フルダイブヴァーチャルゲームから未来へ転移したら世界が滅んでた件 作:罪袋伝吉
周りがいろいろ暗躍する系女子だらけだと知ったら、多分誰も信用出来なくなると思う。
そしてまだ出て来ていないキャラが不憫な目に。
【side・黒田鉄雄】
「企画、なぁ」
俺は画面の向こうの愛美にわざと嫌そうな顔をして見せた。
昨今のゲーム関連で言う企画というのは動画配信の際のネタをさす。愛美の場合、愛美の一族が経営しているカジノグループ『ベガスバニー』のPRやCM、もしくはプロパーであり、つまりは企業案件ということである。
それでなくともガンスモークフロンティア関連はやる気がしないのに、動画で配信とかもうすんげぇ嫌だ。つうかメディア露出なんて考えただけで御免蒙りたい。
「あのなぁ、んな企業案件を俺が嫌がってんのお前も知ってるだろう?それに俺はガンスモークフロンティアなんざもう辞めたの!二度とやんねー」
俺はあれから殺伐とした殺し合いをするゲームはやめている。今やっているのは【ザ・ファーマー】という、誰もいない広大な森を切り開いてひたすら農業や牧畜をするというゲームをやっている。
無論、ワールドには誰も入ってこれないように鍵をかけて一人だけでどっちもやっている。
農地をひたすら開墾して黙々と広げて種や苗を植えるのは素晴らしい。牧場を作って牛や馬を育てて生育するこの喜びよ。
俺のワールドには、もう全ての作物と牧場の動物がフルコンプリートされている。これで海もあればとか思うのだが、海洋はマップには用意されていないので、それは仕方あるまい。
……海洋物のゲームは海賊とかそういうか深海の怪物を駆除したり、定番のサメ映画をゲーム化したのしか無いからなぁ。釣り単体のは無いし。
アイランド系も大抵はオープンワールドで人だらけだからやりたくは無い。
そう、ゲームで今の俺は引きこもりなのだ。いや、リアルじゃこれでも会社員なんよ?普通の事務職で薄給だけどな。ちゃんと社会人やってんのよ?あとこじらせたぼっちとか言うな。
『それは分かってるんだ。分かってるんだけど、今、私達は非常に困ってるんだ。DQNな『ザッコ』の連中がウチに対抗して来て、中立の俺達に難癖つけて抗争を仕掛けて来てるんだ。あっちはレベルの高い連中を公式プレイヤーとして雇ってるんだが、こちらは君が知ってるように初心者達やソロプレイヤー達を支援するために運営してるギルドなんだ。募集してもなかなか頭数が足りないんだ。賞金を吊り上げてなんとか集めてる最中だけど……』
確かに『ギルド・ベガスバニー』はゲームに出資している企業の中では最も健全な活動をしている企業だと知られている。
初心者達が一番お世話になるギルドと言えば『ギルド・ベガスバニー』であり、他のサルーン・ギルドのようにギルド勧誘を全くしていないので安心してその施設を使うことが出来るし、初心者のレベルに応じたクエストの斡旋や消費アイテムの販売、それにフリーセーブポイントの提供などを行っており、このギルドのおかげでソロプレイヤーをやっていられる奴らも多かったのだ。
……まぁ、稼いだ賞金をゲーム内のカジノでスカンピンにされる奴が出るのはお愛嬌と言うものだが。
「だが、お前んとこは割と恩に着てるプレイヤーも多いだろ?手を貸してくれる連中も……」
『いるにはいるさ。だけど他のギルドに入ってしまった連中は今回の抗争には手を出さないように通告されてる。『ザッコ』が裏でとっくに手を回してたんだ。企業の公式プレイヤーの連中も同じで参加できないってさ』
これだから、企業って奴に関わるのは嫌なんだ。利益やら何やらで個人の意思を通せなくなる。
つうかゲームってのは自由で楽しんでやるもんだろうが。自分の思い通りにやるもんだろうが。
画面に映し出される愛美が、ギリッと歯を食いしばって絞り出すように声を出した。
『ウチのグループだって、企業としての意地があるんだ。それに、みんながゲームを楽しめるように俺達は頑張って支援してきたんだ。それをDQN共に踏みにじられたくない。頼むよ、力を貸してくれ……!』
ああ、愛美も悔しいのだ。
愛美がガンスモークフロンティアを始めたのは、愛美の一族が経営するカジノグループがスポンサーとしてゲームに参加を決定し提携したためだ。
愛美は企業ギルドの統括を祖父であるグループの総帥である『聖金三郎』に命じられたと言っていた。
ゲームはある意味企業にとっての利権の場でもある。多くの場合、人材の発掘や効果的な宣伝の場として。商品タイアップの場として。
そして、企業ギルドのトップ、つまりギルドマスターはゲーム内におけるその全ての統括者であり、その顔なのである。
だが愛美は人材の発掘、つまり公式プレイヤーを認定する事はしなかった。宣伝はしていたし、商品のタイアップはしていたが、それは全てグループの社員か無名のフリーのプレイヤーにクエストとして発注していた。
それは、プレイヤー達に自分達の企業としてのエゴを押しつけたくなかったからなのだと、今の愛美を見て俺は気づいた。
「愛美、お前……」
『君がもうやりたくないってのは知ってる!でも、君しか居ないんだ!伝説のプレイヤー、スティール・ガン・ロード!鉄雄、君が俺達には必要なんだ!!』
俺は愛美のその悲痛な叫びを無視できなくなった。
息を静かに深く吸い、俺はまた吐き出す。
そこまで言われれば、もう否は言えない。
「わかった。……だが報酬は弾んでくれ。あと配信はなぁ、あんまし映さないでくれ。つーか一回こっきりだからな?マジで」
俺は、愛美を助けてやることにした。仕方ないだろ?
