――3日目、グリムファングの砦街、黒竜の酒蔵亭
目の前に立っていたのは、エプロンドレスでトレイ持った女性店員。
頭にヘッドドレスあったら、まさにメイドだったが、残念ながらつけてない。
身長は同じくらい。
年はたぶん、あっちの方が若い。
全体にほっそりしてスレンダーで、胸もルーネ様や自分ほど大きくない。
少し茶色がかった金髪を、後ろで縛ってまとめてる。
整ったやさしい顔立ちに対し、青い瞳はなんだか冷たい。
まあ……この状況では冷たい視線になるのも、やむをえないのだけど。
ハイ、現実逃避に観察してました。
「……何してるんすか?」
「あ、あ……」
アバーッ! どないしょ!
オナニー見られた! 盛大に声出してた!
ちゃうねん! 別に入って来た人に見せつけようとしてたわけじゃないの!
「ここ、そういう宿じゃないんすけど。首の刻印ってコトは、奴隷さんで?」
「ひ……そ、そうですぅ」
「ふーん」
朝ごはんとか言ってたし、宿の店員さんですよね?
ぜんぜん動じてなくて、こっちがいたたまれないんですけど!
しかも、なんで後ろ手でドア閉めてんですか!
「あの……ドア……」
「開けっ放しだと、誰に見られるか聞かれるかわかんねーっすよ。おねーさんは見せつけたいかもだけど。ホントここ、そういう宿じゃないんで。勘弁してくれないっすかねー?」
「ご、ごめんなさい」
第一印象のせいか口悪い……親近感持ちやすい口調っすけどね。
って、あれー?
薄暗い部屋の中、トレイを持ったまま、店員さんがベッドに座る。
窓から漏れる光が逆光になって、シルエットしかよく見えない。
気まずいんだし、ごはん置いてさっさと出てくトコでは?
ベッド見たり、臭い嗅いだりしてるのなんで?
「んー、臭いも汚れも雌のばっか。雄の臭いはナシ……お嬢様に抱かれなかったっすか?」
「お嬢、様?」
メイド喫茶的な宿だったのかな。
「ルーネ様っすよ。あの人、おねーさんみたいな女見たら即ヤっちゃうでしょ?」
「あ、はい。昨夜は、別に」
「昨夜は、ね」
え。何この人。
ただの店員じゃないの?
なんでサスペンスの探偵役みたいなこと言ってんの?
「ま、あたしもちょーど、これで仕事は終わりっす。お嬢様のことも聞きたいし、ちょっーとお話しないっすか?」
「うぇ? え、まあ……いいですけど」
再び硬直してしまう。
オナニーくらいしかすることないし、ヒマだけど!
唐突に出会った人と会話とかハードル高い……いや、できるけど、たいてい距離感ズレたこと言って嫌がられるパターン! でも断るのもこわい!
「おねーさん、お名前は? 私はヴェノミナ。ミナでいいっすよー」
「あ、アルマです」
「へぇ。宿帳には、マールって書いてたっすよね?」
しまったあああああああああああああああああああ!
街の中は偽名でって、ルーネ様いってたじゃん!
バカバカバカバカバカ! やっぱ今日の自分は昨日よりバカ! オナニー練習見られるし、ろくなことないわ! 己自身が一番信用ならんわ! 今日生きてるんじゃなかった!
「な、ナイショにしてください……」
「んー。あたしも、うっかり屋なもんで。探してる人がいたら、ぽろっと教えちゃうかもしれないっすねー」
「お願い、です、ミナ」
「あれれー? お願いなのに呼び捨てっすかー?」
「うう、お、お願いいたします、ミナ、様」
「くひっ」
えっ。
なんかめっちゃヤバイ系ヒロイン臭する笑い声聞こえましたよ。
やりとりも、外道っぽかったよね?
顔が逆光でよく見えなくて、なおさらコワイんですけど。
「あ、あの……」
「いつまでその下品なカッコしてるんすか。ごはん、持って帰るっすよー?」
「あ、あう、ごはん、ほしいです」
おなかはすいてる!
しかも、ずっとエロ蹲踞のままだったわ!
慌てて足を閉じて立ち――
「何立ってんすか?」
「え?」
「奴隷らしく食べないとダメっすよ♪」
「は?」
トレイを、床に置いた?
え? スプーンを……取った?
差し込む光に照らされた横顔の口元、すごい三日月笑いだったですけどー!
ガチな悪役がよくやるやつー!
つまりアレですよね! 雌犬らしく食えってやつですよね!
「ほら、こっちきて食べるっすよー、奴隷ちゃん」
「ま、待ってください、昨夜は普通に食べ……」
「んー? アルマちゃんがここにいるって言いふらして大丈夫? 宿帳と違う名前名乗って、ルーネ様は……」
「ひぅ、奴隷らしく、いただき、ます」
初対面でなんなの、この人!
でも、おなかはすいたし……のそのそと、床を四つん這いで這って、トレイに。
このくらいのプレイは許容範囲だし!
小学校の頃いじめられてたトラウマとか、かすりもしねーし!
