※この作品はR-18です。

シンデレラは夢の中で穢される   作:黒胡椒サラミ

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島村卯月②

「本当に……来ちゃったよ……」

 

 僕は信じられない思いでつぶやいた。

 駅前にある謎のオブジェを見下ろせる位置で、僕は様子をうかがっていた。僕の目には、駅の建物から出てきて、そのオブジェの前で足を止めた卯月ちゃんの姿が映っている。

 黄土色のジャケットに赤いリボン、赤チェックのスカートは、彼女の学校の制服なのだろう。アイドルとしての卯月ちゃんじゃなく、ただの女子校生としての卯月ちゃんをこの目で見るのは、これが初めてだった。

 これは、いわば実験だった。僕の夢の中に出てくる卯月ちゃんが、本当に「現実の卯月ちゃん」の意識と繋がっているのかどうか。それを確かめるための方法が何か無いかを考えた結果だ。それでもまさか、これほど上手く行くとは思わなかった。

 僕はまず、夢の中の卯月ちゃんに、家の住所や通っている学校の名前を訪ねた。それらはプロダクションのプロフィールにも載っていない、彼女の個人情報だ。さらに通学方法と通学路を聞き出し、それを現実の路線図と照らし合わせて、僕のアパートからも近かったこの駅を選んだ。水曜日の朝は、この駅で降りろ。それから、駅の外にある目立つオブジェの前まで行け。ここしばらく、僕は夢の中で、その指示を卯月ちゃんに繰り返し囁き続けた。

 

(もう、信じないわけにいかないな……。夢の中の卯月ちゃんは、本物だ)

 

 僕が得たこの能力は、単に僕の夢を操るというにとどまらない、恐ろしいものだった。それを確信した僕の中に、邪悪なものが込み上げる。

 

(そうか……僕は今まで、本物の卯月ちゃんたちとセックスしてたのか……)

 

 ここは天下の往来だというのに、僕はズボンの下でバキバキにチンポをいきり立たせていた。夢の中で犯しているアイドルたちが本物だと知っても、彼女たちに遠慮しようなどという思考は、快楽の虜になっていた僕には浮かばなかった。

 それどころか、僕は

 

(この力を使えば……。きっと現実の卯月ちゃんたちとも……)

 

 卯月ちゃんは、しばらくオブジェの前で首をかしげてから、駅の建物の中に引き返していった。

 

 

==

 

 

(あれ……どうして私……こんな駅で?)

 

 改札を通ってしまってから、卯月はようやく自分の行動に疑問を持った。ここはまだ、学校最寄りの駅ではない。なのに、どうして自分は電車を降りてしまったのだろう。

 

「よけてもらえませんか?」

「……え? ――あ! す、すみません!」

 

 後ろからスーツ姿のOLに言われ、ぼうっと改札前を塞いでいた卯月は、学生鞄を胸に抱え、慌てて前に進んだ。その勢いのまま歩きながら、卯月は思考を整理しようとした。

 

(今日は普通に起きて……朝ご飯を食べて……お母さんに行ってきますって言って……)

 

 思い返してみたが、何もいつもと変わっていない。普通に学校に通う日の朝だったはずだ。電車に揺られていた時は、英語の小テストや放課後のレッスンのことを考えていた。これもいつもと特に変わらない。なのに卯月は、なぜかいつもと違う駅で降りた。

 今日は水曜日である。通勤時間帯の駅は、ごちゃごちゃと人であふれている。人が多すぎて、有名アイドルがすぐそこを歩いていても気付かれないくらいだ。間違った駅で降りたこと自体は、卯月のおっちょこちょいで済む話だったかもしれない。しかし、間違った駅で降りたことに気付いたはずの卯月は、どうしてか再び改札をくぐってホームに戻ろうとはせず、駅の入り口に向かって歩いていた。

 

「……あれ?」

 

