巴男吾が帰ってきたと聞いた。
ならば、早速会いに行かないと。
もちろん、今さら押しかけ女房になるつもりはないし、
ましてや愛人になるなんてのもまっぴらだ。
これでも奥田ちゃん──じゃなかった、お姫ちゃんのことは認めている。
あれくらい似合いの夫婦というのもそうあるものではないと思う。
でも、それはそれとして──アタシ、円谷操にはやっぱり男吾しかいないのも
事実なのだ。
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「巴道場'10」 08/02/19 by TANA
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で、操は巴道場の前にいた。
初めてここに来たときはこの道場を潰すための芝居でやってきたものだ。
そんな事を思い出すと、それなりに感慨がある。
あの芝居が結果としてあの二人をより近づけることになったことを考えると、
なんという皮肉だろう。もちろん自分にとって。
さて、こんな時のために用意しておいたスーツの一張羅をびっ、と気合いを入れて
整える。
がらっ。
「男児ちゃん、父ちゃん帰ってきたってー?」
城を攻めるには外堀から。
というわけで当然、男児と操は顔見知りである。
ちょくちょく姫子の目を盗んでは連れ出して甘い物を食べさせたりしている。
餌付けとも言う。
「もがーっ!」
ずるっ。
思わずコケた。
目の前に顔見知りの小学4年生が、猿ぐつわをかまされた上に亀甲縛りにあっていたら
大抵の人間はコケるだろう。
「ど、どうしたの?」
とりあえず亀甲縛りは解き方がよくわからないので猿ぐつわだけ外して聞く。
「み、操姉ちゃんくらいの女の人が来て……母ちゃんがいないっていったらいきなり……」
ちなみに「姉ちゃん」と呼ばないと痛い目に遭うことはよく知っている男児だった。
「もががーっ!!」
道場の奥からさっきの男児によく似た悲鳴が聞こえた。
「──男吾!?」
とりあえず男児はそのままに、奥の方、道場の間に進む。
「「──円谷操」」
がくっ。
またコケた。
相手がひとりかと思ったらふたりだったとか、しかも顔見知りだったとか、
というかそれ以前に「3人とも」全裸だったとか、しかもどう見ても「その」最中だとか、
「先を越された」とか、色々あるが全部複合してコケるには充分な威力だった。
「──二階堂乱に舞、アンタら何してるのよ……」
自分のことは棚に上げてとりあえず聞く。
「しれたこと」
姉──乱──が口を開く。
猿ぐつわかまされた男吾の裸の胸元から顔を上げて。
「師匠が帰ってきたと聞いたので、その長旅の間に溜まりに溜まった欲求不満を解消して
ついでに自分たちも満足するのが弟子である私たちのつとめ」
「ついでに以降は完全に自分の為じゃないの!」
ついかっとなって、ついツッコミの意味もこめて、
思わず景気よく前蹴りを繰り出していた。
びしぃっ!
「!」
受けられた。
相変わらず鏡のように左右対称。乱と舞。
足の裏に、足の裏。
綺麗に体を伸ばしたふたりの横蹴りが操の前蹴りを止めていた。
たぶん絵になっただろう。乱と舞のふたりが全裸でなければ。
「さすがは円谷アスレチックジムの行き遅れ師範」
「ひとりなら弾き飛ばされていた」
「行き遅れってアンタたちが言うなー!」
乱も舞も独身である。ついでに同い年だ。
するっ。
足を合わせた体勢から乱と舞が同時に左右に別れる。
「! しまっ……」
乱は後ろに、舞は下に。
無言で左右違う動きが出来るのはさすがに二階堂姉妹──とか感心している場合ではなく、
舞が放った足払いにぐらついたところを、後ろから関節を取りに来た乱に逆を取られる。
「ちょっと! 何する気よ!」
「──何、悪いようにはしない」
するする。ハンカチ──だろうか。慣れた手つきで後ろ手を縛られる。
「師匠に可愛がられに来たのだろう?」
するする。足を押さえつけられながら、前をはだけさせられる。
「ちょっ……」
「「ほら、師匠が見ている」」
え。
思わず男吾を見る。猿ぐつわでもがもが言っているが、確かにこっちに眼を──
相変わらずたくましい、引き締まった筋肉に、はげしくそそりたったそれが──
「あっ!?」
びくん。
カラダが反応した。
後ろ──乱がうなじをさすりながら耳に軽く息を吹きかける。
前──舞がはだけたシャツの前から手を差し入れて胸をさすってくる。
……ヤバイ。
……このふたり、慣れている。
「んぷ……」
乱の口唇が操の口唇を奪う。肉を割ってやわらかな舌が挿し込まれる。
乱の軽く立てた爪が操のうなじから背中を這う。そこから微弱な電気が走る。
舞は胸を蹂躙したあと、へそから下半身へと食指を動かしていた。
まずい、そっちはまずい。だって濡れてしまっているのがバレて、
「ああんっ!!」
びくんっ! とひときわ操は仰け反った。
下半身の敏感な部分はすでに洪水のようになっているのが自分でも分かった。
「師匠だけじゃなくて、自分もガマンしていたな?」
うう。顔が赤くなるのが分かる。
だって、自分には男吾しか──
「あっ!」
いつの間にか舞だけでなく乱も下半身に顔を近づけていた。
くちゅくちゅと音を立てている。きっとわざとだ。
「いやらしい音がするな」
「師匠の前だからか」
うう。男吾が聞いている。
顔を上げる。
男吾と眼があった。見たらダメだと思った。いやらしい私を見られてしまう。
でも一瞬で忘れた。
男吾の眼にははっきりと興奮の色があった。
