※この作品はR-18です。

なんのチートもないけど私は元気です   作:神谷涼

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 メンタル持ち直した主人公。
 持ち直したメンタルを維持すべくがんばります。



33:即席ホラーフィルム

――8日目:黒竜山脈、旧グリムファング城塞跡

 

 本来の一階に当たる場所は、二階より崩落も少なかった。

 ただ……。

 

「武具と白骨死体は大量にあるねぇ」

「それも大半がスケルトンになった後っすよ」

 

 骸骨はどれも歪んだ形で、手は巨大な鉤爪になっている。

 

「極端な乾燥も湿気もないせいか? 錆びも少ない。武器庫としては悪くないな」

「死体がミイラ化しなかったのも、ありがたいね」

 

 人体の要になる骨があると、スケルトンが自然発生しやすいそうで。

 拾ったメイスを使って、みんなで頭蓋骨や骨盤を割って回るお仕事をしてます。

 数百年前ってだけあって、簡単に割れるんだけど……数が数だけに体力使うし、気が滅入る。

 ソシャゲの周回をオートなしで延々やってるような作業感。

 まあ、日本語しゃべらないから、さっきみたいな気分にはならないけどね。

 

「後ろから襲われてはかなわん。念入りに潰せ」

「あんまり魔術を使うとスケルトンの発生する原因にもなるからねぇ。ボクも手伝うけど、アテにしないでほしいかなぁ」

 

 部屋ごとにやってるけど、ホント大量に転がってるんだよ人骨。

 砦が崩れた時に何人死んだのか、考えるとなおさら気が滅入る。

 しかもシオン様、私より体力低くて役に立たないし。

 ルーネ様は武器の物色とか、品物探し中心で……古いお金はちょくちょく見つかってるみたいだけどね。

 とにかく、部屋一つに時間かかる上、黙々とはやってられない。

 そんなわけで。

 物語を始めました。

 

「……歌う髑髏を見つけた行商人は、それを見世物にして評判を得ました。どの街でも大きな評判を呼び、貴族すら見物に来るようになったのです」

「そのドクロって、殺した弟のヤツっすよね?」

「身内を殺したら骨まで利用すべきというわけか」

 

 あ、そういう風に感じるのね。

 シオン様はなんか先を知ってそうな顔してるな。

 ここで王様の前では歌いませんでしたオチとか、殺されたって告発オチは弱いだろし。

 ヨシ! アレンジすっか!

 

「そうして大金を稼いだ商人は、故郷に帰り。弟は事故で死んだと泣く泣く語って、村長の娘を妻に。かつての弟の恋人を妾にしました」

「えっ」

 

 ふふふ、予想外の展開にシオン様の驚きが心地よい。

 唯一の現代チート、しっかり活用してやんよ。

 

「おい、こんな場所で艶話はやめろ」

「あ、ハイ。そっちは薄めにします」

 

 NTRは趣味じゃないしね。

 

「そうして立派な屋敷を建て、畑を買い、家畜を買い、人を雇い、農場を始めたのですが……なぜか畑は不作が続き、家畜は衰え、人は逃げ出し。使った金は消えるばかり」

「故郷に帰らず行商人続けてた方がよかったんじゃないすか?」

 

 すみません、そっちもバッドエンドなんですよ。

 

「どうもおかしいと、商人は夜通し畑を見張ることにしました。するとあの髑髏が歌いながら、鬼火に包まれ、ゆらゆらと空を飛んでいます。髑髏は農地を飛び回り、小作人の住まいに行っては陰気な歌を聞かせるのでした」

「その歌が呪いだったのか?」

「はい。夜な夜な呪いを浴びた作物は枯れ、家畜は弱り、歌う髑髏を見た小作人たちは逃げ出したのです。これを知った商人は慌てて髑髏を箱に入れ、鎖で封をし、沼に沈めて捨てました」