 数分後、卯月は駅の外にいた。彼女の目の前には、こういう場所にありがちな、芸術作品的な謎のオブジェが飾られている。どうして自分は、初めて降りたはずの駅の中を真っ直ぐ歩いて、このオブジェの前まで来て、そして足を止めたのだろう。卯月は自分の行動の理由が分からずに、困惑したまま謎のオブジェを見上げた。

 

 

==

 

 

「卯月~、早くしないと遅刻するわよ~」

「はーい!」

 

 母に急かされ、卯月は階段を小走りで駆け下りる。流石に食パンを咥えて通学路を走るようなベタな真似はしないが、確かにこれ以上のんびりしていると遅刻する恐れがある。

 そんな娘の立てるドタバタを聞きつつ、食卓で朝刊を開いていた卯月の父が、母に言った。

 

「なあ、卯月は少し寝坊助になったんじゃないか?」

「そうかしら?」

「最近の朝は、いつもこんな風に慌ててるじゃないか。アイドルと学校の両立は、やっぱりあの子には大変だったんじゃないかな……」

 

 父親というものは、娘のことについては過剰に心配性になるものだ。はいはいと受け流しながら、卯月の母は微笑んだ。

 

「卯月の心配をするより、急がないとあなたも遅刻するわよ? 朝から会議があるんでしょう?」

「おっと、そうだった!」

 

 新聞を脇に置くと、卯月の父も朝食の残りを慌てて片付け始めた。

 豪邸とまではいかずとも都内に立派な一軒家を構え、収入も安定している。両親は仲睦まじく、一人娘はすくすくと健康的に育っている。しかもその娘はアイドルとして活躍するほど可愛らしい。リビングに飾られている家族写真は、彼らがお互いに愛し合っている証拠だ。ここには誰もがうらやむような、非常に恵まれて幸福な家庭の風景があった。

 卯月は家の玄関を出ると、スカートを翻して駅に急いだ。途中、犬の散歩をしている老爺がいて、「転ばないようにね、卯月ちゃん」と、彼女に声をかけた。登校途中の小学生の列からは、明るく元気なおはようの挨拶が聞こえ、卯月はそれらに笑顔で返した。

 島村家のかけがえのない一人娘である卯月。近所の住民たちから慕われ応援される卯月。クラスメイトの皆から大切な友達だと思われている卯月。ステージで輝き多くのファンを魅了する、アイドルの島村卯月。愛に包まれて育った彼女は、今も本当に多くの人に愛されている。

 

「――ふぅ~」

 

 駅まで駆けた卯月は、改札を抜けると、滑り込むように電車に乗った。

 

(良かった。間に合った)

 

 胸を押さえて一息ついてから、卯月は風で乱れた髪やスカートを手で整えた。発射のベルトアナウンスが鳴り、ガタゴトと車両が動き出す。

 

「…………」

 

 通勤ラッシュの車両の中では、誰も声を発さない。みんな自分の手の中にあるスマホや新聞を覗き込んでいたり、吊革につかまったまま首を垂れて眠っていたりする。そうしながら、学校や会社――それぞれ自分のことだけを考えていて、敢えて他の人間に興味を持つ者はいない。そんな中、卯月は車両のドアに身体の正面を向け、流れていく外の風景をぼんやりと眺めていた。

 卯月はそうしながら、ある考え事をしていた。

 

(今日も……見ちゃった……)

 

 何を見たのかというと、卯月は夢を見たのだ。とても生々しく、激しく、肉欲にまみれた淫らな夢を。最近の卯月は、眠ればそういった夢ばかりを見ている。

 今朝も、起きたときにはパジャマが汗でぐっしょりと濡れており、それ以上に、下着が絞れば水滴が零れそうなくらい濡れそぼっていた。母に気付かれないように後始末していると、家を出る時間がいつもギリギリになる。極力誰にも自分の変化を悟られないように振舞っていても、こうやって一人になると、ついつい夢のことを考えてしまう。

 

(どうして私……あんな……ん……っ。――また…………)

 