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【side・三澤葉子視点】
「愛美様、さすがでしたわ」
お嬢様がスマホの通話を切った事を確かめた私は静かに拍手しつつそう言った。
まさに真に入った演技であり、シナリオを考案した私としても感心せざるを得ないほどだった。
「……いや、半分は本音だし。でもなんか鉄雄をだましてるみたいでなんか罪悪感」
お嬢様は少し顔を曇らせたが、本来なら私の方がもっと罪悪感を感じていなければならないだろう。
そもそもからして一年前に私の計画が狂わなければこんな事にはなっていないのだから。
そう、どこから狂ったのかと言えば……まぁ、大半と言う他無い。
私が鉄ちゃん(鉄雄の事だ)に勧めていたゲームはもっと平和的なクラフト系のほのぼのした感じのものだった。
実際、手応えはあったのだ。ほどよく冒険要素もあるし、多少の戦闘要素とやりこみ要素、そしてアイテムクラフトと様々な素材を組み合わせて行う建築のその中毒性に最初鉄ちゃんはかなり熱中してやっていたのだ。
それを見た私はこれならいける!と思っていた。
そう、このクラフト系のゲームはお嬢様も大好きだったから、お互いに同じゲームをやっているとわかったら誘い合って二人でワールド作って、一緒に仲良く冒険しつついろいろな物を作って和気あいあいとやれたはずなのだ。
だけど、鉄ちゃんは寄りによって血生臭そうなガンスモークフロンティアなんてゲームをやり始めた。
アホな洋治のせいだ。そう、お嬢様と鉄ちゃんの共通の幼なじみで、お嬢様のコネで現在、ウチのカジノグループの社員になって営業にいるが、この洋治が空気も読まずに鉄ちゃんを悪の道へと誘ったのだ。
そりゃあ男の子だから鉄砲とかに興味を持つのはわかるけど、よりによってそれは無いでしょう、お姉さんそんな物騒なゲームは無いと思うのよ、本当。
とはいえお嬢様も鉄ちゃんがやるゲームなら私もやる!などと言い出したので、仕方なくそのサポートを私もしなければならなかったのだ。
ええ、とりあえずその後洋治には無茶苦茶折檻した(社員教育)。
そうこうしたら、総帥が
『孫がなんかゲームをやるとか言ったから、とりあえずその会社に出資するわ』
とか言い出した。
お嬢様が祖父である総帥におねだりしたのだろう。
つーか孫娘可愛さであっさりと出資しようとすんなクソジジィ!!
とか思ったけど実際のところこのジジィはやると言ったら止めても止まらない厄介なジジィなのだ。
孫娘可愛さで大抵の事を財力と権力でやってしまう。というかこのジジィはグループがヤクザだった頃の感覚でやっちまうのだ。
というか聖家がヤクザだった時代はあんたがガキん頃に終わっとるでしょぉぉっ!!
……そう、聖家は大昔にヤクザ、つまり広域指定暴力団・聖組だったのだが、総帥の父親である聖金造が2000年代の始め頃に組を株式会社カジノバニーグループに再編し、日本のカジノ構想を期にそれまでの組がやっていた賭場などのノウハウをふんだんに発揮してあれよあれよと言う間に日本最大のカジノグループとしてのし上がり、今に至る。
現総帥であるジジィ、つまり聖銀造はそのヤクザからカタギに一家が変わるそのちょうどど真ん中で青春時代を過ごしたために、なんというかヤクザのやべー部分が抜けていない。今年で七十歳つうのに。
その辺はその息子でお嬢様の父である故・聖鉄郎にも多少はあったが、鉄郎さんはまだ普通だったような気がする。いや、スジ者の私などを愛人にするような人だったので多少でも無かったか。
まぁ、それは置いておいて。
とはいえVRゲームは今や人気コンテンツであり、様々なゲームに様々な企業が出資したり協賛して盛り上がっているのは事実だった。
VRtubeやらネットメディアなどで一流のゲームプレイヤーは一昔前の芸能人やアイドル並みの人気があるし、それらの後援をスポンサーとして企業が参加している事もある。
うまくやればグループとしての利益も見込めるだろう。
そういうわけでアホな部下(洋治)に責任をとらせるべく投資担当の部門を作るように指示を出した。
そうしたら、ゲーム内になんかいかがわしいカジノ(18禁)を作ろうとしたのでとりあえずまた無茶苦茶折檻した(半殺し)。
正直、部下が使えなかったので弟である三澤正人に指揮を任せてやっとこさウチの企業ギルドが出来た。
まぁ、カジノを併設したのは許そう。ウチはカジノグループだしバニーガールのNPC(18禁ではない)程度なら許そう。
そうやって、お嬢様の意向を聞きつつ鉄ちゃんをサポートする体制が出来た。
途中、また洋治が空気を読まずに新人プレイヤーの女の子達をナンパしてギルドへ勧誘しようとしたので激しく折檻してゲーム内ではオカマのアバターを使わせてオカマの演技をしなければならないようにしてやった。
つか次やったらマジで玉ぁ蹴り潰すぞゴラァ。
だが、誤算は続くよどこまでも。
鉄ちゃんがよりによって他の女とお友達になり、お嬢様をおろそかにしはじめたのだ。
いや、ダメよ鉄ちゃん。そんな動画配信のためなら誰とでも寝るような腐れブスなんてやめときなさい!
