※この作品はR-18です。

なんのチートもないけど私は元気です   作:神谷涼

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 なんだかんだで30話、評価や感想くださった皆様のおかげです。
 今後ともどうぞよろしくを。

 前回、前々回、7日目なのに6日目ってミスってたので修正してました。
 今回から8日目。
 第一話冒頭の16日目まで、ようやく折り返しです。
 まあ、16日目になっても「地の文も丁寧語になる」「地の文の一人称が私になる」ってだけですが。



30:改竄バッドエンド

 

――8日目:黒竜山脈、腐肉峡谷

 

 名残惜しい温泉で、朝風呂を浴びてから出発。

 しっかりご奉仕していろんな体液も浴びせてもらいました!

 で、かわいがってもらったし、道中はエロくない物語を……と思ったんだけど。

 

「今日はボクに語らせてくれないかな。目的地について、アルマちゃんも知っておいた方がいいからね」

「えっ。は、はぁ」

 

 がーん、だな……出鼻をくじかれた。

 

「どうせ興味なさそーだから、アルマちゃんが気絶してる間に話してたっすよ」

 

 実際、興味ないですけどね。

 リアルの予定とか、どうせついてくだけだし。興味ないし。飲み会は誘われないし、相談事も受けたこともない身なんで。

 どうせ、奴隷の身で意見を言う意味自体もないんだから。

 

「でもまあ、異界の記憶を持つキミだからこそ、気づく点もあるかもしれないだろう? まあ、軽い小話と思って聞いてくれたまえ」

 

 はあ。

 聞けってなら聞きますけどね。

 

●黒竜グリムファングの物語

『今より三百年あまり前のこと。

 悪しき魔術師が魔物を従え、黒色山脈の城塞を襲った。

 城塞のクラウディア女伯とその兵らは勇敢に戦って魔物を降し、魔術師を討たんとする。

 その間際、魔術師は自らに邪霊を降ろし、強力無比の黒き竜と化した。

 竜は瘴気を発してクラウディア女伯らを皆殺しにし、城塞は一瞬にして崩壊。

 瘴気を吐き出し穢した峡谷に棲みつき、黒き竜は近隣を荒らし続けた。

 人々は喰われ、引き裂かれ、瘴気を浴びせられた。多くが死に、苦しんだ。

 やがて竜の血まみれの口を恐れ、人々は竜を残忍な牙(グリムファング)と呼んだ。

 そして黒色山脈もまた、黒竜山脈と呼ばれるようになった』

 

 ゲームの導入みたいな話だなー。

 このドラゴンを倒しに行くぞーって流れね。

 

「え? ちょっと待ってください。これから、その竜を倒しに行くとか言わないですよね?」

「言わん。もうとっくに倒されているしな」

 

 よかったー。

 

「黒竜グリムファングは以後数十年、山脈近隣を荒らし、多くの村が滅んだよ。で、竜を倒した猛将エメリッヒの偉業を祝い、キミの体もかつて暮らしていた砦がグリムファング砦と名付けられたわけだ」

「多数の犠牲を出した討伐だ。実際に竜がいれば、この三人では自殺にしかならん」

 

 そーいえばあの街、そんな名前だっけ。

 この体の、元夫の肩書にもついてた気がする。

 そしてルーネ様、三人って……私が戦力外ってことですね、戦わされるのお断りなんで助かりますけど。

 

「これは広く人々に流布する物語で、この近隣なら誰もが知っている話だよ」

「外部でもそれなりに知られているな。クラウディア女伯の名も含め、大いに知られるところだ」

「その黒竜グリムファングが棲んでいたのが、この腐肉峡谷というわけさ」

「でも、この臭いって別に竜の瘴気じゃありませんよね?」

「そうとも。だから、真実は違うよ」

「歴史は都合よく書き換えられるそうですからね」

「ンフフ、そういうことは知ってるんだねぇ。ま、ボクたちが今向かってる先にも関係ある話さ」

 

●グリムファング城塞の滅亡

『今より三百年あまり前のこと。

 ヘルベンドの都は、黒色山脈を抜ける要衝たる腐肉峡谷に城塞を築いた。

 敵を通さぬべく峡谷に生えた厳格な牙(グリムファング)たる城塞。

 その司令官は名高き大魔術師クラウディア。

 やがて王が予想した通り、山脈を超えてヘルベンドを侵略せんとする軍勢が次々と押し寄せた。

 されど城塞は堅固であり、峡谷を超える軍はなし。

 だが、幾度目かの侵略の中、ヘルベンド陥落の報。

 水軍で山脈を迂回した敵に、無防備な都を破られたのだ。

 この状況にクラウディアは矛を納め、敵軍へと降伏した。

 己の手腕と城塞を、敵は無下にできまいと考えたのだ。

 だが、すべてが合理で考えるわけではない。

 幾度も侵略を退ける中、敵軍は多くの将兵を失っていた。

 クラウディアは怨敵であり憎き魔女。彼女を許せぬ者は彼女が思うより多く。

 かくして明け渡された城塞の中、彼女は敵軍の恨みを思い知らされた。

 どのような所業が為されたか、伝わっていない。

 ただ、クラウディアは己に邪霊を降ろして黒き竜と化した。

 味方すら殺し、城塞を破壊し、以後も近隣を荒らしたのだ』

 