 身体の奥に熱を感じ、卯月は周囲に気付かれないくらいの動きで、太ももの内側を擦り合わせた。夢について考えるときは、いつもこうなる。羞恥に頬を染めた彼女は、普段よりも数段大人の女に見えた。

 たかが夢とは言えないくらいの――もしかしたら現実よりも生々しい感覚を、卯月はその夢の中で味わっていた。だが、「いやらしい夢を見た」ということは思い出せるのに、「ではどんな夢を見たのか」という問いには答えられない。

 卯月の口から、ほうっと悩まし気な吐息が漏れた。

 

(こんな……電車の中なのに……っ。ダメ……っ)

 

 スカートの奥がむずむずする。可能なら、手すりの金属棒に股を擦り付けたり、この場で下着の中をまさぐったりしたい。性欲に目覚めた若い身体が、持ち主である卯月の精神を引っ切り無しに責め苛んでいた。

 性については奥手だったはずなのに、卯月はこの頃、毎夜のようにオナニーをしている。はじめは下着の上から軽くクリトリスを擦るくらいの可愛らしいものだったが、最近ではショーツの下に手が侵入し、もう一方の手が乳房を掴んで揉み上げている。

 自分はこんないやらしい娘じゃなかったはずなのに。こんなことをするのはいけないのに。そう思って目尻に涙を浮かべながら、それでも卯月は肉体の欲求に逆らえず、軽い絶頂が身体の疼きを鎮めてくれるまで、自慰にふけっていた。だが、そうやって性欲を解消してもなお、眠れば見るのはあの夢だ。

 

「ん……っ………」

 

 卯月はまたしても電車内で身をよじった。この時、オスを誘う濃密なフェロモンが、自分の全身から発散されていることに、果たして卯月は気付いていただろうか。それは、アイドルとして彼女が持つ魅力とはまた違う、蕩けそうに甘いながらもアルコール度数の高いカクテルのごとく、人を酔わせる香りのようなものだ。そんなものを公共の場で発散していれば、悪い虫が寄ってくるのは避けられない。

 卯月が自分の背後に「その気配」を感じたときには、既に男の手が、彼女の柔らかい肌に触れようとする直前だった。

 

「――――っ!?」

 

 卯月は息を詰まらせた。誰かの手が、スカートから露出している卯月の脚を触っている。

 

(ち、痴漢……!?)

 

 そうであることは疑いようがない。卯月のむき出しの柔肌に触れているのは、紛れもなく成人した男の手だった。満員電車の中で、ドア際で外のほうに身体を向ける卯月の背後に立って、犯罪者は周囲に気付かれぬように、それとなく乙女の肌をまさぐっているのだ。

 咄嗟に、声を上げなければと卯月は思った。叫んで、周囲に助けを求めなければ、と。だが、彼女は悲鳴を喉の奥に飲み込んだ。――もしも自分が叫んだら、この男性の一生は台無しになる。心優しい彼女は、自分に害をなす痴漢に対してすら、そんな風に思いやってしまったのだ。

 しかし、卑劣な性犯罪者は、そんな少女の心優しさに付け込んで、ますます手の動きを大胆にしていく。さわさわ、さわさわと太ももを摩り、スカートの上から卯月のお尻を撫ではじめる。

 

(や、やめて)

 

 卯月の口が、パクパクと動いた。しかしやはり、そこに実際の音は伴っていない。絶対に声を出してはいけない。なぜだかわからないが、そう強く思ってしまうのだ。

 

(だ、ダメ……! 痴漢さんの手が……私のお尻を触ってるよぉ……! 助けて……! ――――!! ――あ、す、スカートの下にまで――!)

 

 卯月が抵抗しないとみて、痴漢はますます調子に乗っていく。彼は卯月のスカートの下に手を差し込み、卯月が履いている下着の形を確かめるかのように、ショーツの淵を手でなぞり始めた。そして、鼠径部のあたりを指の腹で触れられた時、卯月の口から反射的に声が漏れかかった。

 

「――あっ」

 

(ダメっ!!)