男吾が、私で、興奮して、
「男吾ぉ!」
がばっ。
操は男吾の下半身にとびつくように倒れ込んだ。
男吾の自身に自らの顔をこすりつけ、口唇を這わせ、舌で舐めあげる。
「もぐぅっ!」
男吾が喘いだ。
それすら今の操には喜びだ。
丹念に口腔内で男吾自身をこすりあげ、熱い息を吐きかける。
気付けば両手は自由になっていた。
だが離れることなど思いつかなかった。
乱か、舞か、もうどちらがどちらか分からないが、ひとりが男吾の猿ぐつわを外すと、
激しい口づけを始めていた。
もうひとりは操の両胸を責めながら、背中を舌でつつくようにして性感を高めてくる。
「はぁ……男吾……」
「み、操……」
ぐ。もう他のことは考えられない。
男吾の熱くなった自身を、自分の最も熱くなっているところにあてがう。
操の唾液と、体液と、男吾の体液でぐしょぐしょになったそこを、一気に貫く。
「あ! あああ!」
操はそれだけで達してしまいそうになるのを必死で堪える。
まだ。まだ先に行きたい。
男吾と一緒に、できるだけ、とおくへ。
はげしく粘膜と粘膜がこすれあう。
男吾も、操も、激しい呼吸音を発している。
「あああ! あぁッ!」
操の口からは壊れたトランジスタラジオのように同じ声しか聞こえない。
「う…ぐ……あ……ッ!」
男吾も必死で堪える。
乱と舞も参加して三人がかりで攻められている。
もう思考能力が奪われる。
でもなくしてしまったらこのキモチヨサを感じることはもう出来ない。
だから必死でガマンする。
でも、堪えれば堪えただけ次の瞬間にはそれに倍するような快楽の波が押し寄せてくる。
そうして
「男吾! 男吾ぉ!!」
「操ぉ!!」
「「あああああーーーっ!!」」
最後のその瞬間が来た。
どくん、どくんと操の胎内に熱いものが流れ込んでくる。
いや、むしろ突き刺さってくるかのよう。
それほど凶暴で、それほど蠱惑的で、それほど求めてやまないもの。
ゆっくりと身を震わせて、操は男吾に体を任せようと──したところで止められた。
「こら」
一瞬誰だったか分からなくなった。
それほど充足してしまった。
「一回すんだのなら、師匠を返してもらうぞ」
……乱と舞だった。
ああ、そういえば、途中だったんだっけ。アンタたち。
悪いことをした。こんなにすてきなことを中断させてしまったのなら。
だから。
とりあえず、この場所は譲ってあげる。
でも──またすぐ、取り返してみせるから。
だから、ちょっとだけだからね?
饗宴はどれほど続いたのか、誰も覚えていない。
男吾の自身は底なしのように何度でも立ち上がる。
まるで本人の持つ不屈の闘志のようだ。
乱も舞も、幾度となく身を震わせた。
もちろん、操も。
で。
おしまいは当然来るものだったが、誰もそれに思いを馳せることがなかった。
がらがら。
道場の扉が開けられた。
誰かがやってくる。
でも誰も気がつかない。
ちょうど再び操が男吾の上に跨って、それを乱と舞が攻めているところだった。
「──巴ダイナミック」
それはささやきのような小声だったが、誰もがそれを聞いた。
ぶおん!
こう、学園台風が暴れるときのようにそこいらの空間が一気になぎ払われて、
男吾を除いた三人がまるで冗談のように吹き飛んた。
力学の法則に従って壁に叩きつけられて、床にどさどさと落ちる。
「──へ?」
一気に空中を舞って床に落ちて、くらくらする頭をあげる操。
乱と舞はまだ眼を回している。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
荒木風に謎の擬音が聞こえる。
「えーと、その」
何と言っていいか、頭が回らない。
なので、とりあえず。
「久しぶり、お姫ちゃん♪」
「他人の亭主ぶん姦(まわ)していうことはそれかーっ!!」
怒られた。
きっ、と姫子は男吾の方を向く。
「と・う・ちゃ・ん?」
「いやえーとだな母ちゃん。その、こういた、いた痛い痛い痛い痛い痛い!!」
ぎしぎし。
男吾の左手の小指があり得ない方向にもりもり曲がっていた。
「あれほど、操ちゃんと乱さんと舞さんに気をつけろって言ったよね?」
ぎしぎし。
「……はい」
「何か言うことは?」
「えーと、男だからしかたな──イテーッ! い、いや、もうしません……」
「そう、よかった♪」
音がする。
いやらしい音だ。肉と肉がこすれ合う音。粘液と粘液が絡み合う音。
ぐちゅり、じゅぶ、べちゃ、ぬる。
「あ、あのさー」
ずっ、ずっ、ずっ、ずっ。
「えーと、その、反省しているんだよ」
「あの、お姫むーッ」
「んーーー(喋らせない)」
「うん、悪いことをした。しました。もうしない……かどうかあんまり自信ないけど」
「ぷはっ! はぁ」
「ああっ! 男吾くんッ!!」
ぐちっ、にゅるっ、ずっ、ずっ。
「アンタたち何回見せつけるつもりなのーっ! つか男吾そろそろ死んじゃわない!?」
「ほどけー」
「混ぜろー」
柱にくくられた三人の声は、もう男吾とお姫には届かない。
届かないのだった。
しまった! これじゃただの妄想を文字におこしただけだ!
……だけにならないように、色々手は打ちました。
いや、打ったつもりです。はい。
ちなみにタイトルの'10というのは、原作の完結編(男児編)が2010年頃という
設定だというので適当につけました。
いやぁ、でも操にしろ乱、舞にしろ、一度男吾のことを知ったらよその男なんて
目に入らないんじゃないかなぁとか考えてみたり。
ともあれ、お付き合いいただきありがとうございました。
TANA拝