「行商人続けて、歌で稼いだ方がよかったじゃないすか」

「いやぁ、そんな呪いをかけるわけだからね。どこかで同じように復讐されたんじゃないかなぁ」

 

 やっぱ似たような話はこっちにもあるのね。

 

「そうして髑髏を始末した商人は、農場もうまくいくようになり。あの呪いが子宝を妨げていたのか、妻も子を孕みました」

「めでたしめでたし、か?」

「妻の腹が膨らみ、出産も間近となった頃……またあの、髑髏の歌が聞こえ始めたのです。最初は小さい声でした。しかし、それの歌は途切れず、一日中聞こえます」

「ヤな予感するんすけど」

「次第に大きくなる歌声。ある夜、ついに商人は気づきます。その歌は、妻の腹から聞こえていたのです」

「まて。こういう場で、そういう話は――」

 

 ここは勢いが大事。止めようとしてもスルー。

 

「商人は妻の腹にいるのが己の子ではないと理解しました。弟が己を呪い続けているのだと知りました」

「いや、他の人は何も言わないんすか。使用人とかいるっすよね?」

 

 質問もスルー。

 

「商人は怒りと憎しみで顔を紫色にして、納屋に駆け込むと斧を手にします」

「おい、やめろ」

 

 フハハハ、その反応が怪談の醍醐味よ!

 

「部屋に戻り、身重の妻にその斧を振り上げ――『今度こそくたばれ!!』」

 

 渾身の怒鳴り声!

 

「「「ッ!」」」

「ヒィッ!!」

 

 ふふふ、全員息を飲んだ! 勝った……!

 

「……そして、血みどろになった部屋の中、完全に気の狂った商人が笑い声をあげます。ああ、けれどまだ髑髏の歌が! 商人の耳に! 商人の耳にだけ響くのです!」

「ぴぃぃ……」

 

 おおっと誰かわかんないけど、かわいい悲鳴あげるじゃねぇか。

 ぐへへ、まだまだお約束は続くぜぇ。(悪ノリ)

 

「何があったかと駆け込んだ使用人に、斧が振るわれました。血に染まる屋敷! 次々と使用人を殺し。屋敷の柱や壁にも斧を打ち込み。燭台が倒れ、ランプが割れ油が床に! 小さな火が広がり……屋敷は炎に包まれました! 燃え盛る屋敷! 狂った商人の怒鳴り声! 斧を振るう音! 斧を振るう音!」

 

 ふふふ、声を大きくするごと、誰かが身をすくませる。

 これが嗜虐的悦びというやつか。

 今度夜に、洒落怖な話を聞かせてやるも一興だな!

 

「ついに屋敷は焼け落ちるより早く崩れ始め! 狂った声もまた、屋敷の崩壊と同時に止まったのでした……」

 

 トーンダウン。

 少し落ち着いて、誰か何か言いそうなタイミングで。

 

「しかし、その時! 高らかに響く髑髏の歌! ああ、今ここにも髑髏の歌が!」

「ぴぎゃああああああああああああああ!!」

 

 内容はたいしたこっちゃないけど、勢いと声量! タイミング!

 さらにテキトーな方を、目を見開いて指さし!

 ふふふ、ちょうど指さした方にいた誰かが、すごい悲鳴をあげてる。

 

 大・成・功。

 

 後で怒られそうだけど、この勝利の美酒がさっきのネガティブを吹き飛ばしてくれる。

 

「……おい、今の誰だ」

「あたしじゃねーっすよ」

「ボクでもないよ」

 

 いやいや、そんな一人多いとか使い古された手を使われても……って、あれ?

 確かに指さした方って誰もいないよね。

 壁だよね。

 え、待って。

 ほんとにさっきの悲鳴だれ? 

