妖精さんのいるリフレ 作:七花
彩音ちゃんにお口でしてもらって、部屋を出ると、待合室のような場所に通された。
「祐一さん、施術後のサービスドリンクがあるんだけど。コーヒーとハーブティー、どっちがいい?」
「えっと、コーヒーで」
「わかったわ」
おぉ、こういうの、普通のリフレっぽいな。
待つこと数分。
良い香りのするコーヒーカップが運ばれてきた。
「熱いから気を付けてね」
「ありがとう」
一口いただく。
美味い。
インスタントじゃないのかもしれないな。
「さ、それじゃお会計しちゃいましょ」
「お、おぅ」
ちょっとドキドキする。
一応、マッサージ30分は4500円なわけだけど。
えろえろと、いやいろいろとマッサージ以外の行為をしちゃったわけで。
いったいどういうお値段になっているのだろうか。
万札一枚で足りるかな?
もしかして、桁が違ったりして。
なにしろかわいい幼女といろいろやっちゃったのだ。
相場というものが存在していないような気がする。
「はいどうぞ」
メモ用紙のようなものを彩音ちゃんが手渡してきた。
うさぎさんがプリントしてある。
可愛いな。
ってそんなこと考えている場合じゃないぞ。
恐る恐る、折り曲げられたメモ用紙を開くとそこには。
「500円?」
思わず素っ頓狂な声を上げた。
500円。
ワンコイン。
何度見返してもそう書いてある。
「あの、これって」
何かの間違いじゃないですか?
そもそもマッサージ代よりも安いんですけど。
そう言おうとすると、遮るようにして彩音ちゃんが言った。
「涼音の研修に付き合ってもらったからね。特別サービス」
おぅ、マジか。
むしろ俺は楽しかったし可愛い涼音ちゃんの大切なところを触ったり見たりしたわけで、持ってるお金の範囲内ならいくらでも払うんだけどな。
「あなたからお金取ったりしたら、涼音が怒りそうだしね」
やれやれと彩音ちゃんが肩をすくめる。
「うれしいけど。でも、やっぱりさすがに悪いような」
「いいのよ。相手が良いって言ってるときは甘えておくものよ」
彩音ちゃんが妙に大人びた様子で指を振った。
ま、そんな様子はむしろ子供が背伸びしてるみたいで可愛いんだけど。
「あ! でも!」
「なによ?」
「彩音ちゃんにヌいてもらった分は? なんで入ってないの? お口でしてもらったわけだし、せめてその分はちゃんと払うよ」
「んなっ!」
俺の指摘に、彩音ちゃんがぼんっと湯気を立てた。
「あ、あぁぁあれはべつにその。あれもサービスっていうか、わ、わたしがその、じ、自発的にやったことだからごにょごにょ」
なんかむにょむにょ不明瞭なことをおっしゃる。
「あぁもう、とにかくいいの! 全部サービス! さすがにゼロ円ってわけにはいかないから500円だけ払って!」
「わ、わかりました」
幼女の迫力に気おされて、財布から500円玉を取り出す俺。
「はい、どうぞ」
「んっ! 確かに頂きました」
満足げに彩音ちゃんが胸をそらした。
「領収書はいる?」
「……なんて書くのさ」
「リフレ代として以上領収いたしました」
「……べつにいらないよ」
ってか店名とか載るんだろうかその領収書。
とかなんとかしてるうちに、コーヒーを飲み終えた。
「これ、ご馳走様」
彩音ちゃんにカップを返そうとした時。
バターン!
勢いよく音を立てて、扉が開いた。
「あー、ずるいー」
涼音ちゃんだった。
お洋服をお着換えしていたのかな?
最初に着ていたワンピースじゃなくて、ちょっと可愛いリボンのついたブラウス。
よく似合っている。
「おにーちゃんへのおもてなし、涼音がする約束だったのにぃ」
お口の先をとがらせてぶーぶーとブーイング。
彩音ちゃんが肩をすくめた。
「あなた、熱いドリンク運んだらこぼしちゃうかもしれないでしょ?」
「そんなことないもーん」
「あるわよ。昨日の夜だってお夕飯の時、ジュースこぼして泣いてたじゃない」
「んぐっ。な、泣いてないもん」
「いいえ、泣いてたわ」
「うぅぅぅ~」
ここは小学校の休み時間か?
俺は思わず間に入る。
「そ、それより涼音ちゃん、さっきはありがとうね」
「ふにゃっ」
俺を見て、涼音ちゃんが真っ赤になった。
「んーん、涼音のほうこそ、ありがとう、だもん」
もじもじちらちら。
真っ赤なお顔で、俺を見たり、目線をそらしたり。
「おにーちゃんが、いろいろ教えてくれて、とっても嬉しかったの」
「そ、そっか」
「えへへ、うん!」
「そういうと、可愛いお洋服だね」
「うにゃっ!」
ネコさんみたいな声を上げたぞ?