はぁ。
トレイに乗ってるのは、ちゃんと柔らそうなパンに、スープ。そんで、丸ごとの林檎。
這いつくばって、四つん這いでパンをかじり。
スプーンはもらえなさそうだから、スープを犬食い。
「うぅ……ぴちゃ……ぢゅる……」
「スープ飲むだけで卑猥な音~。お嬢様のもしゃぶったっすか?」
「……ぅぅ……ひゃい……しゃぶりました……」
「ふーん、帰って来る前に、お嬢様にしっかりヤられた?」
「……はい」
「ほほー。それはそれは~♪」
ミナが屈んで手を伸ばし、トレイから林檎をとる。
チラっと見ると、すっごいニヤニヤ笑ってた。
あれ? そういやさっきから普通に言ってるけど、なんでミナはルーネ様がふたなりだって知ってんの? 鎧の上からじゃ、あのチンコも見えないはずじゃね?
「同じチンポ咥え込んだ竿姉妹だし……しっかり切り分けてあげるっすよ♪」
「は、はい……ありがとうございます」
さおしまい?
え? ミナってルーネ様と肉体関係ある人なん?
ひょっとして泥棒猫と思われて、いじめられてんの?
頭の上で、サリサリと林檎の……皮を剥く音。
え? ナイフ持ってる? チラと上を見ようとすると。
「おっと……あちっ!」
え?
え?
「いやー。うっかりうっかり。床にあるから、スープに足を突っ込んじゃったっすよ」
「え?」
「ヤケドするといけないし、もったいないっすよねー♪ アルマちゃん、舐めてー?」
ぽたぽたとスープの雫を落とす足先を、顔に突き出される。
白い裸足の足指が、スープで濡れていた。
いつの間に、靴脱いだ? ナイフも……。
「あ……ぅ……」
顔色を窺うように上を見上げると、林檎が邪魔でミナの顔は見えず。
ギラリと、ナイフの刃が光っていた。
さっきから逆光で表情を見せないのもぜんぶ、こちらの視界をわかった上での立ち振る舞いなのだと、思い知らされる。口でも実力でもまったく勝てる気がしない……。
「舐めろ」
「は、い……うぇ……れろ……あむ……ぢゅる」
うう、突然言葉が冷たくなったよぅ。
コワイよう。
逆らえないよう。
舌で舐め上げてから、ぱくっと足先を口に含んで。ぢゅるぢゅると唾液音を立てて舐め、吸う。
「味はどうっすかねー♪」
「ひょ、ひょっぱくて、ミナひゃまの、におい……ひまふ……」
うう、実況オナニーの練習してたのに、初実況が足舐め。
「くひっ♪ くひひ……ペロペロするだけじゃなく、足先咥えて。噛みついてくるかと思ったら、歯も立てずしゃぶるなんて……ホントに、よくできた奴隷♡ お嬢様にはもったいないっすよ♪」
「うぐ……れる……ぢゅぼ……」
「そうそう、足の爪の間までしっかり、舐めまわすっすよ♪ うーん、残念。こんな出会いがあるってわかってたら、朝に風呂なんて、入らなかったのに。もっと、くっさい、足……舐めさせたかったっすね♡」
くちゅ、と音がした。
え、なにこの人、足舐めさせながらオナニーしてるん?
声も心なしか艶っぽい。
「んぎゅ!」
下から見上げようとしたら頭を、もう一方の足で頭を踏みつけられた。
「へぇ……これでも噛まない、なんて、ホント、できてるっすねー♪ いい子♡ いい子♡」
「んぶ、じゅぶ」
ぐりぐりと頭を踏みつけ……というより、踏みにじられる。
こういう時だけは、自己愛のなさで助かるわ。プライドとかあると、きついだろな。
ただ、痛いは痛い。
「いい、いひゃい、れふ」
「はぁ♡ 安心するっすよ♡ 傷なんてつけたら、お嬢様にバレるっすからねぇ♡」
発想がヤンキーじゃん!
ああああ安心できねぇ……腹パンとかされるの!?
「うぶ……じゅぶ……」
「くひ♡ こんな扱いされても噛みつかないなんて……ホントいい子っすねぇ♡」
「ぢゅぷ……」
口から足先が抜かれた……つぅ、と唾液で糸引いてる。
うう、初の唾液ブリッジは足先かぁ。
「ん~~~♪ こんな子を拾ってくるなんて、お嬢様もまだまだ“持ってる”みたいっすね♪」
「っぷ……はぁ……はぁ」
「ほら、アルマちゃん、足をキレイにしてくれたご褒美のリンゴっすよ」
「ふぇ?」
唾液まみれになった足先で、顎クイされた。
見上げると、ミナがスカートをたくしあげてて……奥に何か白い……んん?
「ほーら、丁寧に皮剥いて、たっぷり蜜もつけたげたっすよ。だから……食べろ」
「ひゃい!」
「ん♡ いい返事っすね♡」
スカートの中に潜り込む。
ミナは下着をつけておらず。
その秘所につぷりと、皮を剥いて切り分けた林檎が挿さっていた。
もう、求められるプレイがわかった以上、逆らわず奉仕するしかない……相手、ナイフ持ってるし。
ミナさんはフツーにヤバイ人。
靴とかパンツを瞬時に脱ぐスキルも持ってます。
次回は……アルマかミナか、どっち視点にするか迷い中。
と、作者は性的な意味でのリョナ属性ないので、主人公がそういう目にあうことは、基本ありません。
戦闘での死体描写は普通にしますけど。