ぶっ倒したらなんかギルドランク下がったとかでよその企業勢プレイヤーにそこをつけ込まれて襲撃されたとかなんとか。
やっぱり掲示板とかに書かれて炎上した。
あとは闇討ちはまぁ、普通にゲームやってればギャング系のプレイヤー達に遭遇するもんだから普通にぶっ倒して終わりだが、美人局にはかなり困った。
いや、最終的には美人局にあったようなもんだ。要するに俺はさっきの動画の女にだまされたということになる。
『アンナ・メアリー・ジーン』
それがその女のハンドルネームだ。
俺が【ガンスモークフロンティア】を始めた頃に最初に出会った女プレイヤーだ。
【ガンスモークフロンティア】は開拓時代の西部劇風のガンアクションVRRPGである。銃を撃つ快感、馬で駆ける疾走感、そして賞金首を吊し上げるカタルシス。
他のVRRPGとは一線を画する独特の世界観は当時斬新で、出た当初はやたらと話題になったものだ。
初心者同士、とは言っても俺はいろんなゲームをやってきたからある程度システムに慣れる必要はあったがそこそこ動けていたのに対して、アンナは全くのゲーム初心者で、右も左もわからないような奴だった。
まぁ、手助けしたりクエストに連れて行ったりしているうちにフレンド登録して、何かと話すようになったわけだ。……というか、当時の俺のフレンドリストはだった5人しか登録者がおらんかったわけなんだが。
とは言っても、俺はソロプレイヤーでアンナが独り立ち出来るようになってからは単独でソロクエストをこなすのに忙しくてこちらからは連絡などしてはいなかった。
というか大抵向こうから連絡が来て『助けてくれ』だの『このクエストの仕掛けが解んないのぉぉ!!』とか『ギャングに追われてるから助けに来て』とか大抵厄介事に俺を巻き込んでいた。
まぁ、アンナは駆け出しの動画配信者でもあったわけだが、奴のせいで俺のアバターとハンドルネームがやたらと出回ったのが頭痛かった。
俺のアバターを映すな、とか、配信するなら二度と助けないと何度も言ったが奴は全く聞かず、
「スティール君が出てくれなきゃ再生数伸びないんだよぉ!私だけじゃ勝てないのよぉ!つか生活費減るのよぉ!私の生活どうしてくれんのよぉ!!」
などと言った。知るかそんな事。
とはいえ俺もアンナの事は嫌いでは無かったので、というか好きじゃなかったら誰があんな厄介な女を何度も何度も、ああ仕方ねぇなぁ、と助けてやるわけはない。
動画で配信されるのは嫌だったが、いつも真っ先にアンナの手助けをしてやっていたんだ。
だが、アンナにとって俺は本当に動画の取れ高のための道具でしかなかったらしい。
事件は、俺が当時運営が発表したソロ限定の最高難易度クエスト【バッチファミリーの砦】を終えた後に起こった。
『おっめでとーっ!クエスト達成したのね!【サルーン・ステラ】でお祝いしよう!祝賀会しよう!』
通信でそういわれて俺はまんまとアンナが根城にしている【サルーン・ステラ】へと向かった。【サルーン・ステラ】は酒場であり、セーブポイントでもある。RPGにはつきものの宿屋で、その酒場でアンナは待っていた。
アンナのアバターはニコニコ笑って俺を出迎えた。
「最高難易度クエスト達成おめでとう!」
そうして、素早く俺に銃を向けて無造作にそれを撃ったのだ。
まぁ、ガンスモークフロンティアにはよくあることだが、まさかアンナにそれをやられるとは思わなかった。
長年染み付いた体捌きが自動的に出てその弾丸を避けた俺は一瞬で腰の愛銃をアンナに向けた。
鈍いガンブルーのリヴォルヴァー『カヒライス』。ソロ限定の難関クエストのドロップ武器であり、他の連中の持っているシングルアクションなどコイツに比べれば豆鉄砲ともいえる高威力の凶悪な銃だ。
「冗談にしちゃ質が悪い」
「い、今のを避ける?!バケモンなのあんた!!」
アンナは目を剥いて驚くが、俺だって避けれたのには驚いている。だがFD・VRで表情を変えて侮られるのを俺は嫌っているし隙は見せたくはない。
案の定、俺の周りにぞろぞろとどこかで見たようなギルドの連中が出てきた。
「ははは、スティール君、アンナはなぁ……」
横から出て来た奴が何かを言おうとしたが、
バン!