 

 しかし何を思ったのか、卯月は咄嗟に自分の手で口をふさぎ、悲鳴を押し殺した。この行動は、周りに知られたくないという羞恥心とか、相手に対する同情とかの枠を超えている。そう、まるで何かの暗示にかけられてしまったように、卯月は、「電車の中では、自分は声を出してはいけない」という考えに囚われてしまっていた。

 

(ん――……! むぅ――……!)

 

 痴漢の手が触れている場所は、卯月が今まで誰にも触らせたことの無い部分だ。確かに、本田未央などの、コミュニケーションに積極的なタイプの同僚アイドルに、ハグされたり冗談交じりで肌を触られたりしたことはある。だが、こんなデリケートゾーンまでを、見も知らぬ男の手によって、朝の満員電車という空間の中で侵略されようとは、想像したこともなかったはずだ。

 痴漢の手は卯月の下半身だけでなく、胸の膨らみにまで伸びてきた。卯月の胸のしっかりとした膨らみと柔らかさは、厚いブレザーの生地の上からでも、痴漢の手に明確に伝わる。そして、ということは、卯月のほうも男に「触られている」、「揉まれている」という感覚をはっきりと味わっていた。電車の中での羞恥行為。痴漢の手の動きがエスカレートすればするほど、今さら周囲に助けを求めたところで、自分の恥を知らせるだけなのではないかという思いがつのる。

 

(あ――っ、んぅ――っ)

 

 もしも卯月が手で口を塞いでいなかったら、この時には既に、明らかに喘ぎと分かる声が彼女の口から洩れていたに違いない。生きた男の手による愛撫に、卯月の肢体は驚くくらい敏感に反応した。太ももやお尻を撫でられ、胸を揉まれるたび、その部位を中心にゾクゾクと電流のようなものが体中を駆け巡る。

 

(私……痴漢さんの手で、気持ち良くなって――? どうして私……こんな……――あっ♡)

 

 痴漢の指が、卯月の股間のスリットをショーツ越しに撫でた。その瞬間、腰が引けるくらいのビリビリが走り抜けていったのを、卯月は感じた。膝が笑い、脚がガクガクと震える。電車のドアに手を突き、上半身を押し付けるような格好で、卯月はどうにかバランスを崩して転倒するのを堪えていた。

 

(それ、ダメ――やめて! やめてください! お股のそこをクリクリされるのダメなんですっ! あ――っ♡ ――ちくび、服越しに、触られて――!)

 

 胸と股間を同時に愛撫されて、卯月は完全に痴漢のテクニックに翻弄されていた。まるで、痴漢の指は卯月の身体の何もかもを知り尽くしているかのように、的確に弱点を刺激してくる。自分自身で慰めた時よりも深く激しい快感を、今の卯月は味わわされていたのだ。

 そして、頭の中が大混乱に陥っても、やはり卯月は声を外に出せなかった。それどころか、彼女はあたかも他の乗客の目から自分たちの状態を隠すかのように、無意識のうちに身体を移動させていた。

 

(ダメっ、ダメっ、ダメぇっ! このままじゃ、私イッちゃう! こんなところで、電車の中でイッちゃうよぉ! やめて! 痴漢さん、やめてください!)

 

 痴漢の手により、卯月の性感はどんどんと高まっていく。このままでは、フィニッシュを迎えるのもそう遠くない。「夢の中」を除けば、今まで経験したことも無いような絶頂に、卯月はこんな場所で到達してしまうのだ。その予感に対し、その時の卯月は、恐怖と――ごまかしきれない期待の感情を抱いていた。

 スリットを擦る痴漢の指が勢いを増し、卯月の閉じた瞼の向こうから、眩いくらいの白い光が近づいてくる。その向こうに、天国のようなエクスタシーが待っている。電車の中で絶頂するという、女子校生としても、アイドルとしても言い逃れ得ぬような痴態。卯月の理性はそれを全力で拒否していたが、津波のような快楽の前に、そんな理性はちっぽけなボートよりも頼りなかった。