「えへへ。おにーちゃんに見せたくて、お着がえしてきたの」
チェック柄のスカートのすそを持ち上げた。
「特別な時にしか着ない服♪」
「誕生日の日以来よね」
「うん!」
そっかぁ。
それを俺に見せてくれるんだ。
おもわず、涼音ちゃんの頭をなでなで。
あぁ、さらさらの髪だなぁ。
「んふふー」
涼音ちゃんは上機嫌。
「こらっ、お触り代金取るわよ?」
彩音ちゃんがジト目で俺をにらんだ。
※
こうして、俺の妖精さんリフレ初体験は無事終了した。
すがすがしい。
なんだか体が軽いぞ。
お店を出る時。
入口までお見送りに来てくれた涼音ちゃんが、てててっと俺のそばに駆け寄ってくる。
ぴとっと体をくっつけてきた。
ふわふわで柔らかいなぁ。
「あ、あのねあのね、おにーちゃん」
「ん?」
「また来てくれる?」
「もちろんだよ」
「よかったぁ」
それじゃぁね、と帰ろうとするが。
まだぴったりくっついて離れない。
「涼音ちゃん?」
「あのね、ぷ、プレゼントがあるの……」
「プレゼント?」
「渡したいから、しゃがんで?」
膝立ちになって、涼音ちゃんと目線の高さを合わせる。
改めて感じるけど、小さいなぁ。
身長135センチないんじゃないかな。
「何をくれるのかな?」
「えっとねぇ、あのね? 涼音特製の〝おきゃくさまか~ど〟だよ?」
ちょっと恥ずかしそうに、封筒を手渡してくれた。
子供っぽいカラフルな色の封筒だ。
開けてみるとそこには、メッセージカードが入っていた。
『おにーちゃん、きょうはきてくれてありがとう。すごくたのしかったです。はじめてのおしごと、ドキドキしたけど、おにーちゃんがやさしい人で、とってもうれしかったよ。
おみせのいりぐちで会ったとき、すずねのだいじなねこさんのぬいぐるみを、かわいいっていってくれたから、はじめてのおきゃくさまはおにーちゃんがいいなって思いました。
だから、おにーちゃんが、はじめてのおきゃくさまになってくれて、ほんとうにうれしいです』
つたない文字で、そんなメッセージが書かれていた。
裏返すと、クレヨンで描いた俺の似顔絵が。
「え、えへへ。おにーちゃんが彩音ちゃんとお話してる間に、頑張って描いたの」
涼音ちゃんはもじもじしている。
あぁ、可愛いなぁもぉ。
思わず抱きしめたくなるが、彩音ちゃんに怒られそうなのでぐっと我慢。
でも、思わず頬が緩んでくる。
ニマニマしながらメッセージカードを読み直していたら。
――ちゅっ。
「え?」
ほっぺたに、柔らかいものが触れた。
「ふぁ、ファーストキス」
俺のほっぺに口づけをした涼音ちゃんが、ささやいた。
「おにーちゃんに、あげちゃった」
嬉しそうに、でも恥ずかしそうにはにかんで、にこにこ、ぽわぽわ。
本当の妖精さんみたいに微笑んでいる。
さっき、キスよりもっとすごいエッチなことしちゃったわけだけど。
涼音ちゃんにとっては、ほっぺにチューすることのほうが一大事だったのかもしれない。
※
まるで夢見心地で、店を出た。
薄暗い雑居ビルの廊下を歩み、エレベーターで一階に降りる。
ビルを出ると、初夏の日差しが肌を照らした。
いつもと変わらない繁華街。
見慣れた光景。
ふと振り向くと、ビルの入り口にはリフレの看板も何も出ていない。
こっそりと営業しているんだろうから当たり前なわけだけど。
まるで白昼夢みたいだ。
でも……。
俺は、ポケットの中から、涼音ちゃんのくれたメッセージカードを取り出した。
それはしっかりと存在している。
さっきまでの体験は、事実だったんだ。
「ま、また来よう!」
ぐっとこぶしを握り締める。
涼音ちゃんともっとエッチな関係になりたいし、彩音ちゃんにもお口以上のことをして欲しい。
さすがに次もサービス価格ってわけにはいかないだろうから、バイトも頑張らなきゃな!
「よぉし! やるぞぉ!」
意気込んで帰路に着く俺は、物陰から見ている人影に気づいていなかった。
※
???「やっと出てきた。お兄ちゃん、あのビルで1時間も一体何してたの? 妙に晴ればれとした顔してるし。いつもバイトの後はぐったりしてるのに。怪しい! 怪しすぎるわ! ここは妹の義務として調査しなくっちゃ!」
???「な、渚ちゃん、ビルの中に入るの? な、なんだか薄暗い感じだし怖いよぉ」
???「栞ちゃんはお兄ちゃんが何してたか気にならないの?」
???「うぅ、き、気になる」
???「じゃ、決まりね! ほら、行くわよ」
???「うぅぅ、怖いところじゃありませんよぅにぃ……」
少し仕事が忙しくなりますので、次の更新は8月の予定です。
お読みいただきありがとうございます。