めんどくさかったから、左手で胸のホルスターに下げていた今回のドロップ武器『デスペラードNo13
(デッドマンズハンドカスタム)』を素早く抜き、そいつが喋り終える前にヘッドショット食らわせた。
デスペラードはカヒライスよりも大口径のリヴォルヴァーであり、俺の最終目標の一つだった。
デスペラードはゲームにおいてたった13丁しか存在しないレア中のレア銃であり、また付けられたナンバーでそれぞれ付与された性能が違うという。
つまり、同じデスペラードでも同じ性能のものは一つとして無く、その一丁は世界にたった一つしか無いスペシャルな銃なのだ。
そんな銃、そりゃあ欲しくならないわけは無い。
ナンバー13『デッドマンズハンド』は大口径にも関わらず抜き打ち性能と速射性能が最高レベルで、さらに直撃ボーナスは即死のバフがつき、かすっただけでもHPゲージはどんどん減っていき、さらにコイツで撃たれて死ねばデスペナルティで蘇生したときにはレベル1からやり直さねばならないというぶっ壊れ性能をしていた。
だが、俺はそんな欲しかった銃を使っているという喜びや感動よりも静かに冷たい怒りを感じていた。
「外野は黙ってろ」
頭が吹き飛んだのを見て周りのザコプレイヤーがざわめく。おそらく普通にギルド間の抗争とかしか参加したことのないような連中なのだろう。
低レベルの銃しか知らずバケモノのようなクエストボス戦に使うための高レベルの銃の威力がどんなものなのか見たことも無いような群れるだけが能の奴らだ。
ああ、めんどくせぇ。
俺は素早く周りの連中の人数を数えると、カヒライスとデスペラードの二丁でそれぞれ一発づつ、脳天に弾丸をぶち込み、全員ぶっ殺した。
たった数秒で、アンナ以外を全滅させて終わり。
このゲームで口上はただの隙にしかならない。頭をやられて動揺して銃を抜けない奴らはただの雑魚だ。
その点、アンナはわかっていると言えるだろう。何しろ不意打ちで俺を殺ろうとしやがったのだ。それはこのゲームじゃ常套手段で、本当ならアンナだけをこうして残すのは俺にとって危険な事なのだ。
だがアンナは周りの惨状を見て呆然と立ちすくんでいるだけだ。
コイツの本質はキャーキャーと助けを求めて騒ぎ、自分の実力で何もしない奴だ。ああ、恋ってのは盲目だよなぁ。いや、見ない振りをしていたのは俺か。
覚めればこうだ。なんとも虚しく情けないもんだよな、恋ってのは。
再び、今度はアンナに今度はデスペラードを突きつけて、
「で、今回は何だ?強盗団にでもジョブチェンジか?」
いいや、だいたい聞かなくてもわかっている。
「あ、あの、ごめんなさい、今、人気のプロゲーマーの人とコラボすることになって、そ、その、その条件だったの、裏切るつもりは……。で、でも、あなたと組んで動画撮っても伸び悩んでたから……」
ああ、そんなことだろうよ。
千年の恋も冷めた。あとはただの燃えかすの冷たい灰が心に積もる。そんなもん、引き金のように軽いただの塵だ。
「で、今回の動画はバズりそうか?どうせ『スティールを討伐!』とかやるつもりで撮ってんだろ?」
「え、いえ、その……ライブで……」
なるほど、とっくにもうライブで流れてんのか。
俺はガキっと右手のカヒライスもアンナに向けた。
「なら最高の撮れ高を作ってやる。死者の手とバンシーの啜り泣きを同時にプレゼントだ。目が覚めりゃレベル1だ喜べ……」
バン!バン!!
銃声二発と共に、俺の恋は終わり。積もった心の灰はその轟音で吹き飛んだ。
冷めた心は何をやっても熱くなることは無く、まるで死んだ奴のようにすっかりと俺はゲームを楽しめなくなってしまった。何もかもがめんどくさくなってしまったのだ。
だから。俺はガンスモークフロンティアをやめた。
噂によれば、俺が最後のクエストで手に入れた『デスペラード』の他のナンバーは誰も入手しておらず、また、俺が手に入れたナンバー13も、俺がもうゲームをしていない為に撃たれた奴以外の誰もがその存在を与太話だと思っているらしいが、そんな事はどうでもいい。
ま、数少ないフレンドだった奴が
「スティール・ガン・ロード(俺のハンドルネーム)はデッドマンズハンドに導かれ、死神としてまだ【ガンスモークフロンティア】を彷徨っている」
という話を流して回っているそうだが、勝手にしてくれ。もうやらねーからな。
……と、思っていたんだがなぁ。
「やぁ、ちょっと面白い企画考えたんだけどさ?最近ウチのグループが協賛してるギルドのサルーンに古参のアホ共がちょっかいかけてきててさ、ほら、お前を裏切ったあのアンナのギルドだよ。あいつ、高ランカーのVRtuberの連中と連んで『ワイルドビッチ』って盗賊団をやってんだけど、それウチのグループと対立してる企業が雇ってんだ。で、そいつらを締めてキッチリと白黒つけたいのさ。ちょっと協力してくんないかな?」
数少ないフレンドである『ドク・ホーリージーン』こと俺の幼なじみの『聖愛美(ひじりまなみ)』がスマホに直接電話をかましてきやがったのである。
「……勘弁してくれ」
俺は、盛大な溜め息を吐き天井を見上げた。
近頃、思うこと。
女のキャラ使ってる人、なんか中身野郎が多くね?
いや、VT○berのバ美肉とかいろいろあるけどさ。
というのが今回の物語の発想だったんですが、TSヒロインを出すかどうか迷ってたりなんだり。
思い立って書いてしまったけど、シリーズ増やしてどうするつもりだ私。
いや、まぁ、反応次第で書いたり書かなくなったりするよ?どうせ酒のんだ勢いだし。