 そしていよいよ、「その時」がやってきた。

 

(イクっ! イクっ! イクっ! イク、イク、イッちゃう――! ――――あ)

 

 しかし、卯月に絶頂は訪れなかった。そうなる瞬間、痴漢の指は卯月の身体から離れ、決壊寸前まで高まっていた性感は、潮のように引いていった。その後に残ったのは、ぽっかりと穴が開いたような空虚感と、身体の底に溜まった熱いマグマのような疼きだった。

 

(ど、どうして?)

 

 痴漢からお預けをくらった卯月は、一瞬だがそう思ってしまった。どうして私を、最後までイカせてくれなかったのか、と。

 卯月は思わず、痴漢の顔を確認するために振り向こうとした。だが彼女はそこで、自分の首が一定の角度から動かないことに初めて気づいた。「振り向いてはいけない」と、卯月を戒める声が心の中で響いた。

 ちょうどそこで、車両内のスピーカーが放送を流す。

 

「次は、△△駅です。まもなく停車します」

 

 卯月が弾む息を整えている間に、電車はホームにたどり着いた。目の前のドアが開き、車内の人と空気が入れ替わる。その気配を、卯月はうつむいて目を閉じたまま感じていた。そしてドアが閉まり、電車が再び動き始めたところで、彼女は振り向いた。

 

「あ――」

 

 いつの間にか、声も出せるようになっている。だが、振り向いた卯月と目が合った初老のサラリーマンは、どうしてこの娘はこんなに慌てているのだろうという目で彼女を見ている。この男がさっきの痴漢と別人だということは、いちいち尋ねてみるまでもなく分かった。

 痴漢は、卯月の傍から居なくなっていた。

 

「はー…………」

 

 緊張感を失った卯月の身体に、どっと疲労が襲ってくる。卯月はドアに背中を預けながら、まだ動悸が収まらない自分の胸を、その手でぎゅっと押さえていた。そして、そんな少女の内ももに、汗ではない一筋の液体が伝っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==

 

 

(電……車…………?)

 

 ガタゴトと身体が揺られる感覚に、卯月は目を覚ました。ゆっくりと目を開くと、その前は暗闇だった。卯月の前には電車の窓があって、彼女はその向こうに流れるトンネルの壁のような景色を見ていた。

 

(私……いつから電車に乗ってたのかな……)

 

 頭はまだぼんやりとしている。いつから、どうしてという感覚が曖昧だ。

 卯月は電車の中で、吊革につかまり立っていた。制服を着て、学生鞄も持っている。ということは、登下校の途中だろうか。それとも、レッスンが終わった後の帰り道だろうか。そんなことすらわからない。

 

「…………」

 

 卯月はそのまま、無言で電車に揺られた。ここはどうやら地下鉄のようで、トンネルがいつまでも途切れない。彼女の頭はそういったことを認識したが、では、どうしてこの車両には、自分以外に誰も人が乗っていないのかという当たり前の疑問には気付かなかった。そう、卯月は今、誰もいない電車に一人きりで、それでも座席に座らずに、吊革につかまって立っているのだ。

 

「は~……」

 

 卯月は目を閉じてため息をついた。いつになったら駅に着くのかと思ったのだ。あまり長く電車に乗っているのは嫌だった。なぜかと言うと、ここしばらく、卯月が電車に乗る時は決まって――

 

「――え?」

 

 窓ガラスを見た卯月は、自分の後ろに男がいることに気付いた。それに気付いた瞬間、卯月の心臓は高く跳ねた。間違いない。この男は、卯月が電車に乗るたびに現れる、例の痴漢だ。いつもは振り向く事すらできず、顔を確認したことはなかった。でも、今日は相手の顔が見える。相手の顔が、窓ガラスに映っている。映っているはずなのに。

 

(映ってるのに……どうして?)