 

「えええ、まさか歌う髑髏ならぬ叫ぶ髑髏!?」

「いやいや、さっきからこの部屋は全部しっかり砕いたっすよ。後半はアルマちゃんの話聞いてたっす」

「こんな場所で怪談話などするから、魔物が現れたのではないか?」

 

 くっ、二人とも平気そうな顔しやがって。

 シオン様は壁を見てる。

 

「誰かいるね…………〈そこに門がある〉」

 

 シオン様が指さすと、壁にアーチ型の門ができた。

 扉はない、ただのアーチ状の入り口。

 スケルトン倒した時と違って派手な魔術だな!

 

「なっ!」

「魔物っすか」

 

 けど、その向こう側には未踏の部屋と。

 壁にぴったりと身を寄せていた裸の女性がいて。

 ルーネ様とミナ様が武器を抜くより早く。

 

「ぎゃぷ」

 

 よりかかっていた壁……つまり支えが消えたせいで、前につんのめりこけた。

 

「これがさっきの悲鳴の人ですか」

「人間……じゃないね。見てみなよ」

 

 肌がびっくりするくらい真っ白で、髪は濃い紫色。

 尻尾が生えて、手の先は鳥みたいに硬質化して長い鉤爪になってる。

 ちらっと見えた顔も角が生えて、エルフ耳だったし。

 長身でおっぱい大きい美人だったけど、ポンコツ印象の方が強いなぁ。

 

「魔物って怪談を聞いて、悲鳴あげるんですか?」

「高位の魔物は、人と変わらない精神構造だって聞くけどね」

「運動神経もダメそーっすよ」

 

 受け身とってなかったもんね。

 

「うぐぐ、貴様ら、あのような恐ろしい話を使って、よくも余を罠にかけてくれたな……」

 

 あ、起き上がってる。

 目は真っ赤で眼球黒い……なんていうか魔族目だね。

 ちょい異形系サキュバスを描く時によく描いたタイプだわ。

 

「勝手に転んだだけだろうが」

「ひっ!」

 

 いつの間にかすぐ傍に近づいていたルーネ様が背中を踏みつけ、顔の横に剣を突き立てると。

 普通に悲鳴をあげた。

 あれ? ていうかルーネ様と会話できてる?

 魔物って、さっきのスケルトンみたいにあっちの世界の言葉でしゃべるんじゃないの?

 

「フン……ん? おい、アルマ。明かりを持ってこい」

「え? は、はい……」

 

 暗視効果の兜を付けてんだから見えてるでしょに。

 まあ、刻印使われたら痛いから従うけど。

 

「き、貴様! 余の背を足蹴にするなど許されぬぞ!」

「やかましい」

 

 踏みつけられてる魔物(?)が助けを求めるような目で見てくる。

 自分で何とかしたりできないのかなぁ。

 ていうか、その目って別に魔眼的な特殊効果ないのかよ。

 

「その部屋の足元を調べてみろ」

「はぁ……なんか濡れてますね」

「や、やめよ!」

「んー……なんか柑橘類っぽいけど、これはまさか……」

 

 地面に水たまり。

 湯気立ってる……そしてこの匂い。

 チラっと、こけたままじたばたしてる魔物の、恥じらいもなく開かれてる全裸下半身をランタンで照らすと。

 濡れてますね。

 私がよく出す愛液とか潮じゃない、もっと子供のころから普通に出る液体で。

 

「えっ、さっきの話でちびったんですか」

「やはりか。これは何だ? 魔物なのか?」

「高位の魔物って強いと思ってたけど、そうでもないんだね」

「貴様らぁ! 余をヘルベンド第一王女クラウディアと知ってのことかー!」

 

 這いつくばって、下半身おしっこまみれで、踏んづけられながら言われてもなぁ。

 あれ?

 クラウディアって最近聞いた名前の気がする。

 んん?

 シオン様がマジな顔してますね。

 え? ここに来る前に聞いた黒竜を呼び出したって女将軍の人?

 




 メンタル回復したからと、ろくなことしないけど、役には立ったアルマ。
 新キャラ登場だけど、街には連れていけない子。 

 クラウディアさんのビジュアルイメージは、深海棲艦とかFF14サキュバスです。
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