「悪の魔術師はいなかったってことっすね」

「この後、ヘルベンドを制圧した軍は撤退。近隣諸国は等しく、黒い竜に荒らされた。だから全員で被害者として手を結び、話をでっちあげたわけだね」

 

 クラウディアさんは姫騎士お約束ルートで悪堕ちした感じかー。

 本当は怖い童話系の、裏話ってわけね。確かに、歴史としてはこっちの方が納得しやすい。

 

「あれ? じゃあ、この谷って昔から腐肉峡谷って名前だったんですか?」

「その通りだよ。瘴気云々は後付けの俗説さ。黒竜が討ち取られて数百年がたつのに、人々は今もここには近づかない。ボクだって探り出せたんだ。諸国の上層部は真実を知ってるだろうにね」

「現グリムファング砦があり、山脈を迂回する黒竜街道もある。ヘルベンドとしても、ここを拓いて侵攻の足掛かりにはされたくなかろう」

「目下、人目につかねーのは助かってるっすけどね」

 

 実際、人通りとかぜんぜんないもんなー。

 温泉でも魔法練習でも、野営中でも、さんざんよがり声あげてたはずなんだけど。

 様子見すらこないみたいだし。

 

「っと、いいタイミングで見えてきたね。アレだよ」

「なるほどな。あれなら、普通はわざわざ入ろうとすまい」

「周囲と紛れつつあるけど……確かに、岩の色自体がこの一帯だけ違うっすね」

 

 三人でなんか岩穴をを指さして言ってる。

 崖の中腹って感じ。

 下は断崖ってわけじゃなく、比較的ゆるめの岩山で登れなくもない。

 

「あの中にかつての、失われた真なるグリムファング城塞が埋もれてる。で、あの穴はこっそり調査に来たボクが開いた出入口ってわけさ」

「黒竜討伐直後、調査が入っているのではないか?」

「かもね。けど当時、この峡谷一帯はゴブリンやオーガがひしめいてたんだ。可能性は低いと思うよ」

「黒竜の犠牲者が魔物になったわけっすか?」

「強大な魔物は、存在自体が異界との境界を揺るがすんだよ。そんな場所で死んだ人や獣を依り代に、多数の魔物が生まれたのさ」

 

 魔王かよ。

 

「そいつらがまだ残ってたりしないっすか?」

「魔物は殺したり壊したりが好きだからね。ここにいたって共食いしかできないさ。勝手に湧いて、勝手に散らばったよ」

「だが、探索に来ない理由としては十分だったと?」

「当時の近隣諸国は、黒竜に荒らされてボロボロでね。討伐者のエメリッヒ将軍も、多大な犠牲を出しての辛勝。数十年あれば、山村も山道も木々に飲み込まれるよ。わざわざ拓いて軍を派遣する余力はないさ」

「小規模な探索はあったのではないか?」

「あったとしても、黒竜の正体を知る貴族らはクラウディアの再来を恐れて魔術師を排斥してたんだ。魔術師でもない並の地法術じゃ、この城塞を見つけも発掘もできないと思うけどね」

 

 法術に対して、異界のエネルギーを使える魔術は出力が違うんだっけ。

 

「それに……山脈の探索は、諸国間で領地争いの元だ。秘密裏にしかできない、成果も期待しづらい探索に、戦力も国力も割けやしないよ」

「で、この山脈自体が中立地になったわけっすか」

「そうとも。しかも、下々ほど峡谷の迷信で近づかず、盗賊も棲みつかない」

「我々にはいい隠れ家というわけか」

 

 入り口の方へと、四人で登り始める。

 たいした危険もなく、積み重なった岩を登れた。

 土砂ってほど細かくないし、かといって岩山ってほど大きくもない。自然の階段みたいで……峡谷の岩壁の中では、相当に登りやすい部類。

 近づいて行けば、穴が深く、すぐに内部が広くなっているのも見えてくる。

 

「入り口に、これといった魔法はかかっちゃいない。でも、落盤の危険や、罠の可能性、魔物が閉じ込められてる可能性だってあるだろ? ボク一人で深く入るのは避けたかったんだ」

「砦街で上に教えていれば、相当の手柄になったのではないか?」

「どうだかね。魔術官としてボクに求められてたのは、知識じゃなくて法術指導と戦闘支援だよ。こんな宝の有無もわからない遺跡に、国家関係のこじれるリスクを侵す価値を認めるかどうか」