 

 確かに視界にとらえているというのに、卯月の脳は、相手の顔を認識することを拒んでいた。相手の男の顔回りだけが、まるでモザイクでもかかったかのようにぼやけて曖昧だ。

 呆然とする卯月に構わず、窓ガラスに映る痴漢は、おもむろに両手を卯月の胸の膨らみに添える。そしてゆっくりとした動作で、円を描くように揉み始めた。

 

「あ……っ♡ や……っ♡」

 

 この車両には二人以外の誰もいない。いたとしてもハリボテのようなもので、二人が何をしていようと気に留めない。痴漢はそうとでも言いたげに、大胆な動きで卯月の乳房を揉み上げる。しかし当の卯月にとっては、ここが衆目の目に晒された公共の場であるという意識は変わらない。そんな場所で受ける恥辱に、彼女は全身を熱くした。

 

「やめてください……っ♡ やめてください痴漢さん……っ♡」

 

 そのような甘ったるい声で懇願されても、説得力は皆無だ。むしろ男を煽っているとしか思えない。興奮した痴漢は、卯月のうなじに鼻面を近づけ、ゆるくウェーブのかかった髪と、襟足から立ち上る濃密な少女の薫りを胸いっぱいに吸い込む。

 

「あ――♡」

 

 学生鞄が床に落ち、その拍子に教科書が散乱する。卯月は逃げたかったが、右手が吊革に吸い付いたようになって離れない。右手を無理やり引きはがそうとして添えた左手も、同じように吊革に吸い付いた。高く上げた両手で吊革を持った格好の卯月は、ほとんど無防備な状態で、痴漢に胸を揉まれていた。

 ここが、痴漢を演じる男に見せられている夢の中の世界だと、卯月は気付いていない。男がイメージによって再現した仮初の電車内は、卯月から見ても現実そのもののリアルさだった。

 

「そん――なっ♡ 電車の中で、おっぱい、揉まれるなんて――♡ ――や、なのに、どうして、こんな――っ♡」

 

 卯月はこうやって夢の中でも痴漢され、現実世界でも同じように辱められる。無意識下の無防備な精神に働きかけられている以上、卯月が男に抵抗する術はない。男の目論見通り、卯月は自分の弱点を男にさらけ出して、男の玩具になっていた。

 

「やめてください――♡ やめて……! あっ♡ 痴漢……さぁん♡ やめて……っ♡」

 

 卯月の声は熱っぽくなり、吐息は湿度を増していく。抵抗するために身をよじっているようでいて、くねくねと誘うような動きをしているようにも見える。汗がフェロモンとなって、それを吸い込んだ男の肉棒を煽り立てる。辛抱しきれなくなった男は、卯月のスカートをまくり上げた。

 

「やだぁっ! 下着、下ろさないで……っ! こんな場所で……みんなに、見られちゃう……!」

 

 男の手が、卯月の清楚な白いショーツを下ろしていく。発育の良い桃のようなヒップが、その奥の綺麗な菊門ごと丸見えになった。当然、少女のマンコも同様に丸見えだ。下着を下ろした瞬間から男には分かっていたが、そこは既にじっとりと湿り気を帯びていた。

 これからハメるうら若き乙女の身体を前にして、男は舌なめずりをするように、滑らかな尻を撫でながらそれを鑑賞した。

 

「ごめんなさい……! 許してください……! もう許して……!」

 

 卯月の涙ながらの謝罪に対しても、男は無言のままだ。無言でカチャカチャと、ズボンのベルトとファスナーをいじくっている。これから彼が何をしようとしているのかは、卯月にも当然理解できた。男が露出させたバキバキに反り返る肉棒が、卯月の尻の割れ目にあてがわれる。

 

「やめて……! おチンチン、やめてください……! こんな場所で、えっちしたら……! あ……♡ ああ……♡ おチンチン……! 入るぅ……♡♡」

 