でも、鉄ちゃんはどんどん腐れブスと関わるようになった。どんなけダメな方向に行くの、おねーさんは悲しいわ。
とりあえず元凶の洋治をとことん折檻した。少し気が晴れた。
そうして、私は決心したのだ。
あの腐れブスの方から、鉄ちゃんを裏切るように仕向けよう、と。
だから私は、ベガスバニーグループから資金援助を受けている『ザッコ・エンタープライズ』を動かし、ザッコが飼っている三流の勘違い動画配信者の『アル・バート』を使って『動画コラボ』をもちかけさせ、腐れブスを裏切らせたのだ。
まぁ、ザッコも全く使えないプレイヤーのアル・バートを切りたかったそうなのでまぁ、あちらにも良かったともいえる。
そう、ザッコ・エンタープライズはウチのベガスバニーグループの舎弟のような企業であり、お互いに競争しているように見せるという目的のために作った会社なのだ。
無論、競争して勝つのは当然の事ながらウチだ。そしてそうなっても誰からも反感を買わないようにザッコは法に抵触しない程度に悪どいシノギをやる悪役のような立ち位置にある。
まぁ、トップに据えた男が悪知恵に長けた奴なので当然そうなったというのもあるけど、これが非常にいい仕事をしてくれたわけだ。
果たして、あの腐れブスは簡単に話に乗ってきた。
で、まんまと鉄ちゃんがやっつけちゃって、めでたしめでたし……と思ったけど、鉄ちゃんはその後、引きこもっちゃったのよね……。
お嬢様は元気を無くすし、総帥は怒り出すし、もう大変だったわ。
とりあえず洋治を生け贄にして総帥の怒りを納めたからよかったものの、さてはてなんとかせねばなるまい。
そうして再び私は策を練り直した。
計画名『鉄ちゃん復活祭~がんばれっがんばれっ♡』
……誰よ、がんばれっがんばれっ♡を書き足したの。え?洋治?とりあえず後で洋治を絞めてくるわ。
……げふんげふん。
そんなわけで計画は三分の一まですすんでいる。
さぁ、後はあのアンナとかいう奴を再起不能にするだけだわ。
おねーさんも頑張るからねっ!
『がんばれっがんばれっ♡』
・近未来でも『がんばれっがんばれっ♡』は残ってるんだろうか。
・某バ美肉したエロマンガ家さんのせいで、がんばれっがんばれっ♡がおっさんの声で再生されるという奴、おるやろ。
・なお葉子さんは黒髪でメイド服でロケットおっぱい。ようするに……わかるな?
『聖家』
・大昔はヤクーザだったカジノグループ。
・めっさ金持ち。
『聖銀造(ジジィ)』
・息子夫婦を喪ったため、二人の分も孫娘を大切に育てようと決意するも、なんか妙に腕白に育て過ぎて僕っ娘を通り越して俺っ娘になってしまったが、可愛いからまぁいいかと思っている。
・息子に家督を継がせたが飛行機事故で失ってしまい、孫娘が結婚して曾孫が出来てまたその曾孫が結婚するまでは死ねないと思っている。←いや無理だから、多分。
『三澤葉子』
・元ヤクザな稼業の女→カジノグループの御曹司の愛人→メイドさんな経歴を持っている、わりと有能な残念おねーさん(自称)。
・年が近いので(本人談)愛美を妹のように思っている(本人談)。しかしどう見ても母親みたいやがな、あんた。
・鉄雄を鉄ちゃんと呼び、なんか甘やかしたい気満々なぢゅくじょ。
・股間に淫紋は無いが、背中には弁天さんおるで?
『梶鹿洋治』
・鉄雄と愛美の共通の幼なじみの一人。
・ゲームではオカマの格好とオカマの演技をさせられているクエスト担当。
・お気に入りのプレイヤーはソロプレイヤーのジェーンちゃん。
・いつも葉子さんに蹴られたり殴られたりしているがめげずに何かやらかす男。わりとタフ。
・相棒はゲーム内の女バーテンをやっている『的場美佐』。
とりあえず、洋治のライフはその後ゼロになると思います。
葉子さんが何かを企てる度にどんどん目的から離れていく予感がするのはなんでだろうね?