「宝の有無がわかんねーってのは困るっすね」

「武器の類は残っている可能性も高い。糧食は朽ちているだろうが……湧水はあるのだ。いざという時の拠点、としては悪くない」

 

 真っ暗だけど中は広々としてそう。

 硫黄臭のせいか、動物が入り込んでる様子もあんまりない。

 安心できる拠点は確かに大事だよな。

 毎晩、交代で番するのたいへんだし。4Pもできない。

 

「単独で調べられる範囲は、調べたつもりだよ。奥はまったく見てないけどね」

「ははぁ、だからあそこに温泉を作って調査拠点にしてたっすか」

「そうとも。魔術で地中を調べた限り、埋もれた城塞はたいした損傷をしちゃいない」 

「まさしく秘密基地というわけですね」

「「「……!?」」」

 

 なんでみんなして黙り込んだ上に、こっち見るの。

 別にエロい言葉じゃないでしょ。

 秘蜜鬼畜……とか変換ミスもしてないし!

 

「秘密基地か。おもしろい言葉だな」

「隠し拠点とか言うより、かっこいーっすね」

「異界ならではの言葉の組み合わせかな。時折、思わぬ言葉を言ってくれるし」

「たいていアッチ系の変な言葉っすけどね」

 

 あ、秘密基地ってこっちにはない言葉だったのか。

 でも「秘密」と「基地」は通じたと。

 ちょくちょく新単語が生まれるように。

 明治時代に入った時、大量の言葉が生まれたように。

 普通に知ってる言葉でも、こっちじゃ斬新な言葉があるわけか……「密室殺人」とかもたぶん、斬新な言葉だろな。

 物語を話す時は、なるべくこっちに合わせて簡単な言葉にしてるつもりだったけど。

 ん?

 でも「アナル」「ハメ穴」「肉便器」あたり通じてたよな。

 卑猥な俗語という括りはこっちの世界にもあって、「アナル」って言ってるつもりが該当するこっちの言葉でしゃべってるかもしれないなー。

 んん?

 というか日常会話自体、日本語でしゃべってるつもりだったけど……実際はこの体がもってる記憶に基づいて翻訳し、翻訳されてるのか? そう考えると概念のない言葉とか、組合わせて考えられてない言葉は、通じないわけで。

 「〆切」が通じないのは印刷文化がないせいかな? あるいは人口の少ない作家業の人相手のみ通じるとか?

 「インターネット」とか「LED」はもちろん、「火力発電」や「民主主義」あたりも通じない可能性高い、と。

 略語「オナホ」とか「ローター」もたぶん無理。

 「オナホール」は説明すれば通じるかな。

 「チンポビンタ」「ケツマンコ」は変な新語扱いってわけか。

 クンニとかフェラは微妙に通じるっぽいんだよな。

 道具とか概念で、言葉に気をつけないとなー。

 うーん、昨日の触手チンポといい、今更ながら異世界を実感するわー。

 

「ともあれ、秘密基地にするなら、中を調べなきゃいけない。暗い上に、内部は不明なんだ。ボクがキミたちに護衛を頼むのもわかるだろう?」

「で、私が斥候役か」

「暗視と隠密ができるんだから、頼むよ。中で見つけたものは、魔術関係以外ほぼ渡すから」

「古い金とか、出所隠すのめんどくさそーっすけどね」

 

 とと、話が続いてた。

 つまりこれから、ダンジョンアタックするのか。

 罠やモンスターの有無は不明。

 城塞まるごとだから、すごいでかいんだろってのはわかる。

 そして自分は特にダンジョン知識もない……魔法とかモンスターの在り様を見るに、ゲーム知識を持ち出しても意味なさそうなんだよなぁ。ゴーレムとかアンデッドって、この世界にいるのかしら。口出しは基本、しない方がよさげだし。

 そもそも、他三人と違って戦ったりできないし!

 

「戦いで昂ったり、緊張感を鎮めたいときの性処理はお任せください」

「そうか」

「……最初から、他は期待してねーっすよ」

「無生物でも浮遊させられたら違うんだけどねぇ」

 

 ええー。

 そこはねちっこく期待の目を向けたり、景気づけに今すぐ一回とかってしようよ!

 ルーネ様なんか、背中向けて真っ暗な中にもう入り始めてるし。

 ここで待ってる間、ぼけーっとしてるのもネガティブになりそうでヤだなぁ。

 

「じゃ、アルマちゃん明かりをよろしく頼むよ」

「あたしも後ろで持っとくっすけど、後詰めだから距離開けるっす」

「え?」

 

 待って。

 いっしょに入るの?

 普通、非戦闘職って宿屋で待つものでは?

 





 ダンジョン編導入。
 今回エロくならなくて申し訳ない。
 ダンジョンの由来とかやたら細かく設定したがる悪癖が……!
 言語関係は肉体が持っている記憶を流用している形です。

 次回、ダンジョン内部へGO。
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