 ぴっちりと閉じた卯月の秘裂を、男の亀頭がかき分けてくる。卯月にとって、これは何度目の処女喪失になるのだろうか。彼女はこの夢の中で、幾度となく、あらゆるシチュエーションで男に抱かれてきた。男は卯月のマンコについて、そのヒダの一本一本まで知り尽くしている。しかし卯月にとっては、これが初めて男性器に貫かれる体験であることは変わりなく、彼女は天地がひっくり返るような衝撃に晒されていた。

 

「い、たい……よぉ……! ――あっ♡ いたい、のに……♡ どうして、こんな……♡」

 

 初めてなのに懐かしいような感覚。何度もこの太いモノに内側を貫かれてきたような、これが自分を天国に連れて行ってくれるモノだという、魂に刻まれた記憶。これが自分を支配するモノなのだという、確信にも似た予感。嫌でたまらないはずなのに、心の奥底から湧き出てくる幸福感。何度も何度も何度も何度も夢で調教されてきた記憶が、卯月の中でごちゃまぜになって、訳が分からなくなる。

 

「――お、チンチン♡ ――おチンポぉっ♡ すごいよぉっ♡」

 

 結果として、卯月は今の自分が最もはっきりと知覚している感覚――男の肉棒が与えてくれる快感にすがりついた。電車の中で、制服を着た女子校生アイドルが、吊革につかまってスカートをまくられ、立ちバックで犯されている。そんな背徳的過ぎる光景が、当たり前のようにこの場で展開されていた。

 

「――あっ♡ ――すごっ♡ 痴漢さんにパンパンされるの、すごいですぅっ♡」

 

 男によって汚染され切った卯月の理性は、いともたやすく崩壊する。ズチュズチュと音を立てて激しい抽挿が行われ、男のチンポが卯月の中を滅茶苦茶に侵略する。ここにギャラリーとなる他の乗客はいない。だが、卯月は確かに、痴漢とのガチハメセックスにふける自分を眺める、一般乗客たちの冷ややかな視線を感じていた。しかし、冷水のようなその視線を浴びせられてなお――むしろだからこそ、卯月の身体は熱く火照っていた。

 

「あっ♡あっ♡あっ♡あっ♡あっ♡あっ♡」

 

 卯月は男のピストンに合わせ、淫らに喘いだ。彼女は片脚に脱がされたショーツをひっかけている。それ以外は、ブレザーもシャツもスカートも着用したままだ。チンポをマンコにぶちこんで、手早く射精するためだけの格好。今の卯月たちを形容するなら、それが最も相応しい。卯月の生尻を掴んだ男は、しゃにむに腰を振りたくって、卯月のマンコに食い締められたチンポが味わう性快楽を、歯を食いしばりながら存分に堪能していた。

 男の五指は、卯月の尻肉に食い込んでいる。きっと手形が残るだろう。卯月は痴漢に好き勝手に犯され、その証を身体に刻まれるのだ。

 卯月は喘ぎながら窓ガラスを見た。

 

(ああ……私……すっごいエッチな顔しちゃってる……)

 

 痴漢に処女を散らされ、バックからガン突きされて、窓ガラスに映る卯月はとてつもなく恍惚とした表情をしていた。これで嫌がっているとは口が裂けても言えない。間違いなく、大人チンポに犯されて悦ぶ変態娘の表情だ。それを目の当たりにして、卯月の中でぷつんと何かの糸が切れた。

 

「もっと……もっとお願いしますっ♡ 痴漢さんっ♡ もっと私をエッチな子にしてくださいっ♡ 痴漢さんにエッチされて喜ぶ卯月にお仕置きしてっ♡ おチンポハメハメしてぇっ♡」

 

 卯月は諦め、快楽に素直になることにした。考えたこともない下品なおねだりの台詞が、まるで教えられたように卯月の口からすらすらと飛び出る。卯月が感じている周囲からの視線は、もはや取り返しがつかないくらい冷え切ったものになった。それでも、卯月は正直にチンポ快楽の素晴らしさを口にし、痴漢にレイプされることの喜びを訴えた。

 

「気持ちイイっ♡ 気持ちイイっ♡ 気持ちイイですっ♡ 痴漢チンポ気持ちイイですっ♡ もっとしてくださいっ♡ 私を痴漢さんのおチンポの奥さんにしてくださいっ♡ ――気持ちイイっ♡ 気持ちイイっ♡ 気持ちイイよぉっ♡」

 

 そこに、ファンのために頑張るアイドルはいなかった。そこにいたのは、ただの淫乱なメスだった。彼女は自分に快楽をもたらしてくれるただ一本のチンポに愛情を捧げ、忠誠を誓っていた。自分でも快感を貪りながら、きゅうきゅうとマンコを締めてチンポに媚び、射精を誘っていた。

 

「あっ♡ えへへっ♡ おチンポ膨らんできましたっ♡ 射精するんですね♡ ありがとうございます♡ 私のおマンコで、いっぱい射精してくださいっ♡ びゅるびゅる~って、奥にたくさん吐き出してくださいっ♡」

 

 卯月の太陽のような笑顔は、ファンにではなく、自分の子宮に種付けしようとしている痴漢男に向けられたものだ。卯月は自らも腰を動かし、男の射精に向けたラストスパートを献身的に応援する。快楽の火花が弾け、卯月自身も果てに向かって突き進んでいく。

 

「おくっ♡ おくにお願いしますっ♡ 一番おくに押し付けて射精してっ♡ それが一番気持ち良くなれるからっ♡ ――あっ♡ んっ♡んっ♡んっ♡んっ♡んっ♡んっ♡ おっ♡ んおおっ♡ ――もっ♡ イクっ♡ イッちゃう♡」

 

 男のピストンの激しさに、卯月はつま先立ちになり、彼女の尻肉は波打っていた。こんな安産型のヒップをもった女子校生にナマ出しすれば、さぞかし心地よく射精できるだろう。そして、彼女は立派な赤ん坊を孕んでくれるに違いない。

 

「ガマンしないでくださいっ♡ しゃせいお願いしますっ♡ 種付けしてくださいっ♡ 痴漢さんのせいえきくださいっ♡ 卯月をママにしてくださいっ♡」

 

 これはもはや、完全に合意の上でのラブラブセックスだ。つがいになったオスとメスが、子孫を残すために交尾しているだけだ。男は射精感を必死にこらえていたが、子宮を明け渡した美少女の懇願の前に、その我慢にも限界が来た。白い絵の具のようなこってりとした精液が、尿道を駆け上ってくる。男はメスの願い通りに、彼女の一番奥にチンポを打ち付け、その勢いのままに射精した。

 

「あ――――♡ ん――――♡ んぅ~~~~~~~~~~~っっ♡♡♡♡ ~~~~~っ♡♡♡ ~~~~~~~~~っっ♡♡♡」

 

 卯月の膝が一際激しく痙攣し、マンコから噴き出た潮が、スカートに染みを作る。中出し射精を受けて、卯月が激しく絶頂しているのは明白だった。

 

「お~~~~~~~っ♡♡♡♡ ――あっ♡ ん~~~っ♡ん~~~~~♡♡♡♡」

 

 重たく長い絶頂が、卯月の知能を低下させる。結合部から逆流した精液が、床に散乱していた教科書の表紙に降りかかる。

 

「――おっ♡ ――あっ♡ いッ~~~~~~~♡♡♡」

 

 卯月のイキマンコは、男のチンポがまるで太いストローであるかのように、そこにちゅうちゅうと吸い付いて中から精液を搾り取ろうとしていた。男も現実では考えられない量の射精でそれに応え、二人は絶頂に浸っていた。

 

「あっ♡ あっ♡あっ♡あっ♡あっ♡あっ♡ すごっ――♡」

 

 射精とアクメがひと段落すると、二人は再び腰の動きを再開した。そして卯月と男は、終着駅の無い電車の中で、いつまでもいつまでも終わらない交尾を